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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1145537 |
審判番号 | 不服2004-7242 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-09 |
確定日 | 2006-10-20 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 24444号「光学物品及びそれを用いた露光装置又は光学系」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月30日出願公開、特開平 8-220304〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年2月13日の出願であって、平成16年3月2日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年4月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審から平成18年6月7日付で審尋したが、指定期間を過ぎても回答がなされていないものである。 2.本願発明について (1)本願発明 本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成16年1月19日付手続補正書により補正された明細書の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「光学薄膜が基体の表面に積層された光学物品において、前記光学薄膜が、クリプトン又はキセノンからなる群より選択された少なくとも1つの原子を含み、その原子含有量が0.5原子ppm以上5原子%以下であることを特徴とする光学物品。」 (2)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前国内で頒布された刊行物である特開平1-244403号公報(以下、「刊行物1」という。)には以下の記載がある。 ア.「(1)真空中で基材に対して、酸化物およびそれを構成する金属の少なくとも一方の蒸着と、運動エネルギーを付与した酸素粒子および不活性ガス粒子の少なくとも一方の輸送とを行うことによって、基材上に前記酸化物から成る光学膜を作製することを特徴とする光学膜の作製方法。」(1頁左下欄5〜10行) イ.「〔実施例〕 第1図は、実施例に使用した装置の一例を示す概略図である。真空容器(図示省略)内に設けたホルダ10に、基材の一例として、前述したような石英ガラス基板4上に真空蒸着等の既存の技術を用いて五酸化タンタル膜6を形成したものを装着した。そして、真空容器内を例えば10-5〜120-7Torr程度に排気した後、五酸化タンタル膜6の表面に対して、蒸発源(例えば電子ビーム蒸発源)12によってこの例では二酸化ケイ素14を蒸着させるのと同時に、イオン源(例えばバケット型イオン源)18によって不活性ガスイオン20としてNeイオンまたはKrイオンを加速して照射し、それによって五酸化タンタル膜6の表面に二酸化ケイ素膜(二酸化ケイ素から成る光学膜)7aを作製した。」(2頁右上欄13行〜同左下欄9行) ウ.「上記の場合、照射イオンに不活性ガスイオン20を用いるのは、それが反応性に乏しくガスとして膜から抜け出し易く、従って二酸化ケイ素膜7a内への不純物混入の問題が起こらないからである。」(2頁左下欄13〜17行) エ.「尚、不活性ガスイオン20のイオン種としては、上記のようなNe、Kr以外にも、He、Ar、Xe、あるいはこれらを混合したものが採り得る。」(2頁右下欄15〜18行) これらの記載によれば、刊行物1には、 「石英ガラス基板4上に五酸化タンタル膜6を形成したものを基材とし、五酸化タンタル膜6の表面に対して、蒸発源12によって二酸化ケイ素14を蒸着させるのと同時に、イオン源18によって不活性ガスイオン20としてKr、Xeイオンを加速して照射し、それによって五酸化タンタル膜6の表面に二酸化ケイ素膜から成る光学膜7aを形成した物品」 の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。 (3)対比 そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較すると、刊行物1発明の「二酸化ケイ素膜から成る光学膜7a」、「石英ガラス基板4上に五酸化タンタル膜6を形成した基材」は本願発明の「光学薄膜」、「基体」に、それぞれ対応する。 また、刊行物1に記載された、基材に光学膜7aを形成した物品は、光学物品であるといえるから、両者は、 「光学薄膜が基体の表面に積層された光学物品」という点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明は、光学薄膜が、クリプトン又はキセノンからなる群より選択された少なくとも1つの原子を含み、その原子含有量が0.5原子ppm以上5原子%以下としたのに対し、刊行物1発明には、かかる限定が付されていない点。 点。 (4)判断 [相違点]について 刊行物1発明は、蒸発源12によって二酸化ケイ素14を蒸着させるのと同時に、イオン源18によって不活性ガスイオン20としてKr、Xeイオンを加速して照射し、それによって五酸化タンタル膜6の表面に二酸化ケイ素膜から成る光学膜7aを形成しており、このようにして形成された光学膜7aには、Kr、Xeが含まれていると解するのが自然である。確かに、刊行物1には「照射イオンに不活性ガスイオン20を用いるのは、それが反応性に乏しくガスとして膜から抜け出し易く、従って二酸化ケイ素膜7a内への不純物混入の問題が起こらないからである。」(上記2.(2)の記載事項ウ.)との記載はあるものの、本願発明における原子の含有量の範囲に含まれる「0.5原子ppm」とは、極めて微量の原子であり、刊行物1発明における光学膜7aにもこの程度の極めて微量のKr、Xe原子が含まれていると解するのが相当である。 さらにいうと、この点、すなわち、「引用文献1(特開平1-244403号公報)に記載された光学膜の作製方法において、不活性ガスイオンとして、クリプトン又はキセノンを用いた場合、作製された光学膜のクリプトン又は、キセノン原子の含有量が0.5原子ppm未満であるといえるのか。」については、平成18年6月7日付けで審判請求人に審尋したところ、審判請求人からは何ら回答がされなかったものである。 してみれば、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは何ら格別のものとは認められない。 そして、本願発明の作用効果も、刊行物1に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 (5)むすび したがって、本願請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-22 |
結審通知日 | 2006-08-23 |
審決日 | 2006-09-06 |
出願番号 | 特願平7-24444 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 信 |
特許庁審判長 |
江塚 政弘 |
特許庁審判官 |
瀬川 勝久 辻 徹二 |
発明の名称 | 光学物品及びそれを用いた露光装置又は光学系 |
代理人 | 福森 久夫 |
代理人 | 福森 久夫 |