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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1142729
審判番号 不服2001-11315  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-02 
確定日 2006-08-30 
事件の表示 平成 3年特許願第 18791号「情報および機能の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 4年 8月 5日出願公開、特開平 4-215166〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年2月12日(パリ条約による優先権主張1990年2月14日、ドイツ国)の出願であって、平成13年3月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月30日付で手続補正がなされ、さらに、平成17年1月19日付で手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項5に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月19日付の手続補正書により補正された請求項5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「内燃機関の制御の際に生じる情報および機能を複数個のコントローラを用いて、互いに依存する異なる処理過程において処理するための制御装置であって、
少なくとも2つのコントローラ(1、2)が設けられており、該コントローラには異なる処理過程の情報および機能が供給され、さらに前記コントローラはプロセッサ・コミュニケーション手段(3)を介して接続されている形式の制御装置において、
処理過程として、少なくとも1つの第1の処理過程が時間同期処理過程として設けられ、さらに第2の処理過程として角度同期処理過程が設けられ、
前記時間同期処理過程は第1のコントローラによって割当てられ、前記角度同期処理過程は第2のコントローラに割当てられ、それによって時間同期のタスクは第1のコントローラによって処理され、角度同期のタスクは第2のコントローラによって処理されるように構成したことを特徴とする制御装置。」

2.引用例発明
当審の拒絶の理由Cで引用された特開昭61-277848号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに、 以下の事項が記載されている。
(a)「内燃エンジンの運転状態パラメータに応じ、燃料噴射量及び点火時期を電子的に制御する内燃エンジンの電子制御装置に於て、前記燃料噴射量を演算する第1の中央演算処理装置と、点火時期の演算を行う第2の中央演算処理装置とを有し、前記第1及び第2の中央演算処理装置は通信線を介し互いに接続され、前記第1の中央演算処理装置には少なくともエンジン負荷を表わすアナログ量にて示される運転パラメータ系のデータが入力され、前記第2の中央演算処理装置には少なくとも所定のクランク角度位置を表わすタイミング信号系のデータが入力され、前記第2の中央演算処理装置は前記タイミング信号到来毎に前記第1の中央演算処理装置が燃料噴射量の演算を開始すべきか否かを判別し、該演算開始すべき信号到来判別時前記第1の中央演算処理装置へ演算開始信号を供給するようにしたことを特徴とする内燃エンジンの電子制御装置。」(第1頁左下欄第5行-同頁右下欄第3行)

(b)「また第1のCPU1に演算開始用のトリガ信号を与える信号線26が第2のCPU2から第1のCPU1に向けて接続され、さらにデータ転送用通信線27.28が両CPU1、2の間に接続されている。通信線28は、第1のCPU1から第2のCPU2に向けてエンジンパラメータ等のデータおよび送信命令信号を転送するためのものであり、通信線27は第2のCPU2から第1のCPU1に向けて、上記の送信命令に対する確認信号等を送るためのものである。」(第3頁左下欄第6行-同頁同欄第16行)

(c)「符号29はMeカウンタで、このMeカウンタ29には、第2のCPU2からスタートトリガ信号の導出線30が接続され、その出力側は、第1のCPU1に接続されている。相カウンタ29は第2のCPU2が例えばBTDC90°のクランク角度位置を検出したときに発生するスタートトリガ信号によってその計数値をレジスタ(図示せず)にストアすると共に計数値を零にリセットシて再び一定周波数のクロックパルスの計数を開始する。従って、Meカウンタ29のレジスタにストアされている計数値は今回及び前回のスタートトリガ信号の発生間のクロックパルス数、即ち、スタートトリガ信号の発生時間間隔を表わす。
この計数値は第1のCPU1により読込まれ、エンジン回転数Neの逆数に比例したパラメータ軸の演算に使用され、このパラメータMeはエンジン回転数を表す情報として燃料噴射量演算の際のパラメータの1つとして用いられる。」(第3頁左下欄第20行-同頁右下欄第17行)

(d)「第2のCPU2は点火時期制御プログラムとしてクランプ角度信号T24の発生ごとに実行されるクランク割込処理プログラム(第4図(b))と、第0ステージで実行されるクランク割込処理プログラムの終了に引続いて行われるθIG-DUTY演算処理プログラム(第4図(c))の2つのプログラムを実行し、θIG-DUTY演算処理の実行中にクランク角度信号T24が入力したときにはクランク割込処理を優先して実行する。」(第4頁右下欄第7行-同頁同欄第15行)

(e)「一方、第1のCPUはFI演算処理プログラムを実行する。このFI演算処理は第2のCPU2側のクランク割込処理においてステージ3、即ちBTDC90°のクランク角度位置が検出されたときに信号線26を介してCPU2からCPU1へ出力される前記トリガ信号qの入力を受けてその実行が開始される。又、トリガ信号qはエンジン運転状態、例えばエンジン回転数Ne、吸気管内絶対圧PBA等の状態により起動するタイミングをエンジン運転状態に応じて変え、これによって噴射タイミングも制御される。そしてこのFI演算処理では、PBAトランスジューサ5からの吸気管内絶対圧信号PBA、スロットル弁開度信号θTM排気ガス中の02濃度検出値等のデータの読み込み、及びMeカウンタ29で計数されたMeデータの読み込み、後述する燃料噴射時間TOUTの演算、ならびにTOUT演算演算終了時にカウンタ回M7における所定気筒のカウンタの起動制御等を実行する。」(第5頁左下欄第10行-同頁右下欄第8行)

また、引用例において、各中央演算処理装置がそれぞれ演算を行う際にその演算に必要な処理過程を処理していることは自明な事項である。
してみると、引用例には、
『内燃エンジンの制御の際に生じる情報を2つの中央演算処理装置を用いて、互いに依存する異なる処理過程において処理するための制御装置であって、
「第1の中央演算処理(1)」および「第2の中央演算装置(2)」が設けられており、「第1の中央演算処理(1)」および「第2の中央演算装置(2)」には異なる処理の情報が供給され、さらに「第1の中央演算処理(1)」および「第2の中央演算装置(2)」は、「演算開始用トリガ信号線(26)」、「データ転送用信号線(27)(28)」、「スタートトリガ信号の導出線(30)」、および「Meカウンタ(29)」を介して接続されている形式の制御装置において、
処理過程として、燃料噴射量の演算の処理過程およびクランク角度位置を表す信号を用いた点火時期の演算の処理過程が設けられ、前記燃料噴射量の演算の処理過程が「第1の中央演算処理(1)」に割り当てられ、前記クランク角度位置を表す信号を用いた点火時期の演算の処理過程が「第2の中央演算装置(2)」に割り当てられ、燃料噴射量の演算が「第1の中央演算処理(1)」によって処理され、クランク角度位置を表す信号を用いた点火時期の演算が「第2の中央演算装置(2)」によって処理されるように構成した制御装置』との発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。

3.対比
中央演算装置をコントローラとして用いることは一般的に行われていることである。
また、上記摘記事項(e)及び第4図の記載からみて、第2の中央演算処理装置からのトリガ信号qに同期して所定のタイミングでデータを取り込み、所定の演算を処理していると認められ、引用例発明の「第2中央処理装置の燃料噴射量の演算の処理過程」は、本願発明の「時間同期処理過程」に含まれるものと認められる。
以上の事項を考慮すると、引用例発明の「内燃エンジン」、「第1の中央演算処理(1)および第2の中央演算装置(2)」、「第2の中央演算装置(2)」、「第1の中央演算装置(1)」、「クランク角度位置を表す信号を用いた点火時期の演算の処理過程」、「燃料噴射量の演算の処理過程」、「クランク角度位置を表す信号を用いた点火時期の演算」、「燃料噴射量の演算」「演算開始用トリガ信号線(26)、データ転送用信号線(27)(28)、スタートトリガ信号の導出線(30)、およびMeカウンタ(29)」は、それぞれ本願発明の「内燃機関」、「2つのコントローラ(1,2)」、「第1のコントローラ」、「第2のコントローラ」、「角度同期処理過程」、「時間同期処理過程」、「角度同期のタスク」、「時間同期のタスク」、「プロセッサ・コミュニケーション手段(3)」に相当するので、両者は、
「内燃機関の制御の際に生じる情報を複数個のコントローラを用いて、互いに依存する異なる処理過程において処理するための制御装置であって、
2つのコントローラ(1,2)が設けられており、該コントローラには異なる処理過程の情報が供給され、さらに前記コントローラはプロセッサ・コミュニケーション手段(3)を介して接続されている形式の制御装置において、
処理過程として、少なくとも1つの第1の処理過程が時間同期処理過程として設けられ、さらに第2の処理過程として角度同期処理過程が設けられ、
前記時間同期処理過程は第1のコントローラによって割当てられ、前記角度同期処理過程は第2のコントローラに割当てられ、それによって時間同期のタスクは第1のコントローラによって処理され、角度同期のタスクは第2のコントローラによって処理されるように構成したことを特徴とする制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、機能を処理するのに対し、引用例発明では、機能を処理しているかどうか明記されていない点。

4.当審の判断
(相違点1について)
上記相違点1を検討すると、演算などの処理を行う際に、その演算と関連する機能も処理することは当業者が当然に考えることであるので、引用例発明において、演算などの処理を行う際に情報だけでなく、機能も処理することは当業者が容易に考えられる事項である。
よって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用例発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

5.審判請求人の主張
審判請求人は、平成17年7月19日付の意見書において以下の旨の事項を主張している。
「特に前記引用例では、クランク割込みと点火時期の演算がクランク軸角度位置を表す信号を用いて第2中央演算処理装置によって処理され、さらにこの第2の中央演算処理装置からのトリガ信号によって開始される、燃料噴射量の計算は、第1の中央演算処理装置によって処理されております。つまりこれらの処理は本願のように相互に完全に独立して行われているものではありません。すなわち本願ではそれぞれの処理は、異なった時間同期処理過程と角度同期処理過程で完全に独立して行われておりますが、前記引例における処理では、1つの信号に基づいた2つの中央演算処理装置による相互的な制御がなされているに過ぎません(クランク割込み及び点火時期の演算と、該演算開始信号に基づく燃料噴射量の演算)。」
しかしながら、請求項5には、第1の中央演算処理装置の処理と第2中央演算処理装置の処理が、時間同期処理過程と角度同期処理過程で完全に独立して行われている旨の記載があるとは認められず、請求項5に係る発明では、2つのコントローラにプロセッサ・コミュニケーション手段(3)が接続されていること、および発明の詳細な説明の段落【0032】の記載からみて、2つのコントローラの間でインターフェース(3)を介して必要な信号が交換されていると認められるので、請求項5に係る発明においては、第1の中央演算処理装置の処理と第2中央演算処理装置の処理が、必ずしも、時間同期処理過程と角度同期処理過程で完全に独立して行われているとは認められない。
したがって、請求項5に係る発明については、上記主張の根拠がないので、上記主張を採用しない。

なお、上記主張が、引用例発明の点火時期の演算の処理過程、燃料噴射量の演算の処理過程が、それぞれ本願発明の「角度同期処理過程」、「時間同期処理過程」に該当しない旨の主張であると解し、仮に、引用例発明の点火時期の演算の処理過程と、燃料噴射量の演算の処理過程が、本願発明の「角度同期処理過程」と「時間同期処理過程」に該当しないとしても、2つのコントローラのそれぞれにどのような処理過程をどのように割り当てるかは設計的事項であるので、2つのコントローラの一方に「角度同期処理過程」を割り当て、他方に「時間同期処理過程」を割り当てて、それぞれのタスクを処理させることは当業者が容易に考えられる事項である。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-03 
結審通知日 2006-04-05 
審決日 2006-04-19 
出願番号 特願平3-18791
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清木 泰石井 茂和  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 佐藤 智康
篠原 功一
発明の名称 情報および機能の処理方法  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 久野 琢也  
代理人 山崎 利臣  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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