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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B61D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B61D |
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管理番号 | 1146217 |
審判番号 | 不服2004-2097 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-06-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-04 |
確定日 | 2006-11-02 |
事件の表示 | 特願2000-361446「鉄道車両の車体構造」拒絶査定不服審判事件〔平成14年6月4日出願公開、特開2002-160631〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成12年11月28日の出願であって、平成15年12月19日付け(発送日、平成16年1月5日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月2日付けで手続補正がなされたものである。 【2】平成16年3月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年3月2日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成16年3月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 構体と、前記構体の車室側に配設される内面側部材とを備えた鉄道車両の車体構造であって、 前記内面側部材は、前記構体の車室内側表面に断熱性を有した弾性支持材を面接着して取付け且つ前記弾性支持材の車室内側表面に前記内面側部材を面接着して取付けることにより前記弾性支持材を介して前記構体に防振支持されると共に、前記内面側部材の端部において前記構体に機械的に支持されていることを特徴とする鉄道車両の車体構造。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要と認める事項の一部である「断熱性を有した弾性支持材」の「構体の車室内側表面」への接着による取付けが「面」接着であるとの限定を付加し、同じく「内面側部材」の「弾性支持材の車室内側表面」への接着による取付けが「面」接着であるとの限定を付加し、同じく「内面側部材」が「弾性支持材を介して構体に防振支持される」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下で検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物とその記載事項は、次のとおりである。 刊行物1:特開平7-172306号公報 刊行物2:特開平8-85453号公報 (1)刊行物1(特開平7-172306号公報)の記載事項 刊行物1には、「鉄道車両およびその内部艤装方法」に関して、図1、3〜6とともに次の事項が記載されている。 (ア)「すなわち、図1に示すように、屋根パネル11、軒パネル12、幕パネル13、吹寄パネル14および腰パネル15を、各部位の曲率に合わせて構成し、これらをそれぞれの型材を突合せ溶接することにより構体を構成する。」(第4頁第5欄第14〜18行) (イ)「また、該電線ダクト31aの縁部は、天井内装板51を引っ掛けることができるように構成されている。」(第4頁第5欄第48〜49行) (ウ)「断熱材52は前記天井中央支持具41と後述する天井側支持具32との間に、車体長手方向に連続して配置され、接着剤によって取付けられる。」(第4頁第6欄第4〜6行) (エ)「該天井側支持具32には、点中中央側へ伸びた固定フランジ32aが形成されており、前記天井内装板51の端部をねじ止めにより支持する構造となっている。」(第4頁第6欄第13〜15行) (オ)「一端を前記掛合フランジ32bに掛合して設置される荷棚55は、内部後方壁面を構成する内装材、底板および前面の開放蓋からなり、……前記底板と前記掛合部分とはフレーム部材(図示省略)で連結された構造となっている。該荷棚55の下端部は後述する軒パネル12と幕パネル13との接合部型材に固定されている。」(第4頁第6欄第22〜29行) (カ)「なお、この荷棚55と軒パネル12との間には、断熱材52が設置されており、この断熱材52も車体長手方向に連続して配置され軒パネル12に接着されている。」(第4頁第6欄第32〜35行) (キ)「前記荷棚55の下部、窓周囲および窓下辺が床までの部分を覆う側内装板56は、上部裏面側に掛合部が形成されており、前記荷棚55の下辺部に設置した鉤部に引っ掛ける構造となっている。また、前記側内装板56の下端は、後述するフロアパネルの端部にねじ止めによって固定される構造となっている。」(第4頁第6欄第40〜45行) (ク)「該側内装材と幕パネル13、吹寄パネル14および腰パネル15との間には、断熱材52が設置されている。吹寄部分を除く幕部および腰部において、前記断熱材52は前記天井部分と同様に車体長手方向に連続して配置され、各パネルに接着されている。」(第4頁第6欄第48行〜第5頁第7欄第2行) (ケ)「前記断熱材52は、それぞれの設置位置の各パネルに接着して取付けられているとともに、天井内装板51、荷棚55および側内装板56によって各パネル方向へ押え付けられている。したがって、前記天井内装板51、荷棚55および側内装板56は、断熱材52からの半力を受けることにより、各部材自体の振動の発生が抑えられている。」(第5頁第7欄第9〜15行) (コ)「まず、構体は前記屋根パネル11、軒パネル12、幕パネル13、吹寄パネル14および腰パネル15を順次配置して、例えば屋根部分および側部分のように分割してブロック構成し、これらのブロックを床パネル16を組み込んだ台枠に接合するとともに妻ブロックを接合して構成する。……その後、車体長手方向に連続した断熱材52を構体内面に取付ける。…… ……次に、前記電線ハーネスから必要な配線を引き出して敷線が完了した時点で、天井内装板51の一端を前記天井中央支持具31に引っ掛け、他端を天井側支持具32に固定する。さらに、該天井側支持具32に荷棚55の一端を引っ掛け、かつ、他端をパネル接合部の型材に固定する。続いて、該荷棚55の下部に側内装板56の上端を引っ掛け、下端を予め前記床受け金61に固定しておいたフロアパネル16の端部に固定する。」(第5頁第7欄第27〜49行) (2)刊行物2(特開平8-85453号公報)の記載事項 刊行物2には、「鉄道車両の内装構造」に関して、図1とともに次の事項が記載されている。 (サ)「本実施例では、まず内装パネル2をプレス加工により成形、内装パネル2の凹凸形状にに合わせて断熱材3を成形した後、内装パネル2の車外側に断熱材3を接着により貼付る。」(第2頁第2欄第47〜50行) 3.発明の対比 (1)本願補正発明の構成事項と刊行物1の上記記載事項とを対比すると、両者の対応関係は以下のとおりである。 先ず、刊行物1記載の「屋根パネル11、軒パネル12、幕パネル13、吹寄パネル14および腰パネル15より構成される構体」(上記記載事項(ア)参照)は、本願補正発明の「構体」に相当する。また同様に、上記構体の車室側に配設される「天井内装板51、荷棚55および側内装板56」(以下、「各内装板」という。)は、上記構体の車室側に配設される「内面側部材」に相当する。 次に、上記記載事項(ケ)によれば、刊行物1記載の「断熱材52」は弾性を有しているものと認められるから、当該「断熱材52」は、本願補正発明の「断熱性を有した弾性支持材」に相当する。また、上記記載事項(ウ)(カ)(ク)〜(コ)には、上記「断熱材52」を構体内面すなわち構体の車室側表面に接着して取付ける旨が記載されており、その場合の接着は特に限定がない限り面接着であるのが一般的であるので、刊行物1の上記各記載事項は、本願補正発明の「構体の車室内側表面に断熱性を有した弾性支持材を面接着して取付け」ることに相当する事項といえる。更に、上記記載事項(ケ)及び図3〜6の記載から、刊行物1には、断熱材52の車室内側表面に上記各内装板を取付けることが記載されていることは明らかであり、また、上記各内装板は、上記断熱材52を押し付けるように取付けられることにより、上記断熱材52を介して構体に防振支持されるものと認められるので、刊行物1記載の各内装板と本願補正発明の内面側部材とは取付けの態様は異なるものの、刊行物1の上記各記載事項は、本願補正発明の「内面部材は」、「弾性支持材の車室内側表面に内面側部材を取付けることにより弾性支持材を介して構体に防振支持される」ことに相当する事項といえる。更に、上記記載事項(イ)(エ)(オ)(キ)(コ)には、各内装板を、各内装板の端部において引っ掛け又はねじ止めによって固定する旨が記載されており、刊行物1の当該記載事項は、本願補正発明の「内面部材は」、「内面側部材の端部において構体に機械的に支持されている」ことに相当する事項である。 (2)以上の対比から、本願補正発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定することができる。 《一致点》 「構体と、前記構体の車室側に配設される内面側部材とを備えた鉄道車両の車体構造であって、 前記内面側部材は、前記構体の車室内側表面に断熱性を有した弾性支持材を面接着して取付け且つ前記弾性支持材の車室内側表面に前記内面側部材を取付けることにより前記弾性支持材を介して前記構体に防振支持されると共に、前記内面側部材の端部において前記構体に機械的に支持されている鉄道車両の車体構造」である点。 《相違点》 内面側部材の取付構造に関して、本願補正発明では、内面側部材は、弾性支持材の車室内側表面に内面側部材を「面接着して」取付けることにより弾性支持材を介して構体に防振支持されるのに対して、刊行物1記載の発明では、各内装板(内面側部材)は、断熱材52(弾性支持材)の車室内側表面に各内装板(内面側部材)を「押し付けて」取付けることにより断熱材52(弾性支持材)を介して構体に防振支持される点。 4.当審の判断 そこで、上記相違点について以下で検討する。 上記のとおり、刊行物2には、「内装パネル2の車外側に断熱材3を接着により貼付る」こと、すなわち、「断熱材3の車室内側表面に内装パネル2を接着して取付ける」発明が記載されている。また、車両一般においては、構体の一種であるルーフパネルの車室内側表面に弾性支持部材の一種である制振層を接着して取付け且つ上記制振層の車室内側表面に内面側部材の一種であるルーフライニング基材を接着して取付けることが周知の技術であり(例えば、特開平1-282054号公報の第2頁右下欄第6〜14行、第3頁左上欄第14〜15行、第3頁右上欄第1〜4行、第1図の記載、特許第3011940号公報の第2頁第4欄第8〜31行、第3図、第4図の記載、参照)、当該周知の技術によれば、ルーフライニング基材(内面側部材)が制振層(弾性支持材)を介してルーフパネル(構体)に防振支持されることは明らかである そして、刊行物1の記載事項(ケ)に記載されているように、刊行物1記載の発明も各内装板(内面側部材)の振動の発生を抑えるという課題を考慮したものであり、また、刊行物1、2に記載の発明及び上記周知の技術はいずれも車両の内面側部材の取付構造に関する技術であることから、刊行物1記載の発明の上記課題を解決するための具体的手段として、刊行物2記載の発明及び上記周知の技術を採用して、断熱材52(弾性支持材)の車室内側表面に各内装板(内面側部材)を面接着により取付けることにより各内装板(内面側部材)が断熱材52(弾性支持材)を介して構体に防振支持されるようにすることは、当業者であれば容易になし得た事項である。 よって、上記相違点でいう本願補正発明の構成事項は、刊行物1記載の発明に上記刊行物2記載の発明及び上記周知の技術を適用することによって、当業者であれば容易に想到することができた事項である。 また、本願補正発明が奏する作用効果も、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の技術から予測される範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【3】本願発明について 1.本願発明 平成16年3月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成15年6月18日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 構体と、前記構体の車室側に配設される内面側部材とを備えた鉄道車両の車体構造であって、 前記構体の車室内側表面に断熱性を有した弾性支持材を接着して取付け、 前記弾性支持材の車室内側表面に前記内面側部材を接着して取付けており、 前記内面側部材は、前記内面側部材の端部において前記構体に機械的に支持されていることを特徴とする鉄道車両の車体構造。」 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とその記載事項は、上記【2】2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明から、「断熱性を有した弾性支持材」の「構体の車室内側表面」への接着による取付けが「面」接着であるとの限定を省き、同じく「内面側部材」の「弾性支持材の車室内側表面」への接着による取付けが「面」接着であるとの限定を省き、同じく「内面側部材」が「弾性支持材を介して構体に防振支持される」との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記【2】4.に記載したとおり、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-31 |
結審通知日 | 2006-09-05 |
審決日 | 2006-09-19 |
出願番号 | 特願2000-361446(P2000-361446) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B61D)
P 1 8・ 121- Z (B61D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山内 康明 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
柴沼 雅樹 平瀬 知明 |
発明の名称 | 鉄道車両の車体構造 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 寺崎 史朗 |
代理人 | 寺崎 史朗 |