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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1145852 |
審判番号 | 不服2003-10867 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-02-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-12 |
確定日 | 2006-10-26 |
事件の表示 | 特願2000-240066「中古車情報検索装置及び中古車情報検索方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月20日出願公開、特開2002- 55997〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成12年8月8日の出願であって,平成15年5月6日付で拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年7月11日付で手続補正がなされた。その後,当審において,当該手続補正が平成18年3月28日付の補正の却下の決定により却下された後,同年5月25日付で拒絶の理由が通知され,同年7月28日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年7月28日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「中古車の種類を特定するための検索条件情報としての車種情報に合致する全ての第1の中古車データを抽出する第1の抽出手段と; 前記第1の抽出手段によって抽出された前記全ての第1の中古車データに基づいて,前記中古車の種類を特定するための検索条件情報対応の最低価格及び最高価格をユーザに対象中古車の価格相場を認識させるための価格帯情報として抽出する第2の抽出手段と; 前記第1の抽出手段によって抽出された前記全ての第1の中古車データに基づいて,ユーザ指定の価格,年式及び走行距離の少なくとも1つを含む他の検索条件情報に合致する第2の中古車データを抽出する第3の抽出手段と; 前記第2の抽出手段によって抽出された前記価格帯情報及び前記第3の抽出手段によって抽出された前記第2の中古車データをユーザ利用の端末装置に同時に表示するために送信する送信手段とを備え; 前記検索条件情報及び前記他の検索条件情報を前記ユーザ利用の端末装置から一度に入力させる中古車情報検索装置。」 3.当審の拒絶の理由 当審において平成18年5月25日付で通知した拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。 「理由1,2:略 理由3:本件出願の請求項1乃至12に係る発明は,その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物(刊行物一覧)に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物一覧 1.喜島 他,中古車営業支援システム「SMICATS」,住友金属, Vol.49,No.1,1997年1月,第95〜99頁 2.特開平11-25164号公報 3.特開平2-201575号公報 4.特開平7-129597号公報 5.特開昭62-40530号公報 6.特開平6-223117号公報」 4.引用例 (4.1)上記の拒絶の理由に引用した「喜島 他,中古車営業支援システム「SMICATS」,住友金属,Vol.49,No.1,1997年1月,第95〜99頁」(以下,「引用例1」という。)には,下記(a)乃至(c)の事項が記載されている。 (a) 「本システムは,中古車販売業向けに開発した画像付き在庫車検索システムです。中古車販売会社が互いに手持ちの在庫車情報を画像付きで持ち寄り,データベース化することで在庫の共有化を図ります。共有在庫のデータベースはセンターに設置され,販売店のパソコン端末とはINS64の高速デジタルネットワークで接続されます。パソコン端末から登録された車両情報は,共有在庫としてセンター側で一括管理され,いつでもどの端末からでも自由に希望する中古車の検索を行うことができます。 本システムの導入により,中古車販売会社にとっては,見掛け上自社在庫が増えた分だけ販売機会が増えることになり,売り上げ増の効果が期待できます。またユーザーにとっても,多くの在庫車の中から欲しい車をその場で画像を見ながら品定めすることができます。」(第95頁,要約) (b) メーカー,車種,グレード,年式,小売価格などの各検索項目と,検索開始ボタンからなる希望車検索画面。(第97頁,写真1) (c) 車種,グレード,年式,小売価格を表示項目とした検索結果一覧表画面。(第98頁,写真2) ここで,引用例1の記載事項を検討すると,上記摘記事項(a)によれば,引用例1のシステムは,中古車販売業向けの在庫車検索システムであるから,「中古車情報検索装置」であるといえる。 また,引用例1の上記摘記事項(a)によれば,引用例1の販売店のパソコン端末は,ユーザが多くの在庫車の中から欲しい車をその場で画像を見ながら品定めするためのものであるから,「ユーザ利用の端末装置」であるといえ,検索条件はユーザが指定するものであるといえる。 また,上記摘記事項(b)によれば,引用例1の中古車情報検索装置は検索項目としてメーカー,車種,グレード,年式,小売価格などを入力するものであり,検索開始ボタンは各々の検索項目を入力後,各検索項目をデータベースに送信するためのものであることは明らかであるから,引用例1の中古車情報検索装置は,「検索条件」として,「中古車の種類を特定するための車種情報」と「価格,年式」とを含み,「検索条件」は,パソコン端末から「一度に入力」されるものである。 また,上記摘記事項(a)によれば,引用例1の中古車検索装置は,データベースがセンターに設置され,センターとネットワークで接続された販売店のパソコン端末から検索を行うものであり,上記摘記事項(c)によれば,検索された中古車データがパソコン端末に表示されているから,引用例1の中古車情報検索装置は,「検索条件によって抽出された中古車データをユーザ利用の端末装置に表示するために送信する送信手段」を有しているといえる。 してみれば,引用例1には, 「中古車の種類を特定するための車種情報,価格,年式を含む検索条件に合致する中古車データを抽出する抽出手段と; 前記抽出手段によって抽出された中古車データをユーザ利用の端末装置に表示するために送信する送信手段とを備え; 前記車種情報,価格,年式を含む検索条件を前記ユーザ利用の端末装置から一度に入力させる中古車情報検索装置。」の発明(以下,「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。 (4.2)また,上記の拒絶の理由に引用した特開平11-25164号公報(以下,「引用例2」という。)には,下記(d)乃至(k)の事項が記載されている。 (d) 「【0086】 (略) 使用期間又は年式の選択は,中古車の価格帯等を特定する上で重要なものである。」 (e) 「【0087】 このステップ45において使用期間又は年式の設定を行う(略) このステップ54において予算に合った車種・タイプを一覧表示すると,ステップ55において,一覧表示した車種・タイプの中から希望する車種・タイプ(例えば,クラウン・4ドアハードトップ,初年度登録:平成5年8月)を選択する。」 (f) 「【0088】このステップ55において希望する車種・タイプ(例えば,クラウン・4ドアハードトップ,初年度登録月:平成5年8月)を選択すると,ステップ56において,図66に示す如く,選択した車種・タイプの外観をデジタル・カメラで写した車体全体の写真を見て確認する。ステップ56において選択した車種・タイプの確認をすると,ステップ57において,選定した車種・タイプについてのグレードを図67に示す如く一覧表示する。ここで例として挙げたクラウン・4ドアハードトップ(初年度登録月:平成5年8月)のグレードは,5種類で,RサルーンG マルチV,RサルーンG,Rサルーン マルチV,Rサルーン,Rツーリング マルチVである。このステップ57において選定した車種・タイプについてのグレードの一覧表示をすると,ステップ58において,一覧表示したグレードの中から希望するグレード(例えば,RサルーンG マルチV)を選択する。ステップ58において,一覧表示したグレードの中から希望するグレードを選択すると,ステップ59において,図68に示す如く選択したグレードの確認を行う。図68に示される確認事項は,メーカー名(トヨタ),車種(クラウン),タイプ(4ドアハードトップ),排気量(3000cc),グレード(RサルーンG マルチV),年式(平成5年8月発売),ミッション(フロア4速オートマチック),適正走行距離(37,600km),流通小売価格(2,340千円),車体の全体写真である。適正走行距離は,当該車の平均的な総走行距離を示したもので,流通小売価格というのは,外観上損傷がなく,平均的距離を乗った車の買取価格から適正利益を上乗せして決定した標準小売販売価格のことである。また,図68に示される確認事項は,右上隅に暗号化された数字が,例えば,GSAX2290Xと表示されている。このGSAX2290Xは,購入予定した車のオークション落札価格(¥2,229,000)を示したもので,流通小売価格(¥2,340,000)に対するオークション落札価格である。このオークション落札価格と流通小売価格を比較することによって当該中古車の粗利益を瞬時に知ることが可能となる。」 (g) 「【0090】 ステップ67において,一覧表示したグレードの中から希望するグレードを選択する(略)」 (h) 「【0091】ステップ73においてサンルーフ/エアバックの希望設定を行うと,ステップ74において,希望走行距離を入力する。この希望走行距離は,希望する車種・タイプのグレードの適正走行距離を基準に,適正走行距離より少走行の距離,適正走行距離と同様の距離,適正走行距離より多走行距離のいずれかを具体的数値で入力する。このステップ74において希望走行距離を入力を行うと,ステップ75において,サンルーフ/エアバック,希望走行距離によって予算額を超過したか否かを判定する。すなわち,ステップ73においてサンルーフ及び又はエアバックの装備している車を希望すると予算額が超過し,希望走行距離が適正走行距離より多走行距離の場合は,予算額が超過する。」 (i) 「【0092】 (略) ステップ80において在庫検索条件の確認を行うとステップ62において,小売共通在庫に登録されている希望する各種条件に適合した中古車の検索を行う。 このステップ62において小売共通在庫に登録されている希望する各種条件に適合した中古車の検索を行うと,ステップ81において,条件に合った中古車があったか否かの判定を行う。このステップ81において条件に合った中古車があったと判定すると,ステップ82において,選定した車種・タイプのグレードの小売共通在庫に登録された在庫状況の表示を行う。(略)」 (j) 「【0093】ステップ83において希望する条件に合った中古車の予約登録を行わないと判定すると,ステップ84において,中古車購入の希望条件を変更するか否かの判定を行う。すなわち,ユーザーの希望する条件に合った中古車が見つからない場合に,希望する条件を変更する意思があるか否かを判定する。このステップ84において中古車購入の希望条件を変更しないと判定すると,この処理フローは,終了する。また,ステップ84において中古車購入の希望条件を変更する,すなわち,ユーザーが中古車購入の希望条件を変更することによって小売共通在庫に登録されている中古車の購入を希望する場合には,ステップ50に戻り,ユーザーの中古車購入の希望条件の選定をやり直す。」 (k) 「【0094】また,ステップ81において条件に合った中古車があったと判定すると,ステップ82において,図76に示す如く選定した車種・タイプのグレードの小売共通在庫に登録された在庫状況を最高価格のものから低価格のものへ価格順に(降順)表示されている。図76では,共通在庫総数352,117台中,ユーザーが指定した同一車種/タイプのものが24,398台あることを示しており,この内,年式が平成5年8月発売のものは,9台あり5台が最高価格のものから表示されている。図中,商談中となっているものは,現在他のユーザーが購入するかどうか検討している状態を示している。この商談中のものは,商談中の表示が解除されるまで購入交渉はできない。この表示方法には,図77に示す如く,価格順表示(昇順,降順),車検順表示(多順,少順),走行順表示(多順,少順)がある。このステップ82において選定した車種・タイプのグレードの小売共通在庫に登録された在庫状況の表示が行われると,ステップ86において,図76に示される如く表示された小売共通在庫の在庫の中から購入希望車両(例えば,ボディカラーにシルキーエレガントトーニングII,初年度登録が平成5年10月,価格が2,520,000円の車)を選定する。ステップ86において購入希望車両を選定すると,ステップ87において,小売共通在庫の在庫中より選定した車両の詳細情報を図78に示す如く表示する。」 (4.3)また,上記の拒絶の理由に引用した特開平2-201575号公報(以下,「引用例3」という。)には,下記(l),(m)の事項が記載されている。 (l) 「上記データベース検索により検索結果が得られない場合は,その検索条件を拡大不可条件と再設定し, 上記検索条件が拡大不可条件の場合は,その拡大不可の検索条件を削除し,データベースの検索を継続し,得られた検索結果からその検索条件に対応する検索項目がとる値の範囲(例えば,下限値/上限値)を求め,検索に成功するためには,その検索項目の値がこの値の範囲になければならないことを利用者に協調的に示す。」(第2頁左下欄第4〜13行) (m) 「第3-B図では,まず,利用者が「B4サイズの原稿が送れるFAXが欲しい。」と入力した後に,システムからの問いかけに応じ利用者が「価格は300,000円くらいがよい。」と入力したときに,システムは抽出された検索条件「300,000円くらい」でデータベースを検索し,その検索条件で検索に失敗する。その検索条件は検索範囲を拡大可能であるのでその検索条件の検索範囲をあらかじめ設定した範囲(図では上下2割)まで拡大し,検索を継続するが,さらに検索に失敗するので,次にその検索条件を削除して検索を継続し,検索結果が得られたので,その検索結果からその検索条件に対応する検索項目「価格」がとる値の範囲(最低価格/最高価格)を求め,価格の条件がこの値の範囲内にあれば検索に成功することを示す自然語を生成し,これを利用者に協調的に応答し,システムは「>>いかがでしょうか。<<」と利用者に問いかける。」(第3頁右下欄第13行〜第4頁左上欄第10行) 5.対比 本願発明と引用例1発明とを対比すると,引用例1発明の「中古車の種類を特定するための車種情報,価格,年式を含む検索条件に合致する中古車データを抽出する抽出手段」により抽出される「中古車データ」は,本願発明の「前記第1の抽出手段によって抽出された前記全ての第1の中古車データに基づいて,ユーザ指定の価格,年式及び走行距離の少なくとも1つを含む他の検索条件情報に合致する第2の中古車データを抽出する第3の抽出手段」により抽出される「第2の中古車データ」と同じデータであると解することができるから,引用例1発明の「中古車の種類を特定するための車種情報,価格,年式を含む検索条件情報に合致する中古車データを抽出する抽出手段」と,本願発明の「中古車の種類を特定するための検索条件情報としての車種情報に合致する全ての第1の中古車データを抽出する第1の抽出手段」及び「前記第1の抽出手段によって抽出された前記全ての第1の中古車データに基づいて,ユーザ指定の価格,年式及び走行距離の少なくとも1つを含む他の検索条件情報に合致する第2の中古車データを抽出する第3の抽出手段」が協働したものとは,いずれも「中古車の種類を特定するための車種情報,ユーザ指定の価格,年式を含む検索条件に合致する中古車データを抽出する抽出手段」という概念で共通する。 してみれば,本願発明と引用例1発明とは, 「中古車の種類を特定するための車種情報,価格,年式を含む検索条件に合致する中古車データを抽出する抽出手段と; 前記抽出手段によって抽出された中古車データをユーザ利用の端末装置に表示するために送信する送信手段とを備え; 前記検索条件を前記ユーザ利用の端末装置から一度に入力させる中古車情報検索装置。」である点で一致し, 以下の点で相違する。 [相違点1] 抽出手段が,本願発明では「中古車の種類を特定するための検索条件情報としての車種情報に合致する全ての第1の中古車データを抽出する第1の抽出手段」と「前記第1の抽出手段によって抽出された前記全ての第1の中古車データに基づいて,ユーザ指定の価格,年式及び走行距離の少なくとも1つを含む他の検索条件情報に合致する第2の中古車データを抽出する第3の抽出手段」とに分かれているのに対し,引用例1発明ではそうではない点。 [相違点2] 本願発明では「前記第1の抽出手段によって抽出された前記全ての第1の中古車データに基づいて,前記中古車の種類を特定するための検索条件情報対応の最低価格及び最高価格をユーザに対象中古車の価格相場を認識させるための価格帯情報として抽出する第2の抽出手段」を備えているのに対し,引用例1発明ではそうではない点。 [相違点3] 送信手段が,本願発明では「第2の抽出手段によって抽出された前記価格帯情報」を「同時」に表示するために送信するものであるのに対し,引用例1発明ではそうではない点。 6.当審の判断 (6.1)[相違点1]について 引用例2の上記摘記事項(i)に「ステップ62において小売共通在庫に登録されている希望する各種条件に適合した中古車の検索を行う」,「ステップ82において,選定した車種・タイプのグレードの小売共通在庫に登録された在庫状況の表示を行う」点の記載があり,上記摘記事項(k)に「ステップ82において,図76に示す如く選定した車種・タイプのグレードの小売共通在庫に登録された在庫状況を最高価格のものから低価格のものへ価格順に(降順)表示されている。図76では,共通在庫総数352,117台中,ユーザーが指定した同一車種・タイプのものが24,398台あることを示しており,この内,年式が平成5年8月発売のものは,9台あり5台が最高価格のものから表示されている」点の記載があって,さらに,図76を参照すると,表示画面右上に,「共通在庫総数 352,117台」及び「同一車種/タイプ 24,398台」が表示され,その下に,「年式 平成5年8月発売」,「該当在庫9件」が表示されて,この同一車種/タイプ 24,398台の内,年式が平成5年8月発売の9台が最高価格のものから表示されている。 即ち,引用例2には,多数の希望項目からなる検索条件で中古車データの検索をするにあたって,希望する全ての検索条件を満たすデータを一ステップで検索するのではなく,まずは,希望する検索条件のうち,車種・タイプの検索条件に合致する中古車データを検索し,検索の結果得られる中古車データに基づいた情報,即ち同一車種・タイプのデータ数を計数し,次いで,前記検索の結果得られる中古車データに基づいて,ユーザが指定した年式の検索条件に合致する中古車データを抽出し,さらに前記同一車種・タイプのデータ数と,年式の検索条件に合致する中古車データとを同時に表示する構成の中古車情報検索装置が開示されていると認められる。 ここで,請求項1の記載に沿って整理するならば,引用例2の中古車情報検索装置が,中古車の種類を特定するための検索条件情報としての車種・タイプに合致する全ての第1の中古車データを抽出する第1の検索手段と,前記全ての第1の中古車データに基づいて,前記中古車の種類を特定するための検索条件情報に対応する情報を得る情報処理手段と,前記第1の検索手段によって抽出された前記全ての第1の中古車データに基づいて,ユーザが指定した年式の検索条件情報に合致する第2の中古車データを抽出する第2の検索手段と,前記情報処理手段によって得られた情報と前記第2の検索手段によって抽出された前記第2の中古車データとを表示装置に同時に表示するように制御する表示制御手段とを備えることは,明らかである。 ところで,社会常識に照らしてみれば,中古車を購入しようとするユーザは,多項目にわたる希望条件を全て満たす車両の在庫があるとは必ずしもいえないことから,多数の在庫車両の情報を広い視野から比較するために,希望条件を変更しながら繰り返して検索を試み,できるだけ希望条件に沿った在庫車両を探す,というのが一般的な傾向である。 こうしたユーザの傾向を勘案すると,引用例1発明の中古車情報検索装置においても,多項目にわたる検索条件を全て用いた検索結果だけでなく,検索条件のうちの所定の条件を用いた中間的な検索過程での状況がわかる情報が得られれば,ユーザにとって検索結果の評価や次回の検索のために有用であることは明らかであり,そうした中間的な検索過程での状況がわかる情報を取得し,検索結果と併せて取得したいという要請が内在するといえる。 してみれば,引用例1発明において,多項目にわたる検索条件のうちの所定の条件を用いた中間的な検索過程での状況がわかる情報が得られるように,引用例2記載の検索装置の構成を引用例1発明に適用し,本願発明の相違点1に係る構成を得ることは,当業者が容易に想到できた事項である。 (6.2)[相違点2],[相違点3]について 前項で検討したように,中古車情報検索装置において,多項目にわたる検索条件を全て用いた検索結果だけでなく,検索条件のうちの所定の条件を用いた中間的な検索過程での状況がわかる情報が得られれば,ユーザにとって検索結果の評価や次回の検索のために有用であることは明らかであり,そのため,引用例2には,中間的な検索過程での状況として同一車種・タイプのデータ数を検索結果と同時に表示することが開示されている。 一方,社会常識に照らしてみれば,中古車検索を行うユーザにとって最大の関心事は価格であり,中古車特有の事情として,例えば引用例2の摘記事項(d)に「使用期間又は年式の選択は,中古車の価格帯等を特定する上で重要なものである。」とあるように,同一車種でも年式などにより大きく価格が異なり,ユーザにとって価格相場が分かりにくいことから,そもそも自分の希望する車種・タイプの在庫車両は一体いくらぐらいの価格相場のものなのか,ということを知りたいというのは,購入希望者の心理からして自然な発想といえる。そして,価格相場を表す指標として,平均価格などとともに,最低価格及び最高価格は,代表的なものとしてよく知られており,例えば引用例3の上記摘記事項(l),(m)には,(価格以外の)検索条件に対応する商品群の「価格」がとる値の範囲(最低価格/最高価格)を求めてユーザに価格相場を認識させるために表示する商品情報検索システムの構成が記載されている。 しかも,引用例2記載の検索装置においても,上記摘記事項(k)及び図76によれば,「選定した車種・タイプのグレードの小売共通在庫に登録された在庫状況を最高価格のものから低価格のものへ価格順に(降順)表示」しているわけであるから,検索した中古車データのうちの最高価格と最低価格を得るための基本的な処理の仕組みを備えていると解することができ,前記した中間的な検索過程での状況がわかる情報として,ユーザに価格相場を認識させるために最低価格/最高価格を採用する場合,この仕組みを適用して最低価格/最高価格を得るようにすることは格別の困難性を伴わずになし得る事項である。 してみれば,前項で検討した引用例1発明において引用例2記載の検索装置の構成を適用するにあたり,前記情報処理手段によって得られるところの,前記中古車の種類を特定するための検索条件情報に対応する情報として,同一車種・タイプのデータ数に換えて例えば引用例3に記載された最低価格及び最高価格を採用し,本願発明の相違点2及び相違点3に係る構成を得ることは,当業者が容易に想到できた事項である。 (6.3)まとめ 以上判断したとおり,本願発明における上記相違点1乃至3に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり,また,各相違点を総合しても本願発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。 そして,本願発明の作用効果も,引用例1乃至3及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明は,引用例1乃至3に記載された各発明に基づいて,周知技術を参酌することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1乃至3に記載された各発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-23 |
結審通知日 | 2006-08-29 |
審決日 | 2006-09-12 |
出願番号 | 特願2000-240066(P2000-240066) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 匡 |
特許庁審判長 |
佐藤 伸夫 |
特許庁審判官 |
高瀬 勤 久保田 健 |
発明の名称 | 中古車情報検索装置及び中古車情報検索方法 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 和久田 純一 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 遠山 勉 |