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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1140847
審判番号 不服2004-14804  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-15 
確定日 2006-08-03 
事件の表示 平成 9年特許願第 20382号「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月21日出願公開、特開平10-223594〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本件発明
本願は、平成9年2月3日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、同16年3月30日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「所定の処理手順に従って、複数の基板処理を行う基板処理装置において、
(a) 予め前記処理手順を記憶しておく第1記憶部と、
(b) 前記第1記憶部から前記処理手順が複写される第2記憶部と
(c) 前記第2記憶部に複写された処理手順に従って基板処理を行う処理部と、
(d) 前記第1記憶部に記憶されている前記処理手順を編集する処理手順編集手段と、
を備え、
前記処理部が第1の処理手順に従って基板処理を行う際に、前記第2記憶部に前記第1の処理手順が複写された後は、前記第1記憶部に記憶されている前記第1の処理手順の編集を許容するとともに、前記処理部が第1の処理手順とは異なる第2の処理手順に従って基板処理を行う際には任意の時点で前記第1記憶部に記憶されている前記第1の処理手順の編集を許容することを特徴とする基板処理装置。」(以下、「本件発明」という。)

2.引用刊行物記載の発明
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された次の刊行物には以下の記載がなされていると認められる。

刊行物: 特開昭62-299025号公報

a.(第3ページ左下欄第12〜19行)
「ここで、洗浄ユニット14a、塗布ユニット14b、露光ユニット14cおよび現像ユニット14dからなるウエハ処理装置12は第2図に示すように構成される。すなわち、洗浄ユニット14aはウエハを供給する導入部26と、前記ウエハの表面を洗浄する洗浄部28と、ウエハの表面を加熱乾燥する熱処理部30と、ウエハを次段の塗布ユニット14bに送出する送出部32とから構成される。」
b.(第4ページ右下欄第15〜19行)
「なお、前記ページメモリ108にはこのフロッピィディスクドライバ22aを介してフロッピィディスクより洗浄ユニット14aの制御プログラム、データおよびデバッグルーチン等がロードされる。」
c.(第7ページ左下欄第10〜第8ページ左上欄第14行)
「ここで、以上のように構成されたウエハ処理装置12はユーザーの要請等に応じてその処理工程を変更あるいは修正する必要の生じる場合がある。
このような場合、ユーザーあるいはメーカーは各ユニットコントローラ16a乃至16dまたはマスタコントローラ18に接続される入出力機器25a乃至25dまたは入出力機器20を介して前記制御プログラムのデバッグを行うことが可能である。そこで、洗浄ユニットコントローラ16aに接続された入出力機器25aからのデバッグ方法につき説明する。
なお、洗浄ユニットコントローラ16aのページメモリ108を構成する仮想ページ108a乃至108nの各ページには、例えば、第5図に示すように、各プログラムが格納されている。すなわち、第0ページにはリアルタイムマルチタスクモニタを含むシステムプログラムが格納され、第1ページにはOSが格納され、第2ページ乃至第5ページには洗浄ユニット14aを構成する導入部26、洗浄部28、熱処理部30及び送出部32の各制御プログラムが格納されている。また、第6ページ乃至第nページには、その他の制御プログラムが必要に応じて格納されている。
そこで、先ず、ウエハWの処理中において、入出力機器25aよりコマンドを入力し、フロッピィディスクよりデバッグルーチンを第1ページのOS領域にロードする。次いで、デバッグする所定の制御プログラムを前記入出力用機器25aからのコマンドによってフロッピィディスクから第1ページのOS領域にロードする。そして、入出力機器25aからのコマンドを入力することにより第1ページのデバッグルーチンを実行させ、デバッグ対象の制御プログラムのデバッグを行う。
ここで、例えば、デバッグする制御プログラムが洗浄部28のプログラムである場合、この制御プログラムは仮想ページメモリ108a乃至108nの中、第1ページと第3ページの両方に存在している。そして、第1ページのデバッグルーチンと第3ページの制御プログラムとは、第0ページに格納されたリアルタイムマルチタスクモニタにより同時並行処理されている。したがって、ウエハ処理装置12の処理工程を中断することなく所望の制御プログラムのデバッグが行われる。」

そこで、摘記事項の内容を本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物には、
「所定の制御プログラムに従って、導入、洗浄、熱処理及び送出のウエハ処理を行う洗浄ユニットにおいて、
(a) 予め前記制御プログラムを記憶しておくフロッピィディスクと、
(b) OSならびに導入部、洗浄部、熱処理部及び送出部の各部の制御プログラムをそれぞれ格納するページを有し、前記フロッピィディスクから前記制御プログラムがロードされるページメモリと
(c) 前記ページメモリに格納された制御プログラムに従ってウエハ処理を行う導入部、洗浄部、熱処理部及び送出部と、
(d) 前記制御プログラムをデバッグするための入出力機器と、
を備え、
前記導入部、洗浄部、熱処理部及び送出部が制御プログラムに従ってウエハ処理を行うのと同時並行して、制御プログラムのデバッグを許容するようにした洗浄ユニット。」(以下、「刊行物記載の発明」という。)
が記載されていると認められる。

3.対比
本件発明と刊行物記載の発明とを対比すると、後者の「ウエハ」及び「導入部、洗浄部、熱処理部及び送出部」が前者の「基板」及び「処理部」に相当することは明白であり、後者の「洗浄ユニット」は基板に複数の処理を行うものである点で、前者の「基板処理装置」に相当するものというべきである。また、後者の「制御プログラム」が基板の処理手順を表すものであることは当業者間の常識であり、後者において記憶手段であるフロッピィディスクから記憶手段であるページメモリに制御プログラムを「ロード」することは、処理手順を「複写」することにほかならないから、後者の「フロッピィディスク」及び「ページメモリ」は前者の「第1記憶部」及び「第2記憶部」にそれぞれ相当するということができる。さらに、後者において「制御プログラムをデバッグする」ことは、処理工程を変更あるいは修正するものである限りにおいて、前者において「処理手順を編集する」ことに相当するから、後者でデバッグするための手段である「入出力機器」は前者の「処理手順編集手段」に相当する。
そうすると、本件発明と刊行物記載の発明とは、次の各点において一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「所定の処理手順に従って、複数の基板処理を行う基板処理装置において、
(a) 予め前記処理手順を記憶しておく第1記憶部と、
(b) 前記第1記憶部から前記処理手順が複写される第2記憶部と
(c) 前記第2記憶部に複写された処理手順に従って基板処理を行う処理部と、
(d) 前記処理手順を編集する処理手順編集手段と、
を備え、
前記処理部が処理手順に従って基板処理を行う際に、処理手順の編集を許容する基板処理装置。」である点。
<相違点1>
前者では、処理部が第1の処理手順に従って基板処理を行う際に、第2記憶部に前記第1の処理手順が複写された後は、第1記憶部に記憶されている前記第1の処理手順の編集を許容するのに対し、後者では、第2記憶部の導入部、洗浄部、熱処理部及び送出部のそれぞれに対応する処理手順を格納するページに複写された処理手順により基板処理を行うのと同時並行して、第1記憶部及び第2記憶部のOSを格納するページに複写された処理手順の編集を許容する点。
<相違点2>
前者では、処理部が第1の処理手順とは異なる第2の処理手順に従って基板処理を行う際には任意の時点で第1記憶部に記憶されている前記第1の処理手順の編集を許容するのに対し、後者ではこのような特定がない点。

4.当審の判断
以下に、上記相違点について検討する。
4.1<相違点1>につき
刊行物記載の発明において、第1記憶部から第2記憶部のOSを格納するページに処理手順を複写して編集を行う際、同じ処理手順が第2記憶部のOSを格納するページと各部の処理手順を格納するページとの2カ所に同時に存在し、しかも、編集は基板処理と同時並行して行われる(上記2.摘記事項cの最終段落参照。)のであるから、OSを格納するページで処理手順の編集を開始する時点では、すでに各部の処理手順を格納するページには処理手順が複写されていなければならないことは自明である。したがって、刊行物記載の発明においては、第2記憶部の導入部、洗浄部、熱処理部及び送出部のそれぞれに対応する処理手順を格納するページに処理手順が複写された後に、第2記憶手段のOSを格納するページに複写された処理手順に対する編集が許容されるということができる。
一方、記憶手段に記憶された処理手順等の内容を編集する場合、記憶手段に直接書き込むか、記憶手段の内容を一旦読み出し、記憶手段の外で読み出された内容に対して編集を行ったうえで、編集された内容を記憶手段に再度書き込むかは、適宜選択することができるものである。
してみると、刊行物記載の発明において第1記憶部から第2記憶部のOSを格納するページに複写された処理手順に対して編集を行うことは、本件発明において第1記憶部に記憶されている処理手順の編集を行うことと違いがない。
以上のとおりであるから、刊行物記載の発明も、処理部が処理手順に従って基板処理を行う際に、第2記憶部に処理手順が複写された後に、第1記憶部に記憶されている処理手順の編集を許容するものと認められ、処理手順の編集のための記憶部をいかなる構成のものとするかは当業者が適宜設計し得るものであるから、相違点1に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものというべきである。

4.2<相違点2>につき
処理対象となっていない処理手順に対しては、いつ編集を行っても基板の処理に障害を生じないことは当業者にとって自明であるから、刊行物記載の発明においても、処理部が第1の処理手順とは異なる第2の処理手順に従って基板処理を行う際に、任意の時点で第2記憶部のOSを格納するページに複写された第1の処理手順の編集が可能であることは、いうまでもないことである。
第2の記憶部のOSを格納するページに複写された第1の処理手順を編集するか、第1の記憶部に記憶された第1の処理手段を直接編集するかは、適宜選択される事項に過ぎないから、相違点2に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものというべきである。

4.3 まとめ
本件発明には、刊行物記載の発明に基づいて普通に予測される範囲を超える、格別の作用効果を認めることもできない。
よって、本件発明は、刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-01 
結審通知日 2006-06-06 
審決日 2006-06-19 
出願番号 特願平9-20382
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 佐々木 正章
豊原 邦雄
発明の名称 基板処理装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉田 茂明  
代理人 吉竹 英俊  

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