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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1146026
審判番号 不服2005-7864  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-07-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 特願2001-400378「ハーフトーン型位相シフトマスクブランク、及びハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 9日出願公開、特開2003-195479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月28日に出願された特願2001-400378号であって、平成17年3月1日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年2月7日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「透光性基板上に、ハーフトーン材料膜と、このハーフトーン材料膜上に形成された遮光膜とを有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいて、
前記遮光膜が、炭素、酸素、及び窒素のうち少なくとも1つの元素と、クロムとの化合物を含んで構成されると共に、表面がクロムと、酸素及び窒素の少なくとも何れか一方との化合物を含むことにより、反射防止機能を発揮するように構成されているとともに、前記遮光膜が以下の条件を満たしているものであることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
a.膜厚が77ナノメートル以下(「77μm以下」は誤記と認める。)であること。
b.この遮光膜と前記ハーフトーン材料膜とを積層したときの遮光性であってKrFエキシマレーザからなる露光光又はその露光光の波長より短い波長の露光光に対する遮光性が光学濃度3.0以上を確保できるものであること。
c.このハーフトーン型位相シフトマスクブランクの周辺領域を残して前記遮光膜を除去した場合において、この遮光膜の除去前後における膜応力差に起因する平坦度変化量が0.2μmより小さい値となるようなものであること。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平11-249283号公報(以下、引用例1という。)には、次の事項が記載されている。
【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、ハーフトーン型位相シフトマスク及びその素材としてのハーフトーン型位相シフトマスクブランクに係り、特に、半透光部に設けた遮光膜の反射低減を図ったハーフトーン型位相シフトマスク及びハーフトーン型位相シフトマスクブランクに関する。

【0014】
また、遮光膜の金属材料としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)等の金属、あるいは、前記金属の酸化物、窒化物、酸化窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これら金属の酸化物(例えばCrxOyなど)や酸化窒化物(例えばCrxOyNzなど)やフッ化物(例えばCrxFyなど)には表面反射防止の作用がある。尚、遮光膜を設けた遮光領域における露光波長の透過率は0.5%以下、好ましくは0.1%以下とするのがよい。したがって、この遮光膜の組成や膜厚等は、遮光機能をより完全にするものに選定する。なお、反射防止機能を有する遮光膜の膜厚は、300オングストローム以上で、1000オングストローム以下程度が好ましく、遮光性の高い材料を用いて、500〜800オングストローム程度にすることが好ましい。

【0023】
図1において、1は石英ガラスからなる透明基板であり、透明基板1上には窒化モリブデンシリサイド(MoSiN)の半透光膜2が適宜パターンで形成されている。・・・転写領域I内の、透光部6と半透光膜2との境界近傍における光の相殺作用に実質的に寄与しない半透光膜2上に、反射防止機能を有する遮光膜5が形成されている。遮光膜5は、半透光膜2側から順次積層された窒化クロム(CrN)膜3と酸化窒化クロム(CrON)膜4とからなる。・・・
【0025】
ハーフトーン型位相シフトマスクブランクは、図2に示すように、透明基板1上に半透光膜2aと、低反射の遮光膜5aとを形成したものであり、その製造工程を図3に従って説明する。
【0026】
透明基板1は、主表面を鏡面研磨した石英ガラス基板(縦6インチ×横6インチ×厚さ0.25インチ)であり、その平坦度は+1.5μmであった(図3(a))。まず、この透明基板1上にモリブデンシリサイドのターゲットを用い、Ar+N2ガスを用いた反応性スパッタリング法により、窒化モリブデンシリサイドからなる透過率及び位相差を同時に調整する単層の半透光膜2aを製膜した(図3(b))。このときの平坦度は+2.5μmと増加した。次に、光半透光膜2a上に、スパッタリング法により、窒化クロム膜3a、酸化窒化クロム膜4aを積層して、低反射の遮光膜5aを得る。・・・

したがって、上記記載事項及び【図1】、【図3】等を参照すれば、引用例1には、
「透明基板1上に、半透光膜2aと、この半透光膜2a上に形成された遮光膜5aとを有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいて、前記遮光膜5aが、半透光膜2a側から順次、窒化クロム(CrN)膜3aと酸化窒化クロム(CrON)膜4aからなり、反射防止機能を有するとともに、前記遮光膜5aが以下の条件を満たしているものであることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
a.好ましくは膜厚を500〜800オングストローム程度にすること。
b.遮光膜5aと前記半透光膜2aとを積層したときの遮光領域における露光波長の透過率を好ましくは0.1%以下にすること。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2000-181049号公報(以下、引用例2という。)には、次の事項が記載されている。
【0077】
図6に示す例は、マスクパターン形成領域以外の領域である周辺領域において、ハーフトーン材料膜上に金属膜及びその反射防止膜を形成したものである。この金属膜は遮光する機能を受け持つ。すなわち、この周辺領域を露光光が通過できないようにするものである。・・・

また、原査定に引用され、本願の出願前に頒布された特開2001-203160号公報(以下、周知例1という。)には、次の事項が記載されている。
【0003】
図2に示すのは、従来のこの種の露光マスクの製造工程である。例えば2.3mm厚程度の透明基板10、例えば図2(a)に示すような石英基板10を用い、この片面に図2(b)に示す如く遮光材料膜20を形成する。例えば、Crを700〜800Å厚で形成する。このとき、金属膜(ここではCr膜)による収縮により、図2(b)に極端に示すように、石英基板1が反る。この状態で遮光材料膜20がEB描画等によりパターニングされることになる。パターン形成後、反りは解放され、図2(c)のような状態になる。よって、反りが戻った分、形成されたパターン21に位置ずれが起こることになる。・・・

【0004】
上記のような反りの発生に伴うパターンの位置ずれを防止するため、例えば遮光材料膜20としてCr単独ではなく、Cr膜上に酸化クロムCrxOyを100〜300Å厚で形成したものを用いることも行われている。これにより、反りを低減し、かつ反射率を低くして、パターン精度を高めるようにできる。しかしこの手法でも、反りの或る程度の軽減は可能であるが、必要精度以下にまで反りを抑制することは困難である。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「透明基板1」は、本願発明の「透光性基板」に相当する。以下、同様に、「半透光膜2a」は「ハーフトーン材料膜」に、「遮光膜5a」は「遮光膜」に、「遮光膜5aが、半透光膜2a側から順次、窒化クロム(CrN)膜3aと酸化窒化クロム(CrON)膜4aからなり」は、「遮光膜が、炭素、酸素、及び窒素のうち少なくとも1つの元素と、クロムとの化合物を含んで構成されると共に、表面がクロムと、酸素及び窒素の少なくとも何れか一方との化合物を含むことにより」に、「反射防止機能を有する」は「反射防止機能を発揮する」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「a.好ましくは膜厚を500〜800オングストローム程度にすること」と、本願発明の「a.膜厚が77ナノメートル以下であること」とは、「a.膜厚が所定範囲の厚さであること」の点で一致する。
また、引用発明の「b.遮光膜5aと前記半透光膜2aとを積層したときの遮光領域における露光波長の透過率を好ましくは0.1%以下にすること」と、本願発明の「b.この遮光膜と前記ハーフトーン材料膜とを積層したときの遮光性であってKrFエキシマレーザからなる露光光又はその露光光の波長より短い波長の露光光に対する遮光性が光学濃度3.0以上を確保できるものであること」とは、「b.この遮光膜と前記ハーフトーン材料膜とを積層したときの透過遮光特性であって露光光波長の露光光に対する透過遮光特性が所定範囲であること」の点で一致する。

したがって、両者は、「透光性基板上に、ハーフトーン材料膜と、このハーフトーン材料膜上に形成された遮光膜とを有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいて、前期遮光膜が、炭素、酸素、及び窒素のうち少なくとも1つの元素と、クロムとの化合物を含んで構成されると共に、表面がクロムと、酸素及び窒素の少なくとも何れか一方との化合物を含むことにより、反射防止機能を発揮するように構成されているとともに、前記遮光膜が以下の条件を満たしているものである位相シフトマスクブランク。
a.膜厚が所定範囲の厚さであること。
b.この遮光膜と前記ハーフトーン材料膜とを積層したときの透過遮光特性であって露光光波長の露光光に対する透過遮光特性が所定範囲であること。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1;
遮光膜の膜厚が、本願発明では、77ナノメートル以下であるのに対し、引用発明では、好ましくは500〜800オングストローム程度にする点。

相違点2;
透過遮光特性が、本願発明では、遮光膜とハーフトーン材料膜とを積層したときの遮光性であってKrFエキシマレーザからなる露光光又はその露光光の波長より短い波長の露光光に対する遮光性が光学濃度3.0以上を確保できるのに対し、引用発明では、遮光膜5aと半透光膜2aとを積層したときの遮光領域における露光波長の透過率が好ましくは0.1%以下である点。

相違点3;
本願発明では、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの周辺領域を残して前記遮光膜を除去した場合において、この遮光膜の除去前後における膜応力差に起因する平坦度変化量が0.2μmより小さい値となるのに対し、引用発明では、そのような限定がない点。

5.当審の判断
相違点1について;
引用発明の「500〜800オングストローム」は50〜80ナノメートルであるから、本願発明の77ナノメートル以下と相当部分で重複し、77ナノメートルに臨界的意義も認められないことから、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

相違点2について;
光学濃度は、透過率の逆数を10を底とした対数で表す値であるから、引用発明の「透過率0.1%以下」は、本願発明の「光学濃度3.0以上」を満たす。また、露光光としてKrFエキシマレーザや、より短い波長の光を用いることは当業者にとって周知であるから、引用発明において、露光光としてKrFエキシマレーザ或いはそれよりも波長の短い光を用いた上で光学濃度3.0以上を確保すると限定することは、当業者にとって容易である。

相違点3について;
ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの周辺領域を残して遮光膜を除去することは、引用例2に開示されているとおり公知であり、当該構成を採用することは、当業者ならば適宜なし得たことである。その際、周知例1に記載されているように、遮光膜の除去前後における反りの発生は周知の課題であり、反りが小さいことが望ましいことは当業者にとって自明であり、さらに遮光膜の除去前後における膜応力差に起因する平坦度変化量の上限値を0.2μmとした点に臨界的意義も無いので、上記の平坦度変化量を0.2μmより小さい値とすることも、当業者にとって容易である。

そして、本願発明の効果も、引用発明、引用例2に記載された発明及び従来周知の技術事項から予測される範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-29 
結審通知日 2006-09-01 
審決日 2006-09-12 
出願番号 特願2001-400378(P2001-400378)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多田 達也  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 江塚 政弘
辻 徹二
発明の名称 ハーフトーン型位相シフトマスクブランク、及びハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法  
代理人 阿仁屋 節雄  
代理人 油井 透  
代理人 清野 仁  

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