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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1145332
審判番号 不服2002-15314  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-09 
確定日 2006-10-13 
事件の表示 平成11年特許願第261338号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 79248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月16日の出願であって、平成14年6月24日付で拒絶査定がなされ、平成14年8月9日付に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成14年2月8日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「 動作用電圧を供給できる電源と、バックアップ電圧を供給できるバックアップ電源と、遊技もしくは賞球等に関する内部情報を記憶することができる記憶手段と、前記動作用電圧が所定値以下に低下した場合に、前記記憶手段に前記バックアップ電源からバックアップ電圧を供給して、前記記憶手段に記憶されている内部情報を保存することができるパチンコ機であって、前記内部情報には、前記記憶手段に記憶されている内部情報を正しく記憶しているか否かを管理するための管理情報を付加し、更に前記動作用電圧が所定値以下に低下した後に所定値以上に復帰し、前記記憶手段に記憶されている内部情報を読み出して、前記動作用電圧が所定値以下に低下する以前の状態に戻す際に、前記管理情報に基づいて、内部情報が正しく記憶されているか否かを判断する制御手段を備え、前記記憶手段を配設した主基板のコネクタと、前記バックアップ電源を設けた別のバックアップ電源基板のコネクタとを、接続・離脱可能に構成し、バックアップ電源基板のコネクタと主基板のコネクタとを離脱することにより、記憶手段に記憶されている内部情報を消去することができることを特徴とするパチンコ機。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-85421号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(記載事項a)
「【請求項1】 電力の供給を受けて動作し、遊技が行なわれる遊技機であって、
遊技状態を制御する遊技制御を行なう遊技制御手段と、
遊技中の遊技状態の情報を記憶する遊技状態記憶手段と、
前記電力の供給が断たれてから所定期間経過後に、前記遊技状態記憶手段の記憶情報を無効化する無効化手段とを含み、
前記遊技制御手段は、前記無効化手段により無効化されていない遊技状態の記憶情報が前記遊技状態記憶手段にある場合に、前記電力の供給が開始された際に、その記憶情報に応じた遊技状態から遊技制御を開始させることを特徴とする、遊技機。
【請求項2】 前記無効化手段は、前記遊技状態記憶手段に記憶されている遊技状態の情報を無効化する場合に、前記遊技状態記憶手段の記憶情報を初期化することを特徴とする、請求項1記載の遊技機。」(【特許請求の範囲】)

(記載事項b)
「そこで、電力の供給が断たれたときに前記遊技機の遊技状態に関する情報の記憶を保持するための記憶保持用電力供給回路を設け、停電が復旧するまでその記憶保持用電力供給回路から前記遊技制御手段へ電力を供給してその遊技制御手段がシステムダウンしないようにし、前記遊技機の遊技状態に関する情報の記憶をバックアップするように構成することが考えられる。しかし、そのように構成した場合には、たとえば前記遊技機が設置されている遊技場において、1日の営業終了後に、遊技場の係員等が遊技機で遊技を行ない、たとえば前記特定遊技状態が発生しやすい遊技状態になったところで電力の供給を断ち、そのときの遊技状態を翌朝までバックアップして記憶させておき、翌朝営業開始時に電源を投入して電力を供給すれば、遊技者がその特定遊技状態が発生しやすい状態から遊技が開始できる状態となる。このような設定は、モーニングセットと呼ばれている。すなわち、記憶保持用電力供給回路を設けることにより、遊技機を遊技者にとって有利な遊技状態にセットした状態で電力の供給を断ってそのセット状態を記憶させておき、翌日その遊技者にとって有利な状態にセットされた遊技状態から遊技者が遊技を開始できるようにするという遊技場における不正行為が発生するおそれが生じるという新たな欠点が生ずる。」(段落【0004】)

(記載事項c)
「 遊技制御基板67には、遊技制御用マイクロコンピュータ115が設けられている。この遊技制御用マイクロコンピュータ115には、制御用中枢としてのCPU115aの他に、遊技制御用プログラムなどが記憶された読出専用メモリであるROM116,データの随時読出書込が可能なRAM117などが設けられている。ROM116には、第1加算値,第2加算値が記憶されている。これら加算値は、遊技領域28内に打込まれた打玉が入賞した入賞箇所に応じて持点に加算する加算値であり、たとえば、打玉が始動入賞口40や通常の入賞口37などに入賞すれば第1加算値(たとえば5)が持点に加算され、打玉が可変入賞球装置30内に入賞すれば第2加算値(たとえば15)が持点に加算される。また、RAM117には、始動入賞個数カウンタと大入賞口入賞個数カウンタ双方の各カウンタ値を記憶するためのエリアが設けられている。
【0057】遊技制御基板67には、さらに、コネクタ68,69,70,71、信号回路118、検出回路119、ソレノイド回路120、ランプ回路121、表示回路122、音回路123、電源回路124a、停電検出回路124b、バックアップ電源125が設けられている。バックアップ電源125は、通常時においては電源回路124aからの電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に供給しているが、停電などにより電源回路124aの電位が低下した場合には正常な電位のバックアップ電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に供給するものである。停電検出回路124bは、停電等により電源回路124aの電位が低下したことを検出し、その検出出力である停電検出信号をバックアップ電源125および遊技制御用マイクロコンピュータ115のそれぞれに供給する。バックアップ電源125では、停電検出回路124bが停電検出信号を受けた場合に、前述のように、正常な電位のバックアップ電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に供給する。遊技制御用マイクロコンピュータ115では、停電検出回路124bから停電検出信号を受けた場合に、後述するような停電時割込処理を実行する。この停電時割込処理の処理内容については、図7を用いて後述する。このようなバックアップ電源125の働きにより、停電などが生じても、遊技制御用マイクロコンピュータ115に所定期間電力が供給されるので、停電によりRAM117の記憶データが消去されてしまう不都合が防止できる。」(段落【0056】〜【0057】)

(記載事項d)
「【0063】遊技制御用マイクロコンピュータ115は、CPU115aがROM116から遊技制御用プログラムを読出し、RAM117を作業領域として用いてその遊技制御用プログラムを実行することにより、遊技状態の制御を行なう。RAM117には、実行中の遊技制御プログラムの番地が逐次記憶され、さらに、パチンコ遊技機1の遊技状態を示すデータである遊技状態データが逐次記憶される。その遊技状態データには、始動記憶数のデータ、大当り図柄のデータ、大当りのラウンド数のデータ、確率変動状態が継続可能な大当りの残り回数、大当り判定用のランダムカウンタの値、図柄決定用のランダムカウンタの値等が含まれる。」(段落【0063】)

(記載事項e)
「【0093】このパチンコ遊技機1においては、停電または電源切り操作により電力の供給が断たれた場合に実行中の遊技状態を所定期間にわたって記憶するための停電時割込処理が実行される。以下に、停電時割込処理の処理内容を説明する。停電時割込処理は、停電検出回路124bが停電状態を検出した場合にCPU115aの割込処理により実行される。
【0094】図7は、停電時割込処理の処理内容を示すフローチャートである。まず、ステップS(以下単にSという)37により、CPU115aが実行中の遊技制御用プログラムの番地を示すデータをRAM117に格納する処理がなされる。次に、S38に進み、タイマが計時中であるか否かの判断がなされる。そのタイマは、停電状態の発生から所定期間が経過したか否かの判断に用いられるタイマである。S38によりタイマが計時中ではないと判断された場合は、後述するS40に進む。一方、S38によりタイマが計時中であると判断された場合は、S39に進み、タイマの計時をスタートさせる処理がなされる。その後、S40に進む。
【0095】S40では、タイマの値が所定値になったか否かの判断がなされる。その所定値は、たとえば、10分〜60分程度の比較的短時間に設定されている。S40によりタイマの値が所定値になった(当審注:図7のフロチャートからみて、「タイマの値が所定値になっていない」の誤記であると認められる。)と判断された場合は、後述するS42に進む。一方、タイマの値が所定値になっていない(当審注:図7のフロチャートからみて、「タイマの値が所定値になった」の誤記であると認められる。)と判断された場合は、S41に進み、RAM117の記憶データを初期化する処理がなされる。そのS41の処理内容は、前述したSA2のRAM初期化処理の処理内容と同様の内容である。その後、S42に進む。
【0096】S42では、停電検出回路124bからの停電検出信号に基づいて、停電状態が復旧したか否かの判断がなされる。この場合の停電復旧には、実際の停電状態の復旧の他に、電源投入操作により電力の供給が開始された場合も含まれる。S42により停電状態が復旧していないと判断された場合は、前述のS40に戻り、停電状態が復旧するまで、前述した処理が繰返し実行される。一方、S42により停電状態が復旧したと判断された場合は、S43に進み、S37により格納した実行中の遊技制御用プログラムの番地からCPU115aの処理を復帰させる処理がなされる。
【0097】このように、停電状態等により電力の供給が断たれると、停電時に実行されていた遊技制御用プログラムの番地のデータが記憶されるとともに、タイマにより計時がなされ、短期間の停電のように所定期間が経過するまでに電力の供給が復旧すれば、その復旧により電力の供給が開始された際に、記憶されたプログラムの番地から遊技制御が再開される。一方、遊技場の閉店後のように、所定時間が経過するまでに電力の供給が開始されなければ、その所定時間経過後に、電力の供給が断たれた時に記憶された実行中の遊技制御用プログラムの番地のデータが消去される。すなわち、電力の供給が断たれた後に所定期間が経過するまでに停電状態の復旧のように電力の供給が開始されれば、電力の供給が断たれた時に記憶された遊技状態から遊技制御が開始され、一方、遊技場の閉店後のように、電力の供給が断たれた後に所定期間が経過するまでにその状態が復旧しなければ、電力の供給が断たれた時に記憶された遊技状態の記憶情報が無効化され、電力の供給の再開時に、初期状態から遊技制御が開始されるのである。
【0098】このようにすれば、停電状態が発生して、所定期間内に停電状態が復旧した場合には、停電時における遊技状態から遊技制御が再開されるので、停電に伴う遊技者への補償を行なうことができ、遊技者が遊技に対して不満感を抱くことを防ぐことができる。その結果として、遊技者と、遊技場との間に発生するおそれがあるトラブルを未然に防ぐことができる。さらに、電力の供給が断たれてから所定期間内に電力の供給が再開されない場合には、遊技状態の記憶が無効化されて最初から遊技制御が行なわれるので、いわゆるモーニングセットと呼ばれるような、遊技場側が遊技者にとって有利な遊技状態にセットした状態で電力の供給を断っておき、遊技状態をバックアップ電源で保存して開店時等の電源投入時にその遊技の状態から遊技者が遊技を開始できるという遊技場における不正行為を未然に防ぐことができる。
【0099】なお、図7の停電時割込処理においては、所定期間内に停電状態が復旧しない場合に、RAM117を初期化する処理を行なうことによりRAM117の記憶データを無効化したが、これに限らず、RAM117の記憶データの無効化は、バックアップ用の電源からRAM117へのバックアップ用の電力の供給を所定期間経過後に遮断することにより行なってもよい。そのようにした場合でも、前述の場合と同様に、RAM117の記憶データを所定期間後に無効化することができる。」(段落【0093】〜【0099】)

(記載事項f)
「【0100】そのように、バックアップ用の電源からRAM117への電力の供給を所定期間後に遮断する構成は、次のように実現される。図8は、停電状態の発生時に、バックアップ用の電源から遊技制御用のマイクロコンピュータのRAMへの電力の供給を所定期間経過後に遮断することが可能な回路を示す回路図である。
【0101】図8を参照して、この回路には、電源回路501、バックアップ電源502、停電検出回路503、タイマ回路504、ゲート回路505およびRAM506が含まれている。RAM506は、前述したRAM117に対応するものであり、遊技状態データを記憶する。RAM506は、通常時において、電源回路501から電力の供給を受けて動作する。バックアップ電源502(たとえばコンデンサ,バッテリ等)は、電源回路501から電力の供給を受け、その電力が供給されている場合には、自らを充電する(蓄電)とともにその電力をそのままゲート回路505へ供給する。一方、バックアップ電源502は、電源回路501から受ける電源電位が所定値以下に低下した場合に、バックアップ用の電力を、タイマ回路504およびゲート回路505のそれぞれに供給する。また、停電検出回路503は、電源回路501の電源電位を受け、その電位が所定値以下に低下した場合に、タイマ回路504を起動させるためのタイマ回路起動信号をタイマ回路504へ供給する。
【0102】タイマ回路504は、停電等の原因により電源回路501からの電力の供給が断たれた場合に、バックアップ電源502から供給される電力に基づいて動作可能状態となり、タイマ回路起動信号を受けたことに応答して、計時動作を開始する。タイマ回路504は、予め定められた時間だけ計時を行なってタイムアップ状態になると、ゲート回路505にタイムアップ信号を供給する。ゲート回路505は、タイマ回路504からタイムアップ信号が供給されていない場合に、バックアップ電源502から供給される電力をRAM506へ供給し、一方、タイムアップ信号が供給された場合に、バックアップ電源502からRAM506への電力の供給を断つ動作を行なう。」(段落【0100】〜【0102】)

(記載事項g)
「このような回路構成を採用すれば、停電時において、バックアップ電源502からRAM506への電力の供給を所定期間後に遮断することにより、停電時から所定期間経過後にRAM506の記憶データを無効化することができる。したがって、このような構成によっても、前述したモーニングセットと呼ばれる不正行為を防ぐことができる。」(段落【0103】)

これらの記載、並びに、特に、
(i)「通常時においては電源回路124aからの電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に供給している」(0057)という記載から、電源回路124aが「動作用電圧」を供給できるものであることが明らかなこと、
(ii)「遊技状態データには、始動記憶数のデータ、大当り図柄のデータ、大当りのラウンド数のデータ、確率変動状態が継続可能な大当りの残り回数、大当り判定用のランダムカウンタの値、図柄決定用のランダムカウンタの値等が含まれる。」(記載事項d)という記載から、遊技状態データが、「遊技もしくは賞球等に関する」ものであることが明らかなこと、
(ii)「バックアップ電源125の働きにより、停電などが生じても、遊技制御用マイクロコンピュータ115に所定期間電力が供給されるので、停電によりRAM117の記憶データが消去されてしまう不都合が防止できる。」(記載事項c)という記載から、RAM117に記憶されている遊技状態データをバックアップ電源125の働きにより「保存することができる」パチンコ遊技機1であることが明らかなこと、
(iii)「S42により停電状態が復旧したと判断された場合は、S43に進み、S37により格納した実行中の遊技制御用プログラムの番地からCPU115aの処理を復帰させる処理がなされる。・・・停電状態等により電力の供給が断たれると、停電時に実行されていた遊技制御用プログラムの番地のデータが記憶されるとともに、タイマにより計時がなされ、短期間の停電のように所定期間が経過するまでに電力の供給が復旧すれば、その復旧により電力の供給が開始された際に、記憶されたプログラムの番地から遊技制御が再開される。・・・電力の供給が断たれた後に所定期間が経過するまでに停電状態の復旧のように電力の供給が開始されれば、電力の供給が断たれた時に記憶された遊技状態から遊技制御が開始され」(記載事項e)という記載、及び、「通常時においては電源回路124aからの電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に供給しているが、停電などにより電源回路124aの電位が低下した場合には」(記載事項c)という記載から、パチンコ遊技機1が、電位が停電などにより低下した後に供給が復旧した場合、前記RAM117に記憶されている遊技状態データを「読み出して」、前記電位が停電などにより低下する「以前」の遊技状態に「戻す」CPU115aを備えていることは明らかであること、
(iv)「バックアップ電源125の働きにより、停電などが生じても、遊技制御用マイクロコンピュータ115に所定期間電力が供給されるので、停電によりRAM117の記憶データが消去されてしまう不都合が防止できる。」(記載事項c)という記載及び「停電時において、バックアップ電源502からRAM506への電力の供給を所定期間後に遮断することにより、停電時から所定期間経過後にRAM506の記憶データを無効化することができる。」(記載事項g)という記載、並びに「RAM506は、前述したRAM117に対応するもの」(記載事項f)という記載から、「無効化」が「消去」と同義であることは明らかであること、
(v)「遊技制御基板67には、・・・RAM117などが設けられている。」(記載事項c)という記載及び「遊技制御基板67には、・・・バックアップ電源125が設けられている。」という記載から、RAM117及びバックアップ電源125が遊技制御基板67に「配設され」ていることが明らかなこと、

を勘案すれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明
「 動作用電圧を供給できる電源回路124aと、バックアップ電力を供給できるバックアップ電源125と、遊技もしくは賞球等に関する遊技状態データを記憶することができるRAM117と、前記動作用電圧が停電などにより低下した場合に、前記RAM117に前記バックアップ電源125からバックアップ電力を供給して、前記RAM117に記憶されている遊技状態データを保存することができるパチンコ遊技機1であって、前記動作用電圧が停電などにより低下した後に供給が復旧し、前記RAM117に記憶されている遊技状態データを読み出して、前記動作用電圧が停電などにより低下する以前の状態に戻すCPU115aを備え、RAM117及びバックアップ電源125が遊技制御基板67に配設され、バックアップ電源502からRAM506へのバックアップ電力の供給を所定期間後に遮断することにより、RAM506に記憶されている記憶データを消去することができるパチンコ遊技機1。」


3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の、a「電源回路124a」、b「バックアップ電力」、c「バックアップ電源125」又は「バックアップ電源502」、d「遊技状態データ」又は「記憶データ」、e「RAM117」又は「RAM506」、f「停電などにより低下」、g「パチンコ遊技機1」、h「供給が復旧」、i「CPU115a」、j「遊技制御基板67」は、本願発明の、a「電源」、b「バックアップ電圧」、c「バックアップ電源」、d「内部情報」、e「記憶手段」、f「所定値以下に低下」、g「パチンコ機」、h「所定値以上に復帰」、i「制御手段」、j「主基板」に相当する。
また、引用発明における「バックアップ電源502からRAM506へのバックアップ電力の供給を所定期間後に遮断すること」と、本願発明における「記憶手段を配設した主基板のコネクタと、前記バックアップ電源を設けた別のバックアップ電源基板のコネクタとを、接続・離脱可能に構成し、バックアップ電源基板のコネクタと主基板のコネクタとを離脱すること」とは、「記憶手段に供給されるバックアップ電圧を遮断する手段」という点で一致している。

よって、本願補正発明と引用発明とは、

「 動作用電圧を供給できる電源と、バックアップ電圧を供給できるバックアップ電源と、遊技もしくは賞球等に関する内部情報を記憶することができる記憶手段と、前記動作用電圧が所定値以下に低下した場合に、前記記憶手段に前記バックアップ電源からバックアップ電圧を供給して、前記記憶手段に記憶されている内部情報を保存することができるパチンコ機であって、前記動作用電圧が所定値以下に低下した後に所定値以上に復帰し、前記記憶手段に記憶されている内部情報を読み出して、前記動作用電圧が所定値以下に低下する以前の状態に戻す制御手段を備え、記憶手段及びバックアップ電源が主基板に配設され、記憶手段に供給されるバックアップ電圧を遮断する手段により、記憶手段に記憶されている内部情報を消去することができるパチンコ機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明では、記憶手段に記憶されている内部情報に管理情報が付加されており、制御手段が、管理情報に基づいて内部情報が正しく記憶されているか否かを判断するのに対して、引用発明では、記憶手段に記憶されている内部情報にそもそも管理情報が付加されていない点。

相違点2
記憶手段に供給されるバックアップ電圧を遮断する手段が、本願発明では、記憶手段を配設した主基板のコネクタと、前記バックアップ電源を設けた別のバックアップ電源基板のコネクタとを、接続・離脱可能に構成し、バックアップ電源基板のコネクタと主基板のコネクタとを離脱することであるのに対し、引用発明では、バックアップ電圧を所定期間後に遮断することである点。

4.判断
相違点1について検討する。
バックアップ電源によりバックアップされる記憶手段に記憶されているデータの信頼性を確認するために、記憶手段に記憶されているデータに管理情報を付加し、この管理情報に基づいて内部情報が正しく記憶されているか否かを判断することは周知技術(以下、「周知技術A」という。)(例えば、特公平7-82692号公報(特に、第5頁左欄第35〜38行、右欄第26〜32行)、特開平5-27880号公報(特に、段落【0015】〜【0017】)、特開平4-248191号公報(特に、段落【0002】〜【0003】)を参照。)であるから、引用発明において、バックアップ電源によりバックアップされる記憶手段に記憶されているデータである内部情報の信頼性を確認するために、制御手段が、前記周知技術Aの如く記憶手段に記憶されているデータである内部情報に管理情報を付加し、この管理情報に基づいて内部情報が正しく記憶されているか否かを判断するようにして相違点1に係る本願発明の如く構成することは、当業者が容易に想到できることである。

相違点2について検討する。
パチンコ機を含む電子機器の技術分野において、記憶手段に供給されるバックアップ電圧を遮断する手段として、記憶手段のコネクタと、バックアップ電源のコネクタとを、接続・離脱可能に構成し、バックアップ電源のコネクタと記憶手段のコネクタとを離脱することは、周知技術(以下、「周知技術B」という。)(例えば、特開平11-85480号公報(特に、段落【0002】、【0007】、【0022】を参照。)、実公平4-51250号公報(特に、第2頁左欄第23〜31行を参照。)を参照。)である。そして、パチンコ機を含む電子機器の技術分野において、バックアップ電源を主基板から独立させ、主基板とは別のバックアップ電源基板に設けられたバックアップ電源からバックアップ電圧を主基板に供給することも周知技術(以下、「周知技術C」という。)(例えば、特開平11-188138号公報(特に、段落【0036】、図3を参照。)、特開平11-128445号公報(特に、段落【0034】、図3を参照。)、特公平7-59222号公報を参照。)である。
してみれば、引用発明において、CRT、液晶ディスプレィ、それらの制御装置等をはじめとした電子機器技術分野の技術をパチンコ機技術分野に応用することが普通のことであるから、記憶手段に供給されるバックアップ電圧を遮断する手段として前記周知技術Bを採用し、その採用にあたっては、バックアップ電源からのバックアップ電圧を、主基板を介して記憶手段に供給するために前記周知技術Cを採用する設計変更を加味して、相違点2に係る本願発明の如く構成することは、当業者が容易に想到できることである。

5.本願発明の作用効果
本願発明の奏する効果は、引用発明に周知技術A〜Cを適用したものから当業者が容易に予測し得るものであって、格別顕著なものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明、及び、前記周知技術A〜Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-04 
結審通知日 2006-07-25 
審決日 2006-08-08 
出願番号 特願平11-261338
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 渡部 葉子
篠崎 正
発明の名称 パチンコ機  
代理人 富澤 孝  
代理人 山中 郁生  
代理人 岡戸 昭佳  

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