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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1146052
審判番号 不服2003-19372  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-02 
確定日 2006-10-27 
事件の表示 平成 9年特許願第119770号「自動往復式混合機による大量の種子の消毒剤粉衣方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月24日出願公開、特開平10-309107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年5月9日の出願であって、平成15年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明は、平成15年7月18日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

(本願請求項1に係る発明)
「混合機を作動するモーターを設けた架台に横架けした回転ドラムと、前記回転ドラムの胴部の一部に胴部軸方向に穿穴された開口部と、前記回転ドラムに内設され、前記回転ドラムの開口部の一測縁(当審注:「一側縁」の誤記と認める。)から回転ドラムの内部へ延びて突設されて開口部を内方から覆う覆い体と、該覆い体に取付軸により一端を軸着される蓋であって且つ該覆い体と前記回転ドラムの開口部の他方の一測縁(当審注:「一側縁」の誤記と認める。)との間に形成されて投入口と排出口を兼ねるスリット部を覆う蓋と、ドラム回転中は蓋がスリット部を閉じる押力を与えるように蓋に設置されたバネと、前記回転ドラムと前記モーターを接続する伝導装置と、前記モーターに接続したモーターの作動時間を制御する制御装置とを具備したドラム回転型の自動往復式混合機に、前記スリット部(投入口)から、表面が水で濡れた種子を投入するか、又は種子と、種子表面を濡らすに足る量だけの水として、種子の重量あたり2.4〜2.0%(容量)または1.8〜1.6%(容量)の添加量の水とを投入して、覆い体の外向き面とこれに向き合うドラム内壁との間の空間に種子が進入しない向きで回転ドラムを回転させて種子表面を濡らし、次いで粉末状又は液状の消毒剤を投入し、該自動往復式混合機を回動させて種子を前記の消毒剤と混合することにより種子を粉衣するか、又は前記スリット部(投入口)から、乾燥種子を投入後、粉末又は液状の消毒剤の希釈液を、直接投入し、但し該希釈液の投入量は種子表面を濡らすに足る量として、種子の重量あたり2.4〜2.0%(容量)または1.8〜1.6%(容量)の量の水が添加されるように調整して該希釈液を直接投入して、更に混合機を回動することにより種子を塗抹させ、そしてその後に前記の制御装置の作動により回転ドラムを逆回転させ、消毒剤粉衣または塗抹された種子を前記覆い体の外向き面とこれに向き合うドラム内壁との間の空間中に移動させて、移動している種子の運動力で前記の蓋を開き前記のスリット部(排出口)を開放し、ここから消毒剤粉衣または塗抹した種子を排出することを特徴とする、種子が加湿になりすぎない状態で行う大量の種子の消毒剤粉衣方法。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭62-21082号(実開昭63-130130号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「混合機」に関して、第1〜4図とともに、下記の記載がある。
(イ)「11は軸線を横設して架台12に軸着する円筒状の回転ドラムであって、この回転ドラム11は胴部13と両側板部14から構成され、前記胴部13の適所に開口部14を形成する。この開口部14は回転ドラム11の半径方向と略平行に設けられる。この開口部14には蓋15を設け、この蓋15の一端を開口部14の軸線寄りに取付軸16により軸着し、他端を自由端とし、さらに前記取付軸16の側板14より突出した端部に腕部17を直交して固設する。そして前記腕部17に弾機18の一端を接続しこの弾機18の他端を側板14の適所に接続して蓋15が開口部14を閉じるように付勢するか、蓋15が後述する覆い板に添設状態で固定するか或いは閉成するか選択的に弾発するように設ける。
19は前記開口部14を覆うように内側に斜設する覆い体である覆い板であって、開口部14の奥側に一端19Aを延設し他端19Bを胴部13に接続して、回転ドラム11の内部と連通して開口部14の内側を覆う。・・・また前記回転ドラム11の中心部に横設した回転軸22には従動スプロケット23を固設する。24は回転ドラム11に内設した混合羽根である。
・・・基台26上には・・・モータ31により減速装置32を介して駆動スプロケット34を設け、この駆動スプロケット34と前記従動スプロケット23にチェーン35を懸装する。尚、36は前記モータ31を制御する制御装置である。
次に前記構成につきその作用を説明する。
まず、蓋15を持ち上げ・・・肥料等の被混合物Aを開口部14より投入する。次に蓋15を閉じ・・・回転ドラム11を反時計方向に回転する。・・・被混合物Aは開口部14より奥側に常時位置して回転ドラム11の回転に伴って混合できる。この際被混合物Aは開口部14の奥側に位置するため開口部から排出しない。また開口部14が上位より下位に回転する場合、被混合物Aは覆い板19上に載置され、そして開口部14より排出されることなく混合できる。
このように混合した後、手動或いは自動的によりモータ31を逆転させて回転ドラム11を時計方向に回転すると、・・・被混合物Aは回転ドラム11の回転に伴い開口部14側へ送り出され、そして弾機18による蓋15の付勢力に抗して蓋15を開き混合された被混合物Aは傾斜板30上に落ちる。」(4頁1行〜7頁10行)
(ロ)特に第1,2図をみると、覆い体19と回転ドラム11の開口部14の覆い体19が設けられていない他方の一側縁との間に形成されて投入口と排出口を兼ねる開口部14の蓋15で覆われる部分は、符号は付いておらず、部分名称もないが、スリット部といえる。
(ハ)第3図(A),(B)をみると、回転ドラム11を反時計方向に回転する混合時、覆い体19の外向き面とこれに向き合うドラム11内壁との間の空間に被混合物Aが進入しない向きで回転ドラム11を回転させており、また、回転ドラム11を時計方向に回転する排出時、混合後の被混合物Aを覆い体19の外向き面とこれに向き合うドラム11内壁との間の空間中に移動させていることが明らかである。

これらの記載事項および図面を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。
(引用例1記載の発明)
「混合機を作動するモータを設けた架台に軸線を横設した回転ドラムと、前記回転ドラムの胴部の一部に胴部軸方向に穿穴された開口部と、前記回転ドラムに内設され、前記回転ドラムの開口部の一側縁から回転ドラムの内部へ延びて突設されて開口部を内方から覆う覆い体と、該覆い体に取付軸により一端を軸着される蓋であって且つ該覆い体と前記回転ドラムの開口部の他方の一側縁との間に形成されて投入口と排出口を兼ねるスリット部を覆う蓋と、ドラム回転中は蓋がスリット部を閉じる押力を与えるように蓋に設置された弾機と、前記回転ドラムの中心部に横設した回転軸の従動スプロケットと前記モータ側の駆動スプロケット間に懸装したチェーンと、前記モータに接続したモータの作動時間を制御する制御装置とを具備した混合機に、前記スリット部(投入口)から、被混合物を投入して、覆い体の外向き面とこれに向き合うドラム内壁との間の空間に被混合物が進入しない向きで回転ドラムを回転させて混合させ、そしてその後に前記の制御装置の作動により回転ドラムを逆回転させ、混合後の被混合物を前記覆い体の外向き面とこれに向き合うドラム内壁との間の空間中に移動させて、移動している混合後の被混合物の運動力で前記の蓋を開き前記のスリット部(排出口)を開放し、ここから混合後の被混合物を排出する、被混合物の混合方法」

同、特開平2-60510号公報(以下、「引用例2」という。)には、種子被覆方法に関して、下記の記載がある。
(イ)「公知の・・・殺菌剤、防カビ剤・・・などの各種添加剤を配合することも任意であり」(3頁左下欄15〜17行)
(ロ)「本発明は、また、上記種子被覆用組成物を種子の表面に被覆する方法を提供するものである。
上記種子被覆用組成物を種子の表面に付着させるには、例えば回転式のコーティング装置に種子を仕込んで回転させながら、水(結合剤を配合する場合は、その水性液)を加えて種子を湿らせ、次いで、粉末状にした被覆材を散布し、水(または結合剤の水性液)と被覆材とを交互に、あるいは同時に添加しながら種子の周囲に付着させる方法が用いられる。」(同頁右下欄10〜19行)
(ハ)「〔実施例1〕
遠心流動コーティング装置・・・に人参の種子200gを仕込み、・・・の条件で、625mlの水を、・・・
・・・
〔実施例3〕
遠心流動コーティング装置・・・にトマトの種子200gを仕込み、・・・の条件で、110mlの水を、・・・」(4頁)

3.対比・判断
本願請求項1に係る発明と引用例1記載の発明とを対比するに際し、本願の特許請求の範囲の請求項1をみると、請求項1には、「表面が水で濡れた種子を投入するか、又は種子と、種子表面をを濡らすに足る量だけの水として、種子の重量あたり2.4〜2.0%(容量)または1.8〜1.6%(容量)の添加量の水とを投入して」、「粉末状又は液状の消毒剤を投入し」、「該自動往復式混合機を回動させて種子を前記の消毒剤と混合することにより種子を粉衣するか、又は前記スリット部(投入口)から、乾燥種子を投入後、粉末又は液状の消毒剤の希釈液を、直接投入し、但し該希釈液の投入量は種子表面を濡らすに足る量として、種子の重量あたり2.4〜2.0%(容量)または1.8〜1.6%(容量)の量の水が添加されるように調整して該希釈液を直接投入して、更に混合機を回動することにより種子を塗抹させ」、「消毒剤粉衣または塗抹」(2カ所)等の記載があって、いくつかの方法につき択一的に記載された部分があるから、その内の一つの方法を選択したものとして、下記の発明が記載されているといえる。

「混合機を作動するモーターを設けた架台に横架けした回転ドラムと、前記回転ドラムの胴部の一部に胴部軸方向に穿穴された開口部と、前記回転ドラムに内設され、前記回転ドラムの開口部の一側縁から回転ドラムの内部へ延びて突設されて開口部を内方から覆う覆い体と、該覆い体に取付軸により一端を軸着される蓋であって且つ該覆い体と前記回転ドラムの開口部の他方の一側縁との間に形成されて投入口と排出口を兼ねるスリット部を覆う蓋と、ドラム回転中は蓋がスリット部を閉じる押力を与えるように蓋に設置されたバネと、前記回転ドラムと前記モーターを接続する伝導装置と、前記モーターに接続したモーターの作動時間を制御する制御装置とを具備したドラム回転型の自動往復式混合機に、前記スリット部(投入口)から、種子と、種子表面を濡らすに足る量だけの水として、種子の重量あたり2.4〜2.0%(容量)または1.8〜1.6%(容量)の添加量の水とを投入して、覆い体の外向き面とこれに向き合うドラム内壁との間の空間に種子が進入しない向きで回転ドラムを回転させて種子表面を濡らし、次いで粉末状の消毒剤を投入し、該自動往復式混合機を回動させて種子を前記の消毒剤と混合することにより種子を粉衣させ、そしてその後に前記の制御装置の作動により回転ドラムを逆回転させ、消毒剤粉衣された種子を前記覆い体の外向き面とこれに向き合うドラム内壁との間の空間中に移動させて、移動している種子の運動力で前記の蓋を開き前記のスリット部(排出口)を開放し、ここから消毒剤粉衣した種子を排出することを特徴とする、種子が加湿になりすぎない状態で行う大量の種子の消毒剤粉衣方法」(以下、一つの方法を選択した際の該発明を「本願発明」という。)

上記本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「モータ」、「軸線を横設した」、「弾機」、「回転ドラムの中心部に横設した回転軸の従動スプロケットとモータ側の駆動スプロケット間に懸装したチェーン」、「混合機」は、それぞれ、本願発明の「モーター」、「横架けした」、「バネ」、「回転ドラムとモーターを接続する伝導装置」、「ドラム回転型の自動往復式混合機」に相当し、本願発明の「種子と水と粉末状の消毒剤」は、回転ドラムに投入されて混合されるものであるから、引用例1記載の発明の「(投入される)被混合物」に対応し、本願発明の「消毒剤粉衣した種子」は、回転ドラムを回転させ混合後排出されるものであるから、引用例1記載の発明の「(排出される)混合後の被混合物」に対応し、となると、本願発明の「種子の消毒剤粉衣方法」は、引用例1記載の発明の「被混合物の混合方法」に対応することになる。

してみると、両者は、
「混合機を作動するモーターを設けた架台に横架けした回転ドラムと、前記回転ドラムの胴部の一部に胴部軸方向に穿穴された開口部と、前記回転ドラムに内設され、前記回転ドラムの開口部の一側縁から回転ドラムの内部へ延びて突設されて開口部を内方から覆う覆い体と、該覆い体に取付軸により一端を軸着される蓋であって且つ該覆い体と前記回転ドラムの開口部の他方の一側縁との間に形成されて投入口と排出口を兼ねるスリット部を覆う蓋と、ドラム回転中は蓋がスリット部を閉じる押力を与えるように蓋に設置されたバネと、前記回転ドラムと前記モーターを接続する伝導装置と、前記モーターに接続したモーターの作動時間を制御する制御装置とを具備したドラム回転型の自動往復式混合機に、前記スリット部(投入口)から、被混合物を投入し、該自動往復式混合機を回動させて混合し、そしてその後に前記の制御装置の作動により回転ドラムを逆回転させ、混合後の被混合物を前記覆い体の外向き面とこれに向き合うドラム内壁との間の空間中に移動させて、移動している混合後の被混合物の運動力で前記の蓋を開き前記のスリット部(排出口)を開放し、ここから混合後の被混合物を排出する、被混合物の混合方法」
の点で一致し、下記の点で相違している。

相違点:本願発明は、回転ドラムに投入されるのが、種子と、種子表面を濡らすに足る量だけの水として、種子の重量あたり2.4〜2.0%(容量)または1.8〜1.6%(容量)の添加量の水と、種子表面を濡らした後投入される粉末状の消毒剤であって、回転させながら種子表面を濡らし、次いで粉末状の消毒剤を投入して種子を前記の消毒剤と混合することにより種子を粉衣させ、消毒剤粉衣した種子を排出する、種子が加湿になりすぎない状態で行う大量の種子の消毒剤粉衣方法であるのに対し、引用例1記載の発明では、被混合物の混合方法の例として、種子の消毒剤粉衣方法は例示されていない点。

そこで、上記相違点につき、以下検討する。

本願の明細書において、従来の技術の周知例として例示されている、特開平2-279609号公報等にも記載されているように、種子の消毒剤の粉衣の方法として混合方法を用いることは周知技術にすぎず、引用例1記載の発明のような混合機を用いて、上記周知の方法による種子の消毒剤の粉衣を大量に行なわれることは、当業者が容易に想到できることといえる。また、種子の表面に被覆用組成物を付着させるのに、回転式のコーティング装置(本願発明の「ドラム回転型の自動往復式混合機」に相当。)に種子を仕込んで回転させながら、水を加えて種子を湿らせ、次いで、粉末状にした被覆材を散布して種子に付着させることも、例えば、上記引用例2に記載されているように、周知技術にすぎない。なお、引用例2に記載されている実施例の中で、加える水の量の少ない例としては、換算すると、種子の重量(100kg)あたり0.55%、3.1%(0.55l、3.1l)(容量)のみが記載されているが、種子が加湿になりすぎないよう配慮して、水の量を種子表面を濡らすに足る最適の量とすることも、当業者が必要に応じて採用し得る設計的事項にすぎない。
そして、本願発明の奏する効果も、引用例1記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものということができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明および周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-29 
結審通知日 2006-08-30 
審決日 2006-09-12 
出願番号 特願平9-119770
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 西田 秀彦
森次 顕
発明の名称 自動往復式混合機による大量の種子の消毒剤粉衣方法  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 森田 哲二  

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