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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01S
管理番号 1142712
審判番号 不服2004-3875  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2006-09-12 
事件の表示 平成10年特許願第139496号「窒化物半導体素子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月30日出願公開、特開平11-330622、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年5月21日に特許出願したものであって、原審において、平成15年10月24日付で拒絶理由が通知され、同年12月15日付及び12月16日付で手続補正がなされたところ、平成16年1月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月26日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年3月29日付で手続補正がなされたものであって、その請求項に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載された次のものと認める。
「【請求項1】窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、n型不純物がドープされた窒化物半導体を横方向成長により形成し、
前記異種基板を除去することにより、前記窒化物半導体が成長した側にある第1の主面と、前記異種基板が除去された側にある第2の主面とを有し、前記第1の主面が素子構造の形成面となる窒化物半導体基板を形成し、
前記窒化物半導体基板の第2の主面側にn型不純物がドープされた窒化物半導体をn側コンタクト層として成長して、前記異種基板の除去により前記第2の主面に生じたダメージを回復し、前記n側コンタクト層にn電極を形成することを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項2】前記窒化物半導体基板は、窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、第1の窒化物半導体を形成した後、該第1の窒化物半導体上に保護膜を部分的に形成し、該保護膜上において、第2の窒化物半導体を横方向成長により形成し、その後、前記異種基板と第1の窒化物半導体と保護膜とを除去することによって得られることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項3】前記n側コンタクト層のn型不純物濃度が、前記窒化物半導体基板の第2の主面表面近傍のn型不純物濃度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項4】前記窒化物半導体基板のn型不純物の濃度は、連続状の濃度勾配、若しくはステップ状の濃度勾配を有することを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項5】前記窒化物半導体基板の平均的なn型不純物濃度が5×1016/cm3以上、5×1018/cm3以下であり、且つ前記n側コンタクト層のn型不純物濃度は、1×1018/cm3以上、1×1020/cm3以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項6】前記n側コンタクト層と前記第2の主面との間に、アンドープ若しくはn型不純物濃度が前記n側コンタクト層よりも少ない窒化物半導体を有するバッファ層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の内のいずれか1項に記載の窒化物半導
体素子の製造方法。
【請求項7】前記バッファ層の膜厚が、0.1μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項8】前記窒化物半導体基板、バッファ層、n側コンタクト層の内の少なくとも2種類が同一組成を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項9】前記n側コンタクト層、バッファ層の少なくとも一方が、窒化物半導体層が積層された多層膜であって、超格子構造を有することを特徴とする請求項1乃至8の内のいずれか1項に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項10】前記多層膜はInXGa1-XN(0≦X≦1)とAlYGa1-YN(0≦Y≦1、但しX=Y=0の場合は、GaN層中の不純物濃度が異なる)とが積層されていることを特徴とする請求項1乃至9に記載の窒化物半導体素子の製造方法。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された特開平4-242985号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
a.「【0018】
【発明の概要】上記発明において、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlxGa1-x)yIn1-yN単結晶作製用基板には、サファイア,珪素(Si),6H炭化珪素(6H-SiC)ないし窒化ガリウム(GaN)を用いることができる。
・・・
【0030】最終的に、p層と金属の接触する部分の形状は短冊である。n層の電極は選択成長用マスクを取り外して、その後に形成するか、或いはアクセプタドープ層(p層)の一部を表面側からエッチングして下層のn層に対して窓を開け、金属を接触させオーム性電極を形成する。
【0031】n型のSi、6H-SiC或いはGaNを基板として用いる場合もほぼ同様の手段により素子作製を行う。しかし、選択成長技術は用いず、p層とn層に対する電極は素子の上下の両側に形成する。即ち、n層電極は基板裏面全体に金属を接触させオーム性電極を形成する。
・・・
【0039】n型結晶のキャリア濃度はドナー不純物のドーピング濃度により、またp型結晶のキャリア濃度はアクセプタ不純物のドーピング濃度及び電子線照射処理条件により制御する。又、特にオーム性電極形成を容易にするため高キャリア濃度実現が容易な結晶を金属との接触用に更に接合してもよい。
【0040】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。((AlxGa1-x)yIn1-yN:0≦x≦1,0≦y≦1)半導体レーザダイオード用単結晶の作製には横型有機金属化合物気相成長装置を用いた。以下基板としてサファイア,Si,6H-SiC及びGaNを用いた場合各々について成長手順を示す。」
b.「【0052】(4)GaN基板の場合
GaN基板上に作成したレーザダイオードを図4に示す。
低抵抗n型GaNの(0001)面基板23を有機洗浄の後、リン酸+硫酸系エッチャントによりエッチングの後、この基板23を結晶成長部に設置する。次に、成長炉を真空排気の後、水素及びNH3を供給し、基板温度を1040℃にして、5分間放置する。次に、TMG及びSiH4を更に加えてn型GaN緩衝層24を0.5〜1μmの厚さに形成した。
【0053】次に、TMAを加え、n型GaAlN層25を成長させた。次に、n型GaAN層25の上に、前記のSi基板を用いたレーザダイオードと同一構造に、同一ガスを用いて、同一成長条件で、それぞれ、GaN層26を0.5μm、MgドープGaAlN層27(p層)を0.5μmの厚さに形成した。次に、MgドープGaAlN層27上にSiO2層29を堆積した後、縦1mm、横50μmの短冊状に窓29Aを開け、真空チャンバに移して、MgドープGaAlN層27(p層)に電子線を照射した。電子線の照射条件は前実施例と同様である。
【0054】・・・基板23の裏面にn型GaAlN層25(n層)に対する電極28Bを形成した。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)上記a.には、「【0039】・・・又、特にオーム性電極形成を容易にするため高キャリア濃度実現が容易な結晶を金属との接触用に更に接合してもよい。」と記載されており、この金属との接触用に接合された高キャリア濃度実現が容易な結晶が、本願発明の「n側コンタクト層」に相当する。
(2)そして、上記b.からは、
「窒化物半導体基板は、素子構造が成長する側の第1の主面と、他側の第2の主面とを有し、前記窒化物半導体基板の第2の主面側に、n電極を形成する窒化物半導体素子の製造方法。」が記載されていることが把握できる。

したがって、引用発明は、
「第1の主面と第2の主面とを有する窒化物半導体基板の第2の主面側にn側コンタクト層を形成し、前記n側コンタクト層にn電極を形成する窒化物半導体素子の製造方法」であると認めることができ、両者は、上記の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、「窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、n型不純物がドープされた窒化物半導体を横方向成長により形成し、前記異種基板を除去することにより、前記窒化物半導体が成長した側にある」第1の主面と、「前記異種基板が除去された側にある」第2の主面とを有し、「前記第1の主面が素子構造の形成面となる窒化物半導体基板を形成し、」前記窒化物半導体基板の第2の主面側に「n型不純物がドープされた窒化物半導体を」n側コンタクト層「として成長して、前記異種基板の除去により前記第2の主面に生じたダメージを回復し、」前記n側コンタクト層にn電極を形成するものであるのに対し、引用発明は、上記の点を有するものではない点。

4.判断
本願発明に関し、相違点について以下検討する。
イ.窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、n型不純物がドープされた窒化物半導体を成長させて形成することは、特開平9-312417号公報(【0023】から【0024】)に記載されている。
ロ.引用例の上記摘記事項b.には、「オーム性電極形成を容易にするため高キャリア濃度実現が容易な結晶を金属との接触用に更に接合してもよい」との記載があり、これから、電極と電極接触層との間にオーム性電極形成を容易にするためにコンタクト層を形成することは知られている。
しかしながら、上記イ.,ロ.の技術とも、異種基板除去によりダメージを受けた除去面に対して、n側コンタクト層を形成してからn電極を形成するものではないから、そのような動機付けの記載のない文献を寄せ集めても、本願発明のように、窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、窒化物半導体を横方向成長により形成し、前記異種基板を除去することによりダメージを受けた除去面側にn側コンタクト層を成長し、その上にn電極を形成することまでは想起されるものではない。
したがって、上記相違点を含む本願発明は、引用発明から当業者が容易になし得たものではない。

そして、請求項2〜10に係る発明は、請求項1あるいは請求項1に係る発明を引用する発明をさらに限定するものであるから、その判断は上記と同様である。

5.むすび
以上のとおり、請求項1ないし10に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-08-31 
出願番号 特願平10-139496
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 向後 晋一
鈴木 俊光
発明の名称 窒化物半導体素子の製造方法  
代理人 石井 久夫  
代理人 河宮 治  

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