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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1145877
審判番号 不服2004-379  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 平成11年特許願第 75743号「半導体レーザ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月29日出願公開、特開2000-269584〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年3月19日に出願された特許出願であって、原審において、平成14年10月17日付で拒絶理由が通知され、同年12月12日に手続補正がなされ、次いで、平成15年4月22日付で最後の拒絶理由が通知され、同年6月25日に手続補正がなされたところ、同年11月20日付で当該手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年2月4日に手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月4日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月4日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、平成14年12月12日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1である
「【請求項1】 半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子の前方出力光の出斜面と対向する入射面を有しており出射された前方出力光を伝送する光ファイバと、前記半導体レーザ素子の後方出力光の出射面と異なる角度の入射面を有しており出射された後方出力光をモニタするモニタフォトダイオード素子とをシリコン基板上に実装し、
前記半導体レーザ素子と前記光ファイバと前記モニタフォトダイオード素子とを透明樹脂で被覆して成る半導体レーザ装置であって、
前記半導体レーザ素子の後方出力光の一部を、前記透明樹脂と空気との界面で前記モニタフォトダイオード素子の入射面に向けて反射するように、前記透明樹脂の屈折率を空気の屈折率以上前記光ファイバの屈折率以下とすることを特徴とする半導体レーザ装置。」
を、
「【請求項1】 半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子の前方出力光の出射面と対向する入射面を有しており出射された前方出力光を伝送する光ファイバと、
前記半導体レーザ素子と実装位置に段差が設けられ、前記半導体レーザ素子の後方出力光の出射面と直交する入射面を有し、出射された後方出力光をモニタする表面入射型モニタフォトダイオード素子と
をシリコン基板上に実装し、
前記半導体レーザ素子と前記光ファイバと前記モニタフォトダイオード素子とを透明樹脂で被覆して、
前記半導体レーザ素子の後方出力光の一部を、前記透明樹脂と空気との界面で前記モニタフォトダイオード素子の入射面に向けて反射するように構成して成ることを特徴とする半導体レーザ装置。」
と補正することを含むものである。

(2)特許法17条の2第4項違反について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記透明樹脂の屈折率を空気の屈折率以上前記光ファイバの屈折率以下とすること」を削除することを含むものである。
そこで、上記削除を含む本件補正が特許法17条の2第4項に規定する要件を満たしているかについて検討するに、特許法17条の2第1項第4号の規定により拒絶査定に対する審判請求のときに特許請求の範囲についてする補正は、同条第4項第1〜4号の規定に掲げる事項を目的にするものに限られるところ、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項を削除する上記補正が、その何れにも該当しないことは明らかであるから、本件補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

なお、請求人は、上記発明を特定するために必要な事項を削除する補正に関し、平成16年3月26日付手続補正(方式)で、
「(f)平成14年12月12日付けの手続き補正書では、ここの部分が『前記半導体レーザ素子の後方出力光の一部を、前記透明樹脂と空気との界面で前記モニタフォトダイオード素子の入射面に向けて反射するように、前記透明樹脂の屈折率を空気の屈折率以上前記光ファイバの屈折率以下とする』と記載されていた。この文言の内『前記透明樹脂の屈折率を空気の屈折率以上前記光ファイバの屈折率以下とする』という文言を削除する補正を行った。この補正は、平成15年4月22日付け(起案日)の拒絶理由通知書に付記された指摘に基づいて行ったものである。」
と、主張しているのでこれについて念のため検討しておく。
平成15年4月22日付拒絶理由には、以下のような「付記」がある。
「付記:
請求項1には、『半導体レーザ素子の後方出力光の一部を、前記透明樹脂と空気との界面で前記モニタフォトダイオード素子の入射面に向けて反射するように、前記透明樹脂の屈折率を空気の屈折率以上前記光ファイバの屈折率以下とすることを特徴とする』と記載されているが、モニタフォトダイオード素子への反射に対して、透明樹脂の屈折率が光ファイバの屈折率以下である必要はないものと考えられる。また、樹脂において、空気よりも屈折率の小さい樹脂は(その存在も一般に知られていないと思われるが)通常用いられることはなく、例えば一般に用いられるシリコン樹脂やエポキシ樹脂は、当然に空気よりも屈折率は大きいものと認められる。
また、本願発明において光ファイバのどの部分の屈折率と比較しているかが明確ではないが、その趣旨から、光ファイバのコアよりは低いのであると認められる。そして、本願発明において実施例でシリコン樹脂を用いているが、例えば前回拒絶理由通知で引用した文献1、3、4は、用いる樹脂としてシリコン樹脂が記載されている。また、シリコン樹脂は、光ファイバのコアよりも屈折率が低いので、光ファイバ周辺に慣用されている。」
上記「付記」によれば、平成16年2月4日付手続補正で削除された事項に関し、審査官が技術的な見解を述べていることは認められるものの、係る技術的見解が当該事項を削除すべきとの積極的な示唆を与える内容であるとまではいえず、結局、当該事項の削除は専ら請求人の自由な意思によるものと解するのが相当であるから、請求人の上記主張は採用し得ないものである。

(3)むすび
以上のとおり、平成16年2月4日付手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年2月4日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年12月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子の前方出力光の出斜面と対向する入射面を有しており出射された前方出力光を伝送する光ファイバと、前記半導体レーザ素子の後方出力光の出射面と異なる角度の入射面を有しており出射された後方出力光をモニタするモニタフォトダイオード素子とをシリコン基板上に実装し、
前記半導体レーザ素子と前記光ファイバと前記モニタフォトダイオード素子とを透明樹脂で被覆して成る半導体レーザ装置であって、
前記半導体レーザ素子の後方出力光の一部を、前記透明樹脂と空気との界面で前記モニタフォトダイオード素子の入射面に向けて反射するように、前記透明樹脂の屈折率を空気の屈折率以上前記光ファイバの屈折率以下とすることを特徴とする半導体レーザ装置。」

(2)平成15年4月22日付の拒絶理由
本願発明に対し、平成15年4月22日付で以下のような拒絶理由が通知されている。
「理 由
平成14年12月12日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

本願の請求項1には、「半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子の前方出力光の出斜面と対向する入射面を有しており出射された前方出力光を伝送する光ファイバと、前記半導体レーザ素子の後方出力光の出射面と異なる角度の入射面を有しており出射された後方出力光をモニタするモニタフォトダイオード素子とをシリコン基板上に実装し、前記半導体レーザ素子と前記光ファイバと前記モニタフォトダイオード素子とを透明樹脂で被覆して成る半導体レーザ装置であって、前記半導体レーザ素子の後方出力光の一部を、前記透明樹脂と空気との界面で前記モニタフォトダイオード素子の入射面に向けて反射するように、前記透明樹脂の屈折率を空気の屈折率以上前記光ファイバの屈折率以下とすることを特徴とする半導体レーザ装置」が記載されている。
出願人は、補正の根拠として「本願明細書の段落番号[0028]〜[0034]等および本願図1に基づいて変更したものである」としているので、その点を検討する。
段落28-34には、前記「半導体レーザ素子の後方出力光の出射面と異なる角度の入射面を有しており出射された後方出力光をモニタするモニタフォトダイオード素子」という記載はない。そして、段落28-34に記載された実施例においては、その図面上たしかに「半導体レーザ素子の後方出力光の出射面と異なる角度の入射面を有しており出射された後方出力光をモニタするモニタフォトダイオード素子」が記載されているものの、段落28-34に記載された発明は、明らかに「半導体レーザ素子とモニタPDとの実装位置に段差をつけた」発明であって、角度を異ならせたモニタPD一般が開示されているものではない(例えば実装位置に段差が無く、平坦面に設けられていて、モニタPDの入射面が傾斜しているモニタPD素子は記載されていない)。
してみると、前記「半導体レーザ素子の後方出力光の出射面と異なる角度の入射面を有しており出射された後方出力光をモニタするモニタフォトダイオード素子」は、出願当初明細書又は図面に記載された事項から直接的且つ一義的に導かれる事項ではない。」

これに対し、請求人は、係る拒絶理由を解消すべく平成15年6月25日付で手続補正をなしたが、当該補正は同年11月20日付で却下された(「1.手続の経緯」参照)。
したがって、本願発明は、上記拒絶理由のとおり、依然として特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲外の技術事項を含むものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-22 
結審通知日 2006-08-29 
審決日 2006-09-14 
出願番号 特願平11-75743
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01S)
P 1 8・ 55- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 平井 良憲
吉野 三寛
発明の名称 半導体レーザ装置  
代理人 開口 宗昭  

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