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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1140547
審判番号 不服2003-10268  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-05 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 特願2000-125763「チップの半田付け構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月24日出願公開、特開2000-323824〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、特願平7-241127号(平成7年9月20日出願、以下「原出願」という。)の分割出願として、平成12年4月26日付で新たに出願されたものであって、平成15年4月28日付で拒絶査定(発送日同年5月6日)がなされ、これに対して、同年6月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。そして、本願の請求項1、2に係る発明は、平成14年10月18日付で手続補正された明細書の請求項1、2の記載により特定されるものであり、そのうちの請求項1には以下のように記載されている。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】基板のランド上にチップのモールド体の両側部に設けられた電極を半田付けするチップの半田付け構造であって、前記電極のタテ、ヨコの寸法比の大きさを求めることによりチップ立ちが生じるか否かを予知し、チップ立ちが予知される場合は、クリーム半田を前記電極よりも内側の前記モールド体の下面が接着する位置まで塗布するようにスクリーンマスクのパターン孔を開孔してランド上にクリーム半田を塗布し、前記モールド体の下面をクリーム半田に接着させて半田付けしたことを特徴とするチップの半田付け構造。」

2.引用例の記載内容

(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、実願昭62-108078号(実開昭64-013101号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、第1図〜第6図とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「上記チップ部品1をプリント板に実装する場合、第4図(イ)に示すように孔板(厚さ0.1mmの板にプリント基板6のパターン7に対向した孔5を有する)4をプリント基板6の上に載せ、ソルダペースト8をスキージ9により塗布する。」(明細書第3頁第9行〜第13行)

(イ)「第3図に示す従来のチップ部品は、部品の高さHよりも幅bの狭い電極3が付いている。これは、電極3の側面部10を付ける時の厚膜印刷のダレ込みによって、電極3の下側部11を形成している為で、その寸法のバラツキは大きい。
これが半田付けされる時、種々の要因によって(ソルダペーストは半田粒とペーストにより構成されており、半田粒の酸化等により溶融後凝集までの時間にバラツキがある等)、チップ部品1の左右の電極3に、半田がヌレるタイミングがずれ、第6図に示すように片方の電極3がヌレないことがある。
この場合、小型のチップ部品が第6図の点線で示すように半田付け時に立ち、接続が取れない所謂マンハッタン現象が生じ、修正作業をせねばならず大きな問題であった。」(明細書第4頁第8行〜第5頁第4行)

(ウ)「該チップ部品1’が前記プリント基板に半田付けされる面側の電極3’の幅b’を、該チップ部品1’の高さHと等しいか、それよりも大きく取った本考案のチップ部品によって解決される。」(明細書第5頁第13行〜第16行)

(エ)「この現象について力のバランスを第2図で考察する。チップ部品1’の重力をW、A点からの距離をl、A点の半田の表面張力Fb、その分力をFa、Fcとし、B点の半田の表面張力Fe、その分力をFd、Fvとする。半田13はVPSの蒸気加熱により固体から液体になって電極3’をぬらすが、このときチップ部品1’は凝集した有機溶剤中にあり、浮力Ffが働く。一般にVPS装置に用いられるフロリーナートなる有機溶剤の比重は高く。従って、その浮力も大きくなる。C点を中心として左回りのモーメントはFa×H、右回りのモーメントはFv×b’+W×l-Ff×l、Fb=Feであり、通常はFa<Fv、又W>Ffであり、b’>HとすることによりFa×H<Fv×b’+W×l-Ff×lが成り立ち、通常の製造条件の範囲内では、マンハッタン現象が起こらない事が保証される。」(明細書第6頁第12行〜第7頁第7行)

(オ)「これにより半田付けされる面側の電極3’の幅b’を、チップ部品1’の高さHよりも大きくとることにより、部品側面に働く半田の表面張力が部品を立てる方向に働くモーメントを、電極に働く表面張力によって打消し、部品が立つ所謂マンハッタン現象の発生を防止できる。」(明細書第9頁第6行〜第12行)

以上のとおり、引用例1においては、電極3’の幅b’をチップ部品1’の高さH(明細書及び図面の記載からみて、高さHは「本願発明」の電極の高さに相当する)よりも大きくとることにより部品を立てる方向に働くモーメント(上記(エ)参照)を電極に働く表面張力によって打ち消しているものである。すなわち、引用例1の実施例の条件下では、電極の幅b’と高さHの寸法比(b’/H)が1以上の時、部品が立たなくなり、1未満の時には部品が立つ(以下「チップ立ち」という。)ことを示唆、あるいは予知している。
換言すれば、電極の高さH、幅b’の寸法の相対的な大きさを求めることによりチップ立ちが生じるか否かを予知しており、実質的に両者の寸法比をみていることに他ならない。このことは、電極の高さHが部品によって不変のものだとすると、ソルダーペーストの塗布幅としての幅b’の寸法を大きくすることによってチップ部品の底面に生じるモーメントが大きくなるようにするという技術思想を開示するものである。すなわち、引用例1においては電極の高さHに対するチップ立ちが生じないような半田のヌレ幅を電極の幅として選定しているのである。

そこで、上記記載事項(ア)〜(オ)及び第1〜6図の記載を総合すると、引用例1には、
「プリント基板6のパターン7上にチップ部品1’の抵抗体2の両側部に設けられた電極3’を半田付けするチップ部品1’の半田付け構造であって、前記電極3’の高さH、幅b’の寸法比の大きさを求めることによりチップ立ちが生じるか否かを予知し、チップ立ちを防止するために電極3’の幅b’を高さHと等しいか、それよりも大きくし、孔板4の孔5を開孔してパターン7上にソルダーペーストを塗布して半田付けしたチップ部品の半田付け構造。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)同じく、特開平3-73393号公報(以下「引用例2」という。)には、第1、2図とともに、次の事項が記載されている。

(オ)「本発明は、比較的大きな印刷パターン開口部15aを通して、基板13の複数のランド14上だけでなく、ランド14間にもソルダーペースト19が印刷されるが、リフローにより液状化した溶融はんだは、基板ランド14および部品電極部17が有する濡れ性によりこれらに吸引されるとともに、溶融はんだの表面張力によって、基板ランド14間の溶融はんだも、いずれかの基板ランド14および部品電極部17に引寄せられ、基板ランド14間に残らない。」(第2頁左上欄第19行〜同、右上欄第7行)

(カ)「そうして、第1図(A)から(C)に示されるように、基板ランド14上にソルダーペースト印刷マスク11を載せ、このマスク11上でスキージ18を摺動させ、マスク11上に供給されたソルダーペースト19を、前記大きな印刷パターン開口部15aを通して、2箇所の基板ランド14上だけでなく、その基板ランド14間にも印刷塗布する。」(第2頁右上欄第20行〜同、左下欄第6行)

以上のとおり、引用例2には、ソルダペーストを部品電極部17よりも内側の電子部品16の下面が接着する位置まで塗布した半田付け構造が記載されている。

3.対 比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「プリント基板」、「パターン」、「チップ部品」、「抵抗体」、「高さ」、「幅」、「ソルダーペースト」、「孔板」、「孔」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「ランド」、「チップ」、「モールド体」、「タテ」、「ヨコ」、「クリーム半田」、「スクリーンマスク」、「パターン孔」に相当するものである。

したがって、両者は、
[一致点]
「基板のランド上にチップのモールド体の両側部に設けられた電極を半田付けするチップの半田付け構造であって、前記電極のタテ、ヨコの寸法比の大きさを求めることによりチップ立ちが生じるか否かを予知し、スクリーンマスクのパターン孔を開孔してランド上にクリーム半田を塗布し、半田付けしたチップの半田付け構造。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、チップ立ちが予知される場合は、クリーム半田を前記電極よりも内側の前記モールド体の下面が接着する位置まで塗布し、前記モールド体の下面をクリーム半田に接着させて半田付けしたのに対し、引用発明では、チップ立ちを防止するために電極3’の幅b’を高さHと等しいか、それよりも大きくした点。

4.当審の判断

そこで、上記相違点について以下に検討する。
上記相違点は、本願発明が「チップ立ちが予知される場合」に電極だけでなく「モールド体」の下面にもクリーム半田を塗布することを前提として、チップ下面のクリーム半田の塗布幅を大きくしたのに対して、引用発明では電極の下面にクリーム半田を塗布することを前提として、チップ部品の底面に生じるモーメントが大きくなるようにチップ部品下面のクリーム半田の塗布幅を大きくしたことに起因するものである。ところが、チップの半田付け構造において、クリーム半田をチップの電極だけでなくモールド体の下面にも塗布することは、引用例2に開示されているように周知の技術事項であるし、また、溶融していないクリーム半田がチップのモールド体に対して接着力を有することは、技術常識である。
そうすると、上記引用発明における電極のタテとヨコの寸法比に着目してチップ立ちを防止するという技術思想に引用例2に開示されたクリーム半田の塗布に関する技術事項を適用すれば、電極の下面だけにクリーム半田を塗布するのではなく、モールド体にもクリーム半田を塗布するという上記相違点に関わる本願発明の構成を想起することに格別の困難があるとは認められない。
そして、上記相違点に基づく本願発明の作用効果をみても上記引用例1,2から予測される範囲にとどまるものである。

5.むすび

したがって、本願発明は、上記引用例1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2006-05-17 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-12 
出願番号 特願2000-125763(P2000-125763)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 隆司  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 ぬで島 慎二
川上 益喜
発明の名称 チップの半田付け構造  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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