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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01B
管理番号 1144624
審判番号 不服2004-13203  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-25 
確定日 2006-10-06 
事件の表示 平成9年特許願第147872号「農作業機用制御装置および農作業機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-337102〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年6月5日の出願であって、平成16年5月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月25日に拒絶査定不服審判の請求とともに、手続補正がなされたものである。


2.平成16年6月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年6月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1は、次のように補正された。
「農作業機の動作を指示する操作部、およびこの操作部の操作に応じて遠隔信号を出力する出力部を有する遠隔操作体と、
前記農作業機の種別に対応して設けられ、前記遠隔操作体からの遠隔信号を入力する入力部、およびこの入力部に入力される遠隔信号に対応した農作業機の動作を判別してその農作業機の動作を実行させる制御部を有する遠隔制御体とを具備し、
前記遠隔操作体は、複数種の農作業機にそれぞれ配設される複数種の遠隔制御体に対して共通に使用可能で、前記操作部の操作に応じて遠隔信号の出力のみを行う構成となっており、
前記操作部には複数の操作釦が設けられ、前記出力部は前記各操作釦の押動操作に対応する遠隔信号を出力し、
前記操作部には、前記各操作釦に対応する前記農作業機の動作を示すラベルが貼り付けられる
ことを特徴とする農作業機用制御装置。」
(以下、「補正発明」という。)

そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である特開平5-301584号公報(以下、「引用例1」という。)には、「自走式農業機械の作業機制御装置」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【請求項1】自走式農業機械に着脱自在に作業機を装着して作業機を制御するものにおいて、本機側に入出力ポ-トと通信ポ-トを有するコントロ-ラを搭載し、作業機側にも入出力ポ-トと通信ポ-トを有するコントロ-ラを設け、両コントロ-ラ間を通信回線で接続したことを特徴とする自走式農業機械の作業機制御装置。」
(ロ)「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、例えばトラクタ-等の農業機械に装着されるロ-タリ耕耘装置や播種機、薬剤散布機といった種々の作業機を制御するものに関する。」
(ハ)「【0007】【実施例】以下、図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。まず、構成から説明すると、1はトラクタ-で、機体の前後部に夫々前輪2、2と後輪3、3とを備え、ミッションケ-ス4の後上部には油圧シリンダケ-ス5を固着して設けている。 油圧シリンダケ-ス5内には、単動式の油圧シリンダ6を設け、油圧シリンダケ-ス5の左右両側にはリフトア-ム7、7を回動自由に枢着している。」
(ニ)「【0011】図2は制御系を示すブロック図であり、ロ-タリ耕耘装置14の対地高さを設定する設定器21、耕深を設定する耕深設定器22、ロ-タリ耕耘装置14の左右傾斜角度を設定する傾斜設定器18、対地高さセンサ23、耕深センサ37、ストロ-クセンサ17、傾斜センサ16、車速センサ19はマイコンからなるコントロ-ラ25に接続されている。【0012】また、コントロ-ラ25の出力側には、リフトア-ム7、7を昇降回動させる上昇用比例制御弁42と下降用比例制御弁43、及び水平制御用油圧シリンダ15aを伸長させる水平制御弁44と短縮させる水平制御弁45が接続されている。46はコントロ-ラ25に組み込まれた通信ポ-トで、同期信号を出力するクロックポ-ト47、外部機器若しくは外部のコントロ-ラに指令を送る送信ポ-ト48、外部機器若しくは外部コントロ-ラからの信号を受信する受信ポ-ト49が設けられている。…」
(ホ)「【0013】図3はロ-タリ耕耘装置14に代えて薬剤散布機50を装着した様子を示すものである。この薬剤散布機50には、流量を検出する流量センサ52と、開閉弁の開度を検出する開度センサ53、薬剤の残量を検出する薬剤残量センサ54、開閉弁を制御するモ-タ57が設けられている。この薬剤散布機50には開閉弁の開度調節、言い換えると散布量を制御するためのコントロ-ラ58が設けられている。図4はこのコントロ-ラ58の構成を簡単に示すものである。【0014】また、図5は本機側コントロ-ラ25から薬剤散布機50側のコントロ-ラ58に対して通信を行なう際の通信デ-タフォ-マット、…の内容を示すものである。…この実施例では本機側の制御情報として対地速度、耕深設定値、リフトア-ム7の高さを示す対地高さ検出値が1バイト分の情報として作業機側のコントロ-ラ58に送信される。…【0015】図7は、作業機である薬剤散布機50の制御フロ-を示すものである。このプログラムを説明すると、まず、最初に各センサのデ-タ値が読み込まれ(ステップS1)、次にトラクタ-本機側から送られてくるデ-タが参照される。即ち、トラクタ-本機側のコントロ-ラ25側から送信ポ-ト48を介して送られてくるデ-タを作業機側のコントロ-ラ58が受信し、トラクタ-1の対地速度が参照される(ステップS2)。そして、この参照された対地速度と検出された薬剤流量とから例えば単位面積当たりの散布率が演算され(ステップS3)、予め設定されていた散布率との比較が行われる(ステップS4)。そして、散布率が設定値よりも小さいときには、開閉弁の開度が大きくされ(ステップS9)、逆に設定値よりも大きいときには開度が小さくされる(ステップS8)。」
(ヘ)「【0016】なお、この実施例では、薬剤散布機50を例に挙げて説明したが、コントロ-ラを有する播種機や肥料散布機等の種々の作業機に適用できるものであって、この薬剤散布機の例に限定されるものではない。図示は省略したが、トラクタ-1に標準装備されていて一番良く使われる耕深設定器22を他の作業機の各種設定器に代用するように構成すれば部品点数が削減され、コストも抑えられて便利である。即ち、作業機毎に設定器を設けるのではなく、トラクタ-側に備えられている耕深設定器22を、例えば薬剤散布機50では薬剤散布率設定器として用い、播種機の場合であれば、これを播種量設定器として使用することにより、作業機毎の設定器が不要となるので廉価に構成できるものである。」
(ト)図4には、作業機用コントロ-ラ58が受信ポ-トを有していることが示されている。

これらの記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。かっこ内は対応する引用例1における構成・用語である。
「農作業機(作業機)の動作を指示する操作部(耕深設定器22等)、およびこの操作部の操作に応じて遠隔信号(信号)を出力する出力部(送信ポ-ト48)と入力部(受信ポート49)を有する遠隔操作体(本機側コントロ-ラ25)と、
前記農作業機の種別に対応して設けられ、前記遠隔操作体からの遠隔信号を入力する入力部(作業機用コントロ-ラ58の受信ポ-ト)、およびこの入力部に入力される遠隔信号に対応した農作業機の動作を判別してその農作業機の動作を実行させる(薬剤散布機50の場合であれば、開閉弁の開度調節、言い換えると散布量を制御する)制御部を有する遠隔制御体(作業機用コントロ-ラ58)とを具備し、
前記遠隔操作体は、複数種の農作業機にそれぞれ配設される複数種の遠隔制御体に対して共通に使用可能(トラクター1に標準装備されていて一番良く使われる耕深設定器22を他の作業機の各種設定器に代用する)で、前記操作部の操作に応じて遠隔信号の入出力を行う農作業機用制御装置(作業機制御装置)。」
(以下、「引用例1発明」という。)

(3)対比
補正発明と引用例1発明とを比較すると、両者は、
「農作業機の動作を指示する操作部、およびこの操作部の操作に応じて遠隔信号を出力する出力部を有する遠隔操作体と、
前記農作業機の種別に対応して設けられ、前記遠隔操作体からの遠隔信号を入力する入力部、およびこの入力部に入力される遠隔信号に対応した農作業機の動作を判別してその農作業機の動作を実行させる制御部を有する遠隔制御体とを具備し、
前記遠隔操作体は、複数種の農作業機にそれぞれ配設される複数種の遠隔制御体に対して共通に使用可能で、前記操作部の操作に応じて遠隔信号の出力を行う農作業機用制御装置。」
の点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:遠隔操作体が、補正発明では、遠隔信号の出力のみを行うのに対して、引用例1発明では、遠隔信号の入出力を行う点。
相違点2:補正発明では、操作部には複数の操作釦が設けられ、出力部は各操作釦の押動操作に対応する遠隔信号を出力し、各操作釦に対応する農作業機の動作を示すラベルが貼り付けられるのに対して、引用例1発明では、そのようになっていない点。

(4)判断
相違点1について検討するに、引用例1発明において、遠隔操作体(本機側コントロ-ラ25)が入力部(受信ポート49)を有して遠隔制御体(作業機用コントロ-ラ58)との間で信号のやりとりを行うのは、農作業機(作業機)の情報を作業者に伝えるなどしてより精密な制御を行うためであるが、遠隔操作体(本機側コントロ-ラ25)と遠隔制御体(作業機用コントロ-ラ58)との間で信号のやりとりを行う際に、精密な制御を行うことを優先させるか機器の簡素化を優先させるかは、当業者が適宜選択可能な事項にすぎない。
要するに、上記相違点1に係る補正発明の構成は、引用例1発明において精密な制御を行うことよりも、遠隔操作体(本機側コントロ-ラ25)の簡素化を優先して入力部(受信ポート49)を省いたものにすぎず、この省略によって、当業者が予測できない格別の効果が生じるものとは認められないから、補正発明のようにすることは当業者が必要に応じて容易になしうることにすぎない。

相違点2について検討するに、一般的に、遠隔操作装置の操作部に複数の操作釦を設ける(当然その出力部は各操作釦の押動操作に対応する遠隔信号を出力する)こと、および、各操作釦に対応する動作を表示することは、周知技術(特開昭63-314096号公報(特に、5頁右上欄4〜19行)、特開昭63-303596号公報等参照。)であり、かつ、その表示方法としてラベルを貼り付けることは、当業者が適宜なしうる設計事項にすぎない。

そして、補正発明の効果も、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

したがって、補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明
平成16年6月25日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成15年11月6日付けの手続補正も却下されているので、本願の請求項1〜5に係る発明は、平成15年3月12日付けの手続補正で補正された請求項1〜5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】農作業機の動作を指示する操作部、およびこの操作部の操作に応じて遠隔信号を出力する出力部を有する遠隔操作体と、
前記農作業機の種別に対応して設けられ、前記遠隔操作体からの遠隔信号を入力する入力部、およびこの入力部に入力される遠隔信号に対応した農作業機の動作を判別してその農作業機の動作を実行させる制御部を有する遠隔制御体とを具備し、
前記遠隔操作体は、複数種の農作業機にそれぞれ配設される複数種の遠隔制御体に対して共通に使用可能な構成となっている、
ことを特徴とする農作業機用制御装置。
【請求項2】〜【請求項5】(記載を省略)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した補正発明から限定事項を削除したものであり、本願発明に限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-08 
結審通知日 2006-08-09 
審決日 2006-08-22 
出願番号 特願平9-147872
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01B)
P 1 8・ 575- Z (A01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 恭  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 農作業機用制御装置および農作業機  
代理人 服部 秀一  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  

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