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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1140990
審判番号 不服2003-12276  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-01 
確定日 2006-08-02 
事件の表示 平成11年特許願第245775号「情報巡回獲得装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月23日出願公開、特開2001- 75859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年8月31日の出願であって、平成15年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月1日に審判請求がなされ、その後、当審より、平成18年3月3日付けで拒絶理由が通知され、同年4月28日に手続補正がなされたものであり、その請求項5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「通信部を有するコンピュータによって、ネットワークを介して巡回先である情報提供装置から情報を獲得するための情報巡回獲得方法であって、
前記情報巡回獲得方法は、
前記コンピュータが、通信部を制御して、与えられた巡回先の情報提供装置に順次接続し、当該情報提供装置に記憶されたファイルを獲得情報として獲得し、
前記コンピュータが、獲得したファイルの基準情報に対する類似度を、当該ファイルに至るまでのリンク経路を判断することなく、判定し、
前記コンピュータが、判定した類似度に基づいて、当該類似度が判定されたファイルを獲得情報として獲得情報記憶部に記憶するか否かを決定し、
前記コンピュータが、判定した類似度に基づいて、当該類似度が判定されたファイルに直接または間接的にリンクされたファイルを巡回獲得するか否かを決定し、
前記コンピュータが、前記類似度が所定値を下回る場合には、当該ファイルに直接または間接的にリンクされたファイルへのそれ以上の巡回獲得を行わないことを決定すること、
を特徴とする情報巡回獲得方法。」

2.引用発明
(1)引用発明1
これに対して、当審より通知された拒絶理由に引用された、本願の出願日前である平成11年4月1日に頒布された刊行物である、”気になるソフトウェア探検隊(第17回) パーソナル情報発掘ソフト:インターネットブーメラン”、YOMIURI PC、読売新聞社、1999年4月1日、第4巻、第5号、第44-47頁(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「「インターネットブーメラン」は、ジャストシステムが開発した「ConceptBase(コンセプトベース」という技術を利用した情報検索・活用ソフトだ。
「コンセプトベース」とは、従来の検索機能のように、 一つあるいは複数の単語を組み合わせ、これに該当する情報のみを探し出すのではなく、コンピユーターが自動的に文章の意味を理解してくれる技術だ。「コンセプトベース」を利用して、自然な話し言葉を入力すれば、それが検索の項目になる。必ずしも単語が一致していなくても関連の情報を引き出せるので、特にあいまいな言葉から必要な情報を探し出す時に威力を発揮する。
今やインターネットは貴重な情報源だが、その源はあまりにも広大なため、必要な情報を短時間で正確に探し出すには情報検索のテクニックや慣れが必要だ。このため、せっかくの情報資源を十分にいかしきれていない人も多いだろう。そこで、このテクニックや慣れの部分を補助し、さらに自分に必要な情報源を集めた「情報の宝庫」を簡単な操作で作り上げるために開発されたのがこのソフトなのだ。」
(第44頁第1段第3行-第3段第1行)

(イ)「また、「インターネットブーメラン」には自動巡回機能があるので、常に最新の情報をストックしておくことができる。使い込むほどに関連情報がたまるので、わずらわしい情報管理はすべて任せておけばいい。必要になったら、この「情報の宝庫」ヘアクセスすると必要な情報が素早く手に入る。」
(第44頁第3段第2-10行)

(ウ)「ではここで、簡単に「インターネットブーメラン」の操作の流れを紹介しよう。このソフトを利用するには、まず「情報ボックス」と呼ばれるデータベースに情報を登録する。登録元はインターネットのホームページや、すでに登録しているお気に入り、文書ファイルを保存しているフォルダー、電子メールソフトのメールフォルダーなどだ。登録操作は質問に答えるだけの簡単操作なので、特に難しいことはない。そしてこれを一度設定しておくと、更新作業は自動的に行ってくれる。
「情報ボックス」が完成したら、あとは問い合わせ条件(探し出したい情報に関連する単語や自然な話し言葉)を設定して検索を実行するだけだ。「情報ボックス」はすでに自分のパソコン内に出来上がっているので、そのつどインターネットヘ接続することなく、瞬時に結果リストを表示してくれる。」
(第44頁第4段第6行-第45頁第1段第11行)

(エ)「ソフトを起動すると使い方の説明画面が表示され、最後の画面で「対話作成」ボタンをクリックすると、自動的に「情報ボックス」作成ウィザードが起動する((1))。
メーン画面の「情報ボックス」ボタシをクリックし、表示されたメニューから「対話形式で作成」を選択しても同じウィザードを利用することができる。
ここではまず情報源の設定を行うが、Webページ、電子メール、ファイル、通信ログから指定でき、一度に複数の情報源を指定することも可能だ。また、パッケージには「おすすめリンク集」を用意してあるので、これを利用してもよいだろう。
次に、設定した情報源ごとに、具体的なWebページやお気に入りフォルダー、文書フォルダーを登録する((2))。情報源にWebページを指定する時は、ページの階層など、自動巡回の設定を行うこともできる。登録作業が完了したら、情報ボックスに名前をつけておこう((3))。
そして最後に、情報ボックスを更新、再作成する日時やタイミングを設定し((4))、設定内容を確認して「終了」ボタンをクリックすれば情報ボックスの出来上がりだ((5))。」
(注:引用中、二重括弧付きの数字「((1))」、「((2))」、「((3))」、「((4))」、及び「((5))」は、実際は、一重括弧付きの丸囲み数字である。)
(第46頁第1段第3行-第3段末行)

(オ)「3 結果を表示する
問い合わせた結果は類似度の高いものから順に画面表示し、日付や見出しで並べ変えることもできる。」
(第45頁右下にある「インターネットブーメラン操作の手順」中)

(カ)第44頁の右下には、
「インターネットブーメラン
●発売元/ジャストシステム●標準価格/8,000円(税別)●対応機種/ウィンドウズ95、98、NT4.0●必要なハードディスクの空き容量/170MB以上●…(以下略)」
という記載と共に、ソフトウェアのパッケージを撮影した写真が掲載されている。

[補足1]
上記(イ)の「自動巡回」等の記載及び(カ)からして、引用文献1に記載の「インターネットブーメラン」は、コンピュータが実行することにより、Webページ等を自動巡回して情報の獲得を行うためのソフトウェアであることがわかる。
また、当該ソフトウェアを実行するコンピュータは、少なくともWebページを自動巡回する機能を有していることから、インターネットにアクセスするための通信部を有していなければならないことは自明であり、かつ、コンピュータが、該通信部を制御して、指定された情報源(Webサイト、電子メール、ファイル等)に基づいて、当該情報源のある情報提供装置(Webサーバ、メールサーバ、ファイルサーバ等)に順次接続して、該情報提供装置に記憶された情報を取得することは自明である。

[補足2]
上記(オ)からして、問い合わせ結果を後で表示していることから、問い合わせの結果、獲得した情報を記憶する記憶手段を有していることは自明である。また、上記(エ)からして、設定された階層に基づいて、それ以上のリンクの探索及び記憶を続けるか否か判定し、階層が指定された所定値と一致する場合には、それ以上のリンクの探索と記憶を行わないことを決定していることは自明である。

[補足3]
上記(ア)、(ウ)及び(オ)からして、問い合わせ条件に対するWebページとの類似度は、そのWebページに至るまでのリンク経路を判断することなく判定されている。

よって、上記(ア)乃至(カ)からして、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

通信部を有するコンピュータによって、インターネットを介して情報源である情報提供装置から情報を獲得するための自動巡回方法であって、
前記情報巡回獲得方法は、
前記コンピュータが、通信部を制御して、指定された情報源の情報提供装置に順次接続し、当該情報提供装置に記憶された情報を獲得情報として獲得し、
前記コンピュータが、獲得した情報の問い合わせ条件に対する類似度を、当該情報に至るまでのリンク経路を判断することなく、判定し、
前記コンピュータが、判定した階層に基づいて、階層が判定された情報に直接または間接的にリンクされた情報を巡回獲得し記憶するか否かを決定し、
前記コンピュータが、前記階層が所定値と一致する場合には、当該情報に直接または間接的にリンクされた情報へのそれ以上の巡回獲得と記憶を行わないことを決定すること、
を特徴とする自動巡回方法。

(2)引用発明2
まず、当審より通知された拒絶理由に引用された、本願の出願日前である平成10年7月31日に頒布された刊行物である特開平10-198703号公報(以下「引用文献2」という。)には、次のとおりの記載がある。

(ア)「【0004】最近は、インターネットの普及にもみられるように、遠隔地に設置されたコンピュータへのアクセスが比較的容易に行われるようになってきており、データベースシステムも、通信回線などを介して世界的な規模での広がりをみせている。このため、個々の地域に構築されたローカルなデータベースを、相互に通信回線で結ぶことにより、グローバルなデータベースシステムを構築することが可能になってきている。このような分散型のデータベースシステムにおいて、質の高い検索環境を提供するために、ノード集合体を利用した検索手法が提案されている。すなわち、複数のノードからなるノード集合体を定義し、個々のノードにそれぞれ所定のデータを対応づけておく。そして、このノード集合体の中から特定の着目ノードが指定された場合、この着目ノードに対応づけられたデータを提供できるようにしておく。個々のノードにそれぞれキーワードを与えておけば、基本的には、キーワードによるデータ検索が行われることになる。ただ、各ノードを所定のリンク集合体によって関連づけておけば、ある1つのキーワード(ノード)を指定したときに、リンク集合体によって関連づけられた別なキーワード(ノード)を見つけ出すことができるので、検索の範囲は、ローカルなデータベースだけでなく、リンク集合体で関連づけられたグローバルなデータベースへと広がることになる。」

(イ)「【0028】…(中略)… たとえば、オペレータが所定のキーワードK1をノード・リンク集合体2に与えると、図1に示されているように、ノードN1が着目ノードとして指定されることになる。上述したように、オペレータは、必要があれば、「着目ノードN1に対応づけられたデータの閲覧」を行う旨の指示を与えることが可能である。ただ、ここでは、オペレータが、このノードN1に対応づけられたデータには直接的には興味はないが、キーワードK1に関連した別なデータを探しているものとしよう。この場合、「ノードN1を着目ノードとした検索処理」を行う旨の指示をノード・リンク集合体2に対して与えればよい。ノード・リンク集合体2は、このような検索指示が与えられると、定義されているリンク集合体を参照しながら、着目ノードN1に関連する別なノードを検索する処理を実行する。たとえば、着目ノードN1に対して、リンクによって直接的あるいは間接的に連結されているノードすべてを関連ノードとして検索する処理を行った場合、図1の例の場合、着目ノードN1に対して、4つのノードN2,N3,N4,N5が関連ノードとして検索されることになる。ただ、実用上は、個々のリンクの重みを考慮して、ある程度以上の関連性をもったノードのみを関連ノードとして抽出するようにするのが好ましい。たとえば、図1の例では、リンクL4の重みが小さい場合には、着目ノードN1とノードN5との間の関連性は低いものと判断し、ノードN5は関連ノードから外されることになる。また、後の§4.3で詳述するように、1つのリンクで結合されたノード間の信号伝達をホップ数H=1と定義し、所定のホップ数以下で連結されているノードのみを関連ノードとするという条件を課すのが好ましい。たとえば、ホップ数H=2以下との条件を課した場合、図1の例では各リンクの重みにかかわらず、着目ノードN1に対してホップ数H=3の位置にあるノードN5は関連ノードとしては抽出されない。」

(ウ)「【0033】このように、検索指示を与えることにより、オペレータは関連するノードを次々と渡り歩くことができ、キーワードネットワーク中を移動することができるようになる。しかも、必要があれば、現在の着目ノードに対応づけられたデータをいつでも閲覧することが可能になる。…(後略)」
(エ)「【0053】2つのキーワードの関連性の評価方法の一例としては、両キーワードを構成する文字列の一致度を定量的に評価する方法がある。たとえば、「高血圧」なるキーワードと、「血圧値」なるキーワードとは、3文字中「血圧」なる2文字分だけ一致しているので、一致度「2/3」というような定量的な評価が可能である。あるいは、何らかのシソーラス辞書を用意しておき、このシソーラス辞書において類似度を定量的に定めておけば、2つのキーワードの関連性を定量的に評価することが可能になる。たとえば、「高血圧」と「high pressure 」との類似度が100と定義されているシソーラス辞書を用いれば、「高血圧」なるキーワードと、「high pressure 」なるキーワードとの一致度を定量的に評価することができる。このような評価値が一定の基準以上であった場合に、両ノード間にダイナミックリンクを定義するようにすればよい。また、この評価値をそのままダイナミックリンクの重みづけとして利用することもできる。」
(オ)「【0057】<4.1:分散型システムにおけるクラスリンクの定義> ここ数年、複数のコンピュータをネットワークで相互接続して利用する環境が一般化してきており、各コンピュータごとに構築されたデータベースを、別のコンピュータからも利用できるような分散型データベースシステムが普及してきている。このような分散型データベースシステムでは、個々のローカルなデータベースは「クラス」という概念で取り扱われる。ここでは、便宜上、図7に示すように、3つのクラスA,B,Cからなる非常に簡単な分散型データベースシステムを例にとり、以下の説明を行うことにする。
【0058】図7では、個々のクラスごとに円周が描かれており、この円周上にノードN1〜N7が示されている。ここで、各円周は個々のクラスのまとまりを示し、各円周上のノードは、その特定のクラスに所属するノードを示している。たとえば、ノードN1,N2は、クラスBに所属するノードであり、ノードN3,N4は、クラスAに所属するノードであり、ノードN5,N6,N7は、クラスCに所属するノードである。通常、各クラスごとのデータベースは、それぞれ空間的に離れた場所に設けられ、相互に通信回線などで接続されることになる。図示の例においても、クラスA,B,Cは、それぞれ空間的に離れているものとする。なお、図示された円周は、各ノードの所属を示すためのものであって、ノード間のリンクを示すものではない。したがって、図7に示す状態では、各ノードN1〜N7間には、まだ何らリンクの定義はなされていない。また、図示の例では、合計7つのノードだけが示されているが、実際には、各クラスに多数のノードが存在する。
【0059】このような分散型データベースシステムにおいて、各ノード間にリンクの定義を行うために、本発明では、予め個々のクラス間に関連づけを定義するようにしている。ここでは、このクラス間の関連づけを「クラスリンク」と呼ぶことにする。これまで、§1〜§3で述べてきたリンク(スタティックリンクおよびダイナミックリンク)は、ノードとノードとの関連づけを示すノード間のリンク(一般に、インスタンスリンクと呼ばれているリンク)であるが、ここで定義するクラスリンクは、クラスとクラスとの関連づけを示すクラス間のリンクである。」

(カ)「【0070】いま、重みづけの大きなリンク(このリンクによって連結された2つのノードは大きな関連性を有することになる)ほど、大きな信号伝達係数を定義するようにしておけば、重みづけの大きなリンクを介しての信号伝達では、信号の減衰が少なくなり、信号が到達したノードにおける信号値は大きな値になる。したがって、大きな信号値が得られたノードほど、着目ノードに対する関連性が高いノードであると言える。そこで、この実施形態では、到達した信号の信号値に基づいて、各ノードに優先順位を定義するようにしている。図10の下欄に示す図表における優先順位(1),(2),(3)は、このようにして定義された優先順位である。ノードN5は優先順位(4)のノードであるが、この例では、「条件以下」として取り扱い、特に優先順位の定義は行っていない。
【0071】ここに示す例では、有効信号値の下限条件を10に設定してあり、伝達された信号の信号値が10以下のノードに関しては、「条件以下」として考慮の対象から除外するようにしている。このように信号値が条件以下のノードについては、信号伝達がなかったのと同じ取り扱いがなされる。したがって、図10の例の場合、ノードN5については、信号値9なる信号伝達があったにもかかわらず、信号伝達がなかったものとして取り扱われ、仮にこのノードN5より更に下流側に、リンクで連結された別なノードが存在したとしても(図10の例では、そのようなノードは存在しないが)、もはやノードN5より下流側への信号伝達処理は行われないことになる。結局、この例では、ノードN5は、信号伝達が全くなかったノードN6,N7と同じ取り扱いがなされることになる。」
(注:上記引用中、「優先順位(1)」等における括弧付きの数字は、実際は、丸囲みの数字である。)

[補足1]
上記(ア)〜(ウ)及び(オ)からして、引用文献2に記載のシステムは、ネットワークを介して、リンクを順次自動巡回することにより、巡回先から情報を獲得するものである。
[補足2]
上記(エ)からして、ノード間の重み(関連性、信号伝達計数)は、実質的にはノードに対応付けられたキーワード間の類似度に基づいて算出されるものであるから、上記(カ)において、巡回を停止するか否かを判定するために用いられる「信号値」は、実質的に、ユーザが指定した着目ノード又はキーワード(本願の「ファイルの基準情報」)と、リンク先のノード(本願の「ファイル」)との間の類似度に基づいて定まるものである。

よって、引用文献2には、次のとおりの発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

ネットワークを介して、リンクを順次巡回することにより、巡回先から情報を獲得するシステムにおいて、
獲得した情報とキーワードとの間の類似度が下回ったときに、当該情報の記憶と、それ以上の巡回獲得を行わないシステム。

3.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「インターネット」、「情報源」、「情報」、「問い合わせ条件」及び「自動巡回方法」は、それぞれ本願発明の「ネットワーク」、「巡回先」、「ファイル」、「基準情報」及び「情報巡回獲得方法」に対応している。
また、両者は、情報に関する所定条件を判定し、該所定条件に基づいて、情報の記憶とそれ以上の巡回獲得を行わないことを決定する点において共通している。

よって、両者は、

通信部を有するコンピュータによって、ネットワークを介して巡回先である情報提供装置から情報を獲得するための情報巡回獲得方法であって、
前記情報巡回獲得方法は、
前記コンピュータが、通信部を制御して、与えられた巡回先の情報提供装置に順次接続し、当該情報提供装置に記憶されたファイルを獲得情報として獲得し、
前記コンピュータが、獲得したファイルの基準情報に対する類似度を、当該ファイルに至るまでのリンク経路を判断することなく、判定し、
前記コンピュータが、判定した類似度に基づいて、当該類似度が判定されたファイルを獲得情報として獲得情報記憶部に記憶するか否かを決定し、
前記コンピュータが、所定条件に基づいて、所定条件が判定されたファイルに直接または間接的にリンクされたファイルを巡回獲得するか否かを決定し、
前記コンピュータが、該所定条件に基づいて、情報の記憶とそれ以上の巡回獲得を行わないことを決定すること、
を特徴とする情報巡回獲得方法。

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
所定条件に関し、本願発明は、判定した「類似度」に基づいて、当該「類似度」が判定されたファイルを記憶するか否かを決定すると共に、該「類似度」が所定値を下回る場合には、当該ファイルに直接または間接的にリンクされたファイルへのそれ以上の巡回獲得を行わないことを決定するのに対し、引用発明1では、情報の「階層」を判定し、該「階層」が所定値と一致する場合に、当該情報に直接又は間接的にリンクされた情報へのそれ以上の巡回獲得と記憶を行わないことを決定する点。

4.当審の判断
上記相違点について、以下検討する。
引用発明2は、ネットワークを介して、リンクを順次自動巡回することにより、巡回先から情報を獲得するシステムである点で引用発明1に係るシステムと一致している。
また、引用発明2は、引用文献2の段落【0028】に記載の「ただ、実用上は、個々のリンクの重みを考慮して、ある程度以上の関連性をもったノードのみを関連ノードとして抽出するのが望ましい」が端的に表しているように、情報を獲得するという課題を解決するために、「リンクの重み」すなわち類似度を考慮して、「ある程度以上の関連性をもったノードのみ」を抽出するものである。そして、引用発明1は、情報を獲得するための手段は、所定階層数のリンク分だけ情報獲得を行うことといえるが、課題解決手段を置換又は付加することは当業者が行う通常のシステム開発手法であるから、引用発明1の所定階層数を用いるという課題解決手段に替えて、または当該課題解決手段に加えて、引用発明2に係る類似度を用いた課題解決手段を採用することは当業者が容易に想到し得たものである。
なお、引用発明2では、リンクをたどる毎にこれまでに求めた類似度を掛け合わせることにより新たな類似度を算出するため、リンク経路に依存した類似度が用いられているが、引用発明1では、類似度は、情報と基準情報との間で直接的に求めることを前提としているから、類似度の算出方法については、引用発明1の手法をそのまま採用し、情報を記憶するか否か及びそれ以上の情報獲得をするか否かの判定については、引用発明2の手法を採用することに格別な困難性はない。
よって、引用発明1に係る条件(階層)に替えて、または、当該条件(階層)に加えて、引用発明2のように、「類似度」を、情報を記憶するか否かを決定するための条件及びリンクされた情報へのそれ以上の巡回獲得を行わないことを決定するための条件として採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、引用発明1において、獲得した情報の類似度を判定し、判定した類似度に基づいて、当該類似度が判定された情報に直接または間接的にリンクされたファイルを巡回獲得するか否かを決定するとともに、類似度が所定値を下回る場合には、当該情報に直接または間接的にリンクされたファイルへのそれ以上の巡回獲得を行わないことを決定するよう構成することは引用発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、各引用発明から当業者が容易に予測できる範囲内のものである。

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.請求人の主張
請求人は、平成18年4月28日付けの意見書において、引用文献2(当審の拒絶理由通知では「引用文献4」)に記載のものは、「互いにリンクされたノード間に類似性が存在しているデータベースが対象となっている。」ことを前提としていること、及び、引用文献1に記載のものと本願発明とが「ファイルからリンクされたリンク先ファイルにおいても類似性が認められるか否かは一般的には不明である。」ことを前提としていることを理由に、引用発明1と引用発明2の組み合わせが「前提が異なる技術分野に属する技術を組み合わせること」であると主張し、当該組み合わせに技術的阻害要因があることについて示唆している。
しかしながら、技術常識からすると、一般に、ファイル(例えば、インターネット上のWebページ)間のリンクは、類似性に無関係(例えばランダムに)設定されているのではなく、何らかの類似性があることを前提に設定されているから、リンクが設定されているファイルは、リンクが設定されていないファイルと比して類似性が高いことは自明である。引用文献1に記載のものと本願発明において、情報巡回は、やみくもにファイルを探索することにより行われているのではなく、ファイルに設定されたリンクをたどることによりなされている。これは、リンクが設定されているファイルの方が所望の情報が得られる可能性が高いからであり、リンクが設定されているファイルは一般的に類似性が高いことをむしろ裏付ける構成である。つまり、引用文献1に記載のものと本願発明が、ファイルからリンクされたリンク先ファイルにおいても類似性が認められるか否かは一般的には不明であることを前提としている旨の請求人の主張は、技術常識からして妥当なものではない。また、本願の特許請求の範囲(特に請求項5(本願発明))には、ファイル間のリンクが類似性に無関係に設定されているように具体的に特定されていないから、上記請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づいたものでもない。
よって、引用発明1と、引用発明2及び本願発明とが「前提が異なる技術分野に属する」という請求人の主張は妥当ではなく、引用発明1と引用発明2とを組み合わせることに技術的阻害要因は存在しないから、請求人の主張は採用できない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-30 
結審通知日 2006-06-05 
審決日 2006-06-16 
出願番号 特願平11-245775
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 彦田 克文
林 毅
発明の名称 情報巡回獲得装置  
代理人 松下 正  
代理人 古谷 栄男  
代理人 眞島 宏明  
代理人 鶴本 祥文  
代理人 佐々木 康  

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