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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1145890
審判番号 不服2004-3680  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-25 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 平成 7年特許願第321542号「造粒コーティング種子およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月17日出願公開、特開平 9-154319〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年12月11日に出願された特許出願であって、平成16年1月23日付の拒絶査定に対し、拒絶査定不服審判の請求が平成16年2月25日になされると共に、同年3月10日付で明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。

2.平成16年3月10日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月10日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「平均粒径が20μm未満である2種以上の粉体から構成される造粒用組成物であって、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイトのいずれか1種又は2種以上の粉体を5〜50重量%含有する造粒用組成物と、湿潤剤として有機バインダーを含まない水を用いて、平均粒径が1mm以下の微小種子を造粒コーティングしたことを特徴とする造粒コーティング種子。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「微小種子」について、「平均粒径が1mm以下の」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、即ち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭57-65110号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(イ)「… 通常知られている方法で花種子のような微小種子 … など発芽しにくい種子をコーティングすると、いずれも発芽率が低下しまた発芽の遅れが生じやすい。」(1頁右下欄18行〜2頁左上欄2行)
(ロ)「本発明を具体的に実施する方法としては、たとえば種子の表面に水溶性バインダーをスプレーしながら、少なくとも鹿沼土が10重量%以上含まれているコーティング用粉体材料でコーティングすることにより達成できる。」(2頁左上欄18行〜同右上欄2行)
(ハ)「… 本発明に用いられるコーティング用粉体材料とは通常使用されているけいそう土、タルク、シリカ、カオリンクレー、炭酸カルシウム、ベントナイト、バーミキュライト、ドロマイトなどがあり、 … これらの平均粒子径は10μ以下のものが好ましい。」(2頁右上欄7〜14行)
(ニ)「実施例1
糖衣用コーティング、パンにペチュニア種子(6g)を入れ転動させながら、あらかじめ十分混合したコーティング用粉体材料・
タルク/ベントナイト/鹿沼土=5/2/3(重量比)
を(250g)に対しCMC( … )の1重量%水溶液(250cc)をスプレー( … )しながら種子をコーティングした。」(2頁右下欄3〜11行)

ここで、上記(イ)及び(ニ)の記載を参照すると、コーティング対象の微小種子として、ペチュニアがあげられているが、本願明細書段落【0013】に記載されているように、ペチュニア(ベチュニア)の種子は平均粒径が1mm以下の微小種子であり、また、(ニ)の記載を参照すると、コーティング用粉体材料は、組成として20重量%のベントナイトの粉体を含有しており、さらに、「CMC(カセローズ)」は無機製品であって、CMCの水溶液は、湿潤剤として働く無機バインダーを含んだ水といえるから、これらの記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、引用例1には、
「平均粒子径が10μ以下である2種以上の粉体から構成されるコーティング用粉末材料であって、ベントナイトの粉体を20重量%含有するコーティング用粉体材料と、湿潤剤として無機バインダーを含んだ水を用いて、平均粒径が1mm以下の微小種子をコーティングしたコーティング種子」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-94604号公報(以下、「引用例2」という。)には、造粒コーティング種子に関して、次の事項が記載されている。
(ホ)「… コーティング層に適度の硬度を付与するために有機バインダーを用いることは、生産効率上あるいは後述する原形保持性の点で好ましくない。」(2頁左上欄20行〜右上欄3行)
(ヘ)「… 本発明が解決しようとする課題は、有機バインダーを用いることなく、コーティング層が適度の硬度を有し、吸水した際にはその破砕が妨げられず、破砕物がブロック状で原形保持性の高い、種子の発芽に悪影響を及ぼさない造粒コーティング種子を提供する処にある。」(2頁右上欄4〜9行)
(ト)「… 本発明の造粒コーティング種子は、複鎖構造型の粘土鉱物および疎水剤を含有する造粒用組成物を、常法により、水と交互に種子に付着コーティングすることにより得られる。」(2頁右上欄16〜19行)
(チ)「このような複鎖構造型の粘土鉱物としては、アタパルジャイト、セピオライト … がある。中でも、堆積物中に産出し、その結晶度の低いアタパルジャイトが、好ましい。」(2頁右下欄15〜19行)

(3)対比
引用発明において、「平均粒子径が10μ以下」ということは、本願補正発明における「平均粒径が20μm未満」に含まれるから、これを踏まえて本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「コーティング用粉体材料」、「コーティング」、「コーティング種子」は、本願補正発明の「造粒用組成物」、「造粒コーティング」、「造粒コーティング種子」に相当する。
そうすると、両者は、
「平均粒径が20μm未満である2種以上の粉体から構成される造粒用組成物であって、ベントナイトの粉体を20重量%含有する造粒用組成物と、湿潤剤を用いて、平均粒径が1mm以下の微小種子を造粒コーティングした造粒コーティング種子」である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点]
湿潤剤として、本願補正発明では、有機バインダーを含まない水を用いているのに対して、引用発明では、無機バインダーを含んだ水を用いているが、有機バインダーを含まないか否かは明確でない点。

(4)判断
ところで、引用例2には、種子の発芽に悪影響を及ぼさずにコーティング層に適度の硬度を付与する目的で、有機バインダーを用いることなく種子に造粒コーティングするべく、造粒用組成物として、複鎖構造型の粘土鉱物である、アタパルジャイト、セピオライトを用いるという技術事項が記載されている。そうすると、引用例2に示されたものと同様の目的で、該技術事項を引用発明に採用して、有機バインダーを含まない水を用いて造粒コーティングした種子とすることは当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
そして、本願補正発明全体の効果も、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。
なお、請求人が審判請求書において主張している「(種子を含まない)副生物の発生を抑える」という点は、本願補正発明(請求項2,3に係る発明も同様)の「造粒コーティング種子」の作用効果とは認められないし、また、請求項4〜6に係る「造粒コーティング種子の製造方法」の発明で上記作用効果を奏するのであれば、上記引用発明及び引用例2記載の技術事項を組み合わせた、造粒コーティング種子の製造方法においても、同様の作用効果を奏するものと解される。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年3月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜6に係る発明は、平成15年8月6日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】平均粒径が20μm未満である2種以上の粉体から構成される造粒用組成物であって、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイトのいずれか1種又は2種以上の粉体を5〜50重量%含有する造粒用組成物と、湿潤剤として有機バインダーを含まない水を用いて、微小種子を造粒コーティングしたことを特徴とする造粒コーティング種子。
【請求項2】〜【請求項6】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から微小種子の限定事項である「平均粒径が1mm以下の」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-18 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-07 
出願番号 特願平7-321542
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01C)
P 1 8・ 121- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
西田 秀彦
発明の名称 造粒コーティング種子およびその製造方法  
代理人 蔦田 正人  
代理人 蔦田 正人  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 蔦田 璋子  

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