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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B
管理番号 1143076
審判番号 不服2002-24924  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-26 
確定日 2006-09-06 
事件の表示 平成11年特許願第344116号「密封包装物の検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月19日出願公開、特開2001-163312〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年12月3日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年2月21日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載される次のとおりのものである。
「血液製剤その他各種の導電性を有する内容物1を電気絶縁性皮膜2で被包した比較的平坦な密封包装物3を搬送しながら、その内容物が存する部分における平坦な対向両面全体のいずれかの部分にピンホールがあるかないかを検査するための装置であって、前記密封包装物3を搬送するための二つのコンベヤ4,4を、前記密封包装物3を受け渡しできる間隔を置いて前後に配置し、前後二つのコンベヤ4,4間の片側から導電子5を搬送路Aに臨ませ、この搬送路Aの反対側からも前記導電子5を挾むような形でその前後に二つの導電子6,6を、両導電子6,6と前記導電子5の3つの導電子が搬送されてくる一つの密封包装物3のうち内容物1が存する部分における平坦な対向両面に搬送路Aの両側から同時に接触する状態を保持する間隔を置いて前記搬送路Aに臨ませ、前記搬送路Aを挾んでその片側から臨ませた導電子5と前記搬送路Aの他の側から前記導電子5を挾むような形でその前後に臨ませた二つの導電子6,6のいずれか一方の側に高圧電源7を接続し、前記搬送路Aを挾んで他の側には、前記導電子5が前記内容物の存する範囲内で搬送路A上の密封包装物と接触している部分と前記二つの導電子6,6のうちの少なくとも一方が前記内容物の存する範囲内で搬送路A上の密封包装物と接触している部分間に、前記高圧電源7から密封包装物3へ高電圧を印加することによって生じる電位差による電流変化が起こっているか否かを検知するための電流検知装置8を接続したことを特徴とする密封包装物の検査装置。」(以下、「本願発明」という)

2.刊行物の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平10-185852号公報(以下、「引用例1」という)、実用新案登録第3047854号(以下、「引用例2」という)には次の事項が同事項に関連する図面とともに記載されている。
(1)引用例1
a.「…略…ピンホール検査装置は、図9が示すように電荷を帯電する帯電体20を流路の中央に配置し、電荷を放電するアース21を流路の両端に備え、この帯電体20とアース21に設けたブラシ状の陽極22と陰極23に被検査物を接触させて流れた電流の大小で包装体のピンホールの有無を検査していた。…中略…包装体にピンホールが存在するとこのピンホールから導電体である食材等の内容物を通じて大きな電流が流れる。これと比較しピンホールがない場合は、絶縁体である包装体の表面しか電流が流れないために流れる電流値が小さい。…中略…電源供給装置を通じて帯電体20から製品に正電荷を与え、製品を通じてアース21に所定値以上の大きさの電流が流れた場合、包装体にピンホールがある不良品と判定している。」(【0006】〜【0008】)
b.「このようにブラシの形状が変形するとこれまでと異なる形状の製品を再度検査する際に電極が製品に接触できない場合もある。ところで、円筒状等の製品の両端には包装体をシールするシール部24があり、特にピンホールはこのシール部24で多く発生する。」(【0014】)
c.「検査工程第1では、図5が示すようにローラ6の回転力によって駆動されるコンベヤ等に案内されて被検査物品9が…略…搬入されてくる。このとき、この被検査物品9は、図示はしていないがベルト7の前方にV字型の案内溝が設けられているため強制的にその長手方向に向かって直列に配列される。…略…搬入速度は、被検査物品9により適時調節が可能である。そして、ベルト7の後方には、被検査物品9を放電体2の内部へと通過させるためのローラ8Aがローラ6と同一の速度で回転しながら被検査物品9の長手方向と直交して上下に設けられている。また、放電体2の後方には、被検査物品9を陰極3A,3B,3C,3D,3Eに接触させるためのローラ8Bがローラ6と同一の速度で回転しながら被検査物品9の長手方向と直交して上下に設けられている。
次に、検査工程第2では、図6が示すようにローラ8Aによって案内された被検査物品9がリング状の放電体2の内部を通過する。このとき放電体2には、10KV〜15KVの高電圧が印加されていて、被検査物品9に正電荷を帯電する。なお、直流電流を直流増幅器によって増幅することで、被検査物品9に最大約200μA程の電流を帯電させることができる。そして、1OKV以上の電圧をかけると10mm程度離れた距離にあるピンホールまでも電流が飛ぶことができる。
次に、検査工程第3では、図7が示すようにローラ8Bに案内されて被検査物品9は、ちょうどその中心が放電体2の中心に来る位置でアース3の陰極3A,3B,3C,3D,3Eに接触する。ここで、陰極3A,3Bは、被検査物品9の長手方向の上部表面に接触し、陰極3C,3Dは、被検査物品9の長手方向の上部表面に接触し、さらに陰極3Eは、被検査物品9のシール部に接触する。
そして、包装体にピンホールが生じている場合は、ピンホールから被検査物品9内に充填された内容物を通りさらにアース3を通じて大きな電流が流れる。この電流を電流検出装置5によって検出しあらかじめ設定してある電流値と比較してピンホールの有無を判定する。」(【0061】〜【0069】)
d.【0061】〜【0066】の記載を斟酌すると、第9図には、
ローラ6の回転力によって駆動される左右のコンベヤ7に案内されて被検査物品9が両コンベヤ間に設けられた検査位置に搬送しながらピンホール検査を行うピンホール検査装置であって、左右コンベヤの間隔は被検査物品9の長さより短く、かつ、その中央部に、アース21との間に10KV〜15KVの高電圧源を設置して、被検査物品9がそのリング状帯電体20の中を通過する際にブラシ状陽極22を持つ被検査物品9帯電体20によって正電荷を帯電され、少なくとも、当該被検査物品9の中心が両コンベヤの中心にあるとき、上方から同時に当該被検査物品9の両端に接する位置に配置したブラシ状アース電極21が記載されている。
記載事項「a〜d」によれば、
引用例1には、「絶縁体である円筒状の包装体にピンホールが存在するとこのピンホールから導電体である食材等の内容物を通じて大きな電流が流れ、ピンホールがない場合は、絶縁体である包装体の表面しか電流が流れないために流れる電流値が小さいという性質を利用して、ローラ6の回転力によって駆動される左右のコンベヤ7に案内されて被検査物品9が両コンベヤ間に設けられた検査位置に搬送しながら行うピンホール検査装置であって、左右コンベヤの間隔は被検査物品9の長さより短く、かつ、その中央部に、アース21との間に高電圧源を設置して、リング状帯電体20の中を被検査物品9が通過する際にブラシ状陽極22を持つ帯電体20によって正電荷を帯電され、少なくとも、当該被検査物品9の中心が両コンベヤの中心にあるとき、上方から同時に当該被検査物品9の両端に接する位置にブラシ状アース電極21を設けた」発明(以下、「引用例1の発明」という)が記載されている。
(2)引用例2
e.「【請求項1】樹脂などの非導電性材料で形成され内部に内容物が充填された密封容器(30)を被検体とし、前記被検体を搬送機(21および22)による搬送中、系内の陽重《「電」の誤記である》極(40)により電圧を印加し、また、これを受ける系内配置の陰電極(40´)間の電気的変化を捉える原理により、ピンホールの有無などのシール不良を検査するピンホール検査装置において、ピロー包装品のような偏平状被検体(30)を対象とし、前記搬送機の全幅に延在するように、直線構成の金属製のホールダー(1)に線径が数十ミクロンから100ミクロン級の微少径で、腰強く且つ復原自在のしなやな非晶質材料としてのアモルファス金属繊維を、電極接触素子(2,3および4以下接触素子という)として、直線束のブラシ状に密生固着し、また、前記接触素子は、搬送進行の下流側から上流側に向かい順次複数段の異なった長さに設定構成し、初段(2)は、被検体(30)の前後および両側シール外端部(32)を、中段(3)は、主として、両側シール及び前後外端部から胴体表裏の表面部(34)との接続部(33)を、終段は、専ら前記胴体表面部(34)を、それぞれ電圧を印加するように、複数段に分けて役割分担する機能を一体化成形し、前記被検体(30)が搬送機により進行通過する際、被検体の表裏面に電圧を印可するように陰陽一組の直線ブラシ状に構成することを特徴とした、ピンホール検査装置用電極。」(実用新案登録請求の範囲および図1,2,3)
記載事項「e」によれば、
「樹脂などの非導電性材料で形成され内部に内容物が充填された密封容器(30)を被検体とし、偏平状被検体(30)を対象とし、被検体の表裏面に電圧を印加するように陰陽一組の直線ブラシ状に構成したピンホール検査装置用電極」の発明が記載されている。
3.対比・判断
(1)本願発明と引用例1の発明とを対比すると、
引用例1の発明の、「導電体である食材」、「絶縁体である包装体」、「左右のコンベヤ」、「ブラシ状陽極22を持つリング状帯電体20」、「ブラシ状アース電極21」は、本願発明の、「導電性を有する内容物」、「電気絶縁性皮膜」、「二つのコンベヤ」、「導電子5」、「二つの導電子6,6」に相当するから、両者は、
「血液製剤その他各種の導電性を有する内容物1を電気絶縁性皮膜2で被包した密封包装物3を搬送しながら、その内容物が存する部分における平坦な対向両面全体のいずれかの部分にピンホールがあるかないかを検査するための装置であって、前記密封包装物3を搬送するための二つのコンベヤ4,4を、前記密封包装物3を受け渡しできる間隔を置いて前後に配置し、前後二つのコンベヤ4,4間で導電子5を搬送路Aに臨ませ、この搬送路Aの前後に二つの導電子6,6を、両導電子6,6と前記導電子5の3つの導電子が搬送されてくる一つの密封包装物3のうち内容物1が存する部分における同時に接触する状態を保持する間隔を置いて前記搬送路Aに臨ませ、前記搬送路Aを挾んでその片側から臨ませた導電子5と二つの導電子6,6のいずれか一方の側に高圧電源7を接続し、他の側には、前記導電子5が前記内容物の存する範囲内で搬送路A上の密封包装物と接触している部分と前記二つの導電子6,6のうちの少なくとも一方が前記内容物の存する範囲内で搬送路A上の密封包装物と接触している部分間に、前記高圧電源7から密封包装物3へ高電圧を印加することによって生じる電位差による電流変化が起こっているか否かを検知するための電流検知装置8を接続したことを特徴とする密封包装物の検査装置。」で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:本願発明では、全体のいずれかの部分にピンホールがあるかないかを検査する対象が「平坦な対向両面を有するもの」であるのに対し、引用例1の発明では、「円筒状等の製品」である点。
相違点2:本願発明では、片側から導電子5を、その反対側から前記導電子5を挾むような形でその前後に二つの導電子6,6を、両導電子6,6と前記導電子5の3つの導電子が配置されているのに対し、引用例1の発明では、リング状帯電体20である点。
相違点3:本願発明では、一方の側に高圧電源7を接続し、前記搬送路Aを挾んで他の側には、前記高圧電源7から密封包装物3へ高電圧を印加することによって生じる電位差による電流変化が起こっているか否かを検知するための電流検知装置8を接続しているのに対し、引用例1の発明では、電流計の配置について格別記載がない点。
以下、相違点について検討する
相違点1に対して、
引用例2には、偏平密封容器が記載されている。
また、被検体の形状は、包装物品により決定されるものであるから、円筒状製品の検査対象を円筒状製品とするか扁平状被検体とするかは、検査対象製品により適宜設定されるものである。
してみると、引例2の発明のように、検査する対象を「平坦な対向面」を有するものとすることは、当業者が容易になしえた程度である。
相違点2に対して、
引用例2(記載事項「e」参照)には、片側から導電子5を、その反対側から前記導電子5を挾むような形で偏平状被検体の前後に二つの導電子を配することが記載されており、偏平状被検体の表裏から電極を当てることにより、まんべんなく偏平状被検体表面のピンホールを効率よく検出できることは当業者にとって自明のことである。そして、引用例1において「上方から同時に当該被検査物品9の両端に接する位置にブラシ状アース電極21」が設置されているから、引用例1に記載された「リング状帯電体20」に代えて、引用例2に記載の「表裏面に電圧を印加するための陰陽の直線ブラシ状電極」を下方に配置して本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点3に対して、
ピンホールの検出手段において、電源、陽極、被検体、陰極によって構成される回路において、電流計の配置によって測定結果に差異をもたらすものではないから、回路中における電流計の設置位置は、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

4.むすび
上記のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載の発明、およびこの出願前周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、他の請求項について言及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-05 
結審通知日 2006-07-10 
審決日 2006-07-21 
出願番号 特願平11-344116
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 利英上尾 敬彦  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 豊永 茂弘
中西 一友
発明の名称 密封包装物の検査装置  
代理人 藤田 邦彦  

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