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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1146358 |
審判番号 | 不服2004-14706 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-10-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-15 |
確定日 | 2006-11-02 |
事件の表示 | 特願2000-106978「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月19日出願公開、特開2001-290124〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年4月7日の出願であって、平成16年6月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年7月15日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年8月16日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされ、その後、平成18年3月8日付でいわゆる前置報告を利用した審尋がなされたが、請求人からはこれに対して回答を提出しなかったものである。 2.平成16年8月16日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年8月16日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のように補正しようとするものを含むものである。 「【請求項1】マトリクス状に配列された複数の走査電極及び複数の情報電極と液晶とを有する液晶素子と、カラー画像表示データを色別に選択しそれぞれを時分割で前記液晶素子に送る第1の手段と、複数の色光源群からなり、個々の色光源群が、前記液晶素子のパネル面の複数の走査電極を含む帯状領域に対向して配置され、該複数の色光源からの光を該帯状領域に導く導光路を持ち、該帯状領域に対して前記カラー画像表示データの色に対応する赤、緑、青の単色光を順次照射するように構成された光源ユニットと、を備え、前記カラー画像表示データによる前記液晶素子の表示状態に応じて前記光源ユニットを点灯制御する液晶表示装置において、 前記液晶素子は、単安定化された状態を有するV字型液晶素子であり、 各々の色光源群は、対向するそれぞれの帯状領域を照射するとともに、帯状領域の境界部分で隣り合う色光源群の照射範囲が重なり、かつ前記複数の色光源群を同時に点灯させたときに、全面が略均一な輝度になるか、または重なる部分の輝度が他の領域の輝度より高くなるように配置されている、 ことを特徴とする液晶表示装置。」 上記補正は、補正前の請求項1の「液晶素子」等をさらに限定しようとするものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。 (2)刊行物記載の発明 原審における平成16年3月16日付拒絶理由に引用した特開昭63-85525号公報(以下、「刊行物1」という。)には、下記の事項が記載されている。 「2枚の透明部材により挟持された強誘電性液晶薄膜からなる強誘電性液晶素子と、この表示画面に互いに異なる色の光を継時的に照射することができる複数の光源よりなる平面光源とを具備した強誘電性液晶カラー電気光学装置において、前記強誘電性液晶素子に印加される走査信号によって選択状態にある画素を照射する単一もしくは複数の光源を、前記選択状態において点灯または消灯することを特徴とした強誘電性液晶カラー電気光学装置。」(特許請求の範囲)、 「第2図に従来の液晶セルの斜視図を示す。1-1は対向配置している一対の基板である。2-2は基板内平面に設けられた一軸性又はランダム水平配向膜である。3は配向膜2-2によって挟まれたSmc*薄膜である。・・・Smc*薄膜3を上部からみると分子軸が層の法線4に対してθ傾いている。この位置は2通りあり第1の安定状態5と第2の安定状態6である。・・・従って所定の極性のパルスを印加することにより安定状態を相互にスイッチングすることができる。8-8は互いに直交する偏光軸を有する一対の偏光板であって、複屈折により液晶分子の第1の安定状態と第2の安定状態を光通過及び光遮断として識別する光学変換部材である。9及び10は対向配置された電極であり、Smc*に対してパルスを印加する。 第3図に電極構成を示す。9は走査電極であり、10は信号電極である。両電極でm行n列のマトリクスを構成し周知の時分割駆動が行われる。」(2頁左上欄15行〜同頁右上欄18行)、 「[問題点を解決するための手段] 本発明は、従来の技術の問題点を解決することを目的とし、平面発光素子の点灯及び消灯のタイミングを、前記強誘電性液晶素子の画面書き換え時の走査信号に同期させることによって、最上段と最下段の画素の光量差を小さくするものである。 [実施例] 第7図に平面発光素子の平面図を示す。光拡散板11が前面に貼られた匡体12内に赤、青、緑の発光ダイオード13,14,15(以下LEDと呼ぶ)のチップ1組となって分散して設置されている。LEDが発光すると前記光拡散板によって光が拡散され、平面全体が均一の色となって、光を照射する仕組みになっている。従って、強誘電性液晶素子の1画素毎にLEDを設置する必要はなく、むしろ拡散板の性能によって均一発光になるようにLEDの設置数が決められる。例えば、第3図のようなm行×n列の強誘電性液晶マトリクスセルにおいて、1個のLEDがr行×r列の面積を均一に発光させることができるとすると、赤、青、緑のLEDが各m×n÷r2個だけ設置されるわけである。今第7図において最上段のLEDから最下段のLEDまでをa群、b群、c群・・・と呼ぶ。 従って、m行のマトリックス画素のうち、最上段からr行だけの画素はa群のLEDによって照射され、次のr行の画素は、b群のLEDによって照射されるわけであり、以下同様である。 今、第1図のようなタイミングで各群のLEDを点灯もしくは消灯する。・・・第1図においては、さらに、a群、b群、c群・・・と順次に点灯及び消灯をさせる。すなわち、第2フレームの開始と同時にa群のLEDのみを点灯させる。その後液晶素子の走査電極10の走査がr行だけ進んだ後、b群のLEDも点灯させる。・・・さて第2フレームの走査が終了し走査が再び最上段の画素に戻る直前でa群のLEDを消灯させる。そして最上段からr行走査した直後にb群のLEDを消灯させ、・・・最下段のLEDをを消灯させる。」(3頁右上欄8行〜同頁右下欄14行)、 「[発明の効果] 以上述べたように本発明によれば、各色光の強誘電性液晶素子を透過する光量を、ほぼ一定にすることができるため、輝度や色相のむらのないカラー表示を得ることができるという効果がある。」(4頁右上欄1〜5行)。 (3)対比 本願補正発明と刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比する。 (ア)刊行物1の「強誘電性の液晶薄膜」、「強誘電性液晶カラー電気光学装置」は、それぞれ本願補正発明の「液晶」、「液晶表示装置」に相当する。 (イ)刊行物1には、「第3図に電極構成を示す。9は走査電極であり、10は信号電極である。両電極でm行n列のマトリクスを構成し周知の時分割駆動が行われる。」と記載されていることから、引用発明は、本願補正発明の「マトリクス状に配列された複数の走査電極及び複数の情報電極と液晶とを有する液晶素子」との事項を有するものである。 (ウ)刊行物1には、「2枚の透明部材により挟持された強誘電性液晶薄膜からなる強誘電性液晶素子と、この表示画面に互いに異なる色の光を継時的に照射することができる複数の光源よりなる平面光源とを具備した強誘電性液晶カラー電気光学装置において、前記強誘電性液晶素子に印加される走査信号によって選択状態にある画素を照射する単一もしくは複数の光源を、前記選択状態において点灯または消灯することを特徴とした強誘電性液晶カラー電気光学装置。」が記載されており、また「周知の時分割駆動が行われる」ものであるから、引用発明は、本願補正発明の「カラー画像表示データを色別に選択しそれぞれを時分割で前記液晶素子に送る第1の手段」を実質的に有することは当業者に明らかである。 (エ)刊行物1には、「第7図に・・・光拡散板11が前面に貼られた匡体12内に赤、青、緑の発光ダイオード13,14,15・・・のチップ1組となって分散して設置されている。・・・例えば、第3図のようなm行×n列の強誘電性液晶マトリクスセルにおいて、1個のLEDがr行×r列の面積を均一に発光させることができるとすると、赤、青、緑のLEDが各m×n÷r2個だけ設置されるわけである。今第7図において最上段のLEDから最下段のLEDまでをa群、b群、c群・・・と呼ぶ。 従って、m行のマトリックス画素のうち、最上段からr行だけの画素はa群のLEDによって照射され、次のr行の画素は、b群のLEDによって照射されるわけであり、以下同様である。・・・第1図においては、さらに、a群、b群、c群・・・と順次に点灯及び消灯をさせる。すなわち、第2フレームの開始と同時にa群のLEDのみを点灯させる。その後液晶素子の走査電極10の走査がr行だけ進んだ後、b群のLEDも点灯させる。・・・最下段のLEDをを消灯させる。」と記載されており、これから引用発明は、「複数の色光源群からなり、個々の色光源群が、前記液晶素子のパネル面の複数の走査電極を含む帯状領域に対向して配置され、該複数の色光源からの光を該帯状領域に導く導光路を持ち、該帯状領域に対して前記カラー画像表示データの色に対応する赤、緑、青の単色光を順次照射するように構成された光源ユニットと、を備え、前記カラー画像表示データによる前記液晶素子の表示状態に応じて前記光源ユニットを点灯制御する液晶表示装置」との事項を有するものである。 (オ)本願補正発明の「複数の色光源からの光を該帯状領域に導く導光路」については、本願補正明細書の【0037】には図3に関して、また【0055】には図4に関して「導光路」に関する説明がある(【0069】にも類似の記載がある。)が、本発明の液晶表示装置の全体構成を示す図1からは、複数の色光源群からなる平板状の光源ユニットB0の上に液晶素子Pが重ねられ、各々の色光源群は対向する液晶素子の帯状領域を空間を通して照射することが見て取れる程度であり、これに対して、刊行物1には、「第7図に平面発光素子の平面図を示す。光拡散板11が前面に貼られた匡体12内に赤、青、緑の発光ダイオード13,14,15(以下LEDと呼ぶ)のチップ1組となって分散して設置されている。LEDが発光すると前記光拡散板によって光が拡散され、平面全体が均一の色となって、光を照射する仕組みになっている。」と記載されており、引用発明では、空間及び光拡散板を介して照射するものと認めることができるから、この点で引用発明との間に格別な差異があると認めることはできない。 (カ)刊行物1には、「[発明の効果] 以上述べたように本発明によれば、各色光の強誘電性液晶素子を透過する光量を、ほぼ一定にすることができるため、輝度や色相のむらのないカラー表示を得ることができるという効果がある。」と記載されていることから、引用発明は、本願補正発明の「帯状領域の境界部分で隣り合う色光源群の照射範囲が重なり、かつ前記複数の色光源群を同時に点灯させたときに、全面が略均一な輝度になるように配置されている」との事項を有するものである。 したがって、両者は、「マトリクス状に配列された複数の走査電極及び複数の情報電極と液晶とを有する液晶素子と、カラー画像表示データを色別に選択しそれぞれを時分割で前記液晶素子に送る第1の手段と、複数の色光源群からなり、個々の色光源群が、前記液晶素子のパネル面の複数の走査電極を含む帯状領域に対向して配置され、該複数の色光源からの光を該帯状領域に導く導光路を持ち、該帯状領域に対して前記カラー画像表示データの色に対応する赤、緑、青の単色光を順次照射するように構成された光源ユニットと、を備え、前記カラー画像表示データによる前記液晶素子の表示状態に応じて前記光源ユニットを点灯制御する液晶表示装置において、各々の色光源群は、対向するそれぞれの帯状領域を照射するとともに、帯状領域の境界部分で隣り合う色光源群の照射範囲が重なり、かつ前記複数の色光源群を同時に点灯させたときに、全面が略均一な輝度になるように配置されている、液晶表示装置」である点で一致し、下記の点で相違する。 相違点: 本願補正発明の液晶素子は、「単安定化された状態を有するV字型液晶素子である」のに対して、引用発明は、強誘電性液晶素子である点。 (4)判断 上記相違点について検討するに、単安定化された状態を有するV字型液晶素子は、強誘電性液晶素子の一種であって、この出願前周知(例えば、当審における審尋において提示した特開平3-243915号公報及び原審の拒絶理由に引用した特開平10-96896号公報参照。)である。 してみると、引用発明の強誘電性液晶素子として、周知の単安定化された状態を有するV字型液晶素子を採用して、本願補正発明の技術的事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明から予測し得る程度のものであり、格別とはいえない。 よって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年8月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年5月24日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「【請求項1】マトリクス状に配列された複数の走査電極及び複数の情報電極と液晶とを有する液晶素子と、カラー画像表示データを色別に選択しそれぞれを時分割で前記液晶素子に送る第1の手段と、複数の色光源群からなり、個々の色光源群が、前記液晶素子のパネル面の複数の走査電極を含む帯状領域に対向して配置され、該複数の色光源からの光を該帯状領域に導く導光路を持ち、該帯状領域に対して前記カラー画像表示データの色に対応する単色光を順次照射するように構成された光源ユニットと、を備え、前記カラー画像表示データによる前記液晶素子の表示状態に応じて前記光源ユニットを点灯制御する液晶表示装置において、 各々の色光源群は、対向するそれぞれの帯状領域を照射するとともに,帯状領域の境界部分で隣り合う色光源群の照射範囲が重なるように配置されている、 ことを特徴とする液晶表示装置。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用例記載の発明 前記拒絶理由に引用した刊行物1:特開昭63-85525号公報には、上記2.(2)刊行物記載の発明で摘記した事項が記載されている。 (3)対比・判断 本願発明は、本願補正発明と比べ、「前記液晶素子は、単安定化された状態を有するV字型液晶素子であり、前記複数の色光源群を同時に点灯させたときに、全面が略均一な輝度になるか、または重なる部分の輝度が他の領域の輝度より高くなるように配置されている」点を欠くものである。すなわち、本願発明は、実質上、上記本願補正発明の上記相違点である「前記液晶素子は、単安定化された状態を有するV字型液晶素子である」との事項を実質的に欠くものなる。 そうしてみると、本願発明は、上記2.(3)対比に記載したように、刊行物1に実質的に全て記載されている。 なお、審判請求書等において、請求人は、上記刊行物1(拒絶理由に引用された引用文献1)と本願発明の相違点について言及しており、その中で特許法第29条第1項第3号の同一性を含めて検討していることは明らかである。 (4)むすび したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-22 |
結審通知日 | 2006-08-29 |
審決日 | 2006-09-15 |
出願番号 | 特願2000-106978(P2000-106978) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F) P 1 8・ 575- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤田 都志行、右田 昌士 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
吉野 三寛 鈴木 俊光 |
発明の名称 | 液晶表示装置 |
代理人 | 近島 一夫 |