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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1145889 |
審判番号 | 不服2004-3242 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-12-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-19 |
確定日 | 2006-10-26 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第141621号「投射型液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月16日出願公開、特開平 9-325313〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年6月4日の出願であって、原審において、平成15年7月22日付で拒絶理由が通知され、これに対し、同年9月29日付で手続補正がなされたところ、平成16年1月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月16日付で手続補正がなされたものである。 2.平成16年3月16日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年3月16日付の手続補正を却下する。 [理由] 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 光源と、該光源からの出射光を被照射面上に照射させる作用を有する照明手段と、光を変調する液晶表示素子と、該液晶表示素子から出射した光を投射する投射手段とを有する投射型液晶表示装置において、 前記照明手段は少なくとも1つの略楕円面形状の反射鏡と1つの略球面形状の反射鏡とを有し、 且つ、前記照明手段は、光源側より複数のレンズが光軸に垂直に配列された第一のレンズアレイと第二のレンズアレイとを有し、 前記第一のレンズアレイは、矩形形状を有する複数のレンズ群より構成され、該レンズ群の内の少なくとも1つのレンズの光軸は、前記矩形形状の中心とは異なる位置に存在し、 前記第二のレンズアレイは、矩形形状とは異なる少なくとも1つの四辺形形状を有するレンズと、少なくとも1つの五角形形状を有するレンズとを含んで構成されることを特徴とする投射型液晶表示装置。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一対の電極間の放電により発光部から光を放射する光源ランプ」を、単に「光源」と上位概念化するとともに、「該球面鏡の反射面はアルミ蒸着より成り、前記光源ランプは、前記楕円面鏡と前記球面鏡とで反射される領域以外の前記光源ランプの発光部からの光を拡散反射するように保温膜を塗布した」との構成を削除することを含むものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、また、同条同項第1,3,4号のいずれにも該当しない。 よって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年3月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年9月29日付手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 一対の電極間の放電により発光部から光を放射する光源ランプと、該光源ランプからの出射光を被照射面上に照射させる作用を有する照明手段と、光を変調する液晶表示素子と、該液晶表示素子から出射した光を投射する投射手段とを有する投射型液晶表示装置において、 前記照明手段は少なくとも1つの楕円面鏡と1つの球面鏡とを有し、 該球面鏡の反射面はアルミ蒸着より成り、 前記光源ランプは、前記楕円面鏡と前記球面鏡とで反射される領域以外の前記光源ランプの発光部からの光を拡散反射するように保温膜を塗布したことを特徴とする投射型液晶表示装置。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-323268号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、 ア.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、光源から出射される光が効率良く被照射面を明るく照らし、さらに被照射面に入射する光の角度の小さな、例えばライトバルブたる透過型の液晶表示素子上に形成される光学像を照明するのに好適な照明光学系装置、及びこの照明光学系装置を用いた液晶表示装置に関するものである。」 イ.「【0004】 【発明が解決しようとする課題】照明光学系の小型・高性能化のための条件のひとつとして、光源から出射される光を効率良く被照射面に集めることが挙げられる。すなわち、光源の放射する全ての光のエネルギーに対する被照射面上に照射される光のエネルギーの比率(以下、光利用効率と呼ぶ)を高くすることにより、被照射面を明るく照らすことが重要となる。一般に、照明光学系において、一定の距離に置かれたある一定の大きさを持つ被照射面を明るくする方法としては、光利用効率を高くすること以外に、照明光学系の光源自体の高出力化が考えられる。近年、上述したような照明装置あるいは表示装置に用いられている光源としてメタルハライド,キセノン,ハロゲン等の光源を用いたランプがあり、こうしたランプの明るさ等の性能および寿命が改善されて来ている。しかし、さらに高出力化した場合には、発熱などによるランプの寿命および該ランプを用いた装置の寿命,大きさ等に影響するため、ランプの高出力化は難しい。このため、照明光学系において光利用効率をできるだけ高くすることで、被照射面を明るくすることが必要である。」 ウ.「【0014】図1の(a)は、本発明による照明光学系の原理断面図を示しており、光源1から出射した光は、第1の凹面鏡2である反射鏡で反射されるか、あるいは光源1から出射した光の一部は第1の凹面鏡2で反射されることなく、集光レンズ群4の方向へ向かう。これらの光の内、その一部は図に示す様に設けられた第1の凹面鏡2で反射されない光の方向を、該第1の凹面鏡2で反射するように変える手段としての第2の凹面鏡3で反射され、また他の光は第2の凹面鏡3で反射されることなく、そのまま集光レンズ群4の方向に向かう。最終的に上記第2の凹面鏡3を経由した光も、集光レンズ群4を通過後被照射面5に照射される。なお、本発明における照明光学系において、第2の凹面鏡3の作用は集光レンズ群4が無い場合にも有効である。」 エ.「【0016】また、図1の(c)は、本発明による照明光学系を用いた投射型表示装置の原理断面図を表しており、上記図1の(b)に示したライトバルブ6による像を、投射レンズ8により拡大してスクリーン9上に投射するものである。」 オ.「【0018】図2は、光源以外の照明光学系を1枚の薄肉レンズとして代表させて照明光学系を模式的に表したものである。図2の(a),(b)は、光源が点光源である場合を示し、図2の(c),(d)は、ある大きさを持つ光源として、光源を線光源で示したものである。」 カ.「【0041】図10は、本発明による照明光学系の第2実施例を示す断面図である。本実施例は、図8に示した前記第1実施例における放物面鏡13の替わりに、第1の凹面鏡として楕円面鏡18を用いたものである。図10に示すように、本実施例では、光源1は上記楕円面鏡18の頂点側の楕円第1焦点位置近傍に置かれ、これにより、光源1において楕円面鏡18の頂点側の楕円第1焦点位置近傍から出射し該楕円面鏡18により反射された光は、楕円面鏡18の光源1を設けた焦点と反対側の焦点である楕円第2焦点19の近傍に集光される。一方、光源1を出射し楕円面鏡18で反射されずに前記球面鏡(第2の凹面鏡)16に入射した光は、球面鏡16により反射され、再び光源1の方向に戻り、図8に示す第1実施例と同様に該光源1を通過し、上記楕円面鏡18で反射され、従って楕円第2焦点19の近傍に集光される。これにより、従来直接光として被照射面5の照射に寄与していなかった光を被照射面5の照射に用いることができ、これにより、光利用効率の良い照明光学系を得ることができる。」 キ.「【0042】図11は、本発明による照明光学系の第3実施例を示す断面図である。本実施例は、上記した図10の第2実施例において、光源1と被照射面5の間に集光レンズ群4を設けたものである。図11における集光レンズ群4は、楕円面鏡18および球面鏡16により楕円第2焦点19の近傍に集光された光を被照射面5に角度良く集める作用を有しており、これにより、図10に示す第2実施例における被照射面5への光入射角度が補正され、光利用効率が良く、かつ、光入射角度(前記図4におけるθ)が小さい照明光学系とすることができる。さらに、上記集光レンズ群4を少なくとも1面が非球面である構成とすることにより、該非球面は、被照射面5上の輝度むら等の光むらを補正する作用を持たせることができるので、光利用効率を高くした場合にも、光のむらが少ない性能の良い照明光学系を得ることができる。」 ク.「【0043】図12は、前記球面鏡16の他の1例を示したものである。図12に示す球面鏡16は、前記図9に示した球面鏡16の出射窓17に相当する部分の穴が開いていない構造のものである。図12における球面鏡16は、例えばガラスにより半球中空状に製造された後、アルミニウム等の膜を内部に蒸着することにより反射面を形成するものであり、この際、図12の斜線部で示した反射面20の部分にのみ蒸着することにより、蒸着されない部分を光の透過する透過面21とするようにしたものである。これにより、図9に示す出射窓17と同等の作用があるとともに、球面鏡16に穴を開ける等の作業が必要無くなり、さらに、光の出射窓に相当する透過面21の大きさを上記半球中空状のガラス等を作り直すことなく調節することが可能となり、これにより、本球面鏡16を用いる系に適したように被照射面5の明るさ及び光入射角度を調整することができる。 ケ.「【0051】次に、本発明による照明光学系を用いた液晶表示装置の実施例について説明する。図16は、本発明による照明光学系を用いた液晶表示装置の第1実施例を示しており、前記した図1の(b)に示した表示装置のライトバルブ6として液晶表示素子24を用いた表示装置となっている。なお、本実施例及び後述する液晶表示装置の各実施例における光源1を含む照明光学系は、上述してきた本発明の各実施例による照明光学系となっており、その具体的な作用,効果は前記の通りであるので、それらに関する説明は重複を避けるため省略する。」 コ.「【0053】図17は、本発明による照明光学系を用いた液晶表示装置の第2実施例を示している。本実施例の液晶表示装置は、図16に示した液晶表示素子24の光源1から出射された光が入射する側の面に、該液晶表示素子24の画素配列の各1画素に対応する単位レンズ部からなり該液晶表示素子24の画素配列と同一の配列を有するマイクロレンズアレイ7を設けた構成としたものである。ここで、本実施例におけるマイクロレンズアレイ7の作用を図を用いて詳細に説明する。」 サ.「【0065】さらに、図16および図17に示した実施例では、液晶表示素子を直視する所謂直視型の液晶表示装置の例を示したが、この液晶表示装置に、前記図1の(c)に示すように投射レンズ8を設け、液晶表示素子の像をスクリーン9上に拡大して投射する所謂投射型表示装置としても用いることもできる。」 シ.「【0066】次に、本発明による照明光学系を用いた液晶表示装置の第3実施例を図23によって説明する。本実施例の液晶表示装置は、図23に示すように、前記した液晶表示装置の第2実施例において用いたマイクロレンズアレイ付きの液晶表示素子24を、所謂色の3原色であるR(赤色),G(緑色),B(青色)の3色にそれぞれ対応して、合計3ユニット用いた3板式投射型液晶表示装置(投射型のカラー液晶表示装置)となっている。」 ス.「【0067】本実施例において、例えばメタルハライド,キセノン,ハロゲン等のランプを用いた光源1より出射した光線は、直接あるいは第1の凹面鏡2により反射されて、もしくは第2の凹面鏡3で反射された後第1の凹面鏡2により反射されて、熱線を反射し可視光を通過させる赤外カットフィルタ43を通過する。この赤外カットフィルタ43を通過した光線は、集光レンズ群4に入射した後、光軸に対してほぼ平行となる様に出射され、その後光線は、該光線の光軸に対して45°の角度に配置されたB(青色)反射ダイクロイックミラー44aにより、Bの光は反射され、R(赤色)とG(緑色)の光は透過する。反射したB光線は、全反射ミラー45によりその光路を折り曲げられて第1の液晶表示素子24に入射される。一方、B反射ダイクロイックミラー44aを透過したR及びG光線は、該光線の光軸に対して45°の角度に配置されたG反射ダイクロイックミラー44bに入射し、該G反射ダイクロイックミラー44bによりG光線は反射され、R光線は透過する。反射したG光線はそのまま第2の液晶表示素子24に入射される。また、G反射ダイクロイックミラー44bを透過したR光線は、全反射ミラー45,45によりその光路を折り曲げられて第3の液晶表示素子24に入射される。」 セ.「【0068】さらに、各液晶表示素子24の液晶28面上に表示されるR,G,Bそれぞれに対応する画像を、B反射面47及びR反射面48を有し、かつその反射面は各色の光線の光軸に対して45°の角度となるように構成されたダイクロイックプリズム46によって合成し、この合成された画像を投射レンズ8によって拡大し、スクリーン9上に拡大した実像を得るように構成されている。ここで、本実施例における上記ダイクロイックプリズム46は、各液晶表示素子24の液晶面上に表示されるR,G,Bそれぞれに対応する画像を合成する作用をもつものであれば、これに置き換えが可能である。」 ソ.「【0070】図23に示す本実施例によれば、例えば第1の凹面鏡2,第2の凹面鏡3,集光レンズ群4は前記図11や図15等に示した構成とし、また、平板マイクロレンズアレイを設けた液晶表示素子24として、前記図18または図22に示すものを用いることにより、明るく小型でかつ性能のよい投射型の液晶表示装置を得ることができる。なお、集光レンズ群4は凹面鏡等の構成によっては無くてもよく、また、集光レンズ群4の一部あるいは全部を、B反射ダイクロイックミラー44aより液晶表示素子側か、あるいは第1の凹面鏡2と第2の凹面鏡3の間、すなわち第1の凹面鏡2の開口部近傍に設けても良い。なお、平板マイクロレンズアレイ及び照明光学系等の作用については既述してあり、ここではその詳細説明は省略する。」 が記載されている。 これらア〜ソの記載によれば、引用例には、 「メタルハライドランプを用いた光源1と、該光源からの出射光を被照射面5に照射させる作用を持つ光源以外の照明光学系と、ライトバルブとして用いられる液晶表示素子24と、該液晶表示素子から出射した光を投射する投射レンズ8とを有する投射型液晶表示装置であって、 前記照明光学系は1つの楕円面鏡18と1つの球面鏡16とを有し、 該球面鏡16の反射面20は、アルミ蒸着より成る投射型液晶表示装置。」 との発明が記載されているものと認められる。 (3)対比 そこで、本願発明と引用例に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを比較する。 a.メタルハライドランプは、一対の電極間の放電により発光部から光を放射するものであるから(例えば、特開平8-87066号公報および特開平7-320694号公報等を参照。)、引用例発明の「メタルハライドランプを用いた光源1」は、本願発明の「一対の電極間の放電により発光部から光を放射する光源ランプ」に相当し、 b.引用例発明の「光源からの出射光を被照射面5に照射させる作用を持つ光源以外の照明光学系」、「ライトバルブとして用いられる液晶表示素子24」、「液晶表示素子から出射した光を投射する投射レンズ8」は、本願発明の、「光源ランプからの出射光を被照射面上に照射させる作用を有する照明手段」、「光を変調する液晶表示素子」、「液晶表示素子から出射した光を投射する投射手段」に、それぞれ相当するから、 両者は、 「一対の電極間の放電により発光部から光を放射する光源ランプと、該光源ランプからの出射光を被照射面上に照射させる作用を有する照明手段と、光を変調する液晶表示素子と、該液晶表示素子から出射した光を投射する投射手段とを有する投射型液晶表示装置であって、 前記照明光学系は少なくとも1つの楕円面鏡と1つの球面鏡とを有し、 該球面鏡の反射面は、アルミ蒸着より成る投射型液晶表示装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明の光源ランプは、「前記楕円面鏡と前記球面鏡とで反射される領域以外の前記光源ランプの発光部からの光を拡散反射するように保温膜を塗布した」ものであるのに対し、引用例発明の光源ランプは、そのような保温膜を備えていない点。 (4)判断 電極近傍に発光部からの光を拡散反射する保温膜を設けたメタルハライドランプは、本出願前に周知のものであるから(例えば、特開平8-87066号公報および特開平7-320694号公報等を参照。)、引用例発明の光源として、そのような保温膜を設けたメタルハライドランプを採用することは、当業者が適宜設計しうる事項にすぎない。そして、前記周知の保温膜を設けたメタルハライドランプを引用例発明の光源として取り付けた場合に、光源ランプから出た光のうち楕円面鏡18と球面鏡16とで反射される光は、保温膜で拡散反射される領域以外の光となることは、光源、保温膜、楕円面鏡、球面鏡の配置から明らかであり、これは、すなわち、上記相違点に係る構成を示すものである。 また、本願発明の効果も、引用例発明および周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。 よって、前記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到することができたものである。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-23 |
結審通知日 | 2006-08-29 |
審決日 | 2006-09-14 |
出願番号 | 特願平8-141621 |
審決分類 |
P
1
8・
56-
Z
(G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右田 昌士 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
吉野 三寛 鈴木 俊光 |
発明の名称 | 投射型液晶表示装置 |
代理人 | 井上 学 |