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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1142892
審判番号 不服2003-9025  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-02-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-21 
確定日 2006-09-01 
事件の表示 特願2000-200714「乗用苗植機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月 6日出願公開、特開2001- 28913号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成5年3月5日に出願した特願平5-44186号の一部を特許法第44条第1項の規定により分割して平成12年7月3日に新たな特許出願としたものであって、平成15年3月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月20日に手続補正がなされたものである。
そして、その請求項1〜2に係る発明は、平成15年6月20日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜2に記載されたとおりのものと認められ、その内の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

(本願発明)
「乗用走行車体の後側に苗載台を装備した苗移植作業機を装着し、該乗用走行車体の前輪と後輪の上側にステップと座席を設けた乗用苗植機において、座席の前側のステップよりも座席の後側のステップを高い位置に配置し、該高い位置に配置された車体後部のステップの左右側と後側とに苗載台の前端よりも低いガード体を設けたことを特徴とする乗用苗植機。」

2.引用例
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実願平2-67978号(実開平4-26185号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「乗用田植機における補助デッキ構造」に関して、図面の第1〜3図とともに、次の記載がある。
(イ)「…補助デッキをケーシング体に沿って装着した場合は、ステップ面が補助デッキにより広幅面となってオペレータの乗り降り動作を容易にすることができ、さらに、補助デッキ上には予備苗を載置して苗の補給を容易にすることができるものである。」(明細書5頁7〜12行)
(ロ)「本考案の実施例を図面にもとづき詳説すれば、第1図において、(A)は乗用田植機であり、同乗用田植機(A)は自走可能な走行部(1)の後方に植付部(2)を昇降リンク機構(3)を介して連結し、…(中略)…また、機体フレーム(5)の前部下側には左右横外側方に向けてそれぞれ左右フロントアクスルケース(9)(9)を突設し、同ケース(9)(9)の先端に前車輪(10)(10)を取付けている。…(中略)…また、機体フレーム(5)の後部には、リアアクスルケース(12)をミッションケース(8)に連結して取付け、同ケース(12)の左右側面にそれぞれ後車輪(13)(13)を取付けている。また、(14)は、ステップ面(15)、…座席取付部(18)等を一体的に形成したケーシング体であり、…機体フレーム(5)上に張設している。また、(19)はボンネットであり、…(中略)…座席取付部(18)上に座席(22)を載置している。また、(23)は上記ケーシング体(14)の左右両側位置に、同ケーシング体(14)に沿って設ける補助デッキであって、同補助デッキ(23)は、前部補助デッキ(23-1)と後部補助デッキ(23-2)により構成され、…」(同6頁2行〜7頁19行)
(ハ)「…ステップ面(15)と補助デッキ(23)によって広幅面を構成してオペレータの乗り降りを容易にすることができる。また、この広幅面上に予備苗を載置して苗の補給を容易にするものである。」(同9頁3〜7行)
(ニ)第1図には、植付部(2)の上方の前端よりも後部補助デッキ(23-2)の後端の上面が相対的に低い位置に配置されている態様が示されており、また、第1,2図には、座席の前側のステップ面(15)及び前部補助デッキ(23-1)の上面よりも座席の後側の後部補助デッキ(23-2)の上面が相対的に高い位置となるように配置されている態様が示されている。

これらの記載事項ないし図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「走行部(1)の後方に植付部(2)を連結し、該走行部(1)の前車輪(10)と後車輪(13)の上側にステップ面(15)、補助デッキ(23)及び座席(22)を設けた乗用田植機(A)において、座席(22)の前側のステップ面(15)及び前部補助デッキ(23-1)よりも座席の後側の後部補助デッキ(23-2)を相対的に高い位置に配置し、該後部補助デッキ(23-2)よりさらに高い位置に植付部(2)の前端を配置した乗用田植機。」

(2)同じく、特開昭61-155072号公報(以下、「引用例2」という。)には、「乗用型作業機」の発明に関して、図面の第1、2図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「(5)は乗用型作業機の一種である8条植乗用型田植機であって、乗用型走行車体(2)の後部にリンク機構(6)を介して上下動自在に作業機の一種である田植作業機(3)を装着して構成されている。…(中略)…ステップ(4)は、操縦席(1)の四方及びボンネット(9)の四方に略同一平面で設けられており、該ステップ(4)の上面より立設された作業者の手すりを兼ねたガード杆(15)の操縦席(1)の左右部に予備苗載台(13)が設けられている。」(1頁右下欄17行〜2頁左上欄14行)
(ロ)「…田植作業機(3)の苗タンク(17)の左右横巾方向に沿って設けられた操縦席(1)の後方の巾広いステップ(4)上にて作業者は田植作業機(3)の苗タンク(17)に予備苗載台(13)より苗を供給したり、各部の点検をしたりすることが容易に行なえるものである。」(同右上欄20行〜左下欄6行)
(ハ)その第2図には、ステップ(4)の操縦席(1)の後方部分の左右側と後側とに亘って、ガード杆(15)が設けられている態様が、また、当該ガード杆(15)の高さが、苗タンク(17)の上方の前端とほぼ同じ高さとなるように設けられている態様が図示されている。

3.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を比較すると、その機能ないし構造から見て、引用発明の「走行部(1)の後方に植付部(2)を連結し」た「乗用田植機(A)」が、本願発明の「乗用走行車体の後側に苗載台を装備した苗移植作業機」に相当することが明らかであるから、引用発明の「走行部(1)」、「植付部(2)」、「前車輪(10)」、「後車輪(13)」、「ステップ面(15)」と「前部補助デッキ(23-1)」、「座席(22)」、「後部補助デッキ(23-2)」、「植付部(2)の前端」は、それぞれ、本願発明の「乗用走行車体」、「苗載台を装備した苗移植作業機」、「前輪」、「後輪」、「座席の前側のステップ」、「座席」、「座席の後側のステップ」、「苗載台の前端」に相当するといえる。
また、本願発明の「座席の後側のステップ」は、「苗載台の前端よりも低いガード体」が設けられるものであるから、当該ステップ自体は、引用発明と同様に、苗載台の前端よりも低いものであることが明らかである。

そうすると、両者は、
「乗用走行車体の後側に苗載台を装備した苗移植作業機を装着し、該乗用走行車体の前輪と後輪の上側にステップと座席を設けた乗用苗植機において、座席の前側のステップよりも座席の後側のステップを高い位置に配置し、該高い位置に配置された車体後部のステップは苗載台の前端よりも低い乗用苗植機」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明では、「車体後部のステップの左右側と後側とに苗載台の前端よりも低いガード体を設けた」のに対し、引用発明では、後部補助デッキにこのようなガード体を設けていない点。

(2)判断
ところで、引用例2には、乗用型走行車体の後部に苗タンクを装備した田植作業機を装着した乗用型田植機(本願発明の「乗用走行車体の後側に苗載台を装備した苗移植作業機を装着した乗用苗植機」に相当する。)に関して、操縦席(本願発明の「座席」に相当する。)の四方にステップを設けるとともに、少なくとも苗タンクに予備苗載台より苗を供給したりするための操縦席の後方のステップ(本願発明の「車体後部のステップ」に相当。)の上面に、作業者の手すりを兼ねたガード杆(本願発明の「ガード体」に相当。)を立設するように構成したことが記載されており、また、その第2図には、ステップ(4)の操縦席(1)の後方部分の左右側と後側とに亘って、ガード杆(15)が設けられている態様が図示されている。
そうすると、引用発明の、同じく予備苗を補給するためにも使用される後部補助デッキ(「2.(1)」の(ハ)参照)に、引用例2に示されたところのガード杆の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
そして、上述のガード杆の構成を採用する際に、引用例2記載のガード杆の高さが、苗タンク(本願発明の「苗載台」に相当する。)の前端とほぼ同じ高さとなるように設けられているように、その苗タンクへの苗供給作業の邪魔にならないような高さ、いいかえれば、当該作業の支障とならないような高さとすることは、当業者が当然に考慮して採用する設計的事項であるといえる。
(ちなみに、審判請求人は、本願発明の「苗載台の前端よりも低いガード体」とした点に関して、平成15年6月20日付けの手続補正書により、「ガード体が苗補給作業の邪魔にならず」(段落【0006】参照)という作用効果を明細書中に新たに追加するとともに、審判請求書(例えば、第4頁参照)においても、当該作用効果を奏することを強調しているものの、そのような構成は当業者が当然に考慮して採用する設計的事項であって、その作用効果も自明な事項にすぎないことは上述したとおりである。)
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明に引用例2に示されたところのガード杆の構成を採用することにより、当業者が容易に想到することができたものといわざるを得ない。

そして、本願発明の奏する作用効果も、引用例1及び2に記載の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-19 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-06-26 
出願番号 特願2000-200714(P2000-200714)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 木原 裕
宮川 哲伸
発明の名称 乗用苗植機  

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