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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1144498
審判番号 不服2004-25016  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-08 
確定日 2006-09-27 
事件の表示 特願2002- 39594「交換用フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月27日出願公開、特開2003-240297〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年2月18日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年12月28日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「レンジフード等の吸込口に取替可能に取付けられ、油煙等を捕集する交換用フィルタであって、通気性を有し、油煙等を吸着することができる材料よりなるフィルタシートと、油煙等が通過する際の前記フィルタシートの下流側の面の一部に膜状に形成され、油煙等の通過を阻止する透明性を有する交換サインとを備えた、交換用フィルタ。」

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用した特開平11-197428号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「【0009】まず、本発明の第1の実施の形態に係る通気口の交換用フィルタの交換時期判定方法を適用するレンジフード10について説明する。厨房内の調理台11の上部に設けられるレンジフード10は、油煙等の汚れを含む空気を吸い込むための通気口13を下部に備えたレンジフード本体12と、レンジフード本体12内の通気口13に被せて配置され、インジケータの一例である色付きの面状ファスナ14がフィルタ本体15の裏面側に貼着された交換用フィルタ16と、レンジフード本体12内を排気するためのファン17とを有している。」

・「【0010】(中略)フィルタ本体15は、厚さが0.5〜8mm程度で嵩密度が小さく形成されたポリエステル製等の不織布からなる。このため所定量の空気の流通を許容する一方、空気中に含まれる油煙等を吸着する能力を有すると共に、フィルタ本体15の裏面に配置されたフィルタ本体15の色とは異なる色彩のインジケータが配置されている場合には表面側から裏面側を透かし見ることのできる半透明の状態となっているため、インジケータをフィルタ本体15の表面側から透かしてその位置、色彩等を容易に確認することができる。」

・「【0011】インジケータとして使用するフィルタ本体の色とは異なる色の小片状の面状ファスナ14は、例えばフィルタ本体15の色が白色である場合には、黄、赤、緑、紫、青、黒、茶色等の色彩を有する透明又は不透明のプラッスチック、布等からなる素材とすることにより、フィルタ本体15の表面側から透かして容易に識別できるようになっている。特に、フィルタ本体15が油煙等で汚れた時の色が黄色となる場合には、そのときの色に合わせて面状ファスナ14を黄色とすることにより、汚れた時の面状ファスナ14の識別が困難になるので、交換用フィルタ16の交換時期を正確に把握する上で効果的になる。面状ファスナ14は、交換用フィルタ16の有効面積に対して例えば1/5000〜1/10程度の面積を有する小片であって、四角形状等に形成されている。この面状ファスナ14によって空気の流通が大きく妨げられることがないようにでき、面状ファスナ14の識別性も確保される。」

・「【0013】そして、レンジフード10の稼働状態においては、ファン17を回転させて厨房内の水蒸気、油煙、埃等を含む空気をレンジフード10の通気口13から吸い込んで、交換用フィルタ16を通過させ、油煙、埃等の汚れをフィルタ本体15に付着、吸着させてから外気中に排出させるようになっている。従って、フィルタ本体15にはレンジフード10の稼働と共に、汚れが付着してフィルタ本体15が次第に変色しあるいは透明度が小さくなっって、裏面側に配置された面状ファスナ14をその表面側から見た場合の色、形等が変化する。このため、油煙、埃等の汚れが多量に付着するようになる交換用フィルタ16の交換時期には面状ファスナ14の目視による識別性が大きく変化するので、通気口13から交換用フィルタ16を取り外すことなく、外から適宜、観察することによって交換用フィルタ16の交換時期を容易に知ることができる。」

したがって、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。

「レンジフードの吸込口に取替可能に取付けられ、油煙等を捕集する交換用フィルタであって、通気性を有し、油煙等を吸着することができる材料よりなるフィルタ本体と、油煙等が通過する際の前記フィルタ本体の下流側の面の一部に貼着された面状ファスナとを備えた、交換用フィルタ。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用した特開平11-137939号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、室内へ取り入れる空気を浄化するためのフィルタ膜を備えるフィルタ装置に関し、特に、比較的単純な構成によりフィルタ膜の交換時を判断できるフィルタ装置に関する。」

・「【0014】【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態について詳細に説明する。
〈具体例〉図1および図2は、本発明に係るフィルタ装置を示す。図1および図2に示す例では、本発明に係るフィルタ装置10は、建物の室内の壁11に設置された吸気口12に取り付けられており、また、吸気口12には、従来よく知られた空気調整器13が配置されている。」

・「【0023】フィルタ膜26の視認領域34の中央部35に設けられる比較基準部36は、図3に示す例では、例えばビニールテープのような空気の流通を阻止する粘着テープ36aをフィルタ膜26に付着することにより、形成されている。粘着テープ36aは、その表面にフィルタ膜の地色と同様な表示色を有し、視認領域34の室内側の面に貼られている。これにより、フィルタ膜26の視認領域34には、フィルタ膜26の地色と同色の、空気の流通が阻止される比較基準部36と、その周辺の空気の流通を許すフィルタ膜部分26aとが、それぞれ現れている。」

・「【0028】図4に示す例では、粘着テープ36aが、視認領域34の室外側の面に貼られている。これにより、視認領域34での比較基準部36の室内側の面の表示色は、フィルタ膜26の地色となる。従って、比較基準部36は、空気の流通が阻止され、これにより汚れないことから、その周辺の空気の流通を許すフィルタ膜部分26aの汚れ度合いを判断するための基準となる。」

3.対比
本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「通気口」は本願発明の「吸込口」に相当し、同様に、「フィルタ本体」は「フィルタシート」に相当する。また、「面状ファスナ」と「交換サイン」は、共に「交換時期判別部材」といえる。

したがって、両者は、「レンジフードの吸込口に取替可能に取付けられ、油煙等を捕集する交換用フィルタであって、通気性を有し、油煙等を吸着することができる材料よりなるフィルタシートと、油煙等が通過する際の前記フィルタシートの下流側の面の一部に設けられた交換時期判別部材とを備えた、交換用フィルタ。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
交換時期判別部材が、本願発明では、フィルタシートの下流側の面の一部に膜状に形成され、油煙等の通過を阻止する透明性を有する交換サインであるのに対して、引用例1発明では、フィルタシートの下流側の面の一部に貼着された面状ファスナであり、油煙等の通過を阻止する透明性を有するとの限定はない点。

4.相違点についての判断
引用例2には、建物の室内の壁に設置された吸気口に取り付けられ、室内へ取り入れる空気を浄化するためのフィルタ膜を備えるフィルタ装置において、フィルタ膜の室外側(上流側)に、空気の流れを阻止する粘着テープを貼り、これにより、フィルタ膜の使用開始時には、粘着テープを室内側(下流側)から識別できないようにし、フィルタ膜の使用による粘着テープの周辺部分の汚れの増加により、粘着テープ部分を室内側から識別できるようにした点が記載されている。

また、引用例2には、フィルタ膜の上流側に空気の流れを阻止する粘着テープを貼り、その下流側に空気が流れないようにして、フィルタ膜が汚れないようにした点が記載されているが、この記載から、フィルタ膜の下流側に空気の流れを阻止する粘着テープを貼っても、その上流側に空気が流れにくくなり、これにより、フィルタ膜が汚れにくくなることは、当業者にとって明らかなことである。

したがって、引用例1発明において、フィルタシートの使用開始時には、フィルタシートの室外側(下流側)に貼着された面状ファスナを室内側(上流側)から識別できるようにし、フィルタシートの使用による汚れの増加により、室内側から識別できないようにすることに代えて、フィルタシートの使用開始時には、面状ファスナを室内側から識別できないようにし、フィルタシートの使用による面状ファスナの周辺部分の汚れの増加により、面状ファスナ部分を室内側から識別できるように、面状ファスナを油煙等の通過を阻止する透明性を有するものとして、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

更に、引用例1には、面状ファスナの素材として、フィルタ本体の色とは異なる色彩を有する透明又は不透明のプラッスチック、布等を用いることが記載されている(第0011段落参照)。

したがって、引用例1発明において、面状ファスナとして、例えば、油煙等の通過を阻止する透明性を有する従来周知のビニールテープを採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

なお、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の作用効果として、上記したように、フィルタシートの使用開始時には、交換サインを室内側から識別できないようにし、フィルタシートの使用による交換サインの周辺部分の汚れの増加により、交換サイン部分を室内側から識別できるようにすることが記載されている。

しかし、フィルタシートの交換サイン部分も油煙にさらされること、また、フィルタシートに捕集された油煙等は、その流動性により、交換サイン部分にも侵入することから、上記作用効果は、交換サインの大きさやフィルタシートの傾き等に影響されるものであり、交換サイン部分が小さければ、引用例1に記載されるように(第0011段落参照)、交換サイン部分もその周辺部と同様に油煙等により汚れることになり、奏することができないものである。

そして、本願発明には、交換サインについて「透明性を有する」との限定はあるが、無色透明である等の限定はない。したがって、本願発明は、交換サイン部分が小さい場合には、引用例1に記載された作用効果、すなわち、フィルタシートの使用開始時には、交換サインを室内側から識別できるようにし、フィルタシートの使用による汚れの増加により、室内側から識別できないようにするという作用効果をも奏しうるものである。

5.むすび
本願発明は、引用例1ないし引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-08 
結審通知日 2006-07-25 
審決日 2006-08-07 
出願番号 特願2002-39594(P2002-39594)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大熊 雄治  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 今井 義男
長浜 義憲
発明の名称 交換用フィルタ  
代理人 葛西 泰二  

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