ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 B21F |
---|---|
管理番号 | 1143664 |
審判番号 | 無効2004-80179 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-03-03 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-10-07 |
確定日 | 2006-07-06 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2812432号「スプリング製造装置」の特許無効審判事件についてされた平成17年 5月 9日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成17年(行ケ)第536号平成17年11月10日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2812432号の請求項1乃至2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.本件特許第2812432号の請求項1〜7に係る発明についての出願は、平成8年8月23日に出願され、平成10年8月7日にその発明について特許権の設定登録がされた。 2.これに対して、平成16年10月7日に審判請求人・新興機械工業株式会社により無効審判の請求がなされたところ、被請求人・株式会社板屋製作所より平成16年12月27日付けで審判事件答弁書の提出及び訂正請求がなされるとともに、被請求人より平成17年3月1日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、平成17年3月15日に第1回口頭審理が実施された。 3.平成17年5月9日に本件請求項1〜7に係る特許を無効とする旨の審決(以下、「一次審決」という。)がされた。 4.平成17年6月20日に当該審決の取消しを求める訴(平成17年(行ケ)第536号)が知的財産高等裁判所に提起されたところ、平成17年8月30日に、訂正審判(訂正2005-39151号、平成18年1月16日にその取下登録がされた。)が請求され、それを受けて、平成17年11月10日に、知的財産高等裁判所において上記一次審決を取り消すとの決定がなされた。 5.上記訂正審判の請求書に添付した訂正明細書を援用する訂正請求が平成17年12月9日付けでなされたものとみなすこととなった。 6.これに対して、請求人から平成18年2月17日付けで弁駁書が提出され、被請求人から平成18年4月5日付けで審判事件答弁書が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 上記平成17年12月9日付けの訂正請求は、本件特許第2812432号の願書に添付された明細書(以下、願書に添付された図面と併せて「特許明細書」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。なお、下線は対比の便宜のために当審において付したものである。 (1)訂正事項a 特許明細書における特許請求の範囲の請求項1の記載を、 「【請求項1】 スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、 前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、 前記成形テーブル上には、 前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、 前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、 前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、 前記ベース上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、 前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、 前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金とが設けられている、 ことを特徴とするスプリング製造装置。」から、 「【請求項1】 スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、 前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、 前記成形テーブル上には、 前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、 前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、 前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、 前記ベース上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、 前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、 前記ベースの略中央に突出して当該ベースに設けられた芯金台座に固定され、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、 前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、 前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、 が設けられ、 前記ピッチツール駆動手段は、前記芯金に対して前記ベースの反対側に配設され、 前記ピッチ生成手段は、 前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び、前記コイルを成長させる前記略法線方向に、前記ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフトを備え、 前記ピッチツールは、前記芯金台座上で前記ツールシャフトに取り付けられ、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールであることを特徴とするスプリング製造装置。」 と訂正する。 (2)訂正事項b 特許明細書における特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項c 特許明細書における特許請求の範囲の請求項3の番号を繰り上げて請求項2とするとともに、 「【請求項3】 前記芯金は、前記ベースの略中央に固定され、前記ピッチ生成手段と前記切断手段とは、該芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、該芯金に向けてスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のスプリング製造装置。」から 「【請求項2】 スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、 前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、 前記成形テーブル上には、 前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、 前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、 前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、 前記ベース上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、 前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、 前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、 前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、 前記切断ツールをスライド駆動させる切断チツール駆動手段と、 が設けられ、 前記ピッチ生成手段は、第1及び第2のピッチ生成手段を備え、 前記ピッチツール駆動手段は、前記第1のピッチ生成手段に対応する第1のピッチツール駆動手段と、前記第2のピッチ生成手段に対応する第2のピッチツール駆動手段と、を備え、 前記第1のピッチ生成手段は、 前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールにより、前記コイルを成長させ、 前記第2のピッチ生成手段は、 前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるウェッジツールにより、前記コイルを成長させ、 前記芯金は、前記ベースの略中央に固定され、前記第2のピッチ生成手段と前記切断手段とは、前記芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、前記ウェッジツールと前記切断ツールとは該芯金に向けてスライド可能に設けられていることを特徴とするスプリング製造装置。」 と訂正する。 (4)訂正事項d 特許明細書における特許請求の範囲の請求項4乃至7を削除する。 (5)訂正事項e 特許明細書の段落【0011】における、 「【課題を解決するための手段】 上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明は以下の構成を備える。即ち、スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、・・・・・前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金とが設けられている。」を、 「【課題を解決するための手段】 上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明は以下の構成を備える。即ち、スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、前記成形テーブル上には、前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、前記ベース上には、前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、前記ベースの略中央に突出して当該ベースに設けられた芯金台座に固定され、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、が設けられ、前記ピッチツール駆動手段は、前記芯金に対して前記ベースの反対側に配設され、前記ピッチ生成手段は、前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び、前記コイルを成長させる前記略法線方向に、前記ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフトを備え、前記ピッチツールは、前記芯金台座上で前記ツールシャフトに取り付けられ、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールであることを特徴とする。 また、スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、前記成形テーブル上には、前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、前記ベース上には、前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、が設けられ、前記ピッチ生成手段は、第1及び第2のピッチ生成手段を備え、前記ピッチツール駆動手段は、前記第1のピッチ生成手段に対応する第1のピッチツール駆動手段と、前記第2のピッチ生成手段に対応する第2のピッチツール駆動手段と、を備え、前記第1のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールにより、前記コイルを成長させ、前記第2のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるウェッジツールにより、前記コイルを成長させ、前記芯金は、前記ベースの略中央に固定され、前記第2のピッチ生成手段と前記切断手段とは、前記芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、前記ウェッジツールと前記切断ツールとは該芯金に向けてスライド可能に設けられていることを特徴とする。」 と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正の目的の適否 ア.訂正事項aについて 訂正事項aにおける、「前記ベースの略中央に突出して当該ベースに設けられた芯金台座に固定され、」は、芯金の配置を限定するものであり、「前記ワイヤを切断ツールにより切断する切断手段と、前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と」は、ワイヤを切断することについて具体的に限定するものであり、「前記ピッチツール駆動手段は、前記芯金に対して前記ベースの反対側に配設され」はピッチツール駆動手段の配置を限定するものである。また、「前記ピッチ生成手段は、前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び、前記コイルを成長させる前記略法線方向に、前記ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフトを備え」は、ピッチ生成手段について具体的な構成を限定するものであり、「前記ピッチツールは、前記芯金台座上で前記ツールシャフトに取り付けられ、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールであること」は、ピッチツールがプッシュツールであるとの限定を付加するものである。 したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ.訂正事項b及びdについて 訂正事項b及びdは、請求項2、4乃至7を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 ウ.訂正事項cについて 訂正事項cにおける「スプリングとなるワイヤを該ワイヤの・・・前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と」は訂正前の請求項1に記載された事項であり、「前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、が設けられ、」は訂正前の請求項2に記載された事項である。 そして、訂正事項cにおける「前記ピッチ生成手段は、第1及び第2のピッチ生成手段を備え、前記ピッチツール駆動手段は、前記第1のピッチ生成手段に対応する第1のピッチツール駆動手段と、前記第2のピッチ生成手段に対応する第2のピッチツール駆動手段と、を備え、」は、ピッチ生成手段及びピッチツール駆動手段が第1及び第2のものからなるとの限定を付加するものであり、「前記第1のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールにより、前記コイルを成長させ、前記第2のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるウェッジツールにより、前記コイルを成長させ」は、第1及び第2のピッチ生成手段がそれぞれピッチツールとしてプッシュツール及びウェッジツールによりコイルを成長させるとの限定を付加するものであり、「第2のピッチ生成手段と・・・前記ウェッジツールと前記切断ツールとは該芯金に向けてスライド可能に設けられている」は、芯金に対して切断手段と対向配置されるのが第2のピッチ生成手段及びウェッジツールであるとの限定を付加するものである。 したがって、訂正事項cは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 エ.訂正事項eについて 訂正事項eは、訂正事項a〜dによる特許請求の範囲の記載の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 (2)新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項a〜eは、特許明細書の段落【0032】、【0035】、【0036】及び図5〜図8の記載に基づいてなされたものであって、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 なお、請求人は審判事件弁駁書において、訂正事項aにおける、ツールシャフトが「前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び」ることについては、願書に添付した明細書又は図面に記載されていない旨を主張している。 しかしながら、特許明細書の段落【0036】には、「図6〜図8に詳細を示すように、プッシュツールアッセンブリ150は、芯金台座121c上からツールアッセンブリ基部121の後方に亘って設けられている。ツールアッセンブリ基部121の後方には、複数の連結アーム154によりツールアッセンブリ基部121に固定されたプッシュツールアッセンブリ基部151が固定されている。このプッシュツールアッセンブリ基部151には、プッシュツール駆動モータ156が固定される。このプッシュツール駆動モータ156には、芯金台座121c上まで延びるプッシュツールシャフト152が連結され、プッシュツール駆動モータ156を回転させることによりプッシュツールシャフト152をその長手方向に沿ってスライド移動させるスライド機構155を介して連結されている。また、芯金台座121a上におけるプッシュツールシャフト152の先端部には、プッシュツール153が固定されている。プッシュツール153は、プッシュツール駆動モータ156が回転してプッシュツールシャフト152がスライド移動することにより、ツールアッセンブリ基部121の法線方向に沿って(プッシュツールシャフト152の長手方向に沿って)スライド駆動可能となっている。・・・」と記載されている。そして、図8の記載及び上記段落【0036】の記載から、芯金台座121cの背後側に配置されるプッシュツール駆動モータ156に芯金台座121c上まで延びるプッシュツールシャフト152が連結されており、ツールシャフト152の先端部には芯金台座121cの正面側においてプッシュツール153が固定されることは明らかである。 したがって、上記ツールシャフトが「前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び」ることが願書に添付した明細書又は図面に記載されていないとすることはできない。 よって、請求人の上記主張は採用することができない。 3.訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き及び同条第5項において準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 本件発明 前述のとおり、本件訂正が認められたことにより、本件特許の請求項1乃至2に係る発明(以下、「本件発明1」乃至「本件発明2」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、第2の1(1)及び(3)において訂正後の【請求項1】乃至【請求項2】として示した、特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 第4 請求人の主張の概要 請求人は、審判請求書に添付した甲第1〜3号証に加え、審判事件弁駁書とともに甲第4〜6号証を提出し、本件特許の請求項1乃至2に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると主張している。 [甲号各証] 甲第1号証:特公平7-115101号公報 甲第2号証:特開平8-10883号公報 甲第3号証:特開平8-174120号公報 甲第4号証:ばね技術講習会テキストNo.9金属ばね製造技能検定用 テキスト「小物ばね〔製造編〕」(社団法人日本ばね工業会) 昭和60年7月発行、第5〜6頁 甲第5号証:特許第2505392号公報 甲第6号証:特開平7-236931号公報 第5 被請求人の主張の概要 被請求人は、上記請求人の主張に対して、平成18年4月5日付け審判事件答弁書において、本件特許の請求項1乃至2に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと反論している。 なお、請求人は、審判事件弁駁書において、訂正された本件発明が独立特許要件を欠くと主張しているが、本件訂正は無効審判における訂正請求とみなされたものであるから、独立特許要件が訂正の要件となるものではない。しかしながら、請求人の上記主張は、訂正後の本件特許の請求項1乃至2に係る発明が、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの主張と解され、被請求人も、上記のとおり、本件特許の請求項1乃至2に係る発明が、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないとの反論をしている。 そこで、以下、本件特許の請求項1乃至2に係る発明が、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。 第6 甲号各証の記載内容及び引用発明 請求人の提出した甲第1〜6号証には、以下の技術的事項が記載されている。 1.甲第1号証 (1-イ)段落【0001】 「【産業上の利用分野】本発明は,針金引込み装置と,送られる針金を加工する巻き工具を持つ巻き場所と,巻き場所へ介入するため直線運動可能なピツチ設定工具を持つピツチ設定装置と,固定相手切断工具としてばね体へ入り込む切断心金が設けられている巻き場所へ介入する可動切断工具を持つ切断装置とを備え,切断心金と共同作用する可動切断工具の刃が,閉じた円筒曲線軌道を通つてクランク伝動装置により回転切断を行い,また直線切断のため往復並進運動を行うことができる,針金の成形装置特にばね巻き機に関する。」 (1-ロ)段落【0026】〜【0027】 「第1の実施例として図1ないし3に構造を示すばね巻き機は,主として針金引込み装置10とピツチ設定装置14を持つ巻き場所12と切断装置16とから成つている。 針金引込み装置10は2対の全部で4つの針金引込みローラ18により形成され,これらのローラは無端針金20を直線的に水平に針金案内片22を通して巻き場所12へ送る。」 (1-ハ)段落【0028】〜【0029】 「巻き場所12には,到来する針金20を永久変形する2つのピン状巻き工具34及び36とピツチ設定工具38と切断工具40とがある。すべての工具は調節可能で交換可能で運動可能である。 ばね巻き機の前側で,架台24の後壁にフランジ結合される第2の可制御電動機48により歯付きベルト伝動装置50を介して駆動される軸46上に,ほぼアルキメデスらせんに相当する周囲輪郭を持つ板状カム素子52が固定されて,軸46の回転運動をその回転角に比例する巻き工具34及び36の並進運動に変換する。即ち架台24には更に双腕レバー54が支持され,その一方の腕にあるローラ56がカム素子52の周囲上を転動し,その他方の腕は,公知なので図示してない運動装置の部材を介して巻き工具保持体58及び60に連結されている。従つて軸46の往復回転運動の際,カム素子52が巻き工具34及び36の運動を制御する。」 (1-ニ)段落【0033】 「偏心輪82から遠い方にある軸68の端部には,歯付きベルト伝動装置136の一部である歯付きベルト車134が相対回転しないように設けられている。回転切断のため偏心輪軸68が,歯付きベルト伝動装置136を介して,ハウジング64に側方で取付けられる担体140にフランジ結合される第3の可制御電動機138により駆動される。切断運動のため偏心輪軸68が回転する。可動切断工具40は,1過程中固定相手工具即ちいわゆる心金箱146内に締付けられている切断心金144と共同作用する。心金箱146は,必要な場合には,切断を行わない間,図示してない公知の装置により巻き範囲から引込められることができる。」 (1-ホ)段落【0039】 「架台24の案内部184に案内されるハウジング64は,ハンドル186により高さ調節可能で,それにより切断心金144の位置を巻くべきばねの直径又は巻き方向に合わせることができる。」 (1-ヘ)段落【0052】 「直線切断用切断装置の変形例1(実施例2)として,図2に示すように図8によれば,ハウジング64の上部にあるフランジ付きブシユ70及び玉軸受72に偏心輪軸が68が支持されている。ブシユ70のフランジ74はねじによりハウジング64の外側に取付けられている。偏心輪軸68のフランジ76はブシユ70のフランジ74に当り,ハウジンク64の内側にある当り板78及び調節環80により軸線方向に固定されている。偏心軸82から速い方にある軸68の端部上には,歯付きベルト伝動装置136の一部である歯付きベルト車134が固定的に設けられている。これまで述べたすべての部分は図2のそれに一致している。軸68の偏心輪82は,2分割構成の往復片288の溝286にはまるスライダ284の対応する穴に係合している。スライダ284は,ねじにより偏心輪82の端面に取付けられる覆い板92の2つの当り板90の間に保持されている。往復片288は溝部分288aと案内部分288bとから成り,これらの部分288a及び288bはフランジ付きピン289により互いに結合されている。このため切断工具40を保持する案内部分288bは,工具から遠い方の端部を二又に構成され,溝部分288aの段付けされた端部が二又の間でフランジ付きピン289上に揺動可能に支持されている。往復片案内片296にある2つの案内桟294の間に案内されて2つの蓋298により保持される案内部分288bは,ピン289から遠い方の端部に切断工具40を保持し,この切断工具が切断心金144と共同作用する。両方の工具40及び144は直線切断用に構成されている。往復片案内片296は,ピン306によりハウジング64のフラシジ付きブシユ108内に回転可能に支持され,当り板110と覆い板112と締付けナツト114とにより軸線方向に調節可能に固定されている。案内部分288bが直線運動を行うことができるようにするため,回転可能に構成される往復片案内片296が固定される。このため往復片案内片296の右側及び左側で支持ブロツク307がハウジング64に取付けられて,それぞれ調節ねじ309を保持し,これらの調節ねじが往復片案内片296の突起297に当つて,往復片案内片296の縦軸線を垂直に保つ。」 (1-ト)段落【0055】〜【0056】 「図3による直線切断用切断装置におけるように,この第1の変形例及び後述する第2の変形例においても,ピツチ設定装置14は直線切断装置と全く同じに構成されている。しかし最初に述べた実施例とは異なり,両変形例では,直線切断及びピツチ設定のための運動は,回転切断におけるように,回転する偏心輪軸68から誘導される。このため図示してない2つの可制御電動機が設けられ,それぞれ歯付きベルト伝動装置136を介して偏心輪軸68を駆動する。両方の電動機はハウジシグ64の側面に担体を介して上下にフランジ結合されている。これらの両電動機は図3の電動機174及び174′に代るもので,回転切断用電動機138(図1及び2)は省略される。更に回転切断用の装置(図1及び2)が省略され,両方の変形例では図1及び3の装置部分160〜172,176及び160′〜172′,176′も必要でない。 切断工具40の各昇降運動のために偏心輪軸68は1回転し,それにより第1の変形例では往復片288の溝部分288aが昇降運動するピン289の周りに往復揺動し,案内部分288bは直線昇降運動を行う。」 (1-チ)図1及び図2の記載によれば、ハウジング64は上下方向に延びる形状であり、切断心金144は前記ハウジング64正面の略中央に固定されており、また、ピッチ設定装置14と切断装置16とは、該切断心金144に対して上下方向に沿って互いに対向するように前記ハウジング64の正面側に配置されていることが看取できる。 上記記載事項及び図面の記載からみて、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1」乃至「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明1] ばねとなる針金を該針金の中心軸に略平行な面を有する架台24の前面に送り出し、この針金を該架台24の前面に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルばねを成形するばね巻き機において、 前記ばね巻き機本体には前記架台24が取り付けられ、 前記架台24の前面には、 前記針金を前記架台24の前面上に送り出す針金引込み装置10と、 前記架台24の前面に送り出された前記針金を、巻き工具34及び36に当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記巻き工具34及び36をスライド駆動させる駆動手段とが設けられ、 前記架台24の前面上には、その上下方向の位置を移動可能に設けられたハウジング64が取り付けられ、 前記ハウジング64上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記針金に前記ピッチ設定工具38を介在させて、前記架台24の前面に対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ設定装置14と、 偏心輪軸68を回転させることにより前記ピッチ設定工具38をスライド駆動させるピッチ設定工具駆動用の可制御電動機と、 前記ハウジング64正面の略中央に固定され、前記針金を切断する切断工具40と協働して前記針金にせん断力を付与する切断心金144と、 前記針金を切断工具40により切断する切断装置16と、 偏心輪軸68を回転させることにより前記切断工具40をスライド駆動させる切断工具駆動用の可制御電動機と、 が設けられているばね巻き機。 [引用発明2] 引用発明1において、前記ピッチ設定装置14は、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動される前記ピッチ設定工具38により、前記コイルを成長させ、 前記切断心金144は、前記ハウジング64正面の略中央に固定され、前記ピッチ設定装置14と前記切断装置16とは、該切断心金144に対して上下方向に沿って互いに対向するように前記ハウジング64の正面側に配置され、前記ピッチ設定工具38と切断工具40とは該切断心金144に向けてスライド可能に設けられているばね巻き機。 2.甲第2号証 (2-イ)段落【0001】 「【産業上の利用分野】本発明はNCばね成形機において、成形コイルばねのプログラム方式による連続成形中に種々の要因による変形を修正するばね形状修正方法及びばね形状修正機能付NCばね成形機に関する。」 (2-ロ)段落【0003】〜【0005】 「クイル4の前端部の側面は線材がはみ出さない程度に垂直に削り取られておりこの位置に後述のピッチ工具が配置されている。クイル4の端面前面には芯金11が固定配置され、その先にクイル前端面と対向して成形面12aを有する成形工具12が水平に移動可能に配置されている。この成形工具12はNC装置で駆動制御されるサーボモータ13で回転される送りねじ14により線材の送り出し方向に進退され位置制御される。 ピッチ工具16は上端面が垂直面内で傾斜するエッヂを形成する楔16aであってクイル4の切欠側面において線材送り方向と直角な上下方向に移動可能に配置されていてNC装置で駆動制御されるサーボモータ17で回転される送りねじ18により上下に進退され位置制御される。 さらに芯金11の上面でカッティングツール21が上下方向に移動可能に配置されている。カッティングツール21はその剪断刃面21aが芯金11の垂直面11aとで成形ばねの後端を剪断するように位置しており、NC装置で駆動制御されるサーボモータ22で回転される送りねじ23により位置制御される。なおカッティングツールはカム,油圧手段等で駆動することも自由である。」 (3)甲第3号証 (3-イ)段落【0001】 「【産業上の利用分野】本発明は線材成形装置、詳しくは線材を湾曲或いは屈曲させ成形する線材成形装置に関するものである。」 (3-ロ)段落【0014】 「【作用】かかる本発明の構成において、円形テーブルの中心方向に各成形ツール部のツールが向くように配設する。そして、この場合、各成形ツール部は、その向きテーブルの中心方向に保ったまま、その位置を任意の位置に係止手段で係止させることが可能になる。また、各成形ツール部には、それぞれ独立して駆動源がもうけられ、その駆動源の駆動をカムでもって各ツールを直線運動に切り換えている。このようにすることで、任意の方向から所望とするツールを進入させ、線材成形を可能にすると共に、不使用のツールには駆動信号を送出しなければ良いので、成形ツール部の取り外しも不要になり、線材成形の邪魔になることもなくなる。」 4.甲第4号証 (4-イ)第5頁下から18行〜12行 「ピッチ機構は圧縮ばねや変形ばねなどのピッチ付けを行うもので、図1.9に示すように、コイルを押し出してピッチをつける方式(フィンガー方式)と、図1.10に示すようなくさび形のツールをコイル間に押し込んでピッチをつける方式(くさび方式)と2種類ある。」 5.甲第5号証 (5-イ)段落【0002】 「【従来のばね製造機】従来、この種ばね製造機として以下の如きものは知られている。即ち、図7の如く、線材加工空間7へ向けて線材10を順次送り出す線材送り装置2と、線材加工空間7へ送り出された線材10と当接してこの線材10を二点鎖線で示す如く螺旋状とする曲げダイス3と、このように螺旋状になりつつある線材10の側面を、図7の紙面と垂直な方向(手前側)へ押圧するピッチツール4とを有したばね製造機1である。このピッチツール4は、図8の如く、ばね製造機1の起立基板6に対して直角に貫通して設けられた取付摺動棒5に保持されて、その正面方向へ向けて進退摺動自在に設けられている。そのため、ピッチツール4の進退摺動量(線材10を押圧する度合)を種々異ならせることにより、製造されるばねのピッチを大きくしたり反対に小さくしたりすることができ、全く進出させなければピッチが線材10の線径に等しい引張専用ばねを製造することもできるものである。また、ピッチツール4はこの他にも、線材10の先端が最初に曲げダイス3と当接して螺旋状となりはじめる場合(通常は1巻以内)にあって、線材10を所定量に押圧するまでの進出速度を種々異ならせることにより、ばねの両端部へ形成させる座巻部の座付き形状を操作することができるものである。例えば、ピッチツール4の進出速度を遅くすれば巻き角度の大きい座巻部を形成させることができるし、反対に進出速度を速くすれば巻き角度の小さい座巻部を形成させることができる。このようなピッチツール4の進退摺動は、カム装置(図示略)を利用した作動装置により行わせるようにしてある。従って、ピッチツール4を進退させる量の大小やタイミングの取り方は、カム装置が有する回転カムの形状によって大きく左右されるものである。なお、図7中の符号8は線材10を切断する時等に用いられる心金であるが、図8ではその図示を省略した。」 6.甲第6号証 (6-イ)段落【0012】〜【0013】 「図1はコイリングマシンの全体を示す正面図であって、機台1上に立設された前板2の前面の左端から略央部の間に、案内孔を設け線材Wを挿通して案内する線ガイド4a,4b,4b,4c,を横一直線にして取着し、線ガイド4a,・・・,4cのそれぞれの間で、線材Wを対向押圧して挟持可能、かつ、送り出し接線方向に回転可能な、線材Wを線ガイド4a入口から線ガイド4c出口に送り出す複数対の送りローラ5,5を取着する。 線ガイド4cの前方には、線材Wに当接させ所定の曲率のコイルCを成形するコイルCの略コイル中心に向かって進退可能な第1成形ツール6Fおよび第2成形ツール6Sと、D字状の半円筒に形成してコイルCに内接可能な芯金7と、先端に切刃を設けて芯金7と協動して線材Wを切断する芯金7のD字状直線部外側に向かって進退可能な切断ツール6Cと、先端を楔状に形成して切断ツール6Cと略対向する位置でコイルCの軸芯に向かって進退可能なコイルばねの所定のピッチを形成する楔形ピッチツール8とを取着する。」 (6-ロ)段落【0014】〜【0013】 「そして、線ガイド4cの上前方の近傍で、成形ツール6F,6SによってコイルCに成形されつつある線材Wの後面に当接して押圧可能な、右巻きコイルばねの所定のピッチを形成する押出しピッチツール9Aを図2に示す進退可能な押圧ロッド11Aに取着し、また、左巻きコイルばねの所定のピッチを形成する押出しピッチツール9Bを図2に示す進退可能な押圧ロッド11Bに取着する。なお、図1は右巻きコイルばねを成形加工する構成であって、左巻きコイルばねを成形加工する場合は、線ガイド4a,・・・,4cの軸線に対して図1の上下対称位置に、押出しピッチツール9A,9B以外のそれぞれの要素部材を取着して構成する。 ついで、図2は、右巻きコイルばね用の押出しピッチツール9Aを取着する進退可能な押圧ロッド11Aの軸芯と、左巻きコイルばね用の押出しピッチツール9Bを取着する進退可能な押圧ロッド11Bの軸芯との鉛直線上の、押圧ロッド11Aは前進して押出しピッチツール9AがコイルばねSに当接して押圧作動中の形態を、また、他方の押圧ロッド11Bは後退端で待機中の形態を示すそれぞれの縦断面図であって、前板2と後板3とは、図1に示す機台1上に立設するとともに、図示しない連桿によって前板2と後板3とを連結して拘止する。」 第7 当審の判断 1.本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「ばね巻き機」は、本件発明1における「スプリング製造装置」に相当し、以下同様に、「ばね」は「スプリング」に、「針金」は「ワイヤ」に、「架台24の前面」は「成形テーブル」に、「針金引込み装置10」は「送出手段」に、「巻き工具34及び36」は「コイリングツール」に、「切断工具40」は「切断ツール」に、「切断装置16」は「切断手段」に、「切断心金144」は「芯金」に、それぞれ相当することが明らかである。 そして、引用発明1における「ハウジング64」は、上下方向の位置を移動可能に設けられ、その正面の略中央に切断心金144を固定している限りにおいて、本件発明1における「ベース」と共通している。 また、引用発明1における「ピッチ設定装置14」は、コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールであるピッチ設定工具38を介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段ということができる。 さらに、引用発明1におけるピッチ設定工具駆動用及び切断工具駆動用の可制御電動機は、それぞれピッチ設定工具38及び切断工具40をスライド駆動させるものであり、「ピッチツール駆動手段」及び「切断ツール駆動手段」ということができる。 したがって、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。 [一致点] 「スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、 前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、 前記成形テーブル上には、 前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、 前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、 前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、 前記ベース上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、 前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、 前記ベースの略中央に固定され、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、 前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、 前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、が設けられる、スプリング製造装置。」である点。 [相違点1] 本件発明1では、芯金が、ベースの略中央に突出して当該ベースに設けられた芯金台座に固定されたものであり、ピッチ生成手段は、前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び、前記コイルを成長させる前記略法線方向に、前記ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフトを備え、前記ピッチツールは、前記芯金台座上で前記ツールシャフトに取り付けられ、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールであるのに対し、引用発明1では、そのように特定されていない点。 (2)相違点1についての検討 甲第4号証には、ばねのピッチ付けを行う手段として、コイルを押し出してピッチをつける方式(フィンガー方式)とくさび形のツールを用いる方式が記載されており、このフィンガー方式のピッチツールはプッシュツールということができるものである。 また、甲第5号証には、螺旋状になりつつある線材10の側面を、図7の紙面と垂直な方向(手前側)へ押圧するピッチツール4とを有したばね製造機1が記載されており、該ピッチツール4はプッシュツールということができるものである。 さらに、甲第6号証には、楔形ピッチツール8とともに、押出しピッチツール9A、9B、すなわちプッシュツールを設けることが記載されている。 このように、スプリング製造装置におけるピッチ生成手段として、プッシュツールは、くさび形ピッチツールとともに当業者に既に知られた事項にすぎないものである。 そして、上記甲第5号証には、ピッチツール4は、ばね製造機1の起立基板6に対して直角に貫通して設けられた取付摺動棒5に保持されて、その正面方向へ向けて進退摺動自在に設けられることが記載されている(摘記事項(5-イ)参照)。ここで、甲第5号証における「起立基板6」、「取付摺動棒5」及び「その正面方向」は、それぞれ本件発明1における「ベース」、「ツールシャフト」及び「コイルを成長させる略法線方向」に対応しており、甲第5号証において、取付摺動棒5を進退摺動させる駆動手段が備えられることも自明である。 そうすると、甲第5号証には、「ベースの反対側からベースを通過して延び、コイルを成長させる略法線方向に、ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフトを備え、ピッチツールは、ベース上で前記ツールシャフトに取り付けられ、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールであること」が記載されているとすることができる。 引用発明1においてピッチ生成手段として適宜の方式のものを採用できることは明らかであるとともに、甲第5号証に記載されたピッチツールを適用できないとする特段の事由も見当たらないから、引用発明1におけるピッチ生成手段として甲第5号証に記載された発明を適用することに格別困難性は見出せない。 ところで、芯金は、切断ツールと協同してワイヤにせん断力を付与するものであるから、所定の強度、剛性をもって固定される必要があることは明らかであり、芯金をベースに突出して設けられた芯金台座に固定することは当業者が普通に採用する設計的事項にすぎない。また、スプリング製造装置において、ピッチ生成手段を、コイリング手段、切断手段及び芯金等の近傍に配置することも当然行われる事項である。 してみると、引用発明1におけるピッチ生成手段として甲第5号証に記載された発明を適用するに当たり、ツールシャフトを芯金台座を通過するよう配置し、プッシュツールを芯金台座上でツールシャフトに取り付けるよう構成することは当業者が容易になし得た事項である。 したがって、引用発明1に甲第4〜6号証に記載された発明を適用することにより上記相違点に係る本件発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。 また、本件発明1の作用効果についてみても、引用発明1及び甲第4〜6号証に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。 以上のとおり、本件発明1は、引用発明1及び甲第4〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2.本件発明2について (1)対比 本件発明2と引用発明2とを対比すると、両者の発明特定事項の間には上記1(1)に示したものと同様の対応関係がある。 そして、引用発明2における「ハウジング64」は、上下方向の位置を移動可能に設けられ、その正面の略中央に切断心金144を固定し、ピッチ設定装置14と切断装置16とを該切断心金144に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置している限りにおいて、本件発明2における「ベース」と共通している。 また、引用発明2における「ピッチ設定工具38」は、コイルを成長させる略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動され、切断心金144に対して切断工具40と互いに対向するように配置されていることからみて、ウェッジツールであることが明らかである。 したがって、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。 [一致点] 「スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、 前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、 前記成形テーブル上には、 前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、 前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、 前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、 前記ベース上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、 前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、 前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、 前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、 前記切断ツールをスライド駆動させる切断チツール駆動手段と、が設けられ、 前記ピッチ生成手段は、 前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるウェッジツールにより、前記コイルを成長させ、 前記芯金は、前記ベースの略中央に固定され、前記ピッチ生成手段と前記切断手段とは、前記芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、前記ウェッジツールと前記切断ツールとは該芯金に向けてスライド可能に設けられているスプリング製造装置。」である点。 [相違点2] 本件発明2では、ピッチ生成手段は、第1及び第2のピッチ生成手段を備え、前記ピッチツール駆動手段は、前記第1のピッチ生成手段に対応する第1のピッチツール駆動手段と、前記第2のピッチ生成手段に対応する第2のピッチツール駆動手段と、を備え、前記第1のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールにより、前記コイルを成長させるものであるのに対し、引用発明2では、ピッチ生成手段は、コイルを成長させる略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるピッチ設定工具38であって、第1及び第2のピッチ生成手段を備えるものとはされていない点。 (2)相違点2についての検討 甲第4〜6号証には、上記のとおりピッチ生成手段としてプッシュツールを用いることが記載されている。 そして、甲第6号証には、前板2の前面に、先端に切刃を設けて芯金7と協動して線材Wを切断する芯金7のD字状直線部外側に向かって進退可能な切断ツール6Cと、先端を楔状に形成して切断ツール6Cと略対向する位置でコイルCの軸芯に向かって進退可能なコイルばねの所定のピッチを形成する楔形ピッチツール8とを設けること、及び、成形ツール6F,6SによってコイルCに成形されつつある線材Wの後面に当接して押圧可能な、右巻きコイルばねの所定のピッチを形成する押出しピッチツール9Aを図2に示す進退可能な押圧ロッド11Aに取着することが記載されている(上記摘記事項(6-イ)、(6-ロ)参照)。 ここで、甲第6号証における、「切断ツール6C」、「楔形ピッチツール8」及び「押出しピッチツール9A」は、本件発明2における「切断ツール」、「ウェッジツール」及び「プッシュツール」に対応しており、押出しピッチツール9Aが第1のピッチ生成手段を、楔形ピッチツール8が第2のピッチ生成手段をそれぞれ構成しているということができる。また、甲第6号証において、各ツールをそれぞれスライド駆動する駆動手段が備えられていることは明らかである。 そうすると、甲第6号証には、 「スプリング製造装置において、 ピッチ生成手段は、第1及び第2のピッチ生成手段を備え、ピッチツール駆動手段は、前記第1のピッチ生成手段に対応する第1のピッチツール駆動手段と、前記第2のピッチ生成手段に対応する第2のピッチツール駆動手段と、を備え、 前記第1のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールにより、前記コイルを成長させ、 前記第2のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるウェッジツールにより、前記コイルを成長させ、 前記芯金は、前記ベースの略中央に固定され、前記第2のピッチ生成手段と前記切断手段とは、前記芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、前記ウェッジツールと前記切断ツールとは該芯金に向けてスライド可能に設けられていること」 が記載されているとすることができる。 そして、引用発明2においてピッチ生成手段として適宜の方式のものを採用できることは明らかであるとともに、甲第6号証に記載されたピッチツールを適用できないとする特段の事由も見当たらないから、引用発明2におけるピッチ生成手段として甲第6号証に記載された発明を適用して上記相違点に係る本件発明2の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。 また、本件発明2の作用効果についてみても、引用発明2及び甲第4〜6号証に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本件発明2は、引用発明2及び甲第4〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、被請求人は前記審判事件答弁書において、概略、下記(ア)、(イ)の点について主張している。 (ア)甲第4〜6号証には、本件発明1における「前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び、前記コイルを成長させる前記略法線方向に、前記ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフト」を備えた構成、及び、「前記ピッチツールは、前記芯金台座上で前記ツールシャフトに取り付けられ」た構成が開示されていない。そして、本件発明1は、当該構成を備えることにより、「ピッチツール」及び「ピッチツールシャフト」に関する構成が「芯金台座」を利用することで装置のコンパクトが図れる。また、剛性の高い部材である「芯金台座」が「ツールシャフト」の軸受となるので、スライド駆動される「ツールシャフト」をより安定して支持し、より確かな動作を実現できる。(審判事件答弁書第6頁第12行〜第8頁第1行参照) (イ)本件発明2に関して、甲第1〜6号証には、コイルを成長させる方向にスライド駆動されるプッシュツール及びその駆動装置を上下移動可能な「ベース」上に設けることで、ワイヤに所定のコイル径、ピッチを付与するツール類の相対的な位置関係を変更すること無くコイル径等を設定できるようにするという技術思想が開示・示唆されてない。さらに、動作が異なる2種類のピッチ生成のための機構を、上下に移動可能な共通の「ベース」上に設けて、いずれの機構を用いる場合においても、ワイヤに所定のコイル径、ピッチを付与するツール類の相対的な位置関係を変更すること無くコイル径等を設定できるようにするという技術思想が開示・示唆されてない。(同第8頁第3行〜第9頁第16行参照) しかしながら、(ア)の点については、上記1(2)にて述べたとおり、芯金は、切断ツールと協同してワイヤにせん断力を付与するものであるから、所定の強度、剛性をもって固定される必要があることは明らかであり、芯金をベースに突出して設けられた芯金台座に固定することは当業者が普通に採用する設計的事項にすぎないものであるとともに、スプリング製造装置において、ピッチ生成手段を、コイリング手段、切断手段及び芯金等の近傍に配置することも当然行われる事項である。また、甲第5号証の図1又は図8に示されるように、取付摺動棒5は起立基板6の前面に設けられた厚い部材をも貫通して保持されており、前記厚い部材により取付摺動棒(ツールシャフト)の支承部分の剛性が高められ安定して支持されることは当業者が容易に理解できる事項である。そうしてみると、引用発明1におけるピッチ生成手段として甲第5号証に記載されたプッシュツールを採用するに当たり、芯金台座を通過して支持するよう構成することは当業者が容易になし得たことというべきである。 (イ)の点については、引用発明2は、ピッチ生成手段を芯金及び切断手段とともに上下移動可能なベース上に配置するという構成を具備するものであり、引用発明2もワイヤに所定のコイル径、ピッチを付与するツール類の相対的な位置関係を変更することなくコイル径等を設定できるものということができる。そして、ピッチ生成手段としてプッシュツールはくさび形ツールとともに当業者に既に知られた事項にすぎないものであり、動作が異なる2種類のピッチ生成のための機構を同じ部材上に配置することも甲第6号証に記載されているから、引用発明2における上下に移動可能なベース上に、動作が異なる2種類のピッチ生成のための機構を配置することは当業者が容易になし得たことといわざるをえない。 よって、被請求人の上記主張は採用することができない。 第8 むすび 以上のとおり、本件発明1乃至2は、甲第1〜6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1乃至2についての特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 スプリング製造装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、 前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、 前記成形テーブル上には、 前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、 前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、 前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、 前記ベース上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、 前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、 前記ベースの略中央に突出して当該ベースに設けられた芯金台座に固定され、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、 前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、 前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、 が設けられ、 前記ピッチツール駆動手段は、前記芯金に対して前記ベースの反対側に配設され、 前記ピッチ生成手段は、 前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び、前記コイルを成長させる前記略法線方向に、前記ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフトを備え、 前記ピッチツールは、前記芯金台座上で前記ツールシャフトに取り付けられ、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールであることを特徴とするスプリング製造装置。 【請求項2】 スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、 前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、 前記成形テーブル上には、 前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、 前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、 前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、 前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、 前記ベース上には、 前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、 前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、 前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、 前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、 前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、 が設けられ、 前記ピッチ生成手段は、第1及び第2のピッチ生成手段を備え、 前記ピッチツール駆動手段は、前記第1のピッチ生成手段に対応する第1のピッチツール駆動手段と、前記第2のピッチ生成手段に対応する第2のピッチツール駆動手段と、を備え、 前記第1のピッチ生成手段は、 前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールにより、前記コイルを成長させ、 前記第2のピッチ生成手段は、 前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるウェッジツールにより、前記コイルを成長させ、 前記芯金は、前記ベースの略中央に固定され、前記第2のピッチ生成手段と前記切断手段とは、該芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、前記ウェッジツールと前記切断ツールとは該芯金に向けてスライド可能に設けられていることを特徴とするスプリング製造装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、圧縮バネや引張バネ等のスプリング製造装置に関し、特にスプリングとなるワイヤを連続して送り出しながら、ポイントツールに当接させることにより所定のコイル径に巻くと共に、ワイヤを巻きながらピッチツールを介在させることにより所定ピッチのコイルを成長させ、切断ツールにより切断して所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来のスプリング製造装置は、ワイヤを送り出す方向に平行な成形テーブルを有し、この成形テーブル上に切断時に切断ツールと協働してワイヤにせん断力を付与するための芯金が配置され、更にこの芯金に対して上下方向に沿うように切断ツール及びピッチツールが配置され、芯金に対して放射状に1つ又は複数のポイントツールが配置されている。 【0003】 芯金は、コイル径に応じて成形テーブル上における上下方向の位置を任意に変更可能に設けられている。ピッチツールと切断ツールは、例えば、芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、芯金に向けてスライド可能に設けられている。また、ポイントツールは、送り出されるワイヤに当接して、スプリングのコイル径を規定するようにスライド可能に設けられ、成形テーブル上において、所望のスプリング形状に応じてその配置を任意に変更できる。成形テーブルは、装置本体におけるスプリング成形空間を規定する。ピッチツール、ポイントツール、切断ツールは、フィードローラにより送り出されるワイヤに当接したり、ワイヤを切断する突出位置或いはワイヤから遠ざかる待避位置の間を所定のタイミングでスライド駆動することによりワイヤを所望のコイルスプリングに成形する。 【0004】 例えば、コイル径がスプリング高さ方向に沿って均一な圧縮コイルスプリングを成形する場合を説明すると、ワイヤはポイントツールに当接して強制的に湾曲され、同時にピッチツールを湾曲していくコイルに介在させることにより成形テーブルに対して法線方向に所定ピッチのコイルが成長していく。そして、所定のスプリング高さに成長させた後、芯金と切断ツールにより切断することにより、圧縮コイルスプリングが完成する。 【0005】 この種のスプリング製造装置として、例えば、特公平7-115101号公報には、固定された架台(成形テーブル)に、上下方向に調節可能なハウジングを設けて、このハウジングに芯金と切断装置(切断ツール)とピッチ設定装置(ピッチツール)とを設けると共に、切断装置とピッチ設定装置とが芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、芯金に向けてスライド可能に設けられているものが開示されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来のスプリング製造装置では、コイル径等を変更する場合には、芯金、ポイントツール、ピッチツール、切断ツールを成形テーブル上から取り外し、必要に応じてツールの先端形状等を交換しながら相対的な位置関係を調節し直す必要があった。 【0007】 また、特公平7-115101号公報に開示されたスプリング製造装置では、切断装置を駆動する電動モータはハウジング後側に搭載されてベルト駆動により切断装置に駆動力を伝達するのに対して、ピッチ設定装置を駆動する電動モータは架台に搭載されてリンク機構を介してピッチ設定装置に駆動力を伝達する構造となっている。このため、コイル径の変更等によりハウジングの上下方向の位置を変更する毎に、ピッチ設定装置とリンク機構との位置関係を再度調節する必要があり、調節作業に手間を要するという欠点があった。 【0008】 また、ピッチ設定装置にハウジングにより上下方向に移動可能なのに対して、その駆動モータは架台に固定されるため不動である。このため、両者を連結するためにベルト機構やリンク機構等の複雑な伝達機構が必要となると共に、ハウジングが移動可能なので、伝達機構に両者の位置関係を調節するための調節機構を設ける必要があり、部品点数の増大によるコスト高が問題となる。 【0009】 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワイヤの切断に供される芯金や、ワイヤに所定のコイル径、ピッチを付与するツール類の相対的な位置関係を変更すること無く、容易にコイル径等を設定できるスプリング製造装置を提供することにある。 【0010】 また、ツール類の駆動に必要な伝達機構を簡略化してコスト低減を図ることができるスプリング製造装置を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】 上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明は以下の構成を備える。即ち、スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、前記成形テーブル上には、前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、前記ベース上には、前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、前記ベースの略中央に突出して当該ベースに設けられた芯金台座に固定され、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、が設けられ、前記ピッチツール駆動手段は、前記芯金に対して前記ベースの反対側に配設され、前記ピッチ生成手段は、前記ベースの前記反対側から前記芯金台座を通過して延び、前記コイルを成長させる前記略法線方向に、前記ピッチツール駆動手段によってスライド駆動されるツールシャフトを備え、前記ピッチツールは、前記芯金台座上で前記ツールシャフトに取り付けられ、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールであることを特徴とする。 また、スプリングとなるワイヤを該ワイヤの中心軸に略平行な面を有する成形テーブル上に送り出し、このワイヤを該成形テーブル上に配設されたツールを用いて、らせん状に巻いたり、切断することによって所望形状のコイルスプリングを成形するスプリング製造装置において、前記スプリング製造装置本体には前記成形テーブルが取り付けられ、前記成形テーブル上には、前記ワイヤを前記成形テーブル上に送り出す送出手段と、前記成形テーブル上に送り出された前記ワイヤを、コイリングツールに当接させることによりらせん状に巻いていくコイリング手段と、前記コイリングツールをスライド駆動させるコイリングツール駆動手段とが設けられ、前記成形テーブル上にはその上下方向の位置を移動可能に設けられたベースが取り付けられ、前記ベース上には、前記コイリング手段により連続して巻かれていく前記ワイヤにピッチツールを介在させて、前記成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、前記ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、前記ワイヤを切断する切断ツールと協働して前記ワイヤにせん断力を付与する芯金と、前記ワイヤを前記切断ツールにより切断する切断手段と、前記切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、が設けられ、前記ピッチ生成手段は、第1及び第2のピッチ生成手段を備え、前記ピッチツール駆動手段は、前記第1のピッチ生成手段に対応する第1のピッチツール駆動手段と、前記第2のピッチ生成手段に対応する第2のピッチツール駆動手段と、を備え、前記第1のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向にスライド駆動されるプッシュツールにより、前記コイルを成長させ、前記第2のピッチ生成手段は、前記ピッチツールとして、前記コイルを成長させる前記略法線方向と直交する上下方向にスライド駆動されるウェッジツールにより、前記コイルを成長させ、前記芯金は、前記ベースの略中央に固定され、前記第2のピッチ生成手段と前記切断手段とは、該芯金に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、前記ウェッジツールと前記切断ツールとは該芯金に向けてスライド可能に設けられていることを特徴とする。 【0012】 【発明の実施の形態】 以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。 [スプリング装置全体の概略] 図1は、本発明に係る実施形態のスプリング製造装置の概略斜視図である。 【0013】 図1に示すように、本実施形態のスプリング製造マシン10は、主として、送り出されるワイヤに所定のコイル径及びピッチを付与することにより、円錐形、つづみ形、たる形等の圧縮コイルスプリングを成形する装置であるが、引張コイルスプリングやねじりコイルスプリングも成形できることは言うまでもない。 【0014】 このスプリング製造マシン10は、箱体状のマシン本体20と、このマシン本体20の上面に据付けられるコイリングアッセンブリ100とマシン全体の制御を司るコントローラ200とを備える。 【0015】 コイリングアッセンブリ100は、後述するように、コイリングアッセンブリ本体と、そのコイリングアッセンブリ本体に設けられたワイヤWを送り出すフィード機構と、芯金、ピッチ生成ツールとしてのウェッジツールやプッシュツール、切断ツールを備えるツールアッセンブリ120と、ポイントツールを備えるポイントツールアッセンブリを備える。 【0016】 コイリングアッセンブリ100は、フィード機構によりワイヤWを送り出す役割と、送り出されるワイヤWをポイントツールアッセンブリにより強制的に湾曲させながら、ツールアッセンブリ120により所定のコイル径及びピッチでコイルを成長させる役割と、最終的に所望形状に成形されたコイルを切断して1つのコイルスプリングとする役割とを兼ね備える。 【0017】 [コイリングアッセンブリ] 次に、コイリングアッセンブリ100について詳細に説明する。 【0018】 図2は、図1に示すコイリングアッセンブリの詳細斜視図である。図3は、図2に示すコイリングアッセンブリを後方から見た詳細斜視図である。また、図4は、図2の正面図である。 【0019】 図2〜図4において、コイリングアッセンブリ100は、マシン本体20に固定される前方コイリングアッセンブリ本体101と後方コイリングアッセンブリ本体102とを備える。前方及び後方コイリングアッセンブリ101、102は、所定の強度を備えるような板厚を有する金属材料等からなり、複数の連結アーム103によって上下数ヶ所において接続されている。前方及び後方コイリングアッセンブリ101、102は、連結アーム103によってその間に所定間隔を開けて接続されている。 【0020】 前方コイリングアッセンブリ本体101の前面には、ワイヤWを送り方向(図4の紙面に対して左側から右側)に案内する3個のワイヤフィードライナ109がワイヤ送り方向に沿って所定間隔を開けて設けられている。また、3個のワイヤフィードライナ109の間隔を埋めるように、上下一対の上流フィードローラ106、下流フィードローラ107が回転駆動可能に設けられている。 【0021】 上流及び下流フィードローラ106、107は、図3に示すように、前方コイリングアッセンブリ101から後方コイリングアッセンブリ102に亘って軸支されたフィードローラシャフト104と、これらのフィードローラシャフト104をベルト機構又はギア機構により回転駆動するフィードローラ駆動モータ105により回転駆動される。フィードローラ駆動モータ105は、後方コイリングアッセンブリ102に固定されている。上流及び下流フィードローラ106、107は、その上側の各ローラを加圧ローラ108により上下方向に移動することができる。加圧ローラ108は、上側の各ローラを上下方向に移動することによりワイヤWに対する押圧力を調節する。 【0022】 ワイヤWは、上流及び下流フィードローラ106、107を送り方向に回転駆動させることにより、ワイヤフィードライナ109に案内されながら、後述するスプリング成形空間内に送り出される。 【0023】 前方コイリングアッセンブリ101は、ワイヤWの送り方向に延設された半円盤状の半円テーブル112を有している。前方コイリングアッセンブリ101と半円テーブル112はワイヤWの送り方向に平行な面を形成し、その面はスプリング成形空間を規定する成形テーブルとして機能する。 【0024】 半円テーブル112の円周端面には、円周方向に亘ってガイド溝112aが形成されている。このガイド溝112aには、後述するポイントツールアッセンブリ160がその円周端面上を移動可能に配置されている。ポイントツールアッセンブリ160は、ボルト機構(若しくはネジ機構)によりガイド溝112aに沿った任意の位置に固定される。 【0025】 前方コイリングアッセンブリ本体101における半円テーブル112の連結部分付近には、後述する芯金、ピッチ生成ツールとしてのウェッジツールやプッシュツール、切断ツール、各ツールの駆動モータを搭載するツールアッセンブリ120が設けられている。ツールアッセンブリ120は、前方コイリングアッセンブリ本体101に対して上下方向に所定距離だけ移動可能にされている。 【0026】 図3に示すように、ツールアッセンブリ120は、上部固定部110と下部固定部111により前方コイリングアッセンブリ本体101に固定されている。上部固定部110と下部固定部111は、ボルト機構(若しくはネジ機構)である。ツールアッセンブリ120は、前方コイリングアッセンブリ本体101の後方で軸支されたピニオンシャフト114と、このピニオンシャフトに固着されたピニオンギア115と、このピニオンギア115に噛合するツールアッセンブリ120に設けられたラック124からなるラック&ピニオン機構により上下方向に移動可能となっている。ラック124は前方コイリングアッセンブリ本体101に設けられた矩形孔101aを介して後方に突出して、ピニオンギア115に噛合される。ピニオンシャフト114は、図4に示すように、前方コイリングアッセンブリ本体101の側方に設置された調節ハンドル113により回動され、このピニオンシャフト114の回動によりツールアッセンブリ120を上下方向に移動する。 【0027】 ツールアッセンブリ120を上下方向に移動させる理由は、コイル径の変更に伴って芯金を移動させる必要があるためである。 【0028】 このツールアッセンブリ120を上下方向に調節する場合には、先ず、上部固定部110と下部固定部111の締結を緩め、その後、調節ハンドル113を回しながら所望の高さに移動させ、ツールアッセンブリ120の高さが決まったところで上部固定部110と下部固定部111を締結する。 【0029】 [ツールアッセンブリ] 次に、ツールアッセンブリ120について詳細に説明する。 【0030】 図5は、図2に示すツールアッセンブリの詳細斜視図である。図6は、図5に示すツールアッセンブリの正面図である。図7は、図5に示すツールアッセンブリの側面図である。図8は、図5に示すツールアッセンブリを分解して示す詳細斜視図である。 【0031】 図5〜図8において、ツールアッセンブリ120は、細長く形成されたツールアッセンブリ基部121と、このツールアッセンブリ基部121の略中央に設けられた芯金ブロック122と、ツールアッセンブリ基部121上にスライド可能に設けられた切断ツールアッセンブリ130とウェッジツールアッセンブリ140とを備える。 【0032】 切断ツールアッセンブリ130とウェッジツールアッセンブリ140は、芯金ブロック122に一体的に形成された半円状の芯金123に対して上下方向に沿って互いに対向するように配置され、芯金123に向けてスライド可能に設けられている。芯金ブロック122及び芯金123は、ツールアッセンブリ基部121の略中央に突出して設けられた芯金台座121c上に固定される。また、芯金台座121c上からツールアッセンブリ基部121の後方に亘って、後述するプッシュツールアッセンブリ150が設けられている。また、前述のラック124は、ツールアッセンブリ基部121の後方であって、プッシュツールアッセンブリ150の下部に設けられ、ツールアッセンブリ基部121を上下方向に移動可能とする。ツールアッセンブリ基部121の上端部の後方には、後述する切断ツールを駆動する切断ツール駆動モータ136が設けられている。更に、ツールアッセンブリ基部121の下端部の後方には、後述するウェッジツールを駆動するウェッジツール駆動モータ146が設けられている。 【0033】 ツールアセンブリ120は、図4に示すように、芯金123が半円テーブル112の略中心に配置され、切断ツールアッセンブリ130とウェッジツールアッセンブリ140とが半円テーブル112の垂直方向の直径に沿って配置され、ポイントツールアッセンブリ160が半円テーブルの円周端面から半径に沿って配置される。 【0034】 <切断ツールアッセンブリ> 図6〜図8に詳細を示すように、切断ツールアッセンブリ130は、ツールアッセンブリ基部121上において、芯金123に対して上側に設けられている。切断ツールアッセンブリ130は、ツールアッセンブリ基部121に固定される切断ツールアッセンブリ基部131と、この切断ツールアッセンブリ基部131上にスライド可能に設けられた切断ツールスライド132を備える。切断ツールスライド132の芯金側の先端部には、ワイヤを切断するための切断ツール133が交換可能に取り付けられる。切断ツールスライド132は、その両側に設けられた2本の引張コイルスプリング134により紙面上方に付勢されている。この引張コイルスプリング134は、切断ツールアッセンブリ基部131の上端部と切断ツールスライド132とに張設されている。また、切断ツールスライド132の芯金側と反対の他端部には、円筒状の当接部131aが形成されている。この当接部131aは、2本のスプリング134の付勢作用により、カム135のカム表面に常時当接するようになっている。カム135は、ツールアッセンブリ基部121の上端部に回転自在に軸支される上部支持アーム121aに固着される。上部支持アーム121aは、その後方に設けられた切断ツール駆動モータ136に連結され、カム135を所定のタイミングで回転させる。切断ツールスライド132のストローク幅は、カム135の形状により決定される。切断ツールスライド132は、カム135が回転することにより、スプリング134に抗してワイヤWの切断時に芯金132と協働してワイヤWにせん断力を付与する突出位置と、スプリング134の付勢力によりワイヤWから遠ざかる待避位置の間をスライド駆動される。また、切断ツール133は半円テーブル112の垂直方向の直径に沿ってスライド駆動される。 【0035】 <ウェッジツールアッセンブリ> 図6〜図8に詳細を示すように、ウェッジツールアッセンブリ140は、ツールアッセンブリ基部121上において、芯金123に対して下側に設けられている。ウェッジツールアッセンブリ140は、ツールアッセンブリ基部121に固定されるウェッジツールアッセンブリ基部141と、このウェッジツールアッセンブリ基部141上にスライド可能に設けられたウェッジツールスライド142を備える。ウェッジツールスライド142の芯金側の先端部には、先端になる程幅が小さくなるウェッジツール143が交換可能に取り付けられる。ウェッジツールスライド142は、その両側に設けられた2本の引張コイルスプリング144により紙面下方に付勢されている。この引張コイルスプリング144は、ウェッジツールアッセンブリ基部141の下端部とウェッジツールスライド142とに張設されている。また、ウェッジツールスライド142の芯金側とは反対の他端部には、円筒状の当接部141aが形成されている。この当接部141aは、2本のスプリング144の付勢作用により、カム145のカム表面に常時当接するようになっている。カム145は、ツールアッセンブリ基部121の下端部に回動自在に軸支される下部支持アーム121bに固定される。下部支持アーム121bは、その後方に設けられたウェッジツール駆動モータ146に連結され、カム145を所定のタイミングで回動させる。ウェッジツールスライド142のストローク幅は、カム145の形状により決定される。ウェッジツールスライド142は、ワイヤWが後述するポイントツールによりらせん状に巻かれる時に、順次巻かれていくコイルに介在して所定ピッチを形成する突出位置と、スプリング144の付勢力によりワイヤWから遠ざかる待避位置の間をスライド駆動される。また、ウェッジツール143は、切断ツール133と同様に、半円テーブル112の垂直方向の直径に沿ってスライド駆動される。 【0036】 <プッシュツールアッセンブリ> 図6〜図8に詳細を示すように、プッシュツールアッセンブリ150は、芯金台座121c上からツールアッセンブリ基部121の後方に亘って設けられている。ツールアッセンブリ基部121の後方には、複数の連結アーム154によりツールアッセンブリ基部121に固定されたプッシュツールアッセンブリ基部151が固定されている。このプッシュツールアッセンブリ基部151には、プッシュツール駆動モータ156が固定される。このプッシュツール駆動モータ156には、芯金台座121c上まで延びるプッシュツールシャフト152が連結され、プッシュツール駆動モータ156を回転させることによりプッシュツールシャフト152をその長手方向に沿ってスライド移動させるスライド機構155を介して連結されている。また、芯金台座121a上におけるプッシュツールシャフト152の先端部には、プッシュツール153が固定されている。プッシュツール153は、プッシュツール駆動モータ156が回転してプッシュツールシャフト152がスライド移動することにより、ツールアッセンブリ基部121の法線方向に沿って(プッシュツールシャフト152の長手方向に沿って)スライド駆動可能となっている。プッシュツール153は、ワイヤWが後述するポイントツールによりらせん状に巻かれる時に、順次そのコイルに介在して所定ピッチを形成する突出位置と、プッシュツールシャフト152を後方に引っ込めてワイヤWに介在させない待避位置の間をスライド駆動される。また、プッシュツールシャフト152は芯金123に対して上下方向に対称な位置に変更できる。即ち、プッシュツール152は、図示の位置から、芯金123の斜め下方のシャフト152aに変更できる。プッシュツール153をいずれの位置に取り付けるかは、ワイヤWの巻き方向により決定される。即ち、図4において、ワイヤWが紙面上で左巻きに巻かれる場合は、図示のプッシュツールシャフト152に取り付けられ、ワイヤWが紙面上で右巻きに巻かれる場合は、プッシュツールシャフト152aに取り付けられる。 【0037】 尚、上述のウェッジツール143とプッシュツール153とは、スプリング成形時において同時に使用されることは無く、ワイヤWの特性により適宜使い分けられる。 【0038】 [ポイントツールアッセンブリ] 次に、ポイントツールアッセンブリ160について詳細に説明する。 【0039】 図9は、図1〜図4に示すポイントツールアッセンブリの詳細斜視図である。 【0040】 図9において、ポイントツールアッセンブリ160は、図2に示すガイド溝112a上を移動可能なスライドブロック167と、このスライドブロック167に固定されたポイントツールアッセンブリ基部161と、このポイントツールアッセンブリ基部161上にスライド可能に設けられたポイントツールスライド162を備える。ポイントツールスライド162の芯金側の先端部には、ポイントツール支持アーム168を介して先端部が平面状に形成されたポイントツール163が交換可能に取り付けられる。ポイントツールスライド162は、その両側に設けられた2本の引張コイルスプリング164により紙面上方に付勢されている。この引張コイルスプリング164は、ポイントツールアッセンブリ基部161の上端部とポイントツールスライド162とに張設されている。また、ポイントツールスライド162の芯金側とは反対の他端部には、円筒状の当接部166aが形成されている。この当接部166aは、2本のスプリング164の付勢作用により、カム165のカム表面に常時当接するようになっている。カム165は、スライドブロック167に回動自在に軸支される。カム165は、スライドブロック167の後方に設けられたポイントツール駆動モータ166に不図示のシャフトを介して連結され、所定のタイミングで回転する。ポイントツールスライド162のストローク幅は、カム165の形状により決定される。ポイントツールスライド162は、ポイントツール163を送り出されるワイヤWに当接させてらせん状の巻くための突出位置と、スプリング164の付勢力によりワイヤWから遠ざかる待避位置の間をスライド駆動される。また、ポイントツール支持アーム168には、マイクロメータ162aが設けられ、ポイントツールの位置を微調整可能になっている。 【0041】 図4に示すように、ポイントツールスライド162は、半円テーブルの円周端面から半径に沿ってスライド駆動され、ポイントツール163は、ワイヤWに平面で当接するようにワイヤの送り方向に沿って水平に配置される。 【0042】 尚、ポイントツールアッセンブリ160を半円テーブル112の円周端面上に複数設ける場合には、ポイントツール163がポイントツールスライド162のスライド方向に沿って取り付けられるように、ポイントツール支持アームを交換できる。 【0043】 [スプリング製造手順] 次に、本実施形態のスプリング製造マシン10によりスプリングを製造する手順について詳細に説明する。 【0044】 図10は、図2に示すスプリング成形空間の拡大図である。 【0045】 図10において、ウェッジツール143を用いてコイル径がスプリング高さ方向に沿って均一な圧縮コイルスプリングを成形する場合を説明すると、先ず、準備段階として、スプリングの所望のコイル径に基づいて、図2に示すツールアッセンブリ120を上下方向に調節して、芯金123の位置を決定する。即ち、図2に示す上部固定部110と下部固定部111の締結を緩め、その後、調節ハンドル113を回しながら所望の高さに移動させ、ツールアッセンブリ120の高さが決まったところで上部固定部110と下部固定部111を締結する。 【0046】 ツールアッセンブリ120を上下方向に調節した後、芯金123の位置及びコイル径に基づいてポイントツールアッセンブリ160をガイド溝112aに沿って移動させる。この準備段階では、芯金123、切断ツール133、ウェッジツール143の相対的な位置関係は基本的に変更する必要が無い。なぜならば、ツールアッセンブリ120に取り付ける際に、芯金123、切断ツール133、ウェッジツール143の相対的な位置関係は調整済みだからである。但し、ツールの形状や種類を変更した場合には微調整を必要とする場合もある。 【0047】 準備段階を終えると、ポイントツール163を芯金123に近接した突出位置にスライドさせると共に、所定ピッチに応じてウェッジツール143を芯金123に近接した突出位置にスライドさせる。また、切断ツール133は、芯金123から遠ざかる待避位置とする。この状態で、ワイヤWをフィードローラ107の回転により送り出していく。ワイヤWはポイントツール163の先端部に当接して強制的に湾曲される。ワイヤWを続けて送り出すことにより、ワイヤWは、連続的にらせん状に巻かれながらスプリング成形テーブルに対して法線方向に成長していく。また、ウェッジツール143は、連続して湾曲されていくコイルの径方向に介在しながらスプリング成形テーブルに対して法線方向に所定ピッチのコイルを成長させる。そして、所定スプリング高さのコイルを成長させた後、切断ツールを芯金123に向けてスライドさせて切断することにより、1つの圧縮コイルスプリングが完成する。 【0048】 尚、上記スプリング製造過程において、プッシュツール153を用いる場合は、ウェッジツール143はウェッジツールアッセンブリ140から取り外して、ウェッジツール駆動モータ146を作動しないようにする。そして、ポイントツール163を芯金123に近接した位置にスライドさせると同時に、所望のピッチに応じてプッシュツール153を芯金123に近接した突出位置に移動させる。 【0049】 また、コイル径やピッチを変化させた円錐形、つづみ形、たる形等の圧縮コイルスプリングを成形する場合は、ワイヤWを送り出しながら、ウェッジツール143を芯金123に近接した位置にスライドさせ、或いはプッシュツールを芯金123に近接した突出位置に移動させ、プッシュツール153の突出位置をピッチに応じて変化させると同時に、ポイントツール163と芯金123との距離をコイル径に応じて変化させれば良い。 【0050】 尚、上述のスプリング製造において、ワイヤWの送り出し速度や各ツールの駆動制御は、図12に後述する制御ブロックが司る。 【0051】 [ツールアッセンブリの一体化による効果] 次に、本実施形態のツールアッセンブリ120の奏する効果について説明する。 【0052】 図11は、上述のツールアッセンブリの奏する効果を説明する模式図である。 【0053】 図11において、本実施形態のツールアッセンブリ120は、芯金123、切断ツールアッセンブリ130、ウェッジツールアッセンブリ140、プッシュツールアッセンブリ150、ポイントツールアッセンブリ160を全て搭載した状態で上下方向に移動できるので、ワイヤW1〜W3で示すようにスプリングのコイル径等を変更する場合でも、芯金123l〜n、切断ツール133l〜n、ウェッジツール143l〜n、プッシュツール153l〜n、ポイントツール163l〜nの相対的な位置関係を全く変化させることなく所望のコイル径に設定変更できる。 【0054】 即ち、図11に示すように、コイル径lに設定されたワイヤW1に関して、芯金123lと切断ツール133lとの距離l1、芯金123lとウェッジツール143lとの距離l2とし、コイル径mに設定されたワイヤW2に関して、芯金123mと切断ツール133mとの距離m1、芯金123mとウェッジツール143mとの距離m2とし、コイル径nに設定されたワイヤW3に関して、芯金123nと切断ツール133nとの距離n1、芯金123nとウェッジツール143nとの距離n2とすると、コイル径を変更するためにツールアッセンブリ120を上下に移動させたとしても、常にl1=m1=n1及びl2=m2=n2の関係を満足することになり、従来のスプリング製造装置での芯金、ポイントツール、ウェッジツール、プッシュツール、切断ツールを成形テーブル上から取り外して、必要に応じてツールを交換しながら相対的な位置関係を調節し直す手間を省くことができる。 【0055】 また、切断ツール駆動モータ136、ウェッジツール駆動モータ146、プッシュツール駆動モータ156、ポイントツール駆動モータ166が全てツールアッセンブリ120に搭載されるので、一旦調整してしまえば各ツールと駆動モータとの位置関係を再度調節する必要がなくなる。 【0056】 また、各ツールと駆動モータとを連結するために従来必要であったベルト機構やリンク機構等の複雑な伝達機構が不用となると共に、芯金と各ツールの位置関係を調節するための調節機構も不要となるため、部品点数を減少してコスト低減を図ることができる。 【0057】 また、芯金123、切断ツールアッセンブリ130、ウェッジツールアッセンブリ140、プッシュツールアッセンブリ150が同一のツールアッセンブリ基部121に固定されるので、芯金や各種ツールの取り付け強度が向上する。 【0058】 [制御ブロック] 次に、本実施形態のスプリング製造マシン10の制御ブロックについて説明する。 【0059】 図12は、スプリング製造マシンのツールアッセンブリ100とコントローラ200との関係を示すブロック図である。 【0060】 図12に示すように、CPU201はコントローラ200の全体を制御する.ROM202はCPU201の動作処理内容(プログラム)及び各種フォントデータを記憶している。RAM203はCPU201のワークエリアとして使用される。表示部204は各種設定を行ったり、その内容の表示、更には製造の過程等をグラフ表示したりするために設けられる。外部記憶装置205はフロッピーディスクドライブ等であり、外部からプログラムを供給したり、或いはワイヤ成形加工のための各種設定内容を保存するために使用される。この結果、例えば、ある成形加工(例えばスプリングであればその自由長や径等)のためのパラメータを記憶しておくことで、いつでもそのフロッピーをセットして実行することで、同じ形状のスプリングを製造することが可能になる。 【0061】 キーボード206は各種パラメータを設定するために設けられ、センサ群209はワイヤの送り出し量や、スプリングの自由長等を検知するために設けられる。 【0062】 各モータ208-1〜208-nは、前述のフィードローラ駆動モータ105、切断ツール駆動モータ136、ウェッジツール駆動モータ146、プッシュツール駆動モータ156、ポイントツール駆動モータ166を表わし、各モータ208-1〜208-nは、夫々に対応するモータドライバ207-1〜207-nにより駆動される。 【0063】 この制御ブロックでは、CPU201は、キーボード206から入力された指示に従い、例えば、各種ツールモータをそれぞれ独立して駆動したり、外部記憶装置との入出力、更には表示部204を制御することになる。 【0064】 尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。 【0065】 例えば、ツールアッセンブリ120は、ラック&ピニオン機構で上下に移動させる構成としたが、ウォームギヤ等を用いても良い。 【0066】 また、半円テーブル上に複数のポイントツールアッセンブリ160を設けて、ワイヤWを2つ以上のポイントツールに当接させてらせん状に巻くこともできる。 【0067】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、成形テーブル上にその上下方向の位置を移動可能にベースを取り付け、ベース上に、コイリング手段により連続して巻かれていくワイヤにピッチツールを介在させて、成形テーブルに対して略法線方向に所定ピッチのコイルを成長させるピッチ生成手段と、ピッチツールをスライド駆動させるピッチツール駆動手段と、ワイヤを切断する切断ツールと協働してワイヤにせん断力を付与する芯金と、ワイヤを切断ツールにより切断する切断手段と、切断ツールをスライド駆動させる切断ツール駆動手段と、を設けたので、ワイヤの切断に供される芯金やツール類、ワイヤに所定のコイル径、ピッチを付与するツール類の相対的な位置関係を変更すること無く、容易にコイル径等を設定できる。 【0068】 また、ツール類の駆動に必要な伝達機構を簡略化してコスト低減を図ることができる。 【0069】 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る実施形態のスプリング製造装置の概略斜視図である。 【図2】 図1に示すコイリングアッセンブリの詳細斜視図である。 【図3】 図2に示すコイリングアッセンブリを後方から見た詳細斜視図である。 【図4】 図2の正面図である。 【図5】 図2に示すツールアッセンブリの詳細斜視図である。 【図6】 図5に示すツールアッセンブリの正面図である。 【図7】 図5に示すツールアッセンブリの側面図である。 【図8】 図5に示すツールアッセンブリを分解して示す詳細斜視図である。 【図9】 図1〜図4に示すポイントツールアッセンブリの詳細斜視図である 【図10】 図2に示すスプリング成形空間の拡大図である。 【図11】 上述のツールアッセンブリの奏する効果を説明する模式図である。 【図12】 スプリング製造マシンのツールアッセンブリ100とコントローラ200との関係を示すブロック図である。 【符号の説明】 10…スプリング製造マシン 100…コイリングアッセンブリ 112…半円テーブル 120…ツールアッセンブリ 123…芯金 130…切断ツールアッセンブリ 133…切断ツール 140…ウェッジツールアッセンブリ 143…ウェッジツール 150…プッシュツールアッセンブリ 153…プッシュツール 160…ポイントツールアッセンブリ 163…ポイントツール 200…コントローラ |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2005-04-14 |
結審通知日 | 2005-04-18 |
審決日 | 2005-05-09 |
出願番号 | 特願平8-222812 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZA
(B21F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川端 修 |
特許庁審判長 |
前田 幸雄 |
特許庁審判官 |
豊原 邦雄 菅澤 洋二 |
登録日 | 1998-08-07 |
登録番号 | 特許第2812432号(P2812432) |
発明の名称 | スプリング製造装置 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 河野 登夫 |
代理人 | 大西 哲夫 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 高柳 司郎 |