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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1144420 |
審判番号 | 不服2003-24811 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-02-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-24 |
確定日 | 2006-09-25 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第205222号「プライミング容易な血液処理器、および該血液処理器のプライミング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月 9日出願公開、特開平11- 33111号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年7月14日の出願であって、平成15年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年1月22日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年1月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年1月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「中空糸型血液処理膜を収納し、長手方向に沿った方向に互いに対向する端部に動脈側血液ポートおよび静脈側血液ポートを有する血液処理器において、外因的圧力により血液処理器内の気泡を外気中に吐出可能な袋状部材が前記静脈側血液ポートに装着され、該袋状部材が押圧されることによって前記動脈側血液ポート近傍に存在する気泡が動脈側血液ポートから外気中に吐出されることを特徴とするウエットタイプの血液処理器。」 と補正された。(下線は補正箇所を示す。) 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「袋状部材」について「前記静脈側血液ポートに装着され、該袋状部材が押圧されることによって前記動脈側血液ポート近傍に存在する気泡が動脈側血液ポートから外気中に吐出される」との限定を付加するとともに、「血液処理器」について「ウエットタイプ」との限定を付加したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用した特開昭54-154186号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「第1図は、吸着型人工肝臓装置1の血液入口2に袋体4の口部5を嵌合し、血液出口3から生理食塩液7を収納し、キャップ6を嵌合した袋体嵌合人工肝臓装置である。吸着型人工肝臓装置に生理食塩液を収納する場合、吸着型人工肝臓装置は吸着剤により気体および気泡が抜けにくいので、必要に応じて上記キャップ6の代わりに生理食塩液を収納したもう1つの袋体4を用い、袋体4-人工肝臓装置1-袋体4の順に第2図に示すように垂直にして下側の袋体4を圧迫し、次に上側の袋体4を圧迫し、これを繰り返すことにより生理食塩液7を強制的に人工肝臓装置1に導入し気体を上側の袋体4に移行してもよい。このとき、気体を収容した上側袋体4を人工肝臓装置の開口部より取りはずし、代わりにキャップ6を嵌合することにより第1図に示す袋体嵌合人工肝臓装置が得られる。」(第2頁右上欄第10行〜同頁左下欄第7行) (b)「ホローファイバー型人工腎臓装置においては、第3図に示すように蒸留水を収納した前記人工腎臓装置1の血液出入口2,3に蒸留水を収納した袋体4,4の口部5,5を嵌合し、前記人工腎臓装置1の透析液出入口8,9に蒸留水を収納した袋体4,4の口部5,5を嵌合してもよい。」(第2頁右下欄第9行〜同欄第15行) (c)第3図には、ホローファイバーが収納された人工腎臓装置1であって、長手方向に沿った方向に互いに対向する端部に血液入口2および血液出口3を有し、血液入口2と血液出口3とにそれぞれに袋体4,4の口部5,5が嵌合された人工腎臓装置1が図示されている。 (d)また、第3図に図示された人工腎臓装置は、上記(b)に摘記したように、その中に蒸留水が収納されているので、ウエットタイプの人工腎臓装置であるということができる。 (e)また、第3図に図示された人工腎臓装置は、血液入口2および血液出口3にそれぞれ袋体4,4が装着されているところからみて、血液出口3を上側にし、血液入口2を下側にした状態で、下側の袋体4を圧迫した場合、血液出口3近傍に存在する気泡が血液出口3から上側の袋体4に移行され、逆に、血液入口2を上側にし、血液出口3を下側にした状態で、下側の袋体4を圧迫した場合には、血液入口2近傍に存在する気泡が血液入口2から上側の袋体4に移行されるものと解される。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、 「ホローファイバーを収納し、長手方向に沿った方向に互いに対向する端部に血液入口2および血液出口3を有する人工腎臓装置において、圧迫により人工腎臓装置内の気泡を上側の袋体4に移行可能な下側の袋体4が血液出口3に装着され、該下側の袋体4が圧迫されることによって前記血液入口2近傍に存在する気泡が血液入口2から上側の袋体4に移行されるウエットタイプの人工腎臓装置。」の発明(以下、「引用発明」という。) が記載されていると認めることができる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者における「人工腎臓装置」は、その構造又は機能からみて、前者における「血液処理器」に相当し、以下同様に、「ホローファイバー」が「中空糸型血液処理膜」に、「血液入口2」が「動脈側血液ポート」に、「血液出口3」が「静脈側血液ポート」に、「圧迫により」が「外因的圧力により」に、「移行」が「吐出」に、「下側の袋体4」が「袋状部材」に、「圧迫される」が「押圧される」に、それぞれ相当する。 してみると、本願補正発明と引用発明とは、 「中空糸型血液処理膜を収納し、長手方向に沿った方向に互いに対向する端部に動脈側血液ポートおよび静脈側血液ポートを有する血液処理器において、外因的圧力により血液処理器内の気泡を吐出可能な袋状部材が前記静脈側血液ポートに装着され、該袋状部材が押圧されることによって前記動脈側血液ポート近傍に存在する気泡が動脈側血液ポートから吐出されるウエットタイプの血液処理器。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点:本願補正発明においては、気泡が大気中に吐出されるのに対して、引用発明においては、上側の袋体4に吐出される点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 引用発明は、血液入口2と血液出口3にそれぞれ袋体4,4を装着したものであり、前記「2.(2)(a)」に摘記したように、下側の袋体4の圧迫と、上側の袋体4の圧迫とを繰り返すことにより、気泡を上側の袋体4に移行させるものである。 しかしながら、下側の袋体4を圧迫するだけで気泡が上側の袋体4に移行するのであれば、その場合には、上側の袋体4を設ける必要がないことは明らかである。 そうすると、引用発明において、上側の袋体4を取り外し、気泡が大気中に吐出されるようにすることは、状況に応じて当業者が適宜選択し得ることであるといえる。 したがって、相違点に係る本願補正発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるということができる。 そして、本願補正発明の効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年2月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「中空糸型血液処理膜を収納し、動脈側血液ポートおよび静脈側血液ポートを有する血液処理器において、外因的圧力により血液処理器内の気泡を外気中に吐出可能な袋状部材を装着したことを特徴とする血液処理器。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「袋状部材」についての限定事項である「前記静脈側血液ポートに装着され、該袋状部材が押圧されることによって前記動脈側血液ポート近傍に存在する気泡が動脈側血液ポートから外気中に吐出される」との構成を省くとともに、「血液処理器」についての限定事項である「ウエットタイプ」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-18 |
結審通知日 | 2006-07-25 |
審決日 | 2006-08-08 |
出願番号 | 特願平9-205222 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲村 正義 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
増沢 誠一 川本 真裕 |
発明の名称 | プライミング容易な血液処理器、および該血液処理器のプライミング方法 |
代理人 | 川島 利和 |