• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04B
管理番号 1142899
審判番号 不服2004-11552  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-07 
確定日 2006-09-01 
事件の表示 平成 9年特許願第100591号「斜板式2連ピストンポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月27日出願公開、特開平10-288148〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成9年4月17日に出願したものであって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成18年6月5日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されて事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「一対の回転軸を平行に近接配置し、これら回転軸と一体的に回転するよう構成したシリンダブロックを、それぞれ外周部に歯車機構を設けて相互に結合し、回転駆動機構から一方の回転軸に与える駆動力を前記歯車機構を介して他方の回転軸に伝達して2個のポンプを同時に駆動するように構成し、ポンプ動作を行う前記シリンダブロックに対し摺動自在にかつ液密的に当接配置されるポートプレートの保持面側に、ばねと高圧油が導入されたブッシュによる押圧手段を設けて前記ポートプレートを前記シリンダブロックの摺動面へ押接するように構成すると共に、前記回転軸とシリンダブロックとをそれぞれ別部材で構成し、前記回転軸とシリンダブロックとをスプライン結合等による駆動力伝達機構により結合すると共に、前記回転軸に対するシリンダブロックの軸方向位置を規制するための位置決め機構を設けた斜板式2連ピストンポンプにおいて、
前記各回転軸の外周部には、前記シリンダブロックに収納された各ピストンの球頭部を保持するシューの内径側に係止されたリテーナの内周面に当接し前記斜板の傾斜に応じて該リテーナの内周面を案内支持する支持部材が前記シリンダブロック端部に隣接して設けられており、
前記押圧手段は、前記ポートプレート裏面側からの押接力(Fcn)を前記ポートプレートの表面側における前記シリンダブロックとの開離力(Fsn)よりも大きくなるように設定されており、さらに
前記回転軸に対するシリンダブロックの軸方向位置を規制するための位置決め機構は、前記シリンダブロックの内径部に段差部を設けると共に、これと対応する段差部を前記回転軸に設けたことを特徴とする斜板式2連ピストンポンプ。」

2.引用文献記載の発明
(1)当審において平成18年4月6日付けで通知した拒絶の理由に引用された実願昭63-111945号(実開平2-35981号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が第1図とともに記載されている。

a)「平行する回転軸に結合して回転自由に支持された2組のシリンダブロックの内側に複数のピストンを収装し、シリンダブロックから軸方向に摺動自由に突出するこれらのピストンの基端を、シリンダブロックに対して傾斜状態に支持された斜板に摺接保持するとともに、これらのシリンダブロックの一方の回転軸を回転駆動する駆動機構と、この回転力をもう一方のシリンダブロックに伝達する伝達機構とを備えた斜板式二連ポンプにおいて、各回転軸とシリンダブロックとを斜板の近傍で結合するとともに、伝達機構としてこの結合部と略同一の垂直面上に位置して互いに噛み合うギアをシリンダブロックの外周部にそれぞれ形成したことを特徴とする斜板式二連ポンプ。」(実用新案登録請求の範囲)

b)「(実施例)
第1図に本考案の実施例を示す。
1と2はシリンダブロックであり、平行する回転軸3と4にそれぞれ結合部5と6において結合する。回転軸3と4は支点7と8においてポンプボディにそれぞれ回転自由に支持され、シリンダブロック1と2に対して一定角度をなすようにポンプボディの内側に支持された斜板9と10を回転自由に貫通する。また、回転軸3の端部には駆動機構として図示されないモータが結合する。
シリンダブロック1と2の内部にはそれぞれ複数のピストンが収装され、このピストンの基端部11がシュー12を介して斜板9と10に摺接保持される。なお、前記の結合部5と6はこれらのシュー12の内側に位置する。
また、モータに回転駆動される回転軸3の回転力をシリンダブロック2に伝達する伝達機構として、シリンダブロック1と2の外周部に、互いに噛み合うギヤ13と14が結合部5及び6と略同一の垂直面上に形成される。」(明細書第4頁末行〜同第5頁第19行)

したがって、引用文献1には次の発明(以下、単に「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「一対の回転軸3,4を平行に近接配置し、これら回転軸3,4と一体的に回転するよう構成したシリンダブロック1,2を、それぞれ外周部にギヤ13,14を設けて相互に結合し、駆動機構としてのモータから一方の回転軸3に与える駆動力を前記ギヤ13,14を介して他方の回転軸4に伝達して2個のポンプを同時に駆動するように構成した斜板式2連ピストンポンプ。」

(2)当審において平成18年4月6日付けで通知した拒絶の理由に引用された実願平5-7538号(実開平6-67867号)のCD-ROM(以下、「引用文献2」という。)
(A)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が図2,3とともに記載されている。

a)「 【0002】
【従来の技術】
一般に、斜板式ピストンポンプ・モータは、図2に示すように、基本的には、駆動軸10と、この駆動軸10と一体的に形成し駆動され、軸方向に摺動自在に複数のピストン40を支持するシリンダブロック12と、この駆動軸10を回転自在に収納するハウジング16と、このハウジング16の一端部を閉塞するカバー18とから構成される。そして、図3に拡大して示すように、シリンダブロック12の端面12aとカバー18上に設けられる給排ポート20との間には、この間を接続するための、前記シリンダブロック12の端面12a上に液密且つ摺動自在に一端面22aを対接するポートプレート22と、このポートプレート22の他端面22b上に液密に一端面24aを対接してこれを押圧するばね26付きブッシュ24と、このブッシュ24を液密に内挿するようカバー18内において給排ポート20に連続して設けられるブッシュ穴28とからなる圧油通路30が設けられている。」(第4頁第6〜19行段落0002)

b)「 【0005】
そして、このような構成からなる斜板式ピストンポンプ・モータは、例えば駆動軸10が図示しない駆動源により駆動されると、これと共に回動するシリンダブロック12のピストン穴34のピストン40が、その球端部42並びにシュウ44、リターンプレート46および弾性部材48を介して、この時ハウジング16内に固定されている斜板38によりピストン穴34内を往復動し、これにより圧油がピストン穴34と給排ポート20との間を三日月ポート36および圧油通路30を介して吸引および吐出され、ポンプ作用が達成される。この場合、ブッシュ24の自由端面24bには、圧油およびばね26の付勢力が常に負荷されているので、ポートプレート22の接触端面22aはシリンダ端面12aに常に押接されて、その間を常時液密的且つ摺動自在に保持されている。そこで、もし前記吸引行程においてピストン34穴内に負圧が発生したとしても、シュー44は斜板38に対して離脱することなく常に押接されるよう構成されていることは明らかである。」(第5頁第6〜19行段落0005)

(B)上記(A)及び図2ないし4から分かること。
a)上記(A)a)の「駆動軸10と一体的に形成し駆動され、軸方向に摺動自在に複数のピストン40を支持するシリンダブロック12」、上記(A)b)の「駆動軸10が図示しない駆動源により駆動されると、これと共に回動するシリンダブロック12」及び図2から、シリンダブロック12は駆動軸10と一体的に形成され、したがって一体的に回転されること。

b)上記(A)a)の「シリンダブロック12の端面12aとカバー18上に設けられる給排ポート20との間には、この間を接続するための、前記シリンダブロック12の端面12a上に液密且つ摺動自在に一端面22aを対接するポートプレート22」から、ポートプレート22はシリンダブロック12に対し摺動自在にかつ液密的に当接配置されること。

c)上記(A)a)の「シリンダブロック12の端面12aとカバー18上に設けられる給排ポート20との間には、この間を接続するための、前記シリンダブロック12の端面12a上に液密且つ摺動自在に一端面22aを対接するポートプレート22と、このポートプレート22の他端面22b上に液密に一端面24aを対接してこれを押圧するばね26付きブッシュ24…(中略)…が設けられている。」及び上記(A)b)の「ブッシュ24の自由端面24bには、圧油およびばね26の付勢力が常に負荷されているので、ポートプレート22の接触端面22aはシリンダ端面12aに常に押接されて、その間を常時液密的且つ摺動自在に保持されている。そこで、もし前記吸引行程においてピストン34穴内に負圧が発生したとしても、シュー44は斜板38に対して離脱することなく常に押接されるよう構成されていることは明らかである。」から、ポートプレート22の保持面側に、ばね26と高圧油が導入されたブッシュ24による押圧手段を設けて前記ポートプレート22をシリンダブロック12の摺動面へ常時押接するように構成すると共に、ポートプレート22裏面側からの押接力を前記ポートプレート22の表面側におけるシリンダブロック12との開離力よりも大きくなるように設定していること。

(C)引用文献2記載の発明
したがって、引用文献2には、次の発明(以下、この発明を「引用文献2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「駆動軸10と一体的に回転してポンプ動作を行うシリンダブロック12に対し摺動自在にかつ液密的に当接配置されるポートプレート22の保持面側に、ばね26と高圧油が導入されたブッシュ24による押圧手段を設けて前記ポートプレート22を前記シリンダブロック12の摺動面へ押接するように構成した斜板式単連ピストンポンプにおいて、
前記押圧手段は、前記ポートプレート22裏面側からの押接力を前記ポートプレート22の表面側における前記シリンダブロック12との開離力よりも大きくなるように設定し、前記駆動軸10とシリンダブロック12とを一体的に形成した斜板式単連ピストンポンプ。」

(3)当審において平成18年4月6日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開昭48-58403号公報(以下、「引用文献3」という。)
(A)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が図2,3とともに記載されている。

a)「本発明はある種のアキシヤルシリンダーポンプに係わり、以下にこの種類について述べる。この種類のシリンダーポンプは回転軸と平行に延び、回転軸まわりに等距離に、円周上に一様に軸まわりに配置されたシリンダー内径をもつポンプハウジング中にて軸まわりに回転するよう装着されたいわゆるシリンダー胴中に複数個のシリンダーが配置され、胴の一回転で各のシリンダー中のピストンの周期的な往復運動を作りだすためにハウジングに対して相対的な胴の回転が使われ、さらには各のシリンダーと高圧及び低圧ポートとの別々の間における流量コントロールが、ピストンの動きの方向に従って各々のシリンダとつながり胴の端表面に配置されたポートと、互のすべりシーリング表面でそれぞれ胴及びハウジングとにつながり、胴の回転によって各々のシリンダーポートと交互につながる静止したハウジング中の高圧及び低圧ポートとの連動によってなされる。この種のアキシヤルシリンダ回転斜板ポンプにおいて、ピストンの始動は各々のピストンの延長部分とハウジング中にて静止し、ピストンの所定の行程に従い回転軸に垂直な平面に対して傾く軌跡面との連動によってなしうる。」(公報第2頁左上欄第12行〜同頁右上欄第14行)

b)「図面を参照すれば、いわゆるシリンダ胴2がハウジング1の軸まわりに回転するようにされている。胴2は、軸受4及び5によってハウジング1中に支持されている軸3と同じ回転をするように結合されている。軸受5は半径方向力と同様に軸方向スラスト力を伝えうる種類のころがり軸受であり、軸3はころがり軸受5で止まっているフランジ6aを通してポンプハウジング1にシリンダ胴2からの軸方向スラスト力を伝えるためにシリンダ胴2の端面と連動するフランジ6を具備する。」(公報第3頁左上欄下から3行目〜同頁右上欄第7行)

(B)上記(A)及び第1図から分かること。
a)上記(A)a)、上記(A)b)及び第1図から、このアキシヤルシリンダーポンプは、軸3によってシリンダ胴2が回転するタイプの斜板式単連ピストンポンプであること。

b)上記(A)b)及び第1図から、軸3とシリンダー胴2とはそれぞれ別部材で構成され、かつ、軸3とシリンダー胴2とは同軸で回転するように結合されており、かつ、シリンダ胴2から軸3に軸方向スラスト力が作用し、この軸方向スラスト力はシリンダ胴2の内径部の端面と軸3のフランジ6との連動により軸3に伝達されるようにされていること。したがって、軸3とシリンダー胴2とをそれぞれ別部材で構成し、前記軸3とシリンダー胴2とをスプライン結合等による駆動力伝達機構により結合されていること。

c)上記(A)b)及び第1図から、シリンダ胴2から軸3に軸方向スラスト力が作用し、この軸方向スラスト力はシリンダ胴2の内径部の端面と軸3のフランジ6との連動により軸3に伝達されること。したがって、シリンダ胴2の内径部の端面と軸3のフランジ6とによって、軸3に対するシリンダー胴2の軸方向位置を規制するための位置決め機構が構成されていること。

(C)引用文献3記載の発明
したがって、引用文献3には、次の発明(以下、この発明を「引用文献3記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「軸3とシリンダー胴2とをそれぞれ別部材で構成し、前記軸3とシリンダー胴2とをスプライン結合等による駆動力伝達機構により結合すると共に、前記軸3に対するシリンダー胴2の軸方向位置を規制するための位置決め機構を設けた斜板式単連ピストンポンプにおいて、
前記軸3に対するシリンダー胴2の軸方向位置を規制するための位置決め機構は、シリンダー胴2の内径部に端面部を設けると共に、これと対応するフランジ6を前記軸3に設けた斜板式単連ピストンポンプ。」

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明の「駆動軸」、「シリンダブロック1,2」及び「ギヤ13,14」が、本願発明の「回転軸」、「シリンダブロック」及び「歯車機構」に相当する。したがって、本願発明と引用文献1記載の発明は、

「一対の回転軸を平行に近接配置し、これら回転軸と一体的に回転するよう構成したシリンダブロックを、それぞれ外周部に歯車機構を設けて相互に結合し、回転駆動機構から一方の回転軸に与える駆動力を前記歯車機構を介して他方の回転軸に伝達して2個のポンプを同時に駆動するように構成した斜板式2連ピストンポンプ。」

で一致し、次の〔相違点1〕、〔相違点2〕及び〔相違点3〕で相違している。

〔相違点1〕
本願発明が「ポンプ動作を行う前記シリンダブロックに対し摺動自在にかつ液密的に当接配置されるポートプレートの保持面側に、ばねと高圧油が導入されたブッシュによる押圧手段を設けて前記ポートプレートを前記シリンダブロックの摺動面へ押接するように構成する」と共に「前記押圧手段は、前記ポートプレート裏面側からの押接力(Fcn)を前記ポートプレートの表面側における前記シリンダブロックとの開離力(Fsn)よりも大きくなるように設定されて」いるのに対して、引用文献1記載の発明において「ポートプレート」に類するものがそもそも備えられているか否か不明な点。

〔相違点2〕
本願発明が「回転軸とシリンダブロックとをそれぞれ別部材で構成し、前記回転軸とシリンダブロックとをスプライン結合等による駆動力伝達機構により結合すると共に、前記回転軸に対するシリンダブロックの軸方向位置を規制するための位置決め機構を設け」ると共に「回転軸に対するシリンダブロックの軸方向位置を規制するための位置決め機構は、前記シリンダブロックの内径部に段差部を設けると共に、これと対応する段差部を前記回転軸に設け」ているのに対して、引用文献1記載の発明において回転軸3,4とシリンダダブロック1,2の結合のしかたがそもそも不明な点。

〔相違点3〕
本願発明が「各回転軸の外周部には、前記シリンダブロックに収納された各ピストンの球頭部を保持するシューの内径側に係止されたリテーナの内周面に当接し前記斜板の傾斜に応じて該リテーナの内周面を案内支持する支持部材が前記シリンダブロック端部に隣接して設けられて」いるのに対して、引用文献1記載の発明において「リテーナ」及び「支持部材」に類するものがそもそも備えられているか否か不明な点。

4.判断
〔相違点1〕、〔相違点2〕及び〔相違点3〕について以下に検討する。

〔相違点1〕について
本願発明のように「ポンプ動作を行うシリンダブロックに対し摺動自在にかつ液密的に当接配置されるポートプレートの保持面側に、ばねと高圧油が導入されたブッシュによる押圧手段を設けて前記ポートプレートを前記シリンダブロックの摺動面へ押接するように構成する」と共に「前記押圧手段は、前記ポートプレート裏面側からの押接力を前記ポートプレートの表面側における前記シリンダブロックとの開離力よりも大きくなるように設定」することは、上記2.(2)(C)に既述したように、引用文献2に記載されている。
そして、引用文献1記載の発明も引用文献2記載の発明も共に斜板式ピストンポンプであるから、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の発明を適用することにより、当該〔相違点1〕に係わる本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。

〔相違点2〕について
上記2.(3)(C)に既述したように、引用文献3には、「軸3とシリンダー胴2とをそれぞれ別部材で構成し、前記軸3とシリンダー胴2とをスプライン結合等による駆動力伝達機構により結合すると共に、前記軸3に対するシリンダー胴2の軸方向位置を規制するための位置決め機構を設けた斜板式単連ピストンポンプにおいて、軸3に対するシリンダー胴2の軸方向位置を規制するための位置決め機構は、シリンダー胴2の内径部に端面部を設けると共に、これと対応するフランジ6を前記軸3に設けた斜板式単連ピストンポンプ。」なる発明が記載されている。つまり、引用文献3記載の発明では、スプライン結合等した軸3と外側の部材であるシリンダー胴2の軸方向位置を規制するための位置決め機構を、外側の部材であるシリンダー胴2の内径部に端面部を設けると共に、これと対応するフランジ6を前記軸3に設けることにより構成している。
ところで、スプライン結合した回転軸と外側の部材の軸方向位置を規制するための位置決め機構を、「外側の部材の内径部に段差部を設けると共に、これと対応する段差部を回転軸に設ける」ことにより構成することは、周知の技術である(例えば、実願昭55-31984号(実開昭56-133130号)のマイクロフィルム(スプライン結合した「回転軸8」と外側の部材である「プーリ16」の軸方向位置を規制するための位置決め機構を、外側の部材である「プーリ16」の「ボス部20」の内径部に段差部である「嵌合部30」を設けると共に、これに対応する段差部である「肩部30」を「回転軸8」に設けている。)、実願平3-28059号(実開平4-122854号)のマイクロフィルム(スプライン結合した「シャフト4」と外側の部材である「プーリ部2」の軸方向位置を規制するための位置決め機構を、外側部材である「プーリ部2」の「ボス部1」に段差部を設けると共に、これと対応する「段差部4a」を「シャフト4」に設けている。)参照)。
そして、引用文献1記載の発明も引用文献3記載の発明も共に斜板式ピストンポンプであるから、引用文献1記載の発明に引用文献3記載の発明を適用して、「回転軸3,4とシリンダブロック1,2とをそれぞれ別部材で構成し、前記回転軸1,2とシリンダブロック3,4とをスプライン結合等による駆動力伝達機構により結合すると共に、前記回転軸3,4に対するシリンダブロック1,2の軸方向位置を規制するための位置決め機構を設け」、その際に、上記周知の技術を適用して、「前記位置決め機構」を「前記シリンダブロック1,2の内径部に段差部を設けると共に、これと対応する段差部を前記回転軸3,4に設け」たものとすることにより、当該〔相違点2〕に係わる本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
したがって、引用文献1記載の発明に引用文献3記載の発明及び上記周知の技術を適用することにより、当該〔相違点2〕に係わる本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。

〔相違点3〕について
斜板式ピストンポンプにおいて、「回転軸の外周部には、前記シリンダブロックに収納された各ピストンの球頭部を保持するシューの内径側に係止されたリテーナの内周面に当接し前記斜板の傾斜に応じて該リテーナの内周面を案内支持する支持部材が前記シリンダブロック端部に隣接して設け」ることは、周知の技術である(例えば、特開平5-231300号公報、特開平6-147095号公報、特開平8-159013号公報参照。)。
そして、上記周知の技術を引用文献1記載の発明に適用することにより、当該〔相違点3〕に係る本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1ないし3に記載された発明及び上記周知の技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

5.むすび
以上のように、本願発明は、引用文献1ないし3に記載された発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-03 
結審通知日 2006-07-05 
審決日 2006-07-19 
出願番号 特願平9-100591
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志中野 宏和上田 真誠  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 飯塚 直樹
長馬 望
発明の名称 斜板式2連ピストンポンプ  
代理人 浜田 治雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ