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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1143140 |
審判番号 | 不服2004-3849 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-09-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-26 |
確定日 | 2006-09-07 |
事件の表示 | 平成10年特許願第50303号「プラズマ処理方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年9月17日出願公開、特開平11-251299〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年3月3日の出願であって、その請求項1〜6に係る発明は、平成15年11月17日付の手続補正書に記載された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】内部にガスを供給するとともに所定圧力に減圧排気して、前記ガスをプラズマ化し、該プラズマを用いて被処理材を処理するプラズマ処理方法において、 前記被処理材に入射するプラズマ中のイオン量が0.4〜4mA/cm2となるTM0nモード(nは正の整数)の低イオン電流プラズマを発生させ、該プラズマにより被処理材を処理することを特徴とするプラズマ処理方法。」 2.引用刊行物及びその摘記事項 原査定の拒絶の理由に引用した本願の出願前に国内に頒布された下記の刊行物1、2、及び周知例1には、次の事項が記載されている。 記 刊行物1:特開平9-82682号公報 刊行物2:特開平10-12594号公報 周知例1:特開平3-158471号公報 (1)刊行物1(特開平9-82682号公報) (1a)「【請求項1】真空処理室に処理ガスを導入し放電によってプラズマを発生させ、該真空処理室内の被処理物載置ステージにイオンを加速するためのバイアス電圧を印加し、該ステージ上に載置された被処理物を処理するプラズマ処理方法において、該バイアス電圧の波形が、プラズマ中のイオンを被処理基板に向かって加速する電圧波形の部分とプラズマ中の電子を被処理基板に向かって加速する電圧波形の部分を含むことを特徴とするプラズマ処理方法。 ・・・ 【請求項5】プラズマ中の電子密度が5×1010/cm3以上、かつ被処理基板への飽和イオン電流が1mA/cm2以上であるような高密度プラズマを用いる処理において、請求項1のバイアス印加法を用いることを特徴とするプラズマ処理方法。」 (1b)実施例として、「【0011】【実施例】(実施例1)図1はゲート用ポリシリコン加工用マイクロ波エッチング装置に本発明の電子加速パルスバイアスを適用した装置の例である。この装置では、マグネトロン20で発生したマイクロ波を導波管21を通して放電管22に導入し、導入されたマイクロ波とコイル23で作られる磁場の電子サイクロトロン共鳴によって高密度のプラズマを生成できる構造になっている。・・・ ・・・・・・ 【0014】この時のプラズマの電子密度(プラズマ密度)は約1×1011/cm3、飽和イオン電流は3mA/cm2であった。また、プラズマ電位は+20Vであった。エッチングの結果を図6に示す。ノッチングの大きさは、パルス電圧の増加とともに減少する。また、ノッチング抑制の効果はパルス電圧の大きさが50V以上で飽和する。したがって、パルス電圧の大きさとしては最低でも50V以上あれば良いことがわかる。一方、従来のRFバイアス(800KHz,5W)を印加した場合、大きなノッチングが見られた。」が記載されている。 (2)刊行物2(特開平10-12594号公報) (2a)「【請求項1】真空排気装置が接続され内部を減圧可能な処理室と、前記処理室内へのガス供給装置と、スロットアンテナから放射されたマイクロ波を利用して前記処理室内部にプラズマを発生させるプラズマ発生手段とから成るプラズマ処理装置において、前記プラズマ発生手段がマイクロ波の同軸型空洞共振器を有し、該同軸型空洞共振器の底部にスロットアンテナを設けたことを特徴とするスロットアンテナを有するプラズマ処理装置。 ・・・ 【請求項3】請求項1・・・に記載のプラズマ処理装置において、TE0mモードとTM0nモード(m,nは正の整数)の混在したマイクロ波によりプラズマを生成することを特徴とするスロットアンテナを有するプラズマ処理装置。」 (2b)「【0002】【従来の技術】従来のスロットアンテナを用いた装置は、例えば、特開平6-48287号公報に記載のように、円筒型の空洞共振器を用い、空洞共振器の底部に流れる表面電流と垂直の方向にスロットアンテナを配置していた。このことにより、空洞共振器内のマイクロ波モードと同じモードのマイクロ波をスロットアンテナにより放射し、プラズマを生成するよう構成されていた。 【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、プラズマの均一性を制御しやすいスロットアンテナを有するプラズマ処理装置を提供することにある。 【0004】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、TEMモードのマイクロ波を同軸型空洞共振器内に励振し、そして空洞共振器底部に設けたスロットアンテナを、空洞共振器底部に流れる表面電流の方向と平行でも垂直でもない角度で、リング状に配置したものである。 【0005】TEMモードの空洞共振器の底部壁面には放射状に、つまり径方向に表面電流が流れる。スロットアンテナを表面電流の方向と平行でも垂直でもないある一定の角度で交わるように、そしてリング状に配置するようにすると、径方向および周方向のマイクロ波電界がスロットアンテナより放射される。すなわち、TE0nモードとTM0mモード(m,nは正の整数)の混在したマイクロ波が放射される。したがって、スロットアンテナと前記表面電流の交わる角度を変更することにより、TE0nモードとTM0mモード(m,nは正の整数)の比を変更できるので、生成されるマイクロ波プラズマの均一性を容易に制御できる。」 (2c)実施例として、「【0008】TEMモードの同軸型空洞共振器8の底部には、図2に示すように、中心から径方向に、放射状の表面電流が流れる。図4に示すように、表面電流の方向に対し直角にスロットアンテナ9長手方向を配置した場合には、径方向の電界がスロットアンテナ9内に生じるため、処理室1へは、TM01モードのマイクロ波が放射される。・・・図2に示すように、スロットアンテナ9を表面電流に対し、直角でも平行でもない角度で配置した場合には、スロットアンテナ9内には、径方向の電界Erと周方向の電界Eθが、スロットアンテナ9と表面電流との角度に応じた割合で生じる。したがって、処理室1へは、TM01モードとTE01モードの混在したマイクロ波が放射される。TE01モードのマイクロ波、導波管径の約1/2の箇所で最も電界強度が大きくなるため、図2に示すようにスロットアンテナ9をリング状に配置するリング径φcを処理室1の内径の約1/2にすると効率良く、TE01モードのマイクロ波が放射される。スロットアンテナ9と表面電流との角度45度とし、前記φcを処理室1の内径の約1/2とすると処理室1へはTM01モードおよびTE01モードはともに軸対称の電界強度分布を有しており、前述のようにこれらモードの混在したマイクロ波を処理室1に投入することにより、軸対称分布をしたプラズマを容易に生成できるという効果がある。生成されるプラズマは、外周部である処理室1の壁面では大きく損失するが、中央部中心軸上では損失は少ない。したがって、リング状にプラズマ生成領域を設けることにより、広範囲で均一なプラズマが容易に生成される。TM01モードとTE01モードの混在したマイクロ波を投入することにより、リング状にプラズマ生成領域を設けることができ、またTM01モードとTE01モードの比率を変更することにより、リング状プラズマ生成領域のリング径を変更でき、プラズマ均一性を制御できる。前述のように、TM01モードとTE01モードの比率の変更は、スロットアンテナ9と表面電流との交わる角度の変更、あるいはスロットアンテナ9の形状、あるいはスロットアンテナ9の位置により変更できる。」 (3)周知例1(特開平3-158471号公報) (3a)「本発明は・・・大口径のプラズマを高密度、かつ均一に、しかも安定した状態で形成して、大口径半導体基板を高速かつ均一に処理し得るマイクロ波プラズマ処理装置を提供することを目的とする。」(2頁右下欄14〜18行) (3b)「上記の目的は、プラズマ処理室へマイクロ波を導入する直前で該マイクロ波の電磁界強度を強める空胴共振器、および該空胴共振器からプラズマ処理室へマイクロ波を放射するスロット、ならびに該プラズマ処理室の内壁近傍に磁場を形成する複数個の磁石を設け、かつ上記複数個の磁石のプラズマ処理室内に向けられた磁極が、隣接磁石ごとに極性が反対となるように配置することによって達成される。」(2頁右下欄末行〜3頁左上欄8行) (3c)実施例として、「空胴共振器1はある特定の共振モードになるように設計されており、円形空胴共振器がTM01モードの場合、スロット4は、第2図に示す様に電界を横切る方向に同心円弧状に構成する。」(3頁右下欄4〜8行) (3d)第6図には、横軸:電極中心からの距離(mm)に対する、縦軸:電極流入イオン電流密度(mA/cm2)が記載され、実施例では電極流入イオン電流密度(mA/cm2)が電極中心から距離によらず略2mA/cm2 の値となっていることが示されている。 3.対比・判断 上記摘記事項(1a)の【請求項5】によれば、被処理基板への飽和イオン電流が1mA/cm2以上であるような高密度プラズマを用いるプラズマ処理が記載され、上記摘記事項(1b)によれば、実施例1では、飽和イオン電流は3mA/cm2であることが記載されている。また、上記周知例1には、マイクロ波によるプラズマ処理において、処理室内の電極周辺部における電極流入イオン電流密度は、電極中心からの距離にかかわらず略2mA/cm2であることが実施例として記載されているから、刊行物1に記載の被処理基板に入射するプラズマ中の飽和イオン電流が1mA/cm2以上であることと、実施例での飽和イオン電流を3mA/cm2としていることとを合わせてみると、刊行物1には、プラズマ中のイオン電流が1〜3mA/cm2であることが実質的に記載されているといえる。 そこで、上記刊行物1の摘記事項を総合すると、刊行物1には、「真空処理室に処理ガスを導入するとともに真空排気して、該ガスをプラズマ化し、このプラズマを用いて被処理基板を処理するマイクロ波によるプラズマ処理方法において、被処理基板に入射するプラズマ中の飽和イオン電流が1〜3mA/cm2の高密度プラズマを発生させ、該プラズマにより被処理基板を処理する方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているといえる。 そこで、本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「内部にガスを供給するとともに所定圧力に減圧排気して、前記ガスをプラズマ化し、該プラズマを用いて被処理材を処理するプラズマ処理方法において、 前記被処理材に入射するプラズマ中のイオン量が1〜3mA/cm2となる低イオン電流プラズマを発生させ、該プラズマにより被処理材を処理するプラズマ処理方法。」の点で一致するものの、次の点で相違する。 相違点:本願発明1は、TM0nモード(nは正の整数)の低イオン電流プラズマを発生させるのに対し、刊行物1記載の発明は、この点の記載がなく、どのようなモードのマイクロ波によりプラズマを生成させているのか不明である点。 そこで、上記相違点について検討する。 本願発明1は、「TM0nモード(nは正の整数)の低イオン電流プラズマを発生させ」るとしているが、「TM0nモード(nは正の整数)」は磁気的横波、TM波のことであるから、「TM0nモード(nは正の整数)のマイクロ波により低イオン電流プラズマを発生させ」ることを意味するものであることは明らかである。 上記刊行物2には、プラズマの均一性を制御しやすいスロットアンテナを有するプラズマ処理装置を提供することを目的として(摘記事項(2b)【0003】)、スロットアンテナと前記表面電流の交わる角度を変更することにより、TE0nモードとTM0mモード(m,nは正の整数)の比を変更できるので、生成されるマイクロ波プラズマの均一性を容易に制御できること(摘記事項(2b)【0005】)が記載され、実施例には、図4に示すように、表面電流の方向に対し直角にスロットアンテナ9長手方向を配置した場合には、径方向の電界がスロットアンテナ9内に生じるため、処理室1へは、TM01モードのマイクロ波が放射されること、及びスロットアンテナ9を表面電流に対し、直角でも平行でもない角度で配置した場合には、スロットアンテナ9内には、径方向の電界Erと周方向の電界Eθが、スロットアンテナ9と表面電流との角度に応じた割合で生じ、したがって、処理室1へは、TM01モードとTE01モードの混在したマイクロ波が放射されること(摘記事項(2c))が記載されている。 即ち、刊行物2には、スロットアンテナと前記表面電流の交わる角度を変更することにより、TE0nモードとTM0mモード(m,nは正の整数)の比を変更できるので、生成されるマイクロ波プラズマの均一性を容易に制御できることだけでなく、空胴共振器の底部に中心から径方向に放射状の表面電流が流れることにより、この底部に設けたスロットアンテナ内に径方向の電界が生じ、処理室へTM01モードのマイクロ波が放射されることが記載されているものである。 更に、刊行物2の従来の技術の記載によれば、スロットアンテナを用いた装置は、円筒型の空洞共振器を用い、空洞共振器の底部に流れる表面電流と垂直の方向にスロットアンテナを配置していたので、空洞共振器内のマイクロ波モードと同じモードのマイクロ波をスロットアンテナにより放射し、プラズマを生成できるもの(摘記事項(2b))である。ここで、上記周知例1において、マイクロ波プラズマ処理装置でプラズマ円形空胴共振器がTM01モードの場合、スロット4は、電界を横切る方向に同心円弧状に構成すること(摘記事項(3c))により、プラズマ処理室へはTM01モードのマイクロ波が放射されプラズマを生成し、この場合は、電極流入イオン電流密度(mA/cm2)が電極中心から距離によらず略2mA/cm2 (摘記事項(3d))という低イオン電流密度でプラズマを発生している。即ち上記周知例1は、プラズマ処理室へはTM01モードのマイクロ波を放射した場合に、適当なスロットを用いることにより、略2mA/cm2 という低イオン電流密度でプラズマを発生し得る一例を示しているものである。 そうすると、刊行物1記載の発明もプラズマ中の飽和イオン電流が1〜3mA/cm2のプラズマを発生させるものであって、しかも、マイクロ波はTEモード、TMモード等の特定のモードを有するものであるから、刊行物1記載の発明において、刊行物2に記載された、特定のモードのうち処理室へTM01モードのマイクロ波を放射させ、プラズマを生成するように限定することは当業者ならば容易に想到し得ることである。 そして、本願発明1による効果も刊行物1、2の記載、および周知技術から予測することができる程度のことであって格別なものとは認められない。 したがって、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明、および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項2〜6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-27 |
結審通知日 | 2006-07-04 |
審決日 | 2006-07-24 |
出願番号 | 特願平10-50303 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関 和郎 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
大嶋 洋一 日比野 隆治 |
発明の名称 | プラズマ処理方法および装置 |
代理人 | 特許業務法人第一国際特許事務所 |