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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B
管理番号 1146006
審判番号 不服2004-19751  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-03-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 特願2000-248818「薄板の周縁研磨装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月19日出願公開、特開2002- 79446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成12年8月18日(優先権主張 平成12年6月21日)の特許出願であって、平成16年3月22日付けで拒絶の理由が通知され、平成16年5月24日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成16年8月17日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成16年9月24日に本件審判の請求がされ、平成16年10月19日に明細書を補正対象とする手続補正書(以下、「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理 由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、その請求項1について補正前後の記載は以下のとおりである。
1-1 補正前の請求項1
「周縁に凹部又は凸部のある薄板を回転させ、回転する砥石を該薄板周縁に当接して該凹部又は凸部を研磨する薄板の周縁研磨装置において、
該砥石の回転軸が該薄板周縁の接線方向に傾き角度を変えることができると共に、その傾きの方向をも変えることができる砥石軸傾斜機構を備えていることを特徴とする薄板の周縁研磨装置。」

1-2 補正後の請求項1
「周縁に凹部又は凸部のある半導体ウェハを回転させ、回転する砥石を該半導体ウェハ周縁に当接して該凹部又は凸部を研磨する半導体ウェハの周縁研磨装置において、
該砥石の回転軸が、砥石部を回動支点として該半導体ウェハ周縁の接線方向に傾き角度を変えることができると共に、その傾きの方向をも変えることができる砥石軸傾斜機構を備えていることを特徴とする半導体ウェハの周縁研磨装置。」

2.補正の適否
上記請求項1についての補正は、「薄板」を「半導体ウェハ」と限定し、砥石軸傾斜機構が「砥石部を回動支点として」傾き角度を変えることができると限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2-1 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正がされた明細書及び図面の記載からみて、前記1-2に示す補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの半導体ウェハの周縁研磨装置であると認める。

2-2 刊行物記載の発明及び事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-152259号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開昭62-236666号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下のとおり記載されている。

(1)刊行物1
ア、【特許請求の範囲】の【請求項1】
「回転する半導体ウエハの周縁に回転する砥石を当接して半導体ウエハの周縁を研磨する半導体ウエハの面取方法に於いて、
前記砥石の回転軸を半導体ウエハ外周の接線方向に傾けて半導体ウエハの周縁を研磨することを特徴とする半導体ウエハの面取方法。」
イ、段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウエハの面取方法に係り、特に回転する半導体ウエハの周縁に回転する砥石を当接して半導体ウエハの周縁を研磨する半導体ウエハの面取方法に関する。」
ウ、段落【0007】
「【実施例】以下、添付図面に従って本発明に係る半導体ウエハの面取方法の好ましい実施例を詳説する。図1に示すウエハ20は、図示しない公知の挟持機構又は吸着機構により保持され、例えば1〜2r.p.m で回転されている。一方、砥石22は溝付き砥石として形成され、傾斜面24は研磨面として構成される。この砥石22は、ウエハ20と同方向又は逆方向に例えば2500r.p.m で回転される。」
エ、段落【0008】
「図2に示すように、砥石22の回転軸O-Oは、ウエハ20の回転軸P-Pに対してθだけ傾けられている。即ち、砥石22は、ウエハ20の接線方向にθだけ傾けられ、この状態でウエハの周縁26を面取加工する。・・・」

以上の記載及び図面の記載より、砥石軸は傾斜して研磨していることから「砥石軸支持機構」を有することは明らかである。そうすると、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物1記載の発明」という。)
「半導体ウェハ20を回転させ、回転する砥石22を該半導体ウェハ周縁に当接して研磨する半導体ウェハの周縁研磨装置において、
該砥石の回転軸が、該半導体ウェハ外周の接線方向に傾いた砥石軸支持機構を備えている半導体ウェハの周縁研磨装置。」

(2)刊行物2
ア.第3頁左上欄18行〜右上欄5行
「第1図および第2図に示す押湯等の切除ロボット装置1は、・・・その直交座標型ロボット2の手首部2aに取り付けられたグラインダ3と、・・・から基本的に構成されている。
・・・手首部2aはα、β、γの3つの旋回自由度を有している。」

以上のとおりであるので、刊行物2には、次の事項が記載されているものと認める。
「グラインダ3を取り付けた手首部2aであって、α、β、γの3つの旋回自由度を有する手首部2aを設ける点。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。)。

2-3.対比
本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比するに、後者の「半導体ウェハ外周の接線方向に傾いた砥石軸支持機構」は、その限りで、前者の「砥石部を回動支点として該半導体ウェハ周縁の接線方向に傾き角度を変えることができると共に、その傾きの方向をも変えることができる砥石軸傾斜機構」と共通する。

したがって、本件補正発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体ウェハ20を回転させ、回転する砥石を該半導体ウェハ周縁に当接して研磨する半導体ウェハの周縁研磨装置において、
該砥石の回転軸が、該半導体ウェハ外周の接線方向に傾いた砥石軸支持機構を備えている半導体ウェハの周縁研磨装置。」
<相違点1>
前者では、半導体ウェハが「周縁に凹部又は凸部のある」ものであるのに対して、後者では、半導体ウェハの形状が特定されていない点。
<相違点2>
前者では、砥石軸支持機構が、「砥石部を回動支点として半導体ウェハ周縁の接線方向に傾き角度を変えることができると共に、その傾きの方向をも変えることができる」ものであるのに対して、後者では、単に、半導体ウェハ外周の接線方向に傾いたものである点。

2-4.判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
半導体ウェハとして、オリフラのように周縁に凹部又は凸部のある半導体ウェハは、例を挙げるまでもなく周知である。
したがって、刊行物1記載の発明の研磨対象物である半導体ウェハとして、前記周知の周縁に凹部又は凸部のある半導体ウェハとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、その際に、上記刊行物1の段落【0002】の「半導体ウェハの周縁もクラック防止及び塵埃の付着並びに発生を防ぐために面取加工がなされる。」との記載からも覗えるように、半導体ウェハの周縁全てを研磨する必要のあることは、当然のことである。

<相違点2について>
刊行物2の手首部2aにα、β、γの3つの旋回軸を設けた目的は、研磨時にグラインダを任意の角度でワークに当接させるためであると解される。また、刊行物2の「グラインダ」、「α、β、γの3つの旋回軸」は、「砥石」、「一方向に傾き角度を変えることができると共に、その傾きの方向をも変えることができる」ともいいうるものである。
そして、グラインダの当接する角度はグラインダの回転軸と対応関係にあることから、α、β、γの3つの旋回軸を旋回することによりグラインダの回転軸の傾き角度を変えることができることは明らかである。そうすると、刊行物2の「手首部2a」は「砥石軸傾斜機構」ともいいうるものであるから、刊行物2記載の事項は、「砥石を回転軸を任意の角度とするために、砥石を取り付けた砥石軸傾斜機構であって、一方向に傾き角度を変えることができると共に、その傾きの方向をも変えることができる砥石軸傾斜機構を設ける点。」といいうるものである。
また、砥石軸傾斜機構として、砥石部を回動支点として砥石軸の傾き角度を変えることができる機構は、周知(例えば、特開平10-6199号公報、特開昭56-33264号公報参照。)である。
そうすると、刊行物1記載の発明に砥石の回転軸を任意の傾き角度とするために、刊行物2記載の事項を適用するに際して、同じく任意に砥石の回転軸を任意の傾き角度に設定するための周知の機構である砥石部を回動支点として砥石軸の傾き角度を変えることができる機構を適用し、本願発明の上記相違点2にかかる事項とすることは、当業者が容易に想到し得たというべきものである。

そして、本件補正発明の作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び前記周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものでない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び前記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1〜7に係る発明は、平成16年5月24日付け手続補正により補正された特許請求範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の1-1に示す補正前の請求項1に記載したとおりものと認められる。

2.刊行物記載の発明及び事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物記載の発明及び事項は前記第2の2-2(1)乃至(2)に示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明から前記第2の2の限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 2-4」に記載したとおり、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-17 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-14 
出願番号 特願2000-248818(P2000-248818)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡野 卓也今関 雅子  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 佐々木 正章
菅澤 洋二
発明の名称 薄板の周縁研磨装置  
代理人 篠崎 正海  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  

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