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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1146228
審判番号 不服2004-7003  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-08 
確定日 2006-11-02 
事件の表示 平成 7年特許願第138994号「陰極線管」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-329863〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成7年6月6日の出願であって、平成16年2月27日付け(発送日同年3月9日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年4月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


2.本願発明について
本願の請求項1〜2に係る発明は、当初明細書の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 カソード、このカソードを加熱するヒータおよび複数個の電極からなり、外囲器のネック内に配設された電子銃と、上記電子銃のカソード、ヒータおよび複数個の電極から選択された所定の電極にそれぞれ所定の電圧を供給するための複数本のステムピンが設けられ、上記ネック端部を封止するステムと、上記電子銃に沿って上記ネック内に配設され、一端部に高電圧供給端子部、他端部にアース接続端子部、中間部に少なくとも1個の中間端子部が設けられ、上記高電圧供給端子部に供給される高電圧を分割して上記中間端子部から上記ステムピンを介して電圧が供給される電極以外の選択された少なくとも1個の電極に所定の電圧を供給する抵抗体とを備える陰極線管において、
上記抵抗体のアース接続端子部は上記ヒータのアース端子側に接続されていることを特徴とする陰極線管。」


3.引用例に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前である昭和62年6月10日に頒布された刊行物である特開昭62-128416号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、

(1-1)「第2図は2個の中間電極により、拡張バイポテンシャルレンズが形成されているカラー受像管用電子銃の断面図である。
第2図において、電子銃構体(1)は電子銃(2)と抵抗体(3)から成り、細いガラス円筒のネック(4)に封入されていて、ネック(4)下部にはステムピン(5)が設けられている。このステムピン(5)は電子銃構体(1)を固定すると共に外部より所望の電位を供給できる様になっている。電子銃(2)は3本の電子ビームを発生させるための3個のヒータ(7)を内装する一列配設された陰極(8)と、この3個の陰極(8)に対向する位置にそれぞれ所定の電子ビーム通過孔が穿設され一体化構造(ユニタイズ構造)を有する第1グリッドG1(11)、第2グリッドG2(12)、第3グリッドG3(13)、第1中間グリッドGM1(15)、第2中間グリッドGM2(16)、第4グリッドG4(14)から成りそれぞれこの順で絶縁体である2本の電極支持体(20)に植設固定支持されている。前記G4(14)にはコンバーゼンス電極(21)が取付けられていて、このコンバーゼンス電極(21)の側壁に取付けられているバルブスペーサ(22)およびネック(4)の上部内面に塗布されている内面導電膜(23)を通じて陽極端子(図示せず)に印加される約25KVの陽極高電圧EbがG4(14)に印加される。
抵抗体(3)は複数個の電極取出部(30)を有しており、コネクタ(24)により一端をコンバーゼンス電極(21)に、他端をG1(11)に接続固定されていると共に中間部はそれぞれG3(13)、GM1(15)、GM2(16)に接続されている。ヒータ(7)、陰極(8)、G1(11)、G2(12)はそれぞれステムピン(5)に接続されていて外部より所望の電位が供給される。カラー受像管動作時にはG1(11)は接地電位又は低電位となっているので第3図に示す様な等価電気回路を構成し、G1、G2、GM1、GM2の各電極電位は陽極高圧Ebの抵抗体(3)による分割電圧として供給される。」(3頁左上欄4行〜右上欄18行)

が記載されている。

したがって、これらの記載事項によると、引用例には、第2〜4図に示された従来の電子銃構体に関して、つぎのとおりの発明、

「陰極(8)、この陰極(8)を加熱するヒータ(7)および第1グリッドG1(11)、第2グリッドG2(12)、第3グリッドG3(13)、第1中間グリッドGM1(15)、第2中間グリッドGM2(16)、第4グリッドG4(14)からなり、外囲器のネック(4)内に配設された電子銃(2)と、上記電子銃(2)の陰極(8)、ヒータ(7)および第1グリッドG1(11)、第2グリッドG2(12)にそれぞれ所望の電圧を供給するための複数本のステムピン(5)が設けられ、上記ネック(4)端部を封止するステムと、上記電子銃(2)に沿って上記ネック(4)内に配設され、一端部に陽極高圧Ebが供給される電極取出部(30)、他端部に接地電位となる電極取出部(30)、中間部に2個の電極取出部(30)が設けられ、上記陽極高圧Ebが供給される電極取出部(30)に供給される陽極高圧Ebを分割して上記2個の電極取出部(30)から上記ステムピン(5)を介して電圧が供給される第1グリッドG1(11)、第2グリッドG2(12)以外の第1中間グリッドGM1(15)、第2中間グリッドGM2(16)に分割電圧を供給する抵抗体(3)とを備えるカラー受像管において、
上記抵抗体(3)の接地電位となる電極取出部(30)は上記第1グリッドG1(11)の接地電位に接続されていることを特徴とするカラー受像管。」(以下、これを「引用例に記載の発明」という。)

が記載されているものと認める。

4.対比・判断
本願発明1と引用例に記載の発明とを対比する。
引用例に記載の発明における「陰極(8)」、「ヒータ(7)」、「第1グリッドG1(11)、第2グリッドG2(12)、第3グリッドG3(13)、第1中間グリッドGM1(15)、第2中間グリッドGM2(16)、第4グリッドG4(14)」、「ネック(4)」、「電子銃(2)」、「第1グリッドG1(11)、第2グリッドG2(12)」、「ステムピン(5)」、「所望の電圧」、「陽極高圧Ebが供給される電極取出部(30)」、「接地電位となる電極取出部(30)」、「中間部に2個の電極取出部(30)」、「陽極高圧Eb」、「ステムピン(5)を介して電圧が供給される第1グリッドG1(11)、第2グリッドG2(12)」、「第1中間グリッドGM1(15)、第2中間グリッドGM2(16)」、「分割電圧」、「抵抗体(3)」、「カラー受像管」は、それぞれ、
本願発明1における「カソード」、「ヒータ」、「複数個の電極」、「ネック」、「電子銃」、「複数個の電極から選択された所定の電極」、「ステムピン」、「所定の電圧」、「高電圧供給端子部」、「アース接続端子部」、「中間部に少なくとも1個の中間端子部」、「高電圧」、「ステムピンを介して電圧が供給される電極」、「選択された少なくとも1個の電極」、「所定の電圧」、「抵抗体」、「陰極線管」に相当する。

したがって、両者は、

【一致点】
「カソード、このカソードを加熱するヒータおよび複数個の電極からなり、外囲器のネック内に配設された電子銃と、上記電子銃のカソード、ヒータおよび複数個の電極から選択された所定の電極にそれぞれ所定の電圧を供給するための複数本のステムピンが設けられ、上記ネック端部を封止するステムと、上記電子銃に沿って上記ネック内に配設され、一端部に高電圧供給端子部、他端部にアース接続端子部、中間部に少なくとも1個の中間端子部が設けられ、上記高電圧供給端子部に供給される高電圧を分割して上記中間端子部から上記ステムピンを介して電圧が供給される電極以外の選択された少なくとも1個の電極に所定の電圧を供給する抵抗体とを備える陰極線管において、
上記抵抗体のアース接続端子部はアース電位に接続されていることを特徴とする陰極線管。」
で一致し、

【相違点】
「本願発明1では、抵抗体のアース接続端子部が接続されるアース電位が、ヒータのアース端子側であるのに対して、
引用例に記載の発明では、抵抗体(3)の接地電位となる電極取出部(30)が接続される接地電位が、第1グリッドG1(11)である点」
で相違する。

そこで、上記【相違点】について検討する。
上記(1-1)には、「G1(11)・・・は・・・ステムピン(5)に接続されていて外部より所望の電位が供給される。」、「カラー受像管動作時にはG1(11)は接地電位又は低電位となっている」と記載されているから、
カラー受像管動作時に、ステムピン(5)に外部より所望の電位として接地電位が供給されると、ステムピン(5)に接続された第1グリッドG1(11)は接地電位となり、このような第1グリッドG1(11)に接続された抵抗体(3)の電極取出部(30)が接地電位となることは明らかであり、抵抗体(3)のこの電極取出部(30)を接地電位とするために新たなステムピン(5)を設ける必要はない。
そして、通常、ヒータ用ステムピンの片方には接地電位が供給されることが技術常識であるから(例えば、実願平4-30236号(実開平5-91067)のCD-ROM参照。)、かかる状況は、抵抗体(3)の接地電位となる電極取出部(30)が接続される接地電位を、ステムピン(5)を介して接地電位が供給されるヒータ(7)のアース端子側とした場合でも、全く同じである。
したがって、抵抗体(3)の接地電位となる電極取出部(30)が接続される接地電位を、第1グリッドG1(11)とするか、ヒータ(7)のアース端子側とするかは、単なる選択事項にすぎず、抵抗体(3)の接地電位となる電極取出部(30)が接続される接地電位を、ヒータ(7)のアース端子側とするように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明1の効果は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が予測可能な範囲内のものである。

したがって、本願発明1は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明1が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2に係る発明について検討するもでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-30 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-19 
出願番号 特願平7-138994
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 尚英向後 晋一  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山川 雅也
小川 浩史
発明の名称 陰極線管  
代理人 大胡 典夫  

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