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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1145681
審判番号 不服2004-26456  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-04-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-27 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 特願2003-378632「背面投射型映像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-110068〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年10月31日に出願した特願平7-283478号の一部を平成15年11月7日に新たな特許出願としたものであって、平成16年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月2日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「キャビネットの前面に配置されたスクリーンの背面から光を投射する光源用ランプを、交換可能なランプハウス内に備えた背面投射型映像装置であって、
前記光源用ランプの使用時間を計測するためのタイマと、
前記タイマにより計測された交換可能な前記ランプハウスの光源用ランプの使用時間を前記スクリーンに表示するように制御する制御部と、
前記キャビネットの前面に設けられ、前記ランプハウスを収容するランプハウス収容部とを備え、
前記ランプハウスは、その交換のときに使用される断熱部材により構成された取手を有し、前記制御部により前記スクリーンに表示された前記光源用ランプの使用時間に基づいて、前記キャビネットの前面方向から前記ランプハウス収容部に対して交換可能に取り付けられていると共に、前記ランプハウスが前記ランプハウス収容部に収容される場合に、当該ランプハウスの収容が前記ランプハウス収容部内においてガイドされ、前記光源用ランプに電源を供給するコネクタに接続されるように構成され、
さらに、前記キャビネットの前面に化粧板により覆われるように設けられ、前記ランプ収容部に収容された前記ランプハウスを保護する保護カバーを有し、前記保護カバーは、前記光源用ランプの交換作業を記載した取扱部を有することを特徴とする背面投射型映像装置。」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成18年6月2日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1〜4に係る発明は、本願の出願前に頒布された、特開平7-255027号公報(以下、「引用例1」という。)、実願平2-111013号(実開平4-67691号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)、特開平1-302387号公報(以下、「引用例3」という。)及び特開平5-119400号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例
引用例1には、
「【0039】図において、1は筐体で、その内部に、光源2、凹面反射ミラー3、集光レンズ群4で構成される照明部6と、この照明部6と液晶パネル5が、光軸を横(左右)方向に向けて筐体1の前部に固定され、光軸を後部に向かって水平方向にほぼ直角に曲折するための第1の反射ミラー7が液晶パネル5の横に固定され、後方へ向け拡大投写するための投写レンズ8が第1の反射ミラーの後方に固定され、投写光を上方向に曲折するための第2の反射ミラー9が投写レンズ8の後方に固定されている。
【0040】10はカバーパネルで、筐体1内のシャーシ100の後部天面側に設けられた支軸100aに回動自在に取付られ、内面に第3の反射ミラー11が固定されている。13はスクリーン枠で、カバーパネル10の自由端側に設けられた支軸10aに回動自在に取付られている。12はスクリーン枠13に固定されたスクリーンで、第2の反射ミラー9、および第3の反射ミラー11で反射された投写光はスクリーン12上に結像する。」(段落【0039】、【0040】)、
「【0059】実施例6.図15は本発明の実施例6によるスクリーン収納式投写型表示装置を示す斜視図、図16は一部破断平面図である。本実施例6は、光源2の交換を容易にするための実施例であり、照明部6の前部の筐体1に開口1aを設け、この開口1aの奥部に光源2が位置するよう照明部6を構成し、筐体1内に固定したソケット部35に光源保持ケース36のプラグ部37を着脱可能に構成しており、光源保持ケース36の頭部には、筐体1の一部を兼ねる蓋部36aが一体化されている。
【0060】上記構成とすることにより、蓋部36aを取外すだけで、光源保持ケース36が取り出せ、光源2が容易に交換でき、取付けも、蓋部36aを取付ることにより、プラグ部37がソケット部35に装着され、光源保持ケース36、光源2が所定の位置に設定される。
【0061】なお、上記実施例6では、蓋部36aを光源保持ケース36に一体化したが、両者を分離した構造としてもよい。この場合、蓋部36aを取外した後、光源保持ケース36を取出す。交換時の簡便性は若干損なわれるが、蓋部36aとソケット部35との間の寸法精度を保持する必要がなくなり、筐体1との嵌合設計上の自由度が増大する。」(段落【0059】〜【0061】)
との記載が認められ、上記の段落【0059】の「照明部6の前部の筐体1に開口1aを設け、この開口1aの奥部に光源2が位置するよう照明部6を構成」及び段落【0060】、【0061】の「取付けも、蓋部36aを取付ることにより、プラグ部37がソケット部35に装着され、光源保持ケース36、光源2が所定の位置に設定される。なお、上記実施例6では、蓋部36aを光源保持ケース36に一体化したが、両者を分離した構造としてもよい。」という記載によれば、蓋部36aが光源保持ケース36に一体化されているかいないかに関わらず、光源保持ケースを開口の奥部にある照明部の所定の位置に位置するように取り付ける場合に、まず、プラグ部37がソケット部35に装着されるが、この装着を確実にするために、なんらかの位置決めのための部材を備えることは、通常、実施されていると認められる。したがって、光源が前記開口の奥部にある照明部に位置するように取り付ける場合に、ガイドされる構成とすることは当業者に自明であると認められ、これらの記載によれば、引用例1には、
「筐体の前部に配置されたスクリーンの背面から光を投写する光源を、交換可能な光源保持ケース内に備えたスクリーン収納式投写型表示装置であって、
筐体の前部に開口を設け、筐体の前面方向から光源保持ケースを交換可能に取付ける場合に、光源が前記開口の奥部にある照明部に位置するようにガイドされ、光源保持ケースのプラグ部が筐体内のソケット部に装着され、さらに、前記開口には筐体の一部を兼ねる蓋部が取り付けられることを特徴とするスクリーン収納式投写型表示装置。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

引用例2には、
「本考案は、液晶ビデオプロジェクタ等の投写光源用の高圧放電灯を点灯駆動する投写用光源装置に関するものである。」(1頁下から2行〜2頁1行)、
「(7)は点灯判定部で、光源用電源回路(5)の検出信号を判定し放電灯(6)が点灯駆動しているか否かの判定を行う。(8)は前記点灯判定部(7)出力が“H”の状態の時間を点灯駆動時間として計数するカウンタ、(9)は前記カウンタ(8)でカウントされたデータを逐一記憶しておく記憶装置、(10)はユーザーキーボード(11)のキー入力を判定する入力判定部、(12)は前記カウンタ(8)のカウントデータ文字信号に変換し映像信号に重畳してオンスクリーン表示を行うための文字表示回路である。」(4頁5行〜15行)、
「そして、ユーザーが現時点の放電灯の点灯積算時間を知りたい時は、・・・。この文字表示回路(12)は点灯積算時間に対応する文字信号を発生し液晶駆動回路(4)にて映像信号に重畳することにより第2図の如く点灯積算時間がオンスクリーン表示される。
(ト)考案の効果
本考案は以上に説明したように構成されている為に以下に記載する効果を奏する。電源オン時からカウンタ処理が行われている為に放電灯の正確な使用積算時間がすぐモニターすることが出来る。
よって、ユーザーに寿命末期における放電灯の取り替え時期をかなり前から報知しつづけることが出来るようになるため、従来のように光量の急減、または突然の消灯により比較的長期間に渡って使用出来なくなるというようなことが避けられることで、ユーザーに対して使用性が著しく向上してくる。」(5頁14行〜6頁16行)
が記載されている。

引用例3には、
「本発明は少なくとも3枚の画像形成用液晶ライトバルブを用い、レンズで拡大投写して大画面表示を行う液晶プロジェクタに関するものである。」(2頁左上欄4行〜6行)、
「ランプハウジングユニット15は第4図および第5図の分解斜視図に示すように、箱形フレーム25A・25Bの中にハロゲンランプを可とする投写光源ランプ26を支持している。27はリフレクタで、熱対策としてコールドミラー付および明るさを向上する目的でマルチミラーリフレクタが用いられる。28はランプソケット、29はランプ取外し用エジェクタ、30は箱形フレーム25Bの光路方向正面側に設けた導光筒、31は箱形フレーム25Bのシロッコファン22の側の面に設けた導風筒、32は箱形フレーム25A・25Bのケース背面側の面に一体に設けたパネル部である。そのパネル部32はケース背面の開ロ7より大きくて、ランプハウジングユニット15を開ロ7からアウタハウジング23に収めると、開ロ7はランプハウジングユニット15のパネル部32によって覆われる。33は上記パネル部32に一体に設けたつまみで、そのつまみ33をつまんでランプハウジングユニット15の出し入れをする。34はケース1に対するランプハウジングユニット15のロック部材で、そのロック部材操作用ノブ34Aは上記つまみ33の中央に位置している。
ランプハウジングユニット15はアウタハウジング23に対し点接触で支持され、出し入れの際の摩擦抵抗を少なくし、且つ位置決め精度を向上させている。アウタハウジング23に対するランプハウジングユニット15の位置決め、すなわち投写光源ランプ26の位置は、ランプハウジングユニット15の箱形フレーム25Bの外面と、アウタハウジング23の内面に相対的に設けた光路方向に対する前後方向・上下方向および左右方向の各方向に作用する3個のばね35(第5図および第7図参照)によって決められる。」(4頁右上欄8行〜右下欄1行)
が記載されている。

4.対比・判断
本願発明と引用例1発明を対比すると、引用例1発明の「筐体」は、本願発明の「キャビネット」に相当し、以下同様に、「投写」は「投射」に、「光源」は「光源用ランプ」に、「光源保持ケース」は「ランプハウス」に、「スクリーン収納式投写型表示装置」は「背面投射型映像装置」に、「プラグ部」は「コネクタ」に、「装着」は「接続」に、それぞれ相当する。さらに、引用例1の段落【0060】の「取付けも、蓋部36aを取付ることにより、プラグ部37がソケット部35に装着され、光源保持ケース36、光源2が所定の位置に設定される。」という記載から、引用例1発明の「照明部」が本願発明の「ランプハウス収容部」に対応する構成を備えることは自明であるから、両者は、
「キャビネットの前面に配置されたスクリーンの背面から光を投射する光源用ランプを、交換可能なランプハウス内に備えた背面投射型映像装置であって、
前記キャビネットの前面に設けられ、前記ランプハウスを収容するランプハウス収容部とを備え、前記キャビネットの前面方向から前記ランプハウス収容部に対して交換可能に取り付けられていると共に、
前記ランプハウスが前記ランプハウス収容部に収容される場合に、当該ランプハウスの収容がガイドされ、前記光源用ランプに電源を供給するコネクタに接続されるように構成されることを特徴とする背面投射型映像装置。」という点で一致し、

[相違点1]
本願発明は、「光源用ランプの使用時間を計測するためのタイマと、前記タイマにより計測された交換可能なランプハウスの光源用ランプの使用時間をスクリーンに表示するように制御する制御部を備え、前記ランプハウスは、前記制御部により前記スクリーンに表示された前記光源用ランプの使用時間に基づいて、前記キャビネットの前面方向から前記ランプハウス収容部に対して交換可能に取り付けられている」という構成を有しているのに対して、引用例1発明は、単に、「筐体の前面方向から光源保持ケースを交換可能に取付ける」という構成を有しているにとどまる点。

[相違点2]
ランプハウスが前記ランプハウス収容部に収容される場合に、本願発明は、「ランプハウスの収容が前記ランプハウス収容部内においてガイドされ、前記光源用ランプに電源を供給するコネクタに接続されるように構成され、」という構成を有しているのに対して、引用例1発明は、「光源が前記開口の奥部にある照明部に位置するようにガイドされ、光源保持ケースのプラグ部が筐体内のソケット部に装着される」という構成を有している点。

[相違点3]
本願発明は、「ランプハウスは、その交換のときに使用される断熱部材により構成された取手を有し、」というものであるのに対して、引用例1発明は、そのような構成を有していない点。

[相違点4]
本願発明は、「キャビネットの前面に化粧板により覆われるように設けられ、ランプ収容部に収容されたランプハウスを保護する保護カバーを有し、前記保護カバーは、前記光源用ランプの交換作業を記載した取扱部を有する」という構成を有しているのに対して、引用例1発明は、「筐体の前部に、筐体の前面方向から光源保持ケースを交換可能に取付けるための開口を設け、さらに、前記開口には筐体の一部を兼ねる蓋部が取り付けられる」という構成を有しているにとどまる点。

次に相違点を検討する。
[相違点1]について
引用例2は、液晶ビデオプロジェクタ等の投写用光源装置に係るものであるが、本願発明の「光源用ランプの使用時間を計測するためのタイマと、前記タイマにより計測された交換可能な前記ランプハウスの光源用ランプの使用時間を前記スクリーンに表示するように制御する制御部」に対応する構成を備えていると認められる。また、ランプハウスが、「前記制御部により前記スクリーンに表示された前記光源用ランプの使用時間に基づいて、前記キャビネットの前面方向から前記ランプハウス収容部に対して交換可能に取り付けられている」という点は、例えば、光源用ランプの使用時間が所定の値に達した場合に、ランプハウスが自動的に交換可能となるための動作を起こすというような構成を表すものではなく、例えば、利用者がスクリーンに表示された光源用ランプの使用時間を知ることで、必要に応じて適宜ランプハウスを交換できることを表しているにとどまるものであるから、この点も引用例2に記載される範囲内の事項であると認められる。結局、この相違点に係る本願発明の構成は、引用例2に記載された技術的事項を引用例1発明に適用することにより当業者が容易に想到しえたものと認められる。

[相違点2]について
引用例3は、液晶プロジェクタに係るものではあるが、第4頁左下欄に、「ランプハウジングユニット15はアウタハウジング23に対し点接触で支持され、出し入れの際の摩擦抵抗を少なくし、且つ位置決め精度を向上させている。」という記載があり、これは、本願発明の「ランプハウスの収容が前記ランプハウス収容部内においてガイドされ、」という構成に対応するものと認められるから、この技術思想を引用例1発明に適用し、本願発明のように構成することは当業者が容易に想到しえたものと認められる。

[相違点3]について
引用例3には、光源ランプを備えたランプハウジングユニットをケースから出し入れをするためにつまみを設けることが記載されている。ところで、一般に、プロジェクタの使用中に光源ランプが切れてスペアーとの交換をする場合、切れたばかりの光源ランプは熱いのでランプ台を交換するためのつまみを設けることは、周知(例えば、実公平4-38345号公報参照)であるし、また、複写機においては、開口内に収容されているユニットを取り外す場合に熱絶縁ハンドルを採用することも周知(特開平6-91923号公報、特開平5-8447号公報等を参照)であることを勘案すると、引用例1発明に断熱部材により構成されたつまみを設けることにより、本願発明のように構成することは当業者が容易に想到しえたものと認められる。

[相違点4]について
引用例3の第4頁左下欄には、光源ランプを備えたランプハウジングユニットを開ロからアウタハウジングに収めると、開ロはランプハウジングユニットのパネル部によって覆われる旨の記載があり、このパネル部は、本願発明の保護カバーに対応するものと認められる。また、電子複写機等においては、扉に取り扱い説明書のための収納部を設けるとは周知(特開平2-93551号公報、実公平6-2158号公報等を参照)であることを勘案すると、引用例1発明の蓋部の内側にパネル部を設け、その内部の部品等に係る取扱説明文を記載するように構成する程度のことは、当業者が設計に際し、適宜採用できたとものと認められる。また、引用例1発明の蓋部は筐体の一部を兼ねるというものであるから、その表面の仕様を筐体の表面と同様のものとすることは、設計に際し普通に行われることである。さらに、引用例1発明の背面投射型映像装置の筐体に化粧板を採用することは、設計上適宜採用しうる程度の事項に属するものと認められるから、引用例1発明の蓋部を本願発明のキャビネットの前面を覆う化粧板のように構成することも当業者が適宜なしえたものというべきである。結局、この相違点に係る本願発明の構成は、引用例1、3記載された発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものと認められる。

そして、本願発明の構成により生ずる効果は、前記引用例1〜3及び周知技術から予測される範囲内のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1〜3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-18 
結審通知日 2006-08-21 
審決日 2006-09-06 
出願番号 特願2003-378632(P2003-378632)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 辻 徹二
青木 和夫
発明の名称 背面投射型映像装置  
代理人 佐々木 功  

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