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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D |
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管理番号 | 1146246 |
審判番号 | 不服2002-20908 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-06-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-28 |
確定日 | 2006-10-23 |
事件の表示 | 平成5年特許願第517069号「自動車用パワーステアリング装置の回転弁」拒絶査定不服審判事件〔平成5年10月14日国際公開、WO93/19971、平成7年6月15日国内公表、特表平7-505346〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1993年3月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1992年4月1日)を国際出願日とする出願であって、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成13年9月6日付け及び平成14年11月27日付けの各手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 弁入力部分(23)に結合された第1の弁要素(4)と、弁出力部分(25)に結合された第2の弁要素(7)とを有し、 両方の弁要素(4、7)が、弁ハウジング(2)の中に相対移動可能に同軸的に配置されるとともに、最大でエンドプレー継手(24)の回転行程だけ相対回転可能であり、 半径方向外側にある弁要素(4)が内側に位置する制御縦溝(20)を有し、半径方向内側にある弁要素(7)が外側に位置する制御縦溝(21)を有し、これらの制御縦溝(20,21)が少なくとも部分的に軸方向長さを制限されており、弁要素(4)が、その外周面に制御縦溝(20,21)と連通しうる環状溝(8、10、12)を有し、この環状溝がシールリング(16)により密封されており、制御縦溝(20,21)がサーボモータ(15)の2つの作動室(13、14)に出入りする圧力媒体の制御のために協働する、自動車用パワーステアリング装置の回転弁において、 半径方向外側にある回転スライダ(4)としての第1の弁要素が軸方向穴(6)を有し、半径方向内側にある制御ブッシュ(7)としての第2の弁要素が軸方向穴(6)内に通されており、制御ブッシュ(7)は弁出力部分(25)と別体に形成されるとともにピン(31)を介して弁出力部分(25)に相対回転不能に連結され、 回転スライダ(4)の軸方向両側がそれぞれ転がり軸受(17、18)を介して弁ハウジング(2)に支持されていることを特徴とする、自動車用パワーステアリング装置の回転弁。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用例とその記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された (1)特開平3-79473号公報(以下、「第1引用例」という。) (2)実願昭63-130455号(実開平2-51970号) のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。) (3)特開平4-31177号公報(以下、「第3引用例」という。) (4)実願平1-116745号(実開平3-55376号) のマイクロフィルム(以下、「第4引用例」という。) には、次の発明及び技術事項が記載されている。 (1)第1引用例(特開平3-79473号公報)の記載事項 第1引用例には、「動力舵取装置」に関して、図面第1〜3図とともに次の事項が記載されている。 (イ)「本発明に係る動力舵取装置は、舵輪に連なる入力軸と舵取機構に連なる出力軸とをトーションバーを介して同軸上に連結し、この連結部に設けた回転式の油圧制御弁の動作により操舵補助用の油圧アクチュエータへの圧油の給排を制御する動力舵取装置において、前記油圧制御弁は、前記出力軸の外周に一体的に形成されたスプールと、該スプールの外側に回動自在に遊嵌されて前記入力軸に連結された筒形のバルブボディーとを具備することを特徴とする。」(第2頁右下欄第2〜11行) (ロ)「油圧制御弁1は、第1図に示す如く、ハウジング6に回動自在に内嵌された円筒状のバルブボディー10と、出力軸3の上端近傍にこれと一体的に形成されたスプール11とを備えてなる。バルブボディー10は、ハウジング6内に侵入する前記入力軸2の下端近傍外周に打設されたダウエルピン12にその一部を係合せしめることにより該入力軸2に連結されており、入力軸2に連動して回動するようになっている。このバルブボディー10は、第2図に示す如く、周方向に等配をなして形成された複数本(図においては8本)の油溝13,13…を内周面側に有し、また、軸長方向に適宜の間隔を隔てて夫々全周に亘って形成された3本の環状溝14,15,16を外周面側に有している。これらの環状溝14,15,16は、ハウジング6の内周面との間に各別の油室を形成しており、中央の環状溝15にて形成される油室は、ハウジング6を内外に貫通するポンプポート20により油圧発生源たる油圧ポンプPに接続され、この油室には、油圧ポンプPの発生油圧が導入されている。また両側の環状溝14,16にて形成される油室は、ハウジング6を内外に貫通する各別のシリンダポート21,22により、前記油圧シリンダSの両油室に夫々接続されている。更にこれらの環状溝14,16は、バルブボディー10を半径方向に貫通する各別の連通孔13a,13bにより、バルブボディー10内周側の前記油溝13,13…の内1つ置きに位置する半数の油溝13,13…と、残り半数の油溝13,13…とに夫々連通させてある。 一方スプール11は、出力軸3のバルブボディー10の内側への嵌入部内周面に、前記油溝13,13…と同本数の油溝17,17…を等配に形成してなり、これらの内、1つ置きに位置する半数の油溝17,17…は、これらの外側に開口部を有し、バルブボディー10を半径方向に貫通する連通孔17aにより、該バルブボディー10外周の前記環状溝15に連通させてあり、また残りの半数の油溝17,17…は、スプール11を半径方向に貫通する連通孔17bにより、出力軸13内側の前記円孔内部に連通させてある。この円孔は、これに連なる入力軸2の中空部を介して、バルブボディー10上側のハウジング6内部に形成された還流室18に連通しており、更にこの還流室18は、ハウジング6を内外に貫通するタンクポート23によって低圧状態に維持された油タンクTに接続されている。また前記環状溝15は、前述した如く、油圧発生源たる油圧ポンプPに接続されているから、前記油溝17,17…の内、1つ置きに位置する半数には、油圧ポンプPが発生する油圧が導入され、また残りの半数は、油タンクTに連通されて、これと同等の低圧状態に保たれる。」(第3頁左下欄第7行〜第4頁左上欄第15行) (ハ)「第1実施例においては、バルブボディー10が入力軸2側に取付けてあるために、環状溝14,15,16にて形成される各油室の封止用としてバルブボディー10とハウジング6との嵌合部分に介在せしめてあるOリング等の封止部材がバルブボディー10の回動に伴って発生する摺動抵抗を舵輪側にて負担することになる。」(第5頁左上欄第7〜14行) よって、図面第1,2図に開示されている技術事項をも参酌すると共に、上記記載事項(イ)〜(ハ)によれば、第1引用例には、次の発明が実質的に記載されているものと認められる。 「入力軸2に結合されたバルブボディー10と、出力軸3に結合されたスプール11とを有し、 バルブボディー10とスプール11とが、ハウジング6の中に相対移動可能に同軸的に配置され、 半径方向外側にあるバルブボディー10が内側に位置する油溝13,13…を有し、半径方向内側にあるスプール11が外側に位置する油溝17,17…を有し、これらの油溝13,17が少なくとも部分的に軸方向長さを制限されており、バルブボディー10が、その外周面に油溝13,17と連通しうる環状溝15,16,14を有し、この環状溝がOリング等の封止部材により密封されており、油溝13,17が油圧シリンダSの両油室に出入りする圧力媒体の制御のために協働する、動力舵取装置の回転式の油圧制御弁1において、 半径方向外側にあるバルブボディー10が軸方向穴を有し、半径方向内側にあるスプール11が軸方向穴内に通されており、スプール11は出力軸3に相対回転不能に一体的に形成され、 バルブボディー10がハウジング6に支持されている、動力舵取装置の回転式の油圧制御弁。」(以下、「引用発明」という。) (2)第2引用例(実願昭63-130455号(実開平2-51970号)のマイクロフィルム)の記載事項 第2引用例には、「流体制御弁装置」に関して、図面第1〜3図とともに次の事項が記載されている。 (ニ)「本考案を適用する動力舵取装置のパワーステアリング本体部の概略構成を第3図を用いて簡単に説明すると、符号1は図示しない舵取りハンドル側に連結される入力軸としてのスタブ軸、2はこのスタブ軸1の内方端(左端)側にトーションバー3を介して連結されるとともに図示しない舵取りリンク機構を構成するラック4上のラック歯4aと噛合するピニオン2aを有する出力軸であるピニオン軸で、これら両軸1,2間にはトーションバー3のねじれにより所定角度範囲内での相対的な回動変位を許容するフェイルセーフ機構として突部および溝部からなるセーフティスプライン部5が介在して設けられる。」(明細書第9頁第14行〜第10頁第6行) (ホ)「パワーステアリング本体部を構成するボディ(ハウジング)6内で上述した両軸1,2の内方端側には、前述した回転型流路切換弁10を構成するロータ11およびスリーブ12がそれぞれ一体的に設けられ、」(明細書第10頁第14〜18行) (3)第3引用例(特開平4-31177号公報)の記載事項 第3引用例には、「動力舵取装置用圧力制御弁」に関して、図面第1〜4図とともに次の事項が記載されている。 (ヘ)「1はハウジングであり、このハウジング1内には図示しない油圧ポンプおよびパワーシリンダに接続されるバルブボディ2が挿入されている。バルブボディ2はピン3を介してピニオンギヤ4に接続さており、このピニオンギヤ4はラックギヤ5と噛合している。」(第1頁右下欄第13〜18行) (4)第4引用例(実願平1-116745号(実開平3-55376号)のマイクロフィルム)の記載事項 第4引用例には、「動力舵取装置」に関して、図面第1,2図とともに次の事項が記載されている。 (ト)「(1)は図示しない舵取ハンドルに連結されて回転操作される入力軸、(2)は先端外周面にピニオン(2a)が形成された出力軸であり、これら両軸(1),(2)は、入力軸(1)の軸芯に形成された空間(1a)内に配置されたトーションバー(4)によって結合され、ベアリング(10),(11)によってハウジング(3)内に回転可能に支持されるとともに、所定角度の相対回転ができるようになっている。」(明細書第5頁第17行〜第6頁第5行) 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「入力軸2」、「バルブボディー10」、「出力軸3」、「スプール11」、「ハウジング6」、「油溝13,13…」、「油溝17,17…」、「環状溝15,16,14」、「Oリング等の封止部材」、「油圧シリンダSの両油室」及び「動力舵取装置の回転式の油圧制御弁1」は、それぞれ、本願発明の「弁入力部分(23)」、「第1の弁要素;回転スライダ(4)」、「弁出力部分(25)」、「第2の弁要素;制御ブッシュ(7)」、「弁ハウジング(2)」、「制御縦溝(20)」、「制御縦溝(21)」、「環状溝(8、10、12)」、「シールリング(16)」、「サーボモータ(15)の2つの作動室(13、14)」及び「自動車用パワーステアリング装置の回転弁」に相当するから、本願発明と引用発明とは、 [一致点] 「弁入力部分に結合された第1の弁要素と、弁出力部分に結合された第2の弁要素とを有し、 両方の弁要素が、弁ハウジングの中に相対移動可能に同軸的に配置され、 半径方向外側にある弁要素が内側に位置する制御縦溝を有し、半径方向内側にある弁要素が外側に位置する制御縦溝を有し、これらの制御縦溝が少なくとも部分的に軸方向長さを制限されており、弁要素が、その外周面に制御縦溝と連通しうる環状溝を有し、この環状溝がシールリングにより密封されており、制御縦溝がサーボモータの2つの作動室に出入りする圧力媒体の制御のために協働する、自動車用パワーステアリング装置の回転弁において、 半径方向外側にある回転スライダとしての第1の弁要素が軸方向穴を有し、半径方向内側にある制御ブッシュとしての第2の弁要素が軸方向穴内に通されており、制御ブッシュは弁出力部分に相対回転不能になされ、 回転スライダが弁ハウジングに支持されている、自動車用パワーステアリング装置の回転弁」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] (1)両方の弁要素(回転スライダ、制御ブッシュ)を、弁ハウジングの中に相対移動可能に同軸的に配置するに当たり、本願発明は、この両方の弁要素(4,7)が、「最大でエンドプレー継手(24)の回転行程だけ相対回転可能」である構成としているのに対し、引用発明では、このような構成についての限定がない点。 (2)制御ブッシュを弁出力部分に相対回転不能になす構成とするに当たり、本願発明は、「制御ブッシュ(7)は弁出力部分(25)と別体に形成されるとともにピン(31)を介して弁出力部分(25)に相対回転不能に連結」する構成としているのに対し、引用発明では、ピンを介さず、制御ブッシュ(スプール11)は弁出力部分(出力軸3)に相対回転不能に一体的に形成する構成としている点。 (3)回転スライダを弁ハウジングに支持するに当たり、本願発明は、「回転スライダ(4)の軸方向両側がそれぞれ転がり軸受(17,18)を介して弁ハウジング(2)に支持」される構成としているのに対し、引用発明では、このような構成についてまでは限定していない点。 4.当審の判断 そこで、上記各相違点について以下で検討する。 (1)の相違点について 第2引用例には、動力舵取装置のパワーステアリングに関する回転型流路切換弁10であって、舵取りハンドル側に連結される入力軸1と舵取りリンク機構を構成するラック4上のラック歯4aに噛合するピニオン2aを有する出力軸2との間に所定角度範囲内での相対的な回動変位を許容する突部及び溝部からなるセーフティスプライン部5を介在させるという事項が記載されており、当該第2引用例に記載の「セーフティスプライン部5」は、上記相違点(1)でいう本願発明の「エンドプレー継手(24)」と同様な機能を果たすものといえるから、上記相違点(1)でいう本願発明の構成とすることは、引用発明に、第2引用例に記載された「セーフティスプライン部5」に係る技術事項を適用することによって、当業者であれば容易に想到することができたものである。 (2)の相違点について 引用発明は、制御ブッシュ(スプール11)が弁出力部分(出力軸3)と別体ではなく一体に形成され、したがって、ピンを介する必要もないとはいえ、制御ブッシュ(スプール11)を弁出力部分(出力軸3)に相対回転不能に形成するという点においては、本願発明と軌を一にしているばかりでなく、第3引用例には、記載事項(ヘ)及び図面第3図の記載を参酌すると、バルブボディ2をピニオンギヤ4と別体に形成するとともにピン3を介してピニオンギヤ4に相対回転不能に連結する旨が記載されているから、引用発明の、スプール11が出力軸3と一体に形成されている構成に替えて、上記第3引用例に記載の技術事項を適用することによって、上記相違点(2)でいう本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到することができたものである。 (3)の相違点について 両方の弁要素[回転スライダ(バルブボディー)、制御ブッシュ(スプール)]を弁ハウジングに支持するに当たっては、舵取り機構中のラック軸の噛合い箇所よりも入力軸側において、弁要素の軸方向で所定の間隔をあけた複数の軸受(一般的には、転がり軸受)を介することにより、弁要素を弁ハウジングに支持する構成のものが、第4引用例をはじめとして、特開平3-176276号公報、第2引用例(第3図参照)、第3引用例(第3図参照)にも記載されているように、従来ごく普通に知られている技術事項である。 そして、両方の弁要素[回転スライダ(バルブボディー)、制御ブッシュ(スプール)]のそれぞれの軸方向長さ次第によって、あるいは、両弁要素同士の嵌合の仕方によって、一方のみの弁要素を軸方向に所定の間隔を持った複数の軸受を介して支持することも、また、両方の弁要素を個別に軸方向に所定の間隔を持ったそれぞれの軸受を介して支持することも、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計上の事項にすぎない。 よって、上記相違点(3)でいう本願発明の、「回転スライダ(4)の軸方向両側がそれぞれ転がり軸受(17,18)を介して弁ハウジング(2)に支持」される構成とした点に格別の創意を見出すことができない。 そして、本願発明の効果も、引用発明及び第2引用例〜第4引用例に記載された技術事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび したがって、本願発明は、各引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-30 |
結審通知日 | 2006-06-02 |
審決日 | 2006-06-13 |
出願番号 | 特願平5-517069 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B62D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森林 宏和、出口 昌哉、大谷 謙仁 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
川上 益喜 平瀬 知明 |
発明の名称 | 自動車用パワーステアリング装置の回転弁 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 森 秀行 |
代理人 | 名塚 聡 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 吉武 賢次 |