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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62K
管理番号 1140876
審判番号 不服2003-21210  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-31 
確定日 2006-08-04 
事件の表示 平成 7年特許願第276719号「自動二輪車の車体フレーム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月 8日出願公開、特開平 9- 95279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成7年9月29日の出願であって、平成14年12月6日付で手続補正がなされ、さらに平成15年7月16日付で手続補正がなされたが、平成15年7月16日付の手続補正は平成15年9月29日付の補正の却下の決定により却下され、平成14年12月6日付の手続補正書により補正された明細書に基づき平成15年9月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日付けで審判請求がなされるとともに、同年11月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年11月21日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年11月21日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明

平成15年11月21日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】 前輪フォークを枢支するヘッドパイプからメインパイプをエンジンの上方に延出し、このエンジンの後方で後輪スイングアームを枢支するピボット部まで上記メインパイプを屈曲下降した自動二輪車の車体フレームにおいて、
前記メインパイプを車幅方向に幅広のパイプ部材によって形成し、このパイプ部材を車幅中心に沿って配設し、
前記ピボット部は、前記メインパイプの下部の拡幅部に設けたカラーと、該カラーを貫通するボルトからなり、該ボルトにリヤスイングアームを枢支している、
ことを特徴とする自動二輪車の車体フレーム。」

本件補正は、平成14年12月6日付の手続補正書により補正された請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「メインパイプの下部に設けたカラー」についての限定を付加するものであって、本件補正に係る事項は、新規事項を含むものとは認められず、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年法律第47号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である「特開平7-112687号公報」(以下、「引用例」という。)には、「自動二輪車等におけるフレーム構造」に関して、図1〜7とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0009】先ず図1において、この自動二輪車の車体フレーム11には、エンジンEおよび燃料タンクTが搭載され、該車体フレーム11の前端部に前輪懸架装置12を介して前輪WFが懸架され、車体フレーム11の後方下部に揺動可能に支承されるスイングアーム13の後端に後輪WRが軸支され、スイングアーム13および車体フレーム11の後方上部との間に緩衝装置14が介設される。
【0010】図2、図3、図4および図5を併せて参照して、車体フレーム11は、前輪懸架装置12を支持するヘッドパイプ15と、該ヘッドパイプ12から後方側に延びる単一のメインパイプ16と、メインパイプ16の下方でヘッドパイプ15に連設される左、右一対のダウンチューブ171,172と、メインパイプ16の後方上部から後方側に延びる左、右一対のシートレール18,18とを備えるものである。而してヘッドパイプ15、メインパイプ16および両ダウンチューブ171,172の結合部はガセット19で補強される。」(第2頁段落【0009】〜第3頁段落【0010】)

(イ)「【0012】一方のダウンチューブ171は、第1筒部17aおよび第2筒部17cが連結部材17bを介して連結、結合されて略U字状に構成されるものであり、後下がりに傾斜した第1筒部17aの前端がヘッドパイプ15に結合され、後上がりに傾斜した第2筒部17cの前端が連結部材17bを介して第1筒部17aの後端に結合され、第2筒部17cの後端は両シートレール18,18の一方に結合される。また連結部材17bは、図示しないスタンドを支持するためにも用いられる。
【0013】他方のダウンチューブ172は、前記一方のダウンチューブ171と基本的に同一の形状を有して一体形成されるものであり、ダウンチューブ172の前端はヘッドパイプ15に結合され、両シートレール18,18の他方にダウンチューブ172の後端が結合される。
【0014】このような車体フレーム11の構成要素であるメインパイプ16において,その降下部16cには、その上下に間隔をあけた位置で左、右に延びる一対のクロスパイプ23,24の中間部が溶接、結合され、前記降下部16cを左、右両側から挟んで相互に対向する一対の平板状である支持板251,252が前記各クロスパイプ23,24の両端に溶接、結合される。而して両クロスパイプ23,24は、メインパイプ16の降下部を貫通するものであり、その貫通状態で両クロスパイプ23,24の中間部が降下部16cに結合される。また支持板251,252はダウンチューブ171,172の後方下部にそれぞれ溶接、結合される。
【0015】両クロスパイプ23,24間でメインパイプ16の降下部16cを貫通する支持筒26が両クロスパイプ23,24と平行に配置され、該支持筒26は前記降下部16cに溶接結合される。しかも該支持筒26の両端開口部と同軸である挿通孔27,27が支持板251,252に穿設されており、支持筒26の内径は挿通孔27,27よりもわずかに大きく設定されている。」(第3頁段落【0012】〜段落【0015】)

(ウ)「【0017】図6において、スイングアーム13は、左、右一対のアーム13a,13bが連結板13cで連結されて成るものであり、両アーム13a,13aの前端が、前記支持筒26内に挿通されるとともに両支持板251,252間にわたって設けられる枢軸としてのボルト28によって揺動自在に支承される。すなわち両アーム13a,13bの前端には、円筒部29a,29bが同軸に溶接、結合されており、支持筒26と同径にして該支持筒26の一端および支持板251間に配置される第1スリーブ30と円筒部29aとの間にニードルベアリグ31が介装され、支持筒26と同径にして支持筒26の他端に当接される第2スリーブ32および支持筒26と同径にして支持板252の内面に当接される第3スリーブ33間にインナーレースを挟まれるボールベアリング34が円筒部29bおよびボルト28間に介装される。而して、ボルト28は、支持板251側から挿通孔27、第1スリーブ31、支持筒26、第2スリーブ32、ボールベアリング34のインナーレース、第3スリーブ33および支持板252の挿通孔27に挿通されるものであり、支持板252から突出したボルト28の端部に螺合するナット35が締付けられることによりボルト28が両支持板251,252間にわたって固定されることになる。」(第3頁段落【0017】)

(エ)「【0019】次にこの実施例の作用について説明すると、メインパイプ16の降下部16cには、その上下に間隔をあけた位置で左、右に延びる一対のクロスパイプ23,24の中間部が溶接、結合され、左、右一対の支持板251,252が前記各クロスパイプ23,24の両端に溶接、結合され、スイングアーム13は、両支持板251,252間にわたって架設されるボルト28で揺動自在に支承されるものである。而して両支持板251,252間にボルト28を組付けてスイングアーム13の前端を該ボルト28に揺動可能に連結するにあたっては、単一のメインパイプ16に上下一対のクロスパイプ23,24を介して一対の支持板251,252が結合されていればよく、ダウンチューブ171,172はスイングアーム13の組付け完了後に支持板251,252に結合されればよい。したがって、車体フレーム11のうちスイングアーム13の組付け時に取扱う部分は、メインパイプ16、クロスパイプ23,24、支持筒26および支持板251,252から成る構成であればよく、スイングアーム13組付けのために扱う部分を比較的小さくし、組付け時の作業を容易とすることができる。」(第3〜4頁段落【0019】

(オ)「【0021】さらに両シリンダ板251,252は平板状であることから、両支持板251,252間にスイングアーム13の前端を挟んで締付けたときに、第1および第3スリーブ30,33の外端に密着してなじむように支持板251,252を撓ませることができ、剛性上、またはナット35の緩み防止上有利となるだけでなく、板厚の調整のみで剛性バランスの調整が可能となる。」(第4頁段落【0021】)

上記記載事項(ア)〜(オ)及び図1〜7の記載を総合し、上記スイングアームを揺動自在に支承する関連構成を「揺動自在部」と称するとすると、引用例には、
「前輪懸架装置を枢支するヘッドパイプからメインパイプをエンジンの上方に延出し、このエンジンの後方でスイングアームを支承する揺動自在部まで上記メインパイプを屈曲下降した自動二輪車等におけるフレーム構造において、前記メインパイプをパイプ部材によって形成し、このパイプ部材を車幅中心に沿って配設し、前記揺動自在部は、前記メインパイプの下部に設けた支持筒と、該支持筒を貫通するボルトからなり、該ボルトにスイングアームを支承している自動二輪車等におけるフレーム構造。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「前輪懸架装置」、「スイングアーム」、「支承」、「揺動自在部」、「支持筒」、「自動二輪車等におけるフレーム構造」は、それぞれ、本願補正発明の「前輪フォーク」、「後輪スイングアーム」又は「リヤスイングアーム」、「枢支」、「ピボット部」、「カラー」、「自動二輪車の車体フレーム」に相当するものである。

そうすると、両者は、
「前輪フォークを枢支するヘッドパイプからメインパイプをエンジンの上方に延出し、このエンジンの後方で後輪スイングアームを枢支するピボット部まで上記メインパイプを屈曲下降した自動二輪車の車体フレームにおいて、前記メインパイプをパイプ部材によって形成し、このパイプ部材を車幅中心に沿って配設し、前記ピボット部は、前記メインパイプの下部に設けたカラーと、該カラーを貫通するボルトからなり、該ボルトにリヤスイングアームを枢支している自動二輪車の車体フレーム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、上記メインパイプを「車幅方向に幅広」のパイプ部材によって形成したのに対し、引用発明では上記メインパイプのパイプ部材の形状は特に特定されておらず、図面からは円形のパイプとして捉えられる点。

[相違点2]
本願補正発明は、上記カラーをメインパイプの下部の「拡幅部」に設けたのに対し、引用発明ではメインパイプの下部に直接設けた点。

(4)当審の判断

上記相違点1について検討する。
自動二輪車の車体フレームにおいて、メインパイプのパイプ部材の形状を「車幅方向に幅広」としたものは周知(実開平5-34093号公報、特開昭56-13263号公報参照)であり、こうした車幅方向に幅広のパイプ部材を採用することを妨げる事情もみあたらないから、上記周知のものから上記相違点1の構成を推考することに困難性があるものとは認められない。

次に、上記相違点2について検討する。
引用発明のスイングアーム13を支承する揺動自在部は、メインパイプ16と左右一対の支持板25が相互に連携作用して必要な強度を確保している。このうち、上記支持板25は、クロスパイプ23,24の両端に溶接、結合されるとともにダウンチューブ17の後方下部にもそれぞれ溶接、結合されているのみならず、必要に応じて板厚の調整をして上記スイングアームの支承部分の強度を変更できることも示唆されている。本願補正発明においては、上記ピボット部を支承するメインパイプの下部に着目し、この部分を「拡幅部」として補強するものであるが、このピボット部に一定の強度が必要なことは上記引用発明にも十分に示唆されていることであるから、後輪スイングアームを枢支するピボット部の強度を確保するためにピボット部を構成するメインパイプの部分を補強することは当業者であれば容易に想到できることであり、補強する手段としてメインパイプの当該部分である「下部」を単に「拡幅部」とすることは設計的事項にすぎない。そして、本願補正発明において特に「拡幅部」としたことによって格別の効果を奏するようになったとも認められない。
したがって、上記相違点2は引用発明から当業者が容易に想到し得たことであるものと認める。

そして、上記相違点1,2で指摘した構成を併せ備える本願補正発明の奏する作用効果について検討しても、引用発明及び上記周知のものから当然予測される程度のものであって格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび

以上のとおり、本件補正は、平成15年法律第47号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明

本件補正は上記2.のとおり却下され、平成15年7月16日付の手続補正も平成15年9月29日付の補正の却下の決定により却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年12月6日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものと認められるが、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「請求項1】 前輪フォークを枢支するヘッドパイプからメインパイプをエンジンの上方に延出し、このエンジンの後方で後輪スイングアームを枢支するピボット部まで上記メインパイプを屈曲下降した自動二輪車の車体フレームにおいて、
前記メインパイプを車幅方向に幅広のパイプ部材によって形成し、このパイプ部材を車幅中心に沿って配設し、
前記ピポット部は、前記メインパイプの下部に設けたカラーと、該カラーを貫通するボルトからなり、該ボルトにリヤスイングアームを枢支している、
ことを特徴とする自動二輪車の車体フレーム。」

(2)引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用した刊行物及びその記載事項は上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断

本願発明は、本願補正発明において「ピポット部」の誤記を「ピボット部」を訂正した点を除くと、上記2.で検討した本願補正発明の「メインパイプの下部の拡幅部に設けたカラー」の構成における「の拡幅部」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用発明及び周知のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび

以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2006-05-10 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-30 
出願番号 特願平7-276719
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B62K)
P 1 8・ 121- Z (B62K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 成彦小山 卓志  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
川上 益喜
発明の名称 自動二輪車の車体フレーム  
代理人 下田 容一郎  

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