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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1142179
審判番号 不服2003-8001  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-08 
確定日 2006-08-17 
事件の表示 平成11年特許願第107435号「エアバッグ式乗員保護装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月24日出願公開、特開平11-321513〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年10月25日に出願した特願平5-289955号の一部を平成11年4月15日に新たな特許出願としたものであって、本願の請求項1に係る発明は、平成13年3月7日付け、平成14年12月9日付け及び平成15年6月2日付けの各手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 ガス発生用インフレータと、該インフレータが発生するガス圧によって膨張するエアバッグと、該エアバッグを収納するべく車体に固定されたリテーナとを有し、所定値を超える減速度が車両に作用した際に、通常はリッドにて塞がれたインストルメントパネルの開口から、前記リッドを押しのけて前記エアバッグが車室内に膨出するようにしてなるエアバッグ式乗員保護装置であって、
前記リテーナは、その互いに対向する一対の壁の外面の各々にフック部を備えるものであり、
前記リッドは、前記リテーナと相対移動可能なように前記フック部を受容する孔をそれぞれが備えた複数の係合片と、前記インストルメントパネルの開口内縁部に対して該リッドのみを位置確定的に係合させるべく少なくともその一部が前記係合片から離間して配置された複数の爪部とを突設してなるものであり、
前記フック部と前記係合片とは、これらのうちの少なくともいずれか一方が弾性変形して相互に係合するものであることを特徴とするエアバッグ式乗員保護装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5,135,252号明細書(以下、「引用例」という。)には、「サイドエアバッグ式乗員保護装置の取付手段」に関して、図1〜5とともに次の事項が記載されているものと認められる。
(ア)「図1及び図2に示すように、本発明によるサイドエアバッグ式乗員保護装置10は、インストルメントパネル12の乗員側、又は右側に取り付けられる。自明のことながら、インストルメントパネル12は、公知のように車両構造に堅く固定される。エアバッグ装置10は、エアバッグハウジング14とエアバッグの展開シュート16とを備える。」(第2欄第37〜44行)
(イ)「エアバッグハウジング14は、折り畳んだエアバッグとエアバッグのインフレータ装置(図示せず)とを有する。エアバッグのインフレータ装置は膨張手段を備え、この手段が作動すると、瞬時に膨張ガスを発生する。センサシステム(図示せず)は車両構造に装備され、衝撃を検知すると共に、直ちにエアバッグを膨張させることに供する。このような装置は以前から公知である。」(第2欄第45〜52行)
(ウ)「エアバッグハウジング14は、エアバッグハウジングブラケット20を介して車両の支持構造18に固定される。」(第2欄第53〜54行)
(エ)「エアバッグの展開シュート16は、乗員側のインストルメントパネル12に配置した開口30に取り付けられる。エアバッグの展開シュート16は中空のシュート部分32を備え、この部分は後方エッジ上で周辺フランジ34によって包囲される。……図1に示すように、フランジ34はインストルメントパネル12の外面と同じ高さとする。壊れやすいドア36は、フランジ34内に配置される。膨張するエアバッグによって衝撃を受けると、ドア36は後方に膨出し、エアバッグを出口に放出すると共に、乗員の前に膨張させる。」(第2欄第62行〜第3欄第6行)
(オ)「コネクタブラケット42,43は、エアバッグの展開シュートの両側に備えられ、エアバッグハウジング14とエアバッグの展開シュートとを互いに係合させる。各コネクタブラケットは、基本的にU字形状で同一のものとして形成される。以下、コネクタブラケット43について詳細に説明する。
コネクタブラケット43は、各端部から延在した脚部46,48を有するクロスメンバー44を備える。……各脚部46,48は、長手方向の調節スロット62,64を有する。」(第3欄第24〜38行)
(カ)「一対の離間したフック部材70,72及び74,76は、エアバッグの展開シュート16の両側に配置される。……コネクタブラケットの脚部は、スチール等の弾性材料から作製される。エアバッグハウジング14は、エアバッグの展開シュート16に滑動して取り付けられる。図3の点線は、フック部材のカム面がコネクタブラケット42,43の脚部のアングル端部に係合するポイントまでシュート内に部分的に挿入されたエアバッグハウジング14を示す。エアバッグハウジングが更に挿入されると、脚部は外方に転向する。そのため、フック部材が長手方向スロットに到達し、図4に示すように収納されるまで、フック部材は沿った通路を進行することができる。」(第3欄第42〜61行)

上記記載事項(イ)のセンサシステムは、所定値を超える減速度が車両に作用する衝撃を検知するものであることは技術常識であるから、上記記載事項(ア)〜(カ)及び図1〜5の記載を総合すると、引用例には、
「膨張ガス発生用インフレータ装置と、該インフレータ装置が発生するガス圧によって膨張するエアバッグと、該エアバッグを収納するべく車体に固定されたエアバッグハウジング14とを有し、所定値を超える減速度が車両に作用した際に、通常は展開シュート16にて塞がれたインストルメントパネル12の開口30から、前記展開シュート16を押しのけて前記エアバッグが車室内に膨出するようにしてなるサイドエアバッグ式乗員保護装置であって、
前記エアバッグハウジング14は、その互いに対向する一対の壁の外面の各々にフック部材70,72及び74,76を備えるものであり、
前記展開シュート16は、前記エアバッグハウジング14と相対移動可能なように前記フック部材70,72及び74,76を受容する調節スロット62,64をそれぞれが備えた複数のコネクタブラケット42,43を備えてなるものであり、
前記フック部材70,72及び74,76とコネクタブラケット42,43とは、コネクタブラケット42,43が弾性変形して相互に係合するものであるサイドエアバッグ式乗員保護装置」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「膨張ガス発生用インフレータ装置」は本願発明の「ガス発生用インフレータ」に相当し、以下同様に、「エアバッグハウジング14」は「リテーナ」に、「展開シュート16」は「リッド」に、「サイドエアバッグ式乗員保護装置」は「エアバッグ式乗員保護装置」に、「フック部材70,72及び74,76」は「フック部」に、「調節スロット62,64」は「孔」に、「コネクタブラケット42,43」は「係合片」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「コネクタブラケット42,43を備え」ることも、本願発明の「係合片を突設」することも、「設ける」という点では同じである。
よって、本願発明と引用発明とは、
《一致点》
「ガス発生用インフレータと、該インフレータが発生するガス圧によって膨張するエアバッグと、該エアバッグを収納するべく車体に固定されたリテーナとを有し、所定値を超える減速度が車両に作用した際に、通常はリッドにて塞がれたインストルメントパネルの開口から、前記リッドを押しのけて前記エアバッグが車室内に膨出するようにしてなるエアバッグ式乗員保護装置であって、
前記リテーナは、その互いに対向する一対の壁の外面の各々にフック部を備えるものであり、
前記リッドは、前記リテーナと相対移動可能なように前記フック部を受容する孔をそれぞれが備えた複数の係合片を設けてなるものであり、
前記フック部と前記係合片とは、係合片が弾性変形して相互に係合するものであるエアバッグ式乗員保護装置」
である点で一致し、次の点で相違している。
《相違点1》
本願発明では、係合片をリッドに突設しているのに対して、引用発明では、コネクタブラケット42,43(係合片)を展開シュート16(リッド)に固定して備えている点。
《相違点2》
本願発明では、リッドは、「インストルメントパネルの開口内縁部に対してリッドのみを位置確定的に係合させるべく少なくともその一部が係合片から離間して配置された複数の爪部を突設してなる」のに対して、引用発明では、記載事項(エ)に「エアバッグの展開シュート16は、乗員側のインストルメントパネル12に配置した開口30に取り付けられる」とあるものの、その具体的な取付手段が明らかでない点。

4.当審の判断
そこで、上記各相違点について以下で検討する。
(1)相違点1について
一般的に、ある部材に突出状のものを設けるに際して、本願発明のように一体的に形成することにより突出させて設けるか、あるいは、引用発明のように別部材であるコネクタブラケット42,43(係合片)を固定して備えるようにするかは、製作の容易性等を考慮して、当業者が適宜選択する設計上の事項であるから、上記相違点1でいう本願発明の構成事項である、係合片をリッドに突設したことに、格別の創意があるとはいえない。
(2)相違点2について
インストルメントパネルの開口内縁部に対してリッドのみを位置確定的に係合させる複数の爪状の部材をリッドに設けることは、従来周知の技術である(例えば、特開平3-86653号公報に記載のリッド閉鎖用クリップ30a,30b、特開平4-191140号公報に記載の係止部35、特開平3-132445号公報に記載の突起部材48、実願昭63-97908号(実開平2-19662号)のマイクロフィルムに記載のストッパ9、参照)。
そして、上記周知の技術を考慮した上で引用例の図1〜5の記載をみると、インストルメントパネル12に配置した開口30に対して展開シュート16を取り付けるための取付手段として、展開シュート16の周辺フランジ34に複数の爪部を突設し、インストルメントパネル12の開口30の内縁部に対して展開シュート16のみを位置確定的に係合させるようにすることは、当業者にとって格別困難な事項であるとはいえないし、また、そのような爪部が、本願発明の係合片に相当するコネクタブラケット42,43から離間して配置されることも、当業者であれば容易に想到しうる設計上の事項である。
よって、上記相違点2でいう本願発明の構成事項は、引用発明のインストルメントパネル12に配置した開口30への展開シュート16の取付手段として、上記周知の技術を考慮することによって、当業者であれば容易に想到することができた事項である。

また、本願発明が奏する作用効果も、引用発明及び上記周知の技術から予測される程度以上のものでもない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-13 
結審通知日 2006-06-20 
審決日 2006-07-03 
出願番号 特願平11-107435
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋大谷 謙仁三澤 哲也  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
ぬで島 慎二
発明の名称 エアバッグ式乗員保護装置  
代理人 大島 陽一  

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