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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B62M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62M
管理番号 1140869
審判番号 不服2003-14098  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-24 
確定日 2006-08-04 
事件の表示 平成 9年特許願第 44374号「自動二輪車のエンジン懸架装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月 8日出願公開、特開平10-236376〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成9年2月27日の出願であって、平成15年6月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月24日付けで審判請求がなされるとともに、同年8月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月25日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年8月25日付け手続補正を却下する。

[理由]

(1)本件手続補正の内容

平成15年8月25日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正するとともに、発明の詳細な説明の段落【0007】、【0019】、【0028】の記載を請求項1の記載に対応して補正しようとするものである。

「【請求項1】 車体フレームのヘッドパイプから下方へ左右のダウンチューブを延ばし、これらのダウンチューブにそれぞれ前部受けパイプを左右方向に貫通させるとともに溶接し、これらの前部受けパイプの内側端面にハンガープレートをそれぞれ重ねて前部受けパイプを貫通する各ボルトで連結し、前記左右のハンガープレートを後方へ延ばして、その後端部の外側端面から車幅方向外方へ十分に剛性を有する左右のカラーを延ばし、これらのカラーの各外側端面に、上下方向に延びるシリンダを有するエンジンの左右の前部ハンガー部の内側端面をそれぞれ重ね、これら前部ハンガー部と前記ハンガープレートの後端部とを前記カラーを貫通する各ボルトで連結することで、ハンガープレートやカラーがエンジンの外側面より内方に収まるように構成し、前記カラーの長さをカラー外径の2倍から3倍の大きさに設定するとともに、前記前部受けパイプの長さを前記カラーの長さと略同等の大きさに設定したことを特徴とする自動二輪車のエンジン懸架装置。」

(2)新規事項についての判断

審判請求人は、審判請求の理由において、本件補正によって付加された「前部受けパイプの長さを前記カラーの長さと略同等の大きさに設定した」点は、「当初図面の図面のうち図6に示す・・・内容に基づく」ものと述べている。しかしながら、この点は、出願当初の明細書には何ら記載のない事項であり、図6における上記「前部受けパイプ」の長さと上記「カラー」の長さは、略同等の大きさともとれるし、異なる長さともとれるように描かれており、図6の記載だけから長さが「略同等」の大きさで記載されているとは認められず、かつ、「略同等」であることが当初明細書及び図面の記載から自明な事項ともいえない。
したがって、本件補正によって付加された「前部受けパイプの長さを前記カラーの長さと略同等の大きさに設定した」点は、本願出願当初の明細書又は図面には記載されておらず、かつ、自明のことともいえないから、本件補正は当初明細書等に記載した範囲内においてしたものであるとは認められない。

(3)むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明

本件補正は上記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年3月13日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】 車体フレームのヘッドパイプから下方へダウンチューブを延ばし、このダウンチューブから後方へ左右一対のハンガープレートを延ばし、これらハンガープレートの後端部の外側端面から車幅方向外方へ所定長さの十分に剛性を有するカラーを延ばし、これらカラーの外側端面に上下方向に延びるシリンダを有するエンジンの前部ハンガー部の内側端面を重ね、これら前部ハンガー部と前記ハンガープレートの後端部とをカラーを貫通するボルトで連結することで、ハンガープレートやカラーがエンジンの外側面より内方に収まるように構成したことを特徴とする自動二輪車のエンジン懸架装置。」

(2)引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である「特開平2-38198号公報」(以下、「引用例」という。)には、「エンジン懸架用スペーサ」に関し、第1〜6図とともに次の事項が記載されている。

(ア)「上記エンジンの懸架方式には、第5図に示すように、エンジンAと車体フレームBとを、金属性のスペーサCを介してボルト・ナットDにより結合する固定懸架方式がある。なお符号Eは、車体フレームBに固定されたエンジンマウントプレートである。」(第1頁右下欄第4〜9行)

(イ)「ところで、第5図に示した固定懸架方式では、エンジンAと車体フレームBとが一体的に結合されるため、エンジンA自体が車体フレームの強度メンバとなり車体フレームの剛性を高められる利点がある反面、エンジンの振動に対する制振効果は期待できない。」(第1頁右下欄第17行〜第2頁左上欄第2行)

そして、当該技術分野の技術常識を考慮すると、エンジンマウントプレートEは車体フレームBに対して左右一対設けられていることは明らかであり、該エンジンマウントプレートEの端部の内側端面には車幅方向内方へ延びる金属性スペーサCが取り付けられ、この金属性スペーサCの内側端面にエンジンAのブラケットの外側端面が重ねられてボルト・ナットDにより結合されていることが上記引用例から把握される。

そうすると、上記記載事項(ア)〜(イ)及び図1〜6の記載を総合すると、引用例には、
「車体フレームBのヘッドパイプから下方へ車体フレームBを延ばし、この車体フレームBから後方へ左右一対のエンジンマウントプレートEを延ばし、これらエンジンマウントプレートEの端部の内側端面から車幅方向内方へ所定長さの十分に剛性を有する金属性スペーサCを延ばし、これら金属性スペーサCの内側端面に所定の方向に延びるシリンダを有するエンジンAのブラケットの外側端面を重ね、これらブラケットと前記エンジンマウントプレートEの端部とを金属性スペーサCを貫通するボルト・ナットDで連結することで、エンジンマウントプレートEや金属性スペーサCがエンジンAの近傍に収まるように構成した自動二輪車のエンジンの懸架方式。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比

引用発明の「車体フレーム」は、本願発明の「車体フレーム」と「ダウンチューブ」の双方を含む部材である。そして、引用発明の「エンジンマウントプレート」、「金属性スペーサ」、「ブラケット」、「ボルト・ナット」、「エンジンの懸架方式」は、それぞれ、実質的に本願発明の「ハンガープレート」、「カラー」、「前部ハンガー部」、「ボルト」、「エンジン懸架装置」に相当するものである。

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「車体フレームのヘッドパイプから下方へダウンチューブを延ばし、このダウンチューブから後方へ左右一対のハンガープレートを延ばし、これらハンガープレートの端部の端面から車幅方向へ所定長さの十分に剛性を有するカラーを延ばし、これらカラーの端面に所定の方向に延びるシリンダを有するエンジンの前部ハンガー部の端面を重ね、これら前部ハンガー部と前記ハンガープレートの端部とをカラーを貫通するボルトで連結することで、ハンガープレートやカラーがエンジンの近傍に収まるように構成した自動二輪車のエンジン懸架装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、ハンガープレートの「後」端部の「外側」端面から車幅方向「外方」へカラーを延ばし、これらカラーの「外側」端面にエンジンの前部ハンガー部の「内側」端面を重ねて連結することで、ハンガープレートやカラーがエンジンの外側面より内方に収まるようにしたのに対し、引用発明は、ハンガープレートにカラーを取り付けた部分が「後」端部かどうか明らかではなく、かつ、カラーの取付方向もハンガープレートの「内側」端面から車幅方向「内方」へ延ばすとともに、これらカラーの「内側」端面にエンジンの前部ハンガー部の「外側」端面を重ねて連結したものであり、ハンガープレートやカラーがエンジンの外側面より内方に収まるかどうか明確でない点。

[相違点2]
本願発明は、「上下」方向に延びるシリンダを有するエンジンであるのに対し、引用発明は当該シリンダの方向が明示されていない点。

(4)判断

上記相違点1について検討する。
上記相違点1は、エンジンの前部ハンガー部を、ハンガープレートを介してダウンチューブに取り付ける位置関係として、前部ハンガー部の内側にハンガープレートを配置するか外側に配置するかに起因する構造上の差異であるが、本願発明のようにエンジンの前部ハンガー部の内側にハンガープレートを配置してダウンチューブに連結することは周知事項(特開昭55-83675号公報参照)である。そして、上記前部ハンガー部の内側にハンガープレートを配置してダウンチューブに連結することが周知事項であるとすれば、この点の相違はエンジンの前部ハンガー部の内側を支持するか外側を支持するかという設計的事項に帰結し、上記周知事項に記載された技術思想を上記引用発明の構成に適用して、本願発明のようにエンジンの前部ハンガー部の内側にハンガープレートを配置してダウンチューブに連結することに格別の困難性があるとは認められない。さらに、その構成において、ハンガープレートの後端部に上記カラーを取り付けることや、ハンガープレート及びカラーをエンジンの外側面より内方に収めるように配置すること、すなわちエンジンの支持部材とエンジン相互の幅方向の大小関係を決定することに構造上、又は設計上、格別の困難性があるものとは認められず、当業者が容易に想到できる程度のことと認められる。

次に、上記相違点2について検討する。
引用発明のエンジンはシリンダの方向が「上下」方向かどうか明示されていないが、エンジンの方向をどのように配置するかはエンジンの形式、排気量、車体の構造などを考慮して決定できる設計的事項であり、引用発明においてもシリンダの方向を「上下」方向に配置することを排除する理由は見あたらない。そうすると、引用発明において、本願発明のようにエンジンのシリンダを「上下」方向に配置することは、当業者が設計上の配慮から容易に想到できることである。

そして、上記相違点1,2で指摘した構成を併せ備える本願発明の奏する作用効果について検討しても、引用発明及び上記周知事項から当然予測される程度のものであって格別顕著なものとはいえない。

(5)むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-10 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-30 
出願番号 特願平9-44374
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62M)
P 1 8・ 561- Z (B62M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 成彦小山 卓志  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 川上 益喜
平瀬 知明
発明の名称 自動二輪車のエンジン懸架装置  
代理人 下田 容一郎  

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