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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1142629
審判番号 不服2004-12158  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-14 
確定日 2006-08-25 
事件の表示 平成 8年特許願第263677号「ポンプ制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月 7日出願公開、特開平10- 89262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本件出願は、平成8年9月11日の出願であって、平成16年5月11日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ(平成16年5月18日発送)、これに対し、平成16年6月14日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに平成16年6月14日付けの手続補正により明細書の補正がなされたものである。

[2]平成16年6月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成16年6月14日付けの手続補正を却下する。
〔理 由〕
1.補正の内容、及び補正の目的
上記手続補正は、次の内容を含むものである。
請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】ポンプ1を駆動させるモータMと電源2との間に電気的に接続される主制御手段3と、該主制御手段3と上記モータMとの間にて該モータMの入力電流値を検出して検出信号Aを出力する電流値検出手段4とを、備えると共に、該電流値検出手段4からの検出信号Aを受けて該検出信号Aと基準値とを比較演算して制御動作信号Bを上記主制御手段3へ出力する比較演算手段5を設け、該比較演算手段5に上記基準値を予め又はリアルタイムで入力する入力設定手段6を設け、該比較演算手段5から上記主制御手段3に送られる制御動作信号Bに対応して該主制御手段3の出力Qを複数段階又は無段階に増減させて、上記モータMの回転数を複数段階又は無段階に制御し、かつ、上記電流値検出手段4にて検出された電流値が所定上限値を越えたときに上記モータMが逆回転し、さらに、所定時間後に該モータMが正回転するように構成したことを特徴とするポンプ制御装置。」から、
「【請求項1】ポンプ1を駆動させるモータMと電源2との間に電気的に接続される主制御手段3と、該主制御手段3と上記モータMとの間にて該モータMの入力電流値を検出して検出信号Aを出力する電流値検出手段4とを、備えると共に、該電流値検出手段4からの検出信号Aを受けて該検出信号Aと基準値とを比較演算して制御動作信号Bを上記主制御手段3へ出力する比較演算手段5を設け、該比較演算手段5に上記基準値をリアルタイムで入力する入力設定手段6を設け、該比較演算手段5から上記主制御手段3に送られる制御動作信号Bに対応して該主制御手段3の出力Qを複数段階又は無段階に増減させて、上記モータMの回転数を複数段階又は無段階に制御し、かつ、上記電流値検出手段4にて検出された電流値が所定上限値を越えたときに上記モータMが逆回転し、さらに、所定時間後に該モータMが正回転するように構成したことを特徴とするポンプ制御装置。」に補正する。(なお、下線は補正箇所を明示するために当審で付した。)

上記補正は、「予め又はリアルタイムで入力」を「リアルタイムで入力」と限定するものであって、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものと認められる。

2.独立特許要件について
平成16年6月14日付けの手続補正書による手続補正は、以下の理由により特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反している。

(1)補正された請求項1に係る発明
平成16年6月14日付けの手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】ポンプ1を駆動させるモータMと電源2との間に電気的に接続される主制御手段3と、該主制御手段3と上記モータMとの間にて該モータMの入力電流値を検出して検出信号Aを出力する電流値検出手段4とを、備えると共に、該電流値検出手段4からの検出信号Aを受けて該検出信号Aと基準値とを比較演算して制御動作信号Bを上記主制御手段3へ出力する比較演算手段5を設け、該比較演算手段5に上記基準値をリアルタイムで入力する入力設定手段6を設け、該比較演算手段5から上記主制御手段3に送られる制御動作信号Bに対応して該主制御手段3の出力Qを複数段階又は無段階に増減させて、上記モータMの回転数を複数段階又は無段階に制御し、かつ、上記電流値検出手段4にて検出された電流値が所定上限値を越えたときに上記モータMが逆回転し、さらに、所定時間後に該モータMが正回転するように構成したことを特徴とするポンプ制御装置。」

(2)本願出願前公知の刊行物、及びその記載事項
刊行物1:特開昭55-10084号公報
刊行物2:実願昭46-96620号(実開昭48-54102号)のマイクロフィルム

・刊行物1の記載事項
a.「汚泥槽(1)の中の汚泥(2)は可変速モーター(3)により駆動される加圧ポンプ(4)により送泥管(5)をへて加圧脱水機(6)に送られ加圧脱水される。
動力線(7)には電流検出器(8)が設置され、電流検出器(8)は可変速モーター(3)の負荷電流の変化を電気信号の変化として検知し、出力信号を次段の比較増幅器(9)に送る。圧力設定器(10)は加圧ポンプの圧力を任意に設定する機能を有し、この基準電気信号を比較増幅器(9)に送る。
比較増幅器(9)は、上記基準信号と電流検出器(8)よりの信号を比較検出し、これを増幅して次段の制御盤(11)に送る。操作盤(12)は可変速モーター(3)の最大回転数を任意に設定する機能を有し、制御盤(11)は、可変速モーターの回転数を操作盤(12)及び比較増幅器(9)よりの電気信号により制御する機能を有する。
上述の装置において送泥管(5)より流入する汚泥(2)により、加圧脱水機(6)の圧力が上昇し始めると加圧ポンプ(4)の軸トルクが増加し、可変速モーター(3)の動力線(7)の負荷電流が増加し、電流検出器(8)の検出出力が増加して圧力設定器(10)により設定された電気信号に近づくと、比較増幅器(9)の出力は減少し制御盤(11)の出力も減少するから可変速モーター(3)の回転数は減少するので、加圧ポンプの送泥量は減少し圧力は設定圧力に保たれる。
圧力が減少すると上述と逆に可変速モーター(3)の回転数が上って加圧ポンプの送泥量が増加し、加圧脱水機の送泥圧力は常に設定された圧力に保たれる。」(第2頁左上欄第1行〜右上欄第9行。なお、下線は引用箇所の理解のために当審で付した。以下同様。)
b.「(13)電源」(第2頁左下欄第9行)
上記記載a、bを図面の記載とともに看ると、刊行物1には、「加圧ポンプ4を駆動させる可変速モーター3と電源13との間の電気的関係を制御する制御盤11と、該可変速モーター3の入力電流値を検出して出力信号を出力する電流検出器8とを、備えると共に、該電流検出器8からの出力信号を受けて該出力信号と基準電気信号とを比較演算して比較検出信号を上記制御盤11へ出力する比較増幅器9を設け、該比較増幅器9に上記基準電気信号を入力する圧力設定器10を設け、該比較増幅器9から上記制御盤11に送られる比較検出信号に対応して制御盤11の出力を増減させて、上記可変速モーター3の回転数を制御するように構成したポンプ制御装置。」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という)が記載されているものと認められる。
・刊行物2の記載事項
c.「モータ主回路に設けられた正転用および逆転用の電磁接触器と、モータ主回路の過電流を検出し前記正転用接触器を消勢する過電流リレーと、経時的な2段階限時を有し前記正転用接触器の消勢により付勢され前記逆転用接触器を定時限付勢し次いで前記正転用接触器を再付勢するタイマとを具えたことを特徴とする流体機械の保護装置。」(第1頁第5行〜第11行)
上記記載cによれば、刊行物2には、「過電流を検出したときにモータが逆転し、さらに、定時限後に該モータが正転するように構成する」技術が記載されているものと認められる。

(3)補正発明の進歩性の判断
刊行物1記載の発明と補正発明とを対比すると、補正発明の「ポンプ1を駆動させるモータMと電源2との間に電気的に接続される主制御手段3」と刊行物1記載の発明の「加圧ポンプ4を駆動させる可変速モーターと電源13との間の電気的関係を制御する制御盤11」とは、「ポンプを駆動させるモータと電源との間の電気的関係を制御する制御手段」である限りにおいて相当する。
また、補正発明の「主制御手段3の出力Qを複数段階又は無段階に増減させて、上記モータMの回転数を複数段階又は無段階に制御」することと刊行物1記載の発明の「制御盤11の出力を増減させて、上記可変速モーターの回転数を制御」することとは、「制御手段の出力を増減させて、モーターの回転数を制御」する限りにおいて相当する。
さらに、刊行物1記載の発明と補正発明とを対比すると、構成、機能から看て、刊行物1記載の発明の「加圧ポンプ4」は補正発明の「ポンプ1」に相当する。同様に、「可変速モーター3」は「モータM」に、「出力信号」は「検出信号A」に、「電流検出器8」は「電流値検出手段4」に、「基準電気信号」は「基準値」に、「比較検出信号」は「制御動作信号B」に、「比較増幅器9」は「比較演算手段5」に、「圧力設定器10」は「入力設定手段6」に相当する。
したがって、補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、補正発明と刊行物1記載の発明とは、「ポンプを駆動させるモータと電源との間の電気的関係を制御する制御手段と、該モータの入力電流値を検出して検出信号を出力する電流値検出手段とを、備えると共に、該電流値検出手段からの検出信号を受けて該検出信号と基準値とを比較演算して制御動作信号を上記主制御手段へ出力する比較演算手段を設け、該比較演算手段に上記基準値を入力する入力設定手段を設け、該比較演算手段から上記制御手段に送られる制御動作信号に対応して制御手段の出力を増減させて、モーターの回転数を制御するように構成したポンプ制御装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

a.相違点1
ポンプを駆動させるモータと電源との間の電気的関係を制御する制御手段に関し、補正発明では、「ポンプを駆動させるモータと電源との間に電気的に接続される主制御手段」であるのに対し、刊行物1記載の発明では、「ポンプを駆動させるモータと電源との間の電気的関係を制御する制御盤11」である点。
b.相違点2
補正発明の入力設定手段が、「リアルタイムで入力する」のに対し、刊行物1記載の発明では、リアルタイムで入力するのかどうか不明である点。
c.相違点3
「制御手段の出力を増減させて、モーターの回転数を制御」する点に関して、補正発明では「主制御手段3の出力Qを複数段階又は無段階に増減させて、モータMの回転数を複数段階又は無段階に制御」するのに対し、刊行物1記載の発明では「制御盤11の出力を増減させてモーターの回転数を制御」する点。

d.相違点4
補正発明が、「電流値検出手段4にて検出された電流値が所定上限値を越えたときに上記モータMが逆回転し、さらに、所定時間後に該モータMが正回転」するのに対し、刊行物1記載の発明では、そのような回転をしない点。

・相違点の検討、及び判断
a.相違点1について
モータの回転数を制御する際に、ポンプを駆動させるモータと電源との間に電気的に接続される主制御手段を用いることは、例示するまでもなく周知の技術である。
したがって、刊行物1記載の発明に上記周知の技術を適用することによって、相違点1に関して補正発明のように構成することは、当業者が設計において適宜行うことである。
b.相違点2について
制御技術においては、入力設定をリアルタイムで行うことは例示するまでもなく慣用手段である。
したがって、刊行物1記載の発明に上記慣用手段を適用することによって、相違点2に関して補正発明のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。
c.相違点3について
モータの回転数を複数段階又は無段階に制御することは例示するまでもなく周知の技術である。また、モータの回転数を複数段階又は無段階に制御する際に、制御手段の出力を複数段階又は無段階に増減させて制御することは、当業者が適宜行う設計的事項である。
したがって、刊行物1記載の発明に上記周知の技術を適用することによって、相違点3に関して補正発明のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。
d.相違点4について
刊行物2には、流体機械において、「過電流を検出したときにモータが逆転し、さらに、定時限後に該モータが正転するように構成する」技術が記載されている(以下、「刊行物2記載の技術」という)。
ここで、補正発明の相違点4に関する部分と刊行物2記載の技術とを比較すると、刊行物2記載の技術の「過電流を検出したとき」は、技術的意義において、補正発明の「電流値が所定上限値を越えたとき」に相当する。同様に「逆転」は「逆回転」に、「定時限後」は「所定時間後」に、「正転」は「正回転」に相当する。したがって、刊行物2には、「電流値が所定上限値を越えたときにモータが逆回転し、さらに、所定時間後に該モータが正回転するように構成する」技術が記載されている。
してみると、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を適用して、相違点4に関して、補正発明のように構成することは、当業者が必要に応じて容易に想到し得ることである。
また、補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、及び上記周知の技術、慣用手段から予測し得る程度のものである。

以上のとおりであるから、本件の補正発明は出願前に頒布された刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、及び上記周知の技術、慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件の補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(4)まとめ
したがって、平成16年6月14日付けの手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する、同法第126条第5項の規定に違反している。
よって、この補正は、同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明について
(1)平成16年6月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の発明は、その補正前の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである(以下、この発明を単に「本願発明」という。)。
「【請求項1】ポンプ1を駆動させるモータMと電源2との間に電気的に接続される主制御手段3と、該主制御手段3と上記モータMとの間にて該モータMの入力電流値を検出して検出信号Aを出力する電流値検出手段4とを、備えると共に、該電流値検出手段4からの検出信号Aを受けて該検出信号Aと基準値とを比較演算して制御動作信号Bを上記主制御手段3へ出力する比較演算手段5を設け、該比較演算手段5に上記基準値を予め又はリアルタイムで入力する入力設定手段6を設け、該比較演算手段5から上記主制御手段3に送られる制御動作信号Bに対応して該主制御手段3の出力Qを複数段階又は無段階に増減させて、上記モータMの回転数を複数段階又は無段階に制御し、かつ、上記電流値検出手段4にて検出された電流値が所定上限値を越えたときに上記モータMが逆回転し、さらに、所定時間後に該モータMが正回転するように構成したことを特徴とするポンプ制御装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物(特開昭55-10084号公報、実願昭46-96620号(実開昭48-54102号)のマイクロフィルム)、および、その記載事項は、前記[2]2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記[2]2.で検討した補正発明の「リアルタイムで入力」の事項を「予め又はリアルタイムで入力」と拡張したものに相当する。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに本願発明を減縮したものに相当する補正発明が、前記[2]2.(2)、(3)に記載したとおり、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、及び上記周知の技術、慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、及び上記周知の技術、慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、及び上記周知の技術、慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-13 
結審通知日 2006-06-20 
審決日 2006-07-03 
出願番号 特願平8-263677
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志中野 宏和上田 真誠  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 長馬 望
飯塚 直樹
発明の名称 ポンプ制御装置  
代理人 中谷 武嗣  

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