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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C01F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C01F
管理番号 1140679
審判番号 不服2003-17539  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-01-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-10 
確定日 2006-07-24 
事件の表示 特願2000-184479「高濃度炭酸カルシウムスラリー及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月 9日出願公開、特開2002- 3219〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年6月20日の出願であって、平成15年8月1日付(発送日:平成15年8月12日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月7日付で手続補正書が提出されたものである。

2.平成15年10月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月7日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「炭酸カルシウムスラリーを機械的脱水手段により脱水して脱水ケーキとし、該脱水ケーキに分散剤として、重合型高分子系,重縮合型,共重合型高分子ポリマーでなるアニオン界面活性剤を0.001重量%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドカチオン当電当量値で2〜10ml/g・DrySolidCaCO3相当量添加し、副添加剤として水溶性天然高分子,天然高分子化合物誘導体水溶性アニオン高分子化合物,アニオン界面活性剤の70%値以下のアニオン強度を有する合成低アニオン高分子ポリマーから選択された一又は複数を添加して、混合・分散させることにより得た固形分濃度50重量%以上で、かつ、粘度200センチポイズ以下であることを特徴とする高濃度炭酸カルシウムスラリー。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「副添加剤」について、「水溶性天然高分子、天然高分子化合物誘導体水溶性アニオン高分子化合物、アニオン界面活性剤の70%値以下のアニオン強度を有する合成低アニオン高分子ポリマ-から選択された一又は複数を添加」と、補正前の選択肢である「合成水溶性ポリマ-」を削除し、選択肢を少なくする限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例および記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-233011号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「1.炭酸カルシウムを水性媒体中に分散して水分散液を製造するに際し、分散剤として、アクリル酸・メタクリル酸及びこれらの塩類から・・・少なくとも1種の単量体より導かれた数平均分子量が2,000〜80,000である水溶性重合体(I)と重合度30〜700、ケン化度30〜100モル%で且つアニオン化変性度0.5〜20モル%の水溶性アニオン化変性ポリビニルアルコール(II)とを、炭酸カルシウム100重量部に対して、水溶性重合体(I)0.1〜2重量部、水溶性アニオン化変性ポリビニルアルコール(II)0.03〜1重量部の範囲の割合で併用することを特徴とする炭酸カルシウム水分散液の製造方法。
2.水溶性アニオン化変性ポリビニルアルコール(II)が水溶性スルホン化変成ポリビニルアルコールである・・・炭酸カルシウム水分散液の製造方法。
3.水溶性アニオン化変性ポリビニルアルコール(II)が水溶性カルボキシル化変性ポリビニルアルコールである・・・炭酸カルシウム水分散液の製造方法」(特許請求の範囲)
(イ)「例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。また、例中の対炭酸カルシウム%は炭酸カルシウム固形分に対する分散剤(水溶性重合体や水溶性アニオン化変性ポリビニルアルコール)の固形分重量比率を示す。」(第6頁左上欄第10〜同頁同欄第14行)
(ウ)「実施例1
・・・炭酸カルシウム(一次粒子径0.15μ)のフィルタ-プレス脱水ケーキ・・・分散剤としての数平均分子量が6,000であるポリアクリル酸ナトリウム40%水溶液3.26部(対炭酸カルシウム0.5%)、重合度が250でケン化度が88モル%で且つp-スチレンスルホン酸の共重合によるスルホン化度が3モル%のアニオン化変性ポリビニルアルコール20%水溶液2.61部(対炭酸カルシウム0.2%)・・・を加え、・・・混練後、・・・分散し、固形分濃度64%の水分散液(1)を得た。得られた水分散液(1)の粘度・・・経日安定性の試験結果を第1表に示した。」(第6頁左上欄第15行〜同頁右上欄第15行)
(エ)「第1表
・・・ 水分散液の粘度(CPS)
・・・ 製造直後 室温1週間放置後
実施例1 ・・・ 85 82
」(第1表)

(3)対比
引用例1の適示事項(イ)の「例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。また、例中の対炭酸カルシウム%は炭酸カルシウム固形分に対する分散剤(水溶性重合体や水溶性アニオン化変性ポリビニルアルコール)の固形分重量比率を示す」から、適示事項(ウ)の「ポリアクリル酸ナトリウム」水溶液の添加量は、「ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を炭酸カルシウム固形分に対して0.5重量%」であり、また適示事項(ウ)の「得られた水分散液(1)の粘度を・・・第1表に示した」及び適示事項(エ)の「実施例1の製造直後の水分散液の粘度は、85cps」から、「実施例1から得られた炭酸カルシウム水分散液の粘度が85cpsであること」が記載されていると云える。
これらを本願補正発明の記載振りに則して表すと、引用例1には、「炭酸カルシウムのフィルタ-プレス脱水ケーキに分散剤として、数平均分子量が6,000であるポリアクリル酸ナトリウム水溶液を炭酸カルシウム固形分に対して0.5重量%含有し、さらに重合度が250でケン化度が88モル%で且つp-スチレンスルホン酸の共重合によるスルホン化度が3モル%のアニオン化変性ポリビニルアルコール水溶液を加え、混練後、分散して固形分濃度64重量%、粘度85cpsである炭酸カルシウムの水分散液」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されている。
そこで、本願補正発明と引用1発明とを比較すると、引用1発明の「炭酸カルシウム」、「分散剤」、「混練後、分散」は、それぞれ本願補正発明の「炭酸カルシウム」、「分散剤」、「混合・分散」に相当する。また、引用1発明の「フィルタ-プレス」は、本願明細書中の「機械的脱水手段として・・・フィルタ-プレス・・・を用いた構成を提供する。」(【0020】欄)から、本願補正発明の「機械的脱水手段」に相当する。したがって、引用1発明の「炭酸カルシウムのフィルタープレス脱水ケーキ」は、本願補正発明の「炭酸カルシウムスラリ-を機械的脱水手段により脱水して脱水ケーキ」に相当する。そして引用1発明の「固形分濃度64%、粘度85cpsである炭酸カルシウムの水分散液」は、「水分散液」と記載されているが、引用1発明の「固形分濃度64%、粘度85cps」は、本願補正発明の「固形分濃度50重量%以上で、かつ、粘度200センチポイズ以下」を満たしているため、引用1発明の「炭酸カルシウムの水分散液」は、本願補正発明の「高濃度炭酸カルシウムスラリ-」に相当する。
また、引用1発明の「分散剤」および「アニオン化変性ポリビニルアルコール」の両方とも、「水溶液」として添加しているが、本願補正発明は、これらの添加形態について何ら限定していないから引用1発明の添加形態も含まれ、また引用1発明の添加の形態を用いたとしても、できた物に何ら変わりはないから、引用1発明の添加形態は、本願補正発明のものと何ら違いはないものと認められる。
さらに、引用1発明の「アニオン化変性ポリビニルアルコール」は、「重合度が250でケン化度が88モル%で且つp-スチレンスルホン酸の共重合によるスルホン化度が3モル%」であるから、ケン化度が高く、スルホン化度が少ないため、この合成高分子ポリマ-は「低アニオン」であると云え、本願補正発明の「合成低アニオン高分子ポリマ-」に相当する。
したがって、両者は「炭酸カルシウムスラリ-を機械的脱水手段により脱水して脱水ケーキとし、該脱水ケーキに分散剤を添加し、副添加剤として合成低アニオン高分子ポリマ-を添加し、混合・分散させることにより得た固形分濃度50重量%以上でかつ、粘度200センチポイズ以下である高濃度炭酸カルシウムスラリー」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点a:本願補正発明は、「分散剤として、重合型高分子系、重縮合型、共重合型高分子ポリマ-でなるアニオン界面活性剤」であるのに対して、引用1発明の「分散剤」として「数平均分子量が6,000であるポリアクリル酸ナトリウム」の点で相違する。
相違点b:本願補正発明は、「アニオン界面活性剤を0.001重量%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドカチオン当電当量値で2〜10ml/g・DrySolidCaCO3相当量添加」しているのに対し、引用1発明では、「ポリアクリル酸ナトリウム」を「炭酸カルシウム固形分に対して0.5重量%」添加する点で相違する。
相違点c:本願補正発明は、「合成低アニオン高分子ポリマ-」が、「アニオン界面活性剤の70%値以下のアニオン強度を有する」のに対して、引用1発明では、「合成低アニオン高分子ポリマー」における「アニオン強度」が不明な点で相違する。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
(a)相違点aについて
引用1発明の「数平均分子量が6,000であるポリアクリル酸ナトリウム」に関し、本願明細書中で「アニオン界面活性剤」として「ポリアクリル酸ナトリウム高分子陰イオン界面活性剤(重量平均分子数6×103)」(実施例1参照)を用いており、さらに「ポリアクリル酸ナトリウム」は、「重合型高分子系」に属するから、引用1発明の「数平均分子量が6,000であるポリアクリル酸ナトリウム」は、本願補正発明の「重合型高分子系でなるアニオン界面活性剤」であり、両者は相違しない。
(b)相違点bについて
本願補正発明では、「アニオン界面活性剤」の添加量を「アニオン界面活性剤を0.001重量%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドカチオン当電当量値で2〜10ml/g・DrySolidCaCO3相当量添加」によって限定しているが、本願明細書中で「ポリアクリル酸ナトリウム高分子陰イオン界面活性剤(重量平均分子数6×103)を炭酸カルシウム固形分当たり0.21重量%添加」(実施例1参照)と記載から、「アニオン界面活性剤」の添加量を「炭酸カルシウム固形分当たり」の量でも示しており、一方引用1発明も、「ポリアクリル酸ナトリウム」を「炭酸カルシウム固形分に対して0.5重量%」から「ポリアクリル酸ナトリウム」の添加量を「炭酸カルシウム固形分当たり」の量で示している。そこで、「炭酸カルシウム固形分に対するポリアクリル酸ナトリウムの添加量」について引用1発明と本願補正発明を比較すると、引用1発明の「ポリアクリル酸ナトリウム」を「炭酸カルシウム固形分に対して0.5重量%」で、これは本願補正発明の数値範囲と異なるが、この点についてさらに引用例1における適示事項(ア)の「炭酸カルシウム100重量部に対して、水溶性重合体(I)0.1〜2重量」から、これは本願補正発明の範囲内であることから、両者は相違しない。
(c)相違点cについて
引用1発明には、「合成低アニオン高分子ポリマー」の「アニオン強度」が不明であるが、引用1発明は、「ケン化度88モル%」で「スルホン化度3モル%」である「アニオン化変性ポリビニルアルコール」である(実施例1参照)ことから、アニオン強度は低く、アニオン界面活性剤の70%以下である蓋然性が高いこと、および引用1発明も、物としてみれば、本願補正発明の「固形分濃度50重量%以上で、且つ粘度200センチポイズ以下である高濃度炭酸カルシウムスラリ-」であり、かつ引用1発明は、本願補正発明と相違しない「分散剤」を用い、かつその「添加量」も相違せず、さらに「副添加剤」として「合成低アニオン高分子ポリマ-」を添加し、「混合・分散」して「高濃度炭酸カルシウムスラリ-」を製造しているから、引用1発明に記載の「アニオン化変性ポリビニルアルコール」の「アニオン強度」も、当然本願補正発明に記載の範囲内であると認められる。
したがって、本願補正発明は、引用1発明に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月7日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年3月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「炭酸カルシウムスラリーを機械的脱水手段により脱水して脱水ケーキとし、該脱水ケーキに分散剤として、重合型高分子系,重縮合型,共重合型高分子ポリマーでなるアニオン界面活性剤を0.001重量%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドカチオン当電当量値で2〜10ml/g・DrySolidCaCO3相当量添加し、副添加剤として水溶性天然高分子,天然高分子化合物誘導体水溶性アニオン高分子化合物,アニオン界面活性剤の70%値以下のアニオン強度を有する合成低アニオン高分子ポリマー,合成水溶性ポリマーから選択された一又は複数を添加して、混合・分散させることにより得た固形分濃度50重量%以上で、かつ、粘度200センチポイズ以下であることを特徴とする高濃度炭酸カルシウムスラリー。」

(1)引用例および記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「副添加剤」の選択肢として、さらに「合成水溶性ポリマ-」が追加されているものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全てを含み、さらに選択肢を少なくして限定的減縮した本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明である。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-26 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-06-01 
出願番号 特願2000-184479(P2000-184479)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C01F)
P 1 8・ 575- Z (C01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 雅博  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 増田 亮子
廣野 知子
発明の名称 高濃度炭酸カルシウムスラリー及びその製造方法  
代理人 田中 幹人  

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