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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
訂正2008390031 審決 特許
審判199935774 審決 特許
無効200680172 審決 特許
審判199935773 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C05F
審判 全部無効 特39条先願  C05F
審判 全部無効 2項進歩性  C05F
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C05F
審判 全部無効 特174条1項  C05F
管理番号 1146973
審判番号 無効2005-80346  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-06 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-01 
確定日 2006-10-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3252246号発明「醗酵産物とその製法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願:平成6年3月9日(特願平6-66551号)
設定登録:平成13年11月22日(特許第3252246号)
審判請求:平成17年12月1日
答弁書及び訂正請求書の提出:平成18年3月6日
弁駁書の提出:平成18年4月12日
被請求人へ審尋:平成18年5月17日
被請求人より審尋に対する回答書提出:平成18年6月19日
請求人より上申書提出:平成18年6月23日
請求人より上申書提出:平成18年7月20日
被請求人より上申書提出:平成18年7月24日

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1ないし12に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、次の点を挙げ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出し、本件特許は、特許法第123条第1項第1号、第2号及び第4号の規定に該当し無効にされるべきであると主張している。
[無効理由1]:本件特許の請求項1?12に係る発明は、甲第1号証の発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
[無効理由2]:本件特許の請求項1?12に係る発明は、甲第2号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[無効理由3]:本件特許明細書の記載は不備であるから、本件特許の請求項1?12に係る発明は、特許法第36条第4項又は第5項の規定により特許を受けることができない。
[無効理由4]:本件特許の請求項3及び請求項10の補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているから、本件特許が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされた。

[証拠方法]
無効審判請求書に添付して提出されたもの
甲第1号証:特許第3243575号
甲第2号証:特開平2-267180号公報
甲第3号証:特開平2-267181号公報
甲第4号証:特開平4-144988号公報
甲第5号証:特開平4-209694号公報
甲第6号証:特開昭57-7893号公報
甲第7号証:特開昭57-61688号公報
甲第8号証:特開昭57-61689号公報
甲第9号証:特開昭57-209690号公報
甲第10号証:特開昭58-146497号公報
甲第11号証:特開昭60-64700号公報
参考資料1:本件の出願に関する、平成13年6月4日受付の意見書
参考資料2:本件の出願に関する、平成12年3月1日受付の手続補正書
参考資料3:本件の出願に関する、平成12年5月24日受付の早期審査 に関する事情説明書

弁駁書に添付して提出されたもの
参考資料:岩波理化学辞典第4版 1993年6月10日 689頁「石灰 」の項

平成18年6月23日付け上申書に添付して提出されたもの
参考資料1:日本大百科全書17 小学館 昭和62年9月1日発行
66頁「土壌改良剤」の項
参考資料2:日本大百科全書14 小学館 昭和62年3月10日発行
513頁「堆肥」の項
参考資料3:日本大百科全書6 小学館 昭和60年11月1日発行
752頁「厩肥」の項
参考資料4:日本大百科全書18 小学館 昭和62年11月1日発行
534頁「培土」の項
参考資料5:日本大百科全書19 小学館 昭和62年1月1日発行
820、821、824頁「肥料」の項
参考資料6:樋浦康一郎 「Compostingと微生物」
東北大農研報36巻、77?80頁 1984年

平成18年7月20日付け上申書に添付して提出されたもの
参考資料:サイロの写真 4枚

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めている。
また、証拠方法として、乙第1号証が提出されている。

乙第1号証:陳述書 平成18年2月16日
白竜石灰化工株式会社 葛和和久 同社 木村英紀 連署名
参考資料1:「高活性CaOの粒子構造」と表題された写真
参考資料2:「市販生石灰の粒子構造」と表題された写真
参考資料3:「グリーンマイティー」と表題された表
参考資料4:「石灰サイロ」と表題された図面

第4 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成18年3月6日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という)は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。
(1)特許請求の範囲の請求項3に記載の「前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、90-4菌、もしくは90-7菌である、請求項1記載の醗酵産物。」を「前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、もしくは90-4菌である、請求項1記載の醗酵産物。」と訂正する。
(2)特許請求の範囲の請求項10に記載の「前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、90-4菌、もしくは90-7菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。」を「前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、もしくは90-4菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項(1)は、訂正前の請求項3に係る発明は、「前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、90-4菌、もしくは90-7菌である、請求項1記載の醗酵産物。」というもので、第2のグループに属するバクテリアとして具体的に5種の菌が択一式に記載されていたものを、訂正後の請求項3に係る発明は、前記5種の菌の中から「90-7菌」を削除し、残る「GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、90-4菌」の4種の菌の中から択一するように訂正するものであるから、訂正事項(1)は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項(2)も、訂正事項(1)と同様に、訂正前の請求項10に係る発明は、第2のグループに属するバクテリアとして具体的に5種の菌が択一式に記載されていたものを、訂正後の請求項10に係る発明は、前記5種の菌の中から「90-7菌」を削除し、残る「GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、90-4菌」の4種の菌の中から択一するように訂正するものであるから、訂正事項(2)も、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、上記訂正事項も、訂正事項(1)と同様に、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下、「平成6年法」という)附則第6条の規定によりなお従前の例によるとされる平成6年法改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法134条の2第5項において準用する平成6年法改正前特許法第126条第2項の規定に適合する。
よって、本件訂正請求のとおりの訂正を認める。

第5 本件発明
本件特許発明は、上記のとおり訂正請求が認められるので、平成18年3月6日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1?12に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】固液混合の腐敗性廃棄物と高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材との反応生成物に水と空気を供給して醗酵させた醗酵産物であって、pH値が12以上の高アルカリ環境下で生存する微生物を含有し、この微生物が、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成され、これら微生物が増殖してpHが8前後に維持されている、ことを特徴とする醗酵産物。
【請求項2】前記第1のグループに属するバクテリアが、GM-4菌である、請求項1記載の醗酵産物。
【請求項3】前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、もしくは90-4菌である、請求項1記載の醗酵産物。
【請求項4】前記第3のグループに属するバクテリアの一つが、90-1菌、90-2菌、90-3菌、90-4菌、90-7菌、90-8菌、90-10菌、もしくは90-11菌である、請求項1記載の醗酵産物。
【請求項5】前記糸状菌が90-F-1菌である請求項1に記載の醗酵産物。
【請求項6】腐敗性廃棄物に高活性な生石灰を主成分とする添加剤を添加することにより急激な水和反応を生じさせ、この水和反応の反応熱と高いアルカリ環境によるアルカリ殺菌によって反応生成物の腐敗を停止させると共に、反応生成物中に、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成される、検出可能で耐久性状態にあり、かつ高アルカリ状態で生育可能な微生物を残し、適宜の時期に水分と空気とを供給することにより、上記バクテリア群を用いてpH値を継承的に下げ、pH値の下降に伴い、反応生成物中に生存する耐久性状態にあった糸状菌と90-A-1菌を増殖させ、これらの微生物の増殖によって反応生成物をアルカリ醗酵させるようにした、ことを特徴とする醗酵産物の製造方法。
【請求項7】前記水和反応によって酸化カルシウム中のカルシウムイオンが解離されると共に腐敗性廃棄物中のアミノ酸から低級脂肪酸が生成され、この生成された低級脂肪酸及び腐敗性廃棄物中に元々含まれている低級脂肪酸を含む酸類と、上記解離されたカルシウムイオンとが結合してカルシウム塩が生成される、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項8】前記水和反応直後の反応生成物のpH値が12から13の高アルカリ状態にある、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項9】前記第1のグループに属するバクテリアが、GM-4菌もしくはGM-5菌の少なくとも一つの菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項10】前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、もしくは90-4菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項11】前記第3のグループに属するバクテリアの一つが、90-1菌、90-2菌、90-3菌、90-4菌、90-7菌、90-8菌、90-10菌、もしくは90-11菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項12】前記糸状菌が90-F-1菌である請求項6に記載の醗酵産物の製造方法。」
(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明12」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)

第6 無効理由に対する判断
I.無効理由1について
1.甲第1号証の特許公報の、特許請求の範囲に記載された発明は、下記のとおりである。

「【請求項1】固液混合の腐敗性廃棄物と酸化カルシウムとの反応生成物より成り、上記酸化カルシウムの一部が、上記反応の際に腐敗性廃棄物中のアミノ酸を熱分解して生成された蟻酸等の低位脂肪酸、並びに上記腐敗性廃棄物中に元々含まれていた蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類をカルシウム塩として固定し、酸化カルシウムの残部が炭酸カルシウムに変換され、かつ、カルシウム塩化していない腐敗性廃棄物中の有機物が醗酵処理された有機質になっていることを特徴とする培土。
【請求項2】固液混合の腐敗性廃棄物と酸化カルシウムとの反応生成物より成り、上記酸化カルシウムの一部が、上記反応の際に腐敗性廃棄物中のアミノ酸を熱分解して生成された蟻酸等の低位脂肪酸、並びに上記腐敗性廃棄物中に元々含まれていた蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類をカルシウム塩として固定し、酸化カルシウムの残部が炭酸カルシウムに変換され、かつ、カルシウム塩化していない腐敗性廃棄物中の有機物が除去されていることを特徴とする培土。
【請求項3】請求項1に記載の培土を製造する方法であって、固液混合の腐敗性廃棄物に酸化カルシウムを95%以上含む添加材を添加することにより急激な水和反応を生じさせ、この水和反応によって酸化カルシウム中のカルシウムイオンを解離させると共に腐敗性廃棄物中のアミノ酸から蟻酸等の低位脂肪酸を生成し、この低位脂肪酸並びに腐敗性廃棄物中に元々含まれている蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類と、解離された上記カルシウムイオンとによってカルシウム塩を生成し、かつ、カルシウム塩を形成していない腐敗性廃棄物中の有機物を醗酵処理した有機質にすると共に上記反応によって消和された水酸化カルシウムのほとんどを炭酸カルシウムに変換させたことを特徴とする、培土の製造方法。
【請求項4】請求項1に記載の培土を製造する方法であって、固液混合の腐敗性廃棄物に酸化カルシウムを95%以上含む添加材を添加することにより急激な水和反応を生じさせ、この水和反応によって酸化カルシウム中のカルシウムイオンを解離させると共に腐敗性廃棄物中のアミノ酸から蟻酸等の低位脂肪酸を生成し、この低位脂肪酸並びに腐敗性廃棄物中に元々含まれている蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類と、解離された上記カルシウムイオンとによってカルシウム塩を生成し、かつ、カルシウム塩を形成していない腐敗性廃棄物中の有機物を水洗浄によって洗い流すと共に上記反応によって消和された水酸化カルシウムのほとんどを炭酸カルシウムに変換させたことを特徴とする、培土の製造方法。」
(以下、この「請求項1」?「請求項4」に記載された発明を「先願発明1」?「先願発明4」という。)

2.請求人は、本件発明1?5は先願発明1と同一の発明であり、本件発明6?12は先願発明3と同一の発明であると主張しているので、以下に検討する。

(2-1)本件発明6について
(1)対比
本件発明6と先願発明3を対比すると、いずれも、腐敗性廃棄物に酸化カルシウム系添加剤を添加して急激な水和反応を生じさせる操作と、醗酵操作とによる有用物の製造方法である点で一致している。
一方、腐敗性廃棄物が、前者は、特に特定されていないのに対し、後者は、「固液混合の腐敗性廃棄物」と特定されている点で相違し(以下、「相違点1」という。)、酸化カルシウム系添加剤が、前者は、「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」と特定されているのに対し、後者は、「酸化カルシウムを95%以上含む添加材」と特定されている点で相違し(以下、「相違点2」という。)、急激な水和反応を生じさせる操作を行う目的が、前者は、「この水和反応の反応熱と高いアルカリ環境によるアルカリ殺菌によって反応生成物の腐敗を停止させると共に、反応生成物中に、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成される、検出可能で耐久性状態にあり、かつ高アルカリ状態で生育可能な微生物を残し」とされているのに対し、後者は、「この水和反応によって酸化カルシウム中のカルシウムイオンを解離させると共に腐敗性廃棄物中のアミノ酸から蟻酸等の低位脂肪酸を生成し、この低位脂肪酸並びに腐敗性廃棄物中に元々含まれている蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類と、解離された上記カルシウムイオンとによってカルシウム塩を生成し」とされている点で相違し(以下、「相違点3」という。)、醗酵に関与する微生物が、前者は、「水和反応による殺菌によって、検出可能で耐久性状態で生き残った菌を利用し、適宜の時期に水分と空気とを供給することにより、上記バクテリア群を用いてpH値を継承的に下げ、pH値の下降に伴い、反応生成物中に生存する耐久性状態にあった糸状菌と90-A-1菌を増殖させ、これらの微生物の増殖によって反応生成物をアルカリ醗酵させるようにした」とされているのに対し、後者は、「カルシウム塩を形成していない腐敗性廃棄物中の有機物を醗酵処理した有機質にする」とされている点で相違し(以下、「相違点4」という。)、消和された水酸化カルシウムが最終的にどのような化合物として含有されているのかが、前者は、特定されていないのに対し、後者は、「消和された水酸化カルシウムのほとんどを炭酸カルシウムに変換させた」と特定されている点で相違し(以下、「相違点5」という。)、製造方法の目的物が、前者は、「醗酵産物」であるのに対し、後者は、「培土」である点で相違する(以下、「相違点6」という。)。
(2)判断
相違点3及び4について検討する。
本件発明6における、急激な水和反応を生じさせる目的は、大部分の微生物を殺菌し、後続する醗酵工程に利用したい菌を残すように制御するためのものであるのに対し、先願発明3における、急激な水和反応を生じさせる目的は、酸化カルシウム中のカルシウムイオンを解離させると共に腐敗性廃棄物中のアミノ酸から蟻酸等の低位脂肪酸を生成し、この低位脂肪酸並びに腐敗性廃棄物中に元々含まれている蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類と、解離された上記カルシウムイオンとによってカルシウム塩を生成するためのもので、特定の微生物以外の微生物を殺菌するための水和反応の条件と、酸化カルシウム中のカルシウムイオンを解離させ、腐敗性廃棄物中のアミノ酸から低位脂肪酸を生成する等のための水和反応条件が、例えば水和反応の結果得られる温度やpH値において、全く同一のものであるとは認められず、また、先願発明3が目的とする水和反応を行った時に、本願発明6が必要とする特定の微生物以外の微生物を殺菌するための条件を満足するかということについて明らかにされているものでもない。
両発明の水和反応の条件が同一のものといえないことは以上のとおりであるから、その水和反応後に残存する微生物は同一のものとはいえないので、生じる醗酵は異なるものであり、醗酵産物も異なるものと認められる。
この両発明の醗酵の差異は、相違点4として摘示したとおりである。
そうすると、相違点3は実質的に同一ではなく、相違点4も実質的に同一ではない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は先願発明3と同一ではない。

(2-2)本件発明7?12について
(1)対比
本件発明7?12は、いずれも本件の請求項6を引用して、本件発明6の発明の構成要件を、各々の発明の構成要件の一部とする発明である。
したがって、本件発明7?12の各々の発明を、先願発明3と対比すると、一致点は、(2-1)の(1)に記載した、本件発明6と先願発明3の一致点と同じであり、相違点は、(2-1)の(1)に記載した相違点1?6と重複し、本件発明7?12において、本件発明6をさらに特定した構成要件が、さらに相違点となる。
(2)判断
相違点3及び4については、(2-1)の(2)に記載した理由と同じ理由により、実質的に同一ではない。そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7?12は、先願発明3と同一ではない。

(2-3)本件発明1について
(1)対比
本件発明1と先願発明1とは、腐敗性廃棄物と酸化カルシウム系添加剤を原料として反応させ、反応生成物を醗酵させた有用物である点で一致している。
一方、酸化カルシウム系添加剤を、前者は、「高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材」と特定しているのに対し、後者は、「酸化カルシウム」と特定されている点で相違し(以下、「相違点1’」という。)、反応の目的が、前者は、特に特定されていないのに対し、後者は、「酸化カルシウムの一部が、上記反応の際に腐敗性廃棄物中のアミノ酸を熱分解して生成された蟻酸等の低位脂肪酸、並びに上記腐敗性廃棄物中に元々含まれている蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類をカルシウム塩として固定し」と特定されている点で相違し(以下、「相違点2’」という。)、醗酵に関与する微生物が、前者は、「pH値が12以上の高アルカリ環境下で生存する微生物を含有し、この微生物が、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成され」と特定されているのに対し、後者は、特に特定されていない点で相違し(以下、「相違点3’」という。)、酸化カルシウムの残部が最終的にどのような化合物として含有されているのかが、前者は、特に特定されていないのに対し、後者は、「酸化カルシウムの残部が炭酸カルシウムに変換され」と特定されている点で相違し(以下、「相違点4’」という。)、最終有用物のpH値が、前者は、「8前後」と特定されているのに対し、後者は、特に特定されていない点で相違し(以下、「相違点5’」という。)、製造方法の目的物が、前者は、「醗酵産物」であるのに対し、後者は、「培土」である点で相違する(以下、「相違点6’」という。)。
(2)判断
相違点2’及び3’について検討する。
相違点2’は、固液混合の廃棄物に酸化カルシウム系添加剤を添加して反応させる際の条件に関わるものであり、相違点3’は、反応生成物を醗酵させる際の条件に関わるものであり、密接に関連し合うものである。
そうしてみると、固液混合の廃棄物に酸化カルシウム系添加剤を添加して反応させる際の条件について、本件発明1は特に規定をしていないが、その反応に後続する醗酵の際の条件は特定されており、この条件は、醗酵前に行う反応により制御しておくものであることから、本件発明1の固液混合の廃棄物に酸化カルシウム系添加剤を添加して反応させる際の条件は、本件発明1の醗酵の際の条件によって特定されているといえる。
そうすると、本件発明1における反応の目的は、反応生成物中に「pH値が12以上の高アルカリ環境下で生存する微生物を含有し、この微生物が、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成され」るように制御するものといえるのに対し、先願発明1における、反応の目的は、酸化カルシウムの一部が、上記反応の際に腐敗性廃棄物中のアミノ酸を熱分解して生成された蟻酸等の低位脂肪酸、並びに上記腐敗性廃棄物中に元々含まれていた蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類をカルシウム塩として固定するのを制御するためのものであって、両発明の目的は異なる。
そうすると、特定の微生物以外の微生物を殺菌するための反応条件と、腐敗性廃棄物中のアミノ酸を熱分解して生成された蟻酸等の低位脂肪酸、並びに上記腐敗性廃棄物中に元々含まれていた蟻酸等の低位脂肪酸を含む脂肪酸及びアミノ酸などの酸類をカルシウム塩として固定するための反応の条件が全く同一のものであるとは認められず、また、先願発明1が目的とする反応を行った時に、本件発明1が必要とする特定の微生物以外の微生物を殺菌するための条件を満足するかということについて明らかにされているものでもない。
両発明の反応の条件が同一のものといえないことは以上のとおりであるから、その反応後に残存する微生物は同一のものとはいえないので、生じる醗酵は異なるものであり、醗酵産物も異なるものと認められる。
この両発明の醗酵の差異は、相違点3’として摘示したとおりである。
そうすると、相違点2’は実質的に同一ではなく、相違点3’も実質的に同一ではない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は先願発明1と同一ではない。

(2-4)本件発明2?5について
(1)対比
本件発明2?5は、いずれも本件の請求項1を引用して、本件発明1の発明の構成要件を、各々の発明の構成要件の一部とする発明である。
したがって、本件発明2?5の発明を、先願発明1と対比すると、一致点は、(2-3)の(1)に記載した、本件発明1と先願発明1の一致点と同じであり、相違点は、(2-1)の(1)に記載した相違点1’?6’と重複し、本件発明2?5において、本件発明1をさらに特定した構成要件が、さらに相違点となる。
(2)判断
相違点2’及び3’については、(2-3)の(2)に記載した理由と同じ理由により、実質的に同一ではない。そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明2?5は、先願発明3と同一ではない。

3.先願の訂正請求について
なお、本件特許権者と同一人が特許権者である、甲第1号証に係る特許の無効審判(無効2005-80345)において、平成18年3月6日付けで訂正請求書が提出されている。それによれば、甲第1号証の先願特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び3は削除されている。
上記の訂正請求が認められ、審決が確定すれば、請求人が、本件発明1?12と同一であると主張している先願発明1及び先願発明3は存在しなくなり、無効理由1は解消する。

II.無効理由2について
1.請求人の提出した証拠の記載事項
甲第2号証には次の事項が記載されている。
記載事項2-1
「固液混合の腐敗性廃棄物と酸化カルシウムとの反応生成物より成る土壌改良材であって、上記土壌改良材中に含まれる全リン酸の大部分が有効態のリン酸カウシウムとして安定され、また水溶性リン酸が元の量の3%以下に減少し、且つ、有機態リン酸、リン脂質、グリセライド、リグニンなどの難分解性成分が分解されて生成された、リン酸カルシウム、脂肪酸カルシウム、あるいはカルシウムの分散された有機体を含有していることを特徴とする土壌改良材」(請求項1)

記載事項2-2
添加剤は次の条件を具備する高活性な生石灰を主成分とする。
(1)(当審注:原文は丸数字、以下同様)酸化カルシウムの含有率が高く(望ましくは95%以上)、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及びその他の物質の含有率が低いこと。
尚、組成成分として酸化マグネシウムが少量(例えば5%以下)含まれていても良い。
(2)多孔性を有し、表面積及び比表面積が広大で、細孔組織が高度に発達していること。
(3)水に少量を接触させたときに、優れた分散性、例えば全方向に広く速やかに分散する性質を有すること。
(4)水に中量を添加したときに、激しくかつ速やかに反応して水蒸気を発生させること。
(5)水に一定量を添加したときに充分に反応し、理論値に近似した温度上昇が認められること。
(6)水と接触後の消石灰を主成分とするスラリーにおいて、沈降速度が小で、沈降現象が認められないこと。」(2頁左下欄10行?右下欄9行)

記載事項2-3
「反応生成物として得られた土壌活性剤は、有機性廃棄物中に含まれていた水溶性リン酸の約97%以上が有効態のリン酸カルシウムとして固定され、かつ、有効態リン酸、リン脂質、グリセライドなどの難分解性成分を分解して生成されるリン酸カルシウム及び脂肪酸カルシウム並びにカルシウムが分散された有機体が含有されている。
有効態のリン酸カルシウムは、腐敗性廃棄物中に存在する、主として水溶性リン酸及びリン脂質中に含まれるリン酸と上記添加剤との反応によって生成される。従って、本土壌改良剤では、原材料たる腐敗性廃棄物中に含まれていた水溶性リン酸及び脂質が著しく減少する。グリセライドを比較的に多量に含有する腐敗性廃棄物の場合にグリセライドは活性力の強い酸化カルシウムに起因する塩基による加水分解反応によって安定した難溶性のカルシウム塩が生成される。このため、本土壌改良剤では未反応残留物によって惹き起される嫌気性醗酵やガスあるいは害虫の発生を生じることがない。」(3頁左上欄1行?末行)

記載事項2-4
「また、本土壌改良剤は、添加剤の酸化カルシウムが急激に腐敗性廃棄物に対して拡散して得られる結果、体積が一旦膨張した後、乾燥されることによって多数の空隙を生じ、気孔率あるいは空隙率の大きな物質として生成される。
更に上記したように、本土壌改良剤は、有機体リン酸等の難分解性成分が分解されることによって生成された、無機質のリン酸カルシウムと、無機質と有機質の性質を備えた脂肪酸カルシウムと、有機化合物に無機物質が分散された有機体とを含有し、全体として見ると有機質に無機質が絡み合った複合体、換言すれば、有機質に無機質が適度に入りくんだ複合体として構成されている。このため、本土壌改良剤は適度の緩効性あるいは遅効性を備えている。」(3頁右上欄1行?末6行)

記載事項2-5
「即ち、本発明では、カルシウムイオン(Ca2+)及び水酸基(OH-)の作用が根幹にあるが、反応生成時の添加材としての酸化カルシウムが高活性を有するために、カルシウムが物理的に全方向(立体的全方位)に均一に分散している。またこうした添加材を用いて生成される結果、生成時には、温度が上昇し、粘性が低下すると同時に、セルローズ、リグニン、高分子量蛋白質、リン脂質などがアルカリ性の下で励起され、酸化カルシウムと水との反応による局部的高熱によって原料が低分子化合物に分解されることになる。そして、分解された端末基に対してカルシウムが結合されて、比較的難溶性のカルシウム塩が形成される。
一方、遊離のカルシウムは、分解された種々な化合物とキレート化合物を形成し、その核となって分散される。即ち、分解が相当進行したカルボキシル基とは比較的難溶性のカルシウム塩を急速に形成する。遊離のリン酸基とは急速に安定したリン酸カルシウムを生じる。リン脂体中のリン酸基は部分的に遊離され、同様にリン酸カルシウムを形成する。
酸素原子を含む吸電子性の基を有する高分子化合物には、カルシウムイオンが熱的及び機械的拡散により強力に作用し、これを分解すると同時にカルシウム塩として浸入する。
また、カルシウムと反応し易い状態になった基とは直ちに反応する。過剰に存在するカルシウムはキレート化合物として分散する。
更に、形成されたカルシウム化合物が、アミノ基やカルボキシル基を有する蛋白質を固定化しようとして作用する。」(3頁右上欄末5行?右下欄7行)

記載事項2-6
「[実施例1]豚し尿を主原料とする水分88.5重量%のスラリー800Kgに対して、高活性を有する生石灰を主成分とする添加剤を120Kg(原料に対して15重量%)添加し、特殊反応器内で攪拌しつつ10分間反応させた。
上記の反応過程において、生石灰と水分との水和反応および化学反応によって発生する反応熱によって、反応物スラリーの温度は上昇し、温度上昇度(反応物スラリー温度と原料スラリー温度の差)は32.5℃であった。
得られた反応物スラリーを屋根付きハウス(強制通風施設付)内で大気と接触させつつ風乾させ、含水率35.0重量%の反応生成物たる土壌改良材395Kgを得た。
原料中のアンモニア性窒素含有量は28,600mg/Kg(乾量基準)であったのに対し土壌改良材中の当該成分は150mg/Kg(乾量基準)であった。
また、原料中の水溶性リン酸含有量は、27,700mg/Kg(乾量基準)であったのに対し、土壌改良材中の当該成分は121mg/Kg(乾量基準)てあった。
従って、本実施例による土壌改良材では、アンモニア性窒素の除去率(削減率)は99.5%、水溶性リン酸の除去率(削減率)は99.6%に相当する。」(3頁右下欄13行?4頁左上欄19行)

記載事項2-7
「(発明の効果)
・・・本発明は、固液混合の腐敗性廃棄物と酸化カルシウムとを反応することによって生成されるものであるから、堆肥化に比べてあまり時間をかけることなく、製造できる。また、本発明によれば、腐敗廃棄物中に含まれる全リン酸の大部分が有効態のリン酸カルシウムとして安定され、水溶性リン酸が元の量の3%以下に減少しており、全体としてpH値が高くなっているので、未反応残留物による害虫発生等を生じたり、土壌中の有害微生物を発生、増殖させたりすることがなく、しかも、この土壌改良材は、カルシウムの分散された有機体、即ち、有機質に無機質が適度にいりくんだ複合体として構成されているので、団粒構造を有し、土壌の活性化と疎水性、吸水性を備え、肥効成分を容易かつ確実に吸収することができると共に、肥効性を持続させて地力を高めることができるものである。」(7頁右下欄3行?末行)

甲第3号証には、次の事項が記載されている。
記載事項3-1
「固液混合の腐敗性廃棄物100重量部に対し、酸化カルシウムの含有量が95%以上でかつ多孔性を有する高活性な生石灰を主成分とする添加剤を5?50重量部添加し、これらを混合攪拌して反応させた後、得られたスラリー状の物質を乾燥させることにより、上記腐敗性廃棄物中に含まれる全リン酸の大部分が有効態のリン酸カルシウムとして安定され、また水溶性リン酸が元の3%以下に減少し、且つ、有機態リン酸、リン脂質、グリセライド、リグニンなどの難分解性成分が分解されて生成された、リン酸カルシウム、脂肪酸カルシウム、あるいはカルシウムの分散された有機体を含有している土壌改良材を得るようにしたことを特徴する土壌改良剤の製造方法。」(請求項1)

記載事項3-2
「添加剤は次の条件を具備する高活性な生石灰を主成分とする。
(1)酸化カルシウムの含有率が高く(望ましくは95%以上)、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及びその他の物質の含有率が低いこと。
尚、組成成分として酸化マグネシウムが少量(例えば5%以下)含まれていても良い。
(2)多孔性を有し、表面積及び比表面積が広大で、細孔組織が高度に発達していること。
(3)水に少量、例えば水約10?15mlに1?2gを接触させたときに、優れた水分散性、即ち、全方向に相当広く分散する性質を有すること。
(4)水に中量、例えば水約15?20mlに5?10gを添加したときに、数秒以内に激しく反応して水蒸気を発生させること。
(5)水に一定量、例えば水100mlに20gを添加したときに充分に反応し、理論値に近似した温度上昇が認められること。
(6)水と接触後の消石灰を主成分とするスラリーにおいて、沈降速度が小、例えば上記(5)に記載した割合で添加し、15分放置した状態において沈降現象が認められないこと。」(2頁右下欄8行?3頁左上欄10行)

記載事項3-3
「反応生成物として得られた土壌活性剤は、有機性廃棄物中に含まれていた水溶性リン酸の約97%が有効態のリン酸カルシウムとして固定され、かつ、有効態リン酸、リン脂質、グリセライドなどの難分解性成分を分解して生成されるリン酸カルシウム及び脂肪酸カルシウム並びにカルシウムが分散された有機体が含有されている。
有効態のリン酸カルシウムは、腐敗性廃棄物中に存在する、主として水溶性リン酸及びリン脂質中に含まれるリン酸と上記添加剤との反応によって生成される。従って、本土壌改良剤では、原材料たる腐敗性廃棄物中に含まれていた水溶性リン酸及び脂質が著しく減少する。グリセライドを比較的に多量に含有する腐敗性廃棄物の場合に、グリセライドは活性力の強い酸化カルシウムに起因する塩基による加水分解反応によって安定した難溶性のカルシウム塩が生成される。このため、本土壌改良剤では未反応残留物によって惹き起される嫌気性醗酵やガスあるいは害虫の発生を生じることがない。」(3頁右下欄10行?4頁左上欄9行)

記載事項3-4
「また、本土壌改良剤は、添加剤中の酸化カルシウムが急激に腐敗性廃棄物に対して拡散して得られる結果、体積が一旦膨張した後、乾燥されることによって多数の空隙を生じ、気孔率あるいは空隙率の大きな物質として生成される。
更に上記したように、本土壌改良剤は、有機体リン酸等の難分解性成分が分解されることによって生成された、無機質のリン酸カルシウムと、無機質と有機質の両面的性質を備えた脂肪酸カルシウムと、有機化合物に無機物質が分散された有機体とを含有し、全体として見ると有機質に無機質が絡み合った複合体、換言すれば、有機質に無機質が適度に入りくんだ複合体として構成されている。このため、本土壌改良剤は適度の緩効性あるいは遅効性並びに持続性を備えている。」(4頁左上欄10行?右上欄4行)

記載事項3-5
「即ち、本発明では、カルシウムイオン(Ca2+)及び水酸基(OH-)の作用が根幹にあるが、反応生成時の添加材としての酸化カルシウムが高活性を有するために、カルシウムが物理的に全方向(立体的全方位)に均一に分散している。またこうした添加材を用いて生成される結果、生成時には、温度が上昇し、粘性が低下すると同時に、セルローズ、リグニン、高分子量蛋白質、リン脂質などがアルカリ性の下で励起され、酸化カルシウムと水との反応による局部的高熱によって原料が低分子化合物に分解されることになる。そして、分解された端末基に対してカルシウムが結合されて、比較的難溶性のカルシウム塩が形成される。
一方、遊離のカルシウムは、分解された種々な化合物とキレート化合物を形成し、その核となって分散される。即ち、分解が相当進行したカルボキシル基とは比較的難溶性のカルシウム塩を急速に形成する。遊離のリン酸基とは急速に安定したリン酸カルシウムを生じる。リン脂体中のリン酸基は部分的に遊離され、同様にリン酸カルシウムを形成する。
酸素原子を含む吸電子性の基を有する高分子化合物には、カルシウムイオンが熱的及び機械的拡散により強力に作用し、これを分解すると同時にカルシウム塩として浸入する。
また、カルシウムと反応し易い状態になった基とは直ちに反応する。過剰に存在するカルシウムはキレート化合物として分散する。更に、形成されたカルシウム化合物が、アミノ基やカルボキシル基を有する蛋白質を固定化しようとして作用する。」(4頁右上欄5行?左下欄末5行)

記載事項3-6
「[実施例1]豚し尿を主原料とする水分88.5重量%のスラリー800Kgに対して、高活性を有する生石灰を主成分とする添加剤を120Kg(原料に対して15重量%)添加し、特殊反応器内で攪拌しつつ10分間反応させた。
上記の反応過程において、生石灰と水分との水和反応および化学反応によって発生する反応熱によって、反応物スラリーの温度は上昇し、温度上昇度(反応物スラリー温度と原料スラリー温度の差)は32.5℃であつた。
得られた反応物スラリーを屋根付きハウス(強制通風施設付)内で大気と接触させつつ風乾させ、含水率35.0重量%の反応生成物395Kgを得た。
原料中のアンモニア性窒素含有量は28,600mg/Kg(乾量基準)であったのに対して、反応生成物中の当該成分は150mg/Kg (乾量基準)であった。
また、原料中の水溶性リン酸含有量は、27,700mg/Kg(乾量基準)であったのに対して、反応生成物中の当該成分は121mg/Kg(乾量基準)てあった。
本実施例によるアンモニア性窒素の除去率(削減率)は99.5%、水溶性リン酸の除去率(削減率)は99.6%に相当し、これらにおいて顕著な効果が認められる。」(4頁右下欄2行?5頁左上欄8行)

記載事項3-7
「(発明の効果)
・・・本発明は、固液混合の腐敗性廃棄物に高活性な生石灰を主成分とする添加材を所定の割合で混合することによって、腐敗性廃棄物中に含まれる全リン酸の大部分が有効態のリン酸カルシウムとして安定され、かつカルシウムの分散された有機体を含有する土壌改良材を製造するようにしているので、長時間をかけることなく、この種の土壌改良剤を製造でき、また、これによって得られた土壌改良剤は、未反応残留物による害虫発生あるいは有害微生物の発生等を生じることがなく、しかも、カルシウムが分散された有機体、即ち、有機質に無機質が適度にいりくんだ複合体として構成されているので、団粒構造を有し、土壌の活性化と疎水性、吸水性を備え、肥効性成分を容易かつ確実に吸収することができると共に、肥効性を持続させて地力を高めることができるものである。」(11頁左下欄6行?右下欄3行)

甲第4号証には、次の事項が記載されている。
記載事項4-1
「(1)固液混合の腐敗性廃棄物と酸化カルシウムとの反応生成物より成る土壌改良材であって、上記腐敗性廃棄物中に含まれる蟻酸が蟻酸カルシウムとして固定されていることを特徴とする土壌改良材。
(2)固液混合の腐敗性廃棄物に、酸化カルシウムを主成分とし、かつ上記腐敗性廃棄物中に含まれている低位脂肪酸と反応して脂肪酸カルシウムを生成させる添加材を添加することを特徴する土壌改良材の製造方法。」(請求項1、2)

記載事項4-2
「添加剤は生石灰を主成分とし、次の条件を具備する高活性なものが望ましい。。
(1)酸化カルシウムの含有率が高く(望ましくは95%以上)、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及びその他の物質の含有率が低いこと。
尚、組成成分として酸化マグネシウムが少量(例えば5%以下)含まれていても良い。
(2)多孔性を有し、表面積及び比表面積が広大で、細孔組織が高度に発達していること。
(3)水に少量を接触させたときに、優れた水分散性、例えば全方向に広く速やかに分散する性質を有すること。
(4)水に中量を添加したときに、激しくかつ速やかに反応して水蒸気を発生させること。
(5)水に一定量を添加したときに充分に反応し、理論値に近似した温度上昇が認められること。
(6)水と接触後の消石灰を主成分とするスラリーにおいて、沈降速度が小で、沈降現象が認められないこと。」(2頁左下欄2行?右下欄1行)

甲第5号証には、次の事項が記載されている。
記載事項5-1
「固液混合の腐敗性廃棄物に高活性を有する酸化カルシウムを反応させ、上記腐敗性廃棄物中に含まれている蟻酸、及び腐敗性廃棄物中に含まれている化合物から上記反応によって生成されるカルボキシル基を蟻酸カルシウムとして固定することを特徴する蟻酸の固定法」(請求項1)

記載事項5-2
「高活性とは、酸化カルシウムを構成するカルシウムと酸素の二重結合の強度が比較的弱い状態を意味し、具体的には次の諸条件を数多く具備するものが望ましい。
(1)酸化カルシウムの含有率が高く(望ましくは95%以上)、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及びその他の物質の含有率が低いこと。
尚、組成成分として酸化マグネシウムが少量(例えば5%以下)含まれていても良い。
(2)多孔性を有し、表面積及び比表面積が広大で、細孔組織が高度に発達していること。
(3)水に少量を接触させたときに、優れた水分散性、例えば全方向に広く速やかに分散する性質を有すること。
(4)水に中量を添加したときに、激しくかつ速やかに反応して水蒸気を発生させること。
(5)水に一定量を添加したときに充分に反応し、理論値に近似した温度上昇が認められること。
(6)水と接触後の消石灰を主成分とするスラリーにおいて、沈降速度が小で、沈降現象が認められないこと。」(2頁左下欄末5行?右下欄末4行)

記載事項5-3
「本発明によれば、蟻酸を固定する過程で、腐敗性廃棄物中に含まれる有機物が上記高活性を有する酸化カルシウムとの化学反応によってカルシウム塩として固定されるので、その反応生成物は、有機質に無機質が適度にいりくんだ団粒構造を有し、土壌改良材等としての有効利用が可能となる。」(5頁右下欄6行?12行)

なお、甲第4号証ないし甲第5号証には、甲第2号証の「記載事項2-3」?「記載事項2-7」、及び甲第3号証の「記載事項3-3」?「記載事項3-7」と同内容の記載もされている。

甲第6号証?甲第11号証には、汚泥を発酵して堆肥化する技術に関して下記の記載がされている。

甲第6号証
記載事項6-1
「汚泥に、石灰を凝集剤として添加し脱水処理を行う脱水装置と、該脱水装置により得られた脱水汚泥を乾燥する乾燥装置と、乾燥したケーキを発酵せしめる発酵槽と、廃棄物の焼却炉を備え、該焼却炉にて発生した燃焼廃ガスを前記乾燥装置及び前記発酵槽に導き、ケーキを加熱するよう構成したことを特徴とした堆肥化装置」(特許請求の範囲 第1項)

甲第7号証
記載事項7-1
「(1)石灰含有汚泥を堆肥化するに際し、汚泥を炭酸ガスと強制的に接触させて汚泥のpHを発酵に適したpHまで低下させた後、堆肥化させることを特徴とする石灰含有汚泥の堆肥化方法。」(特許請求の範囲 第1項)

記載事項7-2
「本発明は、下水処理場、し尿処理場などより発生する有機質汚泥の堆肥化方法に関する。・・・一般に、かかる汚泥を脱水するに際しては凝集剤が使用されるが、凝集剤として代表的な消石灰が使用された場合には、脱水汚泥のpHは異常に高くなる。しかるに、このような高pHの脱水汚泥を堆肥化処理するためには発酵菌類が活動しやすいpHまで中和する必要がある。」(1頁右下欄2行?12行)

甲第8号証
記載事項8-1
「本発明は、有機質汚泥の堆肥化処理に使用する発酵装置に係り、特に石灰含有高pH汚泥のpHの中和に発酵排ガスを利用することを可能ならしめる発酵装置に係る。」(1頁右下欄末3行?2頁左上欄1行)

甲第9号証
記載事項9-1
「一般に下水処理場等より回収された汚泥、畜産廃棄物等・・・は含水率が高く、・・・発酵処理は困難であるため発酵に適した含水率に調整する必要がある。・・・高分子凝集剤や石灰を用いて所望の含水率になるよう脱水している。」(1頁右下欄1行?7行)

甲第10号証
記載事項10-1
「消石灰等のアルカリ性脱水助剤を含む高アルカリ性有機質汚泥を乾燥機に投入し、含有水分をこの有機質汚泥が発酵するに適した量にまで減少させて脱水ケーキとして発酵槽に投入し、・・・消石灰等のアルカリ成分を中和すると共に脱水ケーキを加温し、且つ脱水ケーキに空気を供給して発酵を促進させる・・・有機質汚泥のコンポスト化法」(特許請求の範囲 第1項)

記載事項10-2
「消石灰又は生石灰等のアルカリ性脱水助剤」(1頁右下欄末2行?末行)

甲第11号証
記載事項11-1
「一般に下水汚泥等の有機性廃棄物は高含水率で、これを発酵処理するに際しては発酵に適した含水率・・・に低下させるため脱水する必要がある。この脱水を効果的に迅速に行うために脱水助剤として消石灰を添加する場合があるが、この消石灰の添加により・・・高アルカリ性となり発酵を司どる微生物の活動が阻害され、発酵は不活溌となる。」(1頁左下欄末3行?右下欄6行)

2.対比、判断
(2-1)本件発明6について
(1)対比
上記の記載事項2-1、記載事項2-6、記載事項3-1、記載事項4-1によれば、甲第2号証?甲第4号証には、「固液混合の腐敗性廃棄物」と、「酸化カルシウム」あるいは「酸化カルシウムの含有量が95%以上でかつ多孔性を有する高活性な生石灰を主成分とする添加剤」との反応生成物より成る土壌改良材及びその製造方法が記載されている。また、記載事項5-1によれば、甲第5号証には、「固液混合の腐敗性廃棄物」と「高活性を有する酸化カルシウム」を反応させることを特徴とする蟻酸の固定法が記載されているところ、記載事項5-3には、蟻酸の固定のための反応生成物は土壌改良材として有効利用が可能となることも記載されている。
ここで、甲第2号証および甲第4号証の「酸化カルシウム」、甲第3号証の「酸化カルシウムの含有量が95%以上でかつ多孔性をを有する高活性な生石灰を主成分とする添加剤」、及び甲第5号証の「高活性を有する酸化カルシウム」が、実際にどのような添加剤であるのかを検討する。
記載事項2-2、記載事項3-2、記載事項4-2、記載事項5-2によれば、甲第2号証?甲第5号証の「固液混合の腐敗性廃棄物」に添加される添加剤は、いずれも、「(1)酸化カルシウムの含有率が高く(望ましくは95%以上)、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及びその他の物質の含有率が低いこと。尚、組成成分として酸化マグネシウムが少量(例えば5%以下)含まれていても良い。(2)多孔性を有し、表面積及び比表面積が広大で、細孔組織が高度に発達していること。(3)水に少量を接触させたときに、優れた水分散性、例えば全方向に広く速やかに分散する性質を有すること。(4)水に中量を添加したときに、激しくかつ速やかに反応して水蒸気を発生させること。(5)水に一定量を添加したときに充分に反応し、理論値に近似した温度上昇が認められること。(6)水と接触後の消石灰を主成分とするスラリーにおいて、沈降速度が小で、沈降現象が認められないこと。」という酸化カルシウムであり(以下、「高活性な酸化石灰化合物」という。)、各甲号証における記載は上記したように異なっていても、実質的に同じ物質であると考えられる。
そうすると、甲第2号証?甲第5号証には、いずれも、「固液混合の腐敗性廃棄物に高活性な酸化石灰化合物を添加することによる反応生成物からなる土壌改良材の製造方法」(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

本件発明6と引用発明とを対比する。
引用発明の「固液混合の腐敗性廃棄物」は、本件発明6の「腐敗性廃棄物」に包含されるので、両者は、「腐敗性廃棄物に生石灰系添加剤を添加することにより起きる反応によって反応生成物を生成し、有用物を製造する方法」の点で一致し、生石灰系添加剤が、本件発明6では、「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」であるのに対し、引用発明では、高活性な酸化石灰化合物である点で相違し(以下、「相違点1」という。)、生石灰系添加剤を添加することにより、本件発明6では、「急激な水和反応を生じさせ、この水和反応の反応熱と高いアルカリ環境によるアルカリ殺菌によって反応生成物の腐敗を停止させると共に、反応生成物中に、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成される、検出可能で耐久性状態にあり、かつ高アルカリ状態で生育可能な微生物を残し」ているのに対し、引用発明では「反応生成物の腐敗を停止させると共に、所定の微生物が生き延びるような条件で反応させる」ことが記載されていない点で相違し(以下、「相違点2」という。)、有用物を製造する方法として、本件発明6では、上記の反応生成物に対して「水分と空気とを供給することにより、上記バクテリア群を用いてpH値を継承的に下げ、pH値の下降に伴い、反応生成物中に生存する耐久性状態にあった糸状菌と90-A-1菌を増殖させ、これらの微生物の増殖によって反応生成物をアルカリ醗酵させる」という別工程を追加しているのに対し、引用発明では反応生成物が最終有用物である点で相違し(以下、「相違点3」という。)、製造される有用物が、本件発明6は醗酵産物であるのに対し、引用発明は土壌改良材である点で相違する(以下、「相違点4」という。)。

(2)判断
相違点1について検討する。
本件発明6で腐敗性廃棄物に添加される「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」は、本件特許明細書の段落【0010】の記載によれば、「(1)酸化カルシウムの含有率が高く(望ましくは95%以上)、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及びその他の物質の含有率が低いこと。尚、組成成分として酸化マグネシウムが少量(例えば5%以下)含まれていても良い。(2)多孔性を有し、表面積及び比表面積が広大で、細孔組織が高度に発達していること。(3)水に少量を接触させたときに、優れた水分散性、例えば全方向に広く速やかに分散する性質を有すること。(4)水に中量を添加したときに、激しくかつ速やかに反応して水蒸気を発生させること。(5)水に一定量を添加したときに充分に反応し、理論値に近似した温度上昇が認められること。更に必要によっては、(6)水と接触後の消石灰を主成分とするスラリーにおいて、沈降速度が小で、沈降現象が認められないこと。」という条件を備えた生石灰系添加剤であり、その条件は甲第2号証?甲第5号証における条件と実質的に相違はないものであるから、引用発明で使用している「高活性な酸化石灰化合物」と実質的に同じ化合物からなる添加剤であると認められる。
したがって、相違点1には、実質的な相違はない。

相違点2?4について検討する。
本件発明6は、「腐敗性廃棄物に高活性な生石灰を主成分とする添加剤を添加することにより急激な水和反応を生じさせ、この水和反応の反応熱と高いアルカリ環境によるアルカリ殺菌によって反応生成物の腐敗を停止させると共に、反応生成物中に、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成される、検出可能で耐久性状態にあり、かつ高アルカリ状態で生育可能な微生物を残し」を要件とし(相違点2に相当)、その要件は、本件特許明細書の段落【0030】及び【0031】の、「反応生成物は、その生成過程で水和反応熱と高アルカリ性とによる殺菌によって好アルカリ性微生物などの特定の微生物のみが生息する環境が形成され、また、生成後は、微生物の炭素源となる有機酸が酸化カルシウムとの反応による難溶性のカルシウム塩を形成しており、pHが12以上ある高アルカリ環境下にある。・・・反応生成物が生成される過程で腐敗性廃棄物中に含まれていた大部分の微生物は滅菌され、この環境変化に生き残った微生物のみが生息する」から考えると、大部分の微生物を滅菌し、この環境変化に生き残った微生物のみが生息するようにするための条件を規定しているものと考えられる。
そして、本件発明6は、上記の生き残った微生物すなわち「pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成される検出可能で耐久性状態」にある微生物を利用する醗酵工程を追加することにより(相違点3に相当)、醗酵産物(相違点4に相当)を製造するものである。
そこで、本件発明6の、上記した「反応生成物は、特定の微生物のみが生息する環境が形成されるようにし、大部分の微生物は滅菌され、この環境変化に生き残った微生物のみが生息するようにし、その微生物を利用する醗酵工程を設けることによって醗酵産物を製造する」という技術思想(以下、「技術思想〈殺菌による腐敗停止-選別微生物による発酵〉」という。)が、当業者が容易に着想しえるものか否か検討することで、相違点2?4が当業者が容易に着想しえるものか否かについて検討する。

記載事項2-3、記載事項2-4、記載事項2-6、記載事項2-7によると、甲第2号証の土壌改良材は、すでに土壌改良材として優れたものであり、さらに改良が必要な欠点を有するものではないと考えられるから、この土壌改良材に何らかの処理を追加することを着想することは当業者が容易に導き出せることではない。まして、多数の空隙を有している点が有用であるとされている点を考えると、この空隙を損なってしまうおそれのある処理、例えば本件発明6で醗酵のために加えている水分供給を伴うような処理を追加することなどは避けるべきことでこそあれ、当業者が試みようとすることではないから、土壌改良材に水分供給を伴うような醗酵処理を追加することを着想することも当業者が容易に導き出せることではない。
また、甲第3号証の土壌改良材も、甲第2号証と同様に、すでに土壌改良材として優れたもので改良が必要な欠点を有するものではなく、多数の空隙を有していることで有用であるとの記載があることから(記載事項3-3)(記載事項3-4)(記載事項3-6)(記載事項3-7)、甲第3号証からも、甲第2号証と同様に、この土壌改良材に何らかの処理を追加することを着想することを当業者が容易に導き出せないばかりか、本願発明6で醗酵のために加えている水分供給を伴うような処理を追加してみることは、当業者が容易に導き出せることではない。
甲第4号証、甲第5号証の記載も、甲第2号証、甲第3号証の記載と同旨のものであるから、甲第4号証、甲第5号証からも、さらなる処理の追加の必要性は導き出せない。

そうしてみると、そもそも、引用発明にさらなる処理を追加してみようと着想すること、及び、そのために、引用発明に何らかの別の技術を結びつけてみようとすることは、当業者が容易に着想できるものではない。

次に、甲第6号証?甲第11号証に記載される発明から本件発明6が着想し得るのか否か、また、甲第6号証?甲第11号証に記載される発明に対して、引用発明を応用してみようと、着想し得るのか否かについて検討する。

甲第6号証?甲第11号証に記載された発明は、石灰含有汚泥の堆肥化方法に関するもので、堆肥化のための醗酵を行う前処理として、どのようにしてpHの低下をするかという点に工夫をしたものである(記載事項6-1、記載事項7-1、記載事項8-1、記載事項9-1、記載事項10-1、記載事項11-1)。
そして、記載事項6-1、記載事項7-2、記載事項8-1、記載事項9-1、記載事項10-1、記載事項11-1によれば、石灰含有汚泥中の石灰は、汚泥の脱水を促進するために添加される凝集剤、脱水助剤である。また、記載事項7-2、記載事項11-1によれば、凝集剤、脱水助剤として代表的なものは消石灰である。記載事項10-2に、「消石灰又は生石灰等のアルカリ性脱水助剤」と記載されていることから、カルシウム化合物であれば石灰の種類は問わないものとも考えられるが、代表的なものは消石灰であると考えられる。
しかし、甲第6号証?甲第11号証では、消石灰、生石灰共に凝集剤、脱水助剤として添加するもので、大部分の菌を殺菌して腐敗を停止させ、耐久性状態で生き残る微生物を残すように添加しているものではなく、また、そのようなことを教示しているものでもない。
そうしてみると、甲第6号証?甲第11号証には、石灰を添加することにより大部分の菌を殺菌して腐敗を停止させ、耐久性状態で生き残る微生物を残すようにすることについても、その生き残った微生物を利用して醗酵を行うことについても記載されていないから、甲第6号証?甲第11号証に記載されているのは、凝集剤である石灰を含有する汚泥から堆肥を製造するに際し、石灰含有汚泥のpHを下げることに関する発明であり、この発明から本件発明6を着想し得るものではなく、また、この発明に、引用発明である土壌改良材として優れたものであり、さらに改良が必要な欠点を有するものではないと考えられる土壌改良材の発明を応用してみる必要性は全くないことであるから、甲第6号証?甲第11号証に記載された発明に引用発明を応用することを着想し得るものでもない。
以上のとおりであるから、技術思想〈殺菌による腐敗停止-選別微生物による発酵〉を着想すること、すなわち相違点2?4を着想することは、甲第2号証?甲第11号証に基づいて当業者が容易になしえたものとすることはできない。

なお、請求人は、「甲第6、7、8号証には、pH12以上で生存する微生物により、pH10以下で活溌に醗酵が行われることが示されている。・・・即ち、本発明のアルカリ醗酵は典型的なアルカリ醗酵であり、その微生物も典型的である。」と主張している(弁駁書3頁)が、甲第6、7、8号証に記載された凝集剤は、単に石灰とされるか、消石灰とされており、生石灰を使用することを必須とするものでない。本件発明6は、高活性な生石灰を主成分とする添加剤を添加することを必須とするもので、それにより本件特許明細書の段落【0013】に記載されるような「反応生成物中に難溶性の安定したカルシウム塩を生じさせる。・・・消石灰・・・を添加した場合の凝集作用によって生成される物理的にのみ安定な物質とは全く異質のものとなる。これらの場合には、腐敗性廃棄物中の有機物の分解も不十分なために、カルシウム塩を生成し得ない。」という効果、及び、段落【0079】?【0081】に記載されるような、イ:簡単、低コスト、短時間で完熟堆肥と同等の資材に変換できる、ロ:醗酵を人的に制御でき、二次醗酵のおそれのない醗酵産物を得ることができる、ハ:反応生成物の特異な物理的構造により透水性や保水性に富み、肥効性成分が緩効性で、そのまま単独で培土として利用できる、ニ:上記微生物(当審注:殺菌により、選別された微生物)と特異な物理的構造をもつ微生物環境により、種々の病害抑制能を有する資材を提供できる、という効果を奏するものである。

そうすると、請求人の石灰ならばすべて均等物という旨の上記主張は、当を得たものではなく、該主張により、前記判断が変わるものではない。

(2-2)本件発明7?12について
(1)対比
本件発明7?12は、いずれも本件の請求項6を引用しているから、本件発明6の発明の構成要件を、各々の発明の構成要件の一部とする発明である。
したがって、本件発明7?12の各発明を、引用発明と対比すると、一致点は、(2-1)の(1)に記載した、本件発明6についての一致点と同じであり、相違点は、(2-1)の(1)に記載した相違点1?4で重複し、本件発明7?12において、本件発明6をさらに特定した構成要件がさらに相違点(以下、「相違点5」という。)となる。

(2)判断
相違点1?4については、(2-1)の(2)に記載した理由と同じ理由により、当業者が容易に着想しえるものではない。そうすると、相違点5について検討するまでもなく、本件発明7?12は、当業者が甲第2号証?甲第11号証の記載に基づいて発明することができたものではない。

(2-3)本件発明1について
(1)対比
本件発明1は、「【請求項1】固液混合の腐敗性廃棄物と高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材との反応生成物に水と空気を供給して醗酵させた醗酵産物であって、pH値が12以上の高アルカリ環境下で生存する微生物を含有し、この微生物が、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成され、これら微生物が増殖してpHが8前後に維持されている、ことを特徴とする醗酵産物。」であるから、本件発明1と本件発明6とは、反応生成物を構成する原料が、前者は「固液混合の腐敗性廃棄物と高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材」と特定されているのに対し、後者は「腐敗性廃棄物と高活性な生石灰を主成分とする添加剤」である点で異なり、反応が、前者は特定されていないのに対し、後者は「急激な水和反応・・・殺菌・・・腐敗を停止させると共に・・・検出可能で耐久性状態にあり、・・・生育可能な微生物を残し」と特定されている点で異なり、醗酵産物のpH値が、前者は「pHが8前後に維持されている」と特定されているのに対し、後者は特定がされていない点で異なり、カテゴリーが、前者は「醗酵産物」すなわち、物の発明であるのに対し、後者は「醗酵産物の製造方法」すなわち方法の発明である点で異なる。

しかしながら、本件特許明細書の段落【0008】及び【0010】の記載によれば、原料は、本件発明1も本件発明6も実質的に同じ物である。
また、反応も、同じ原料を使用して生起する反応を利用するものであることや、段落【0001】に「本発明は、腐敗性廃棄物の醗酵産物とその製法に関し、一層詳しくは、腐敗性廃棄物の自然腐敗を一旦停止させた後、耐久性状態にある特定微生物によって所望の時期にアルカリ醗酵させて得られる醗酵産物と、その製法に関するものである。」と記載され、さらに、段落【0005】にも同様の記載があるほか、本件特許明細書には、本件発明1の醗酵産物が、本件発明6の製造方法によらないものである旨の記載は一切ないことから、実質的に同じ反応である。
さらに、醗酵産物のpH値も、同じ原料に同じ反応をさせ、同じ微生物で醗酵させたものであることから、同じpH値になっているものと考えられることや、段落【0055】に記載される本件発明6の製造方法による実施例で、醗酵後のpHが7.78になっていることから、醗酵産物のpH値も実質的に同じpH値である。
そうすると、本件発明1と本件発明6とは、カテゴリーが、前者は「醗酵産物」すなわち、物の発明であるのに対し、後者は「醗酵産物の製造方法」すなわち方法の発明である点でのみ異なる。

そこで、本件発明1と引用発明とを対比すると、一致点は、(2-1)の(1)の項の本件発明6の場合と同じであり、相違点は、同項の本件発明6の場合と重複し、その外に、カテゴリーが異なるという点でさらなる相違点を有する(以下、「さらなる相違点」という。)ものである。

(2)判断
相違点については、(2-1)の(2)に記載した理由と同じ理由により、当業者が容易に着想しえるものではない。そうすると、さらなる相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲第2号証?甲第11号証の記載に基づいて発明することができたものではない。

(2-4)本件発明2?5について
(1)対比
本件発明2?5は、いずれも本件の請求項1を引用しているから、本件発明1の発明の構成要件を、各発明の構成要件の一部とする発明である。
したがって、本件発明2?5の各発明を、引用発明と対比すると、一致点は、(2-3)の(1)に記載した、本件発明1の場合と同じであり、相違点は、(2-3)の(1)に記載したものと重複する。そして、本件発明2?5は、本件発明1をさらに特定した構成要件が新たな相違点となる。

(2)判断
相違点については、(2-3)の(2)に記載した理由と同じ理由により、当業者が容易に着想しえるものではない。そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2?5は、当業者が甲第2号証?甲第11号証の記載に基づいて発明することができたものではない。

III.無効理由3について
1.請求人が主張する、本件明細書の不備は、概略次の(1)?(3)のようなものである。
(1)特許請求の範囲の、下記A-1?A-8の記載が不明瞭であるため、発明の範囲が不明瞭である。
請求項1について
A-1:高活性な
A-2:主成分
A-3:pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリア と、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとか ら成るバクテリア群
A-4:pHが8前後
請求項6について
A-5:高活性な
A-6:主成分
A-7:pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリア と、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとか ら成るバクテリア群
A-8:適宜の時期
(2)請求項1、6に「水と空気を供給する」と記載しているが、実施例では水も空気も積極的に供給しておらず、むしろ乾燥していて、両者にくい違いがあり、また、どのようにしてどのような量の水と空気を供給するのかが記載されておらず、当業者が容易に実施できない。
(3)豚糞用以外の腐敗性廃棄物を反応させた場合、本件請求項1?6及び9?12に記載の微生物が増殖するか不明である。

2.請求人の上記主張を検討する。
(2-1)主張A-1、A-2及びA-5、A-6について
(1)請求人の主張
「高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材」あるいは「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」がどのような材料か不明であると請求人から主張されたことに対して、被請求人が答弁書に添付した乙第1号証の陳述書で「当社が・・・「十和田土壌改良」の工場に販売、納入した・・・「白竜生石灰」は、一般に販売されている生石灰と異なり、活性度の高い製品でした」と反論してきたのに答えて、請求人は、弁駁書に添付して参考資料(理化学辞典「石灰」の項)を提出するとともに、依然として「高活性」の意味、「主成分」の意味が不明瞭であると主張し、さらに、平成18年6月23日付け上申書に添付してサイロの写真を提出し同旨の主張を再度している。
(2)判断
本件特許明細書の段落【0010】には、高活性な添加剤の具備すべき多数の条件が明確に記載されていると共に、段落【0011】?【0012】には、前記条件の一つである温度上昇条件についてさらに具体的に記載されている。
そして、そのような条件を具備する高活性な添加剤の添加は、段落【0013】に記載されるように、腐敗性廃棄物中のセルロース等の低分子化合物への分解、急速なカルシウムイオンの解離、難溶性の安定したカルシウム塩の生成を起こすように、かつ、段落【0030】?【0031】に記載されるように、水和反応熱と高アルカリ性とによる殺菌により腐敗性廃棄物中に含まれていた大部分の微生物を滅菌し、特定の微生物のみが生き残るように添加するものであることも明確に記載されており、さらに、その生き残る微生物についても、段落【0033】の表に、本件請求項1?6、9?12に特定されている微生物が明確に記載されている。
そうしてみると、本件発明で使用する、「高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材」あるいは「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」は、上記した段落【0010】?【0012】に記載されている性質を具備するもので、かつ、段落【0013】及び【0030】?【0031】に記載されるような反応及び殺菌能を奏するように添加するものと定義されていることは明らかであるから、「高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材」あるいは「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」が不明瞭ということはなく、発明の範囲が不明瞭ということもない。
また、「高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材」あるいは「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」を入手する具体的方法として、被請求人は、審尋に対する回答書で「概括的には、横型焼成装置(ロータリーキルン)によって生石灰から焼成された直後の酸化カルシウムもしくは生石灰をいう。この『高活性な酸化カルシウム』を入手するにあたり、石灰メーカーに提示する条件について述べる。(以下省略)」と記載しているので(回答書5頁4行?6頁末6行)、「高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材」あるいは「高活性な生石灰を主成分とする添加剤」が入手できないため、本件発明を実施することができないということもない。

(2-2)主張A-3及びA-7について
(1)請求人の主張
境界のpH9がグループ2に属するのか、あるいはグループ3に属するのか明確ではない、あるいは、異なるグループに定義されるpH領域を跨いで生育する、例えば90-4菌などはどのグループに属するのか不明瞭であるから、第1?第3のグループの区別が不明瞭であると主張している。
(2)判断
異なるグループに定義されるpH領域を跨いで生育する菌を、本件発明は排除するものではない(例えば、ある微生物がpH8?10で良好に生育する場合、その微生物は第2のグループ及び第3のグループの両方に分類されるものとなると考えられる。)から、異なるグループの境界pH値が同じであったとしても本件発明を不明確にするものではない(ある微生物がpH11で増殖を開始し、pH11で良好に生育するものであればその微生物は第1のグループ及び第2のグループの両方に分類されることは明らかである。)。
したがって、第1?第3のグループの区別が不明瞭であるということはなく、発明の範囲が不明瞭ということもない。

(2-3)主張A-4及びA-8について
(1)請求人の主張
pHについての「8前後」、及び、水分と空気の供給時期に関する「適宜の時期」が不明瞭であり、発明の範囲が不明瞭であると主張している。
(2)判断
「8前後」とは、醗酵産物として使用し得る程度のpH8ということで、不明瞭でない。
また、「適宜の時期」も、醗酵を開始させ、進行するような適宜の時期ということで、不明瞭でない。

(2-4)主張(2)について
(1)請求人の主張
請求項1、6に「水と空気を供給する」旨記載しているが、実施例では水も空気も積極的に供給しておらず、むしろ乾燥していて、両者にくい違いがあり、また、どのようにしてどのような量の水と空気を供給するのかが記載されておらず、当業者が容易に実施できないと主張している。
(2)判断
水と空気を供給する目的は、醗酵を開始させ、進行させるものであるから、その目的から考えれば、どのようにしてどのような量の水と空気を供給するのかは、特に記載がなくても、本件発明の実施を不可能にするものではない。

(2-5)主張(3)について
(1)請求人の主張
豚糞用以外の腐敗性廃棄物を反応させた場合、本件請求項1?6及び9?12に記載の微生物が増殖するか不明であると主張している。
(2)判断
被請求人は、上記点について、審尋に対する回答書で、「腐敗性廃棄物・・・には、種々の微生物が含まれている。その種類は、特定のしようがないほど数多く存在する。そして、このもともと含まれている微生物及び空気中に存在する雑菌の中に、有機物分解(腐敗を含む)に寄与する微生物がある。・・・分解に寄与し得る微生物群は、腐敗性廃棄物中に有機物を分解するための特殊な微生物を新たに添加したような場合を除き、腐敗性廃棄物の種類が異なるからといって相違するものではない。・・・腐敗性廃棄物には、豚糞尿、牛糞尿、食品残渣あるいは上下水余剰汚泥などいろいろなものが含まれるものの、微生物によって分解される有機質成分は、たんぱく質、アミノ酸、セルローズ、リグニンなどほとんど同じ成分である。したがって、これらを分解する微生物群も同様なものであると考えるのが妥当でありましょう。」と説明している(回答書2頁19?31行)。
そして、被請求人が説明している内容は、妥当なものと認められるから、豚糞用以外の腐敗性廃棄物を反応させた場合も同様に、本件請求項1?6及び9?12に記載の微生物が増殖すると判断される。

3.そうすると、本件特許明細書の記載には、請求人が主張するような不備はない。

IV.無効理由4について
1.請求人は、本件の訂正前の請求項3及び10には、第2のグループに属するバクテリアの一つとして、「90-7菌」が記載されているが、これは新規事項に相当すると、主張している。

2.上記主張を検討する。
本件の訂正前の請求項3及び10は、「第4 1.」の項に記載されているように訂正されて、第2のグループに属するバクテリアから「90-7菌」は削除されているところ、「第4 3.」に記載したように、この訂正は認められている。
したがって、請求人の主張する新規事項に該当する補正は存在しなくなったので、無効理由4は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件請求項1?12に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
醗酵産物とその製法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】固液混合の腐敗性廃棄物と高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材との反応生成物に水と空気を供給して醗酵させた醗酵産物であって、pH値が12以上の高アルカリ環境下で生存する微生物を含有し、この微生物が、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成され、これら微生物が増殖してpHが8前後に維持されている、ことを特徴とする醗酵産物。
【請求項2】前記第1のグループに属するバクテリアが、GM-4菌である、請求項1記載の醗酵産物。
【請求項3】前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、もしくは90-4菌である、請求項1記載の醗酵産物。
【請求項4】前記第3のグループに属するバクテリアの一つが、90-1菌、90-2菌、90-3菌、90-4菌、90-7菌、90-8菌、90-10菌、もしくは90-11菌である、請求項1記載の醗酵産物。
【請求項5】前記糸状菌が90-F-1菌である請求項1に記載の醗酵産物。
【請求項6】腐敗性廃棄物に高活性な生石灰を主成分とする添加剤を添加することにより急激な水和反応を生じさせ、この水和反応の反応熱と高いアルカリ環境によるアルカリ殺菌によって反応生成物の腐敗を停止させると共に、反応生成物中に、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成される、検出可能で耐久性状態にあり、かつ高アルカリ状態で生育可能な微生物を残し、適宜の時期に水分と空気とを供給することにより、上記バクテリア群を用いてpH値を継承的に下げ、pH値の下降に伴い、反応生成物中に生存する耐久性状態にあった糸状菌と90-A-1菌を増殖させ、これらの微生物の増殖によって反応生成物をアルカリ醗酵させるようにした、ことを特徴とする醗酵産物の製造方法。
【請求項7】前記水和反応によって酸化カルシウム中のカルシウムイオンが解離されると共に腐敗性廃棄物中のアミノ酸から低級脂肪酸が生成され、この生成された低級脂肪酸及び腐敗性廃棄物中に元々含まれている低級脂肪酸を含む酸類と、上記解離されたカルシウムイオンとが結合してカルシウム塩が生成される、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項8】前記水和反応直後の反応生成物のpH値が12から13の高アルカリ状態にある、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項9】前記第1のグループに属するバクテリアが、GM-4菌もしくはGM-5菌の少なくとも一つの菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項10】前記第2のグループに属するバクテリアの一つが、GM-5菌、GM-8菌、GM-9菌、もしくは90-4菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項11】前記第3のグループに属するバクテリアの一つが、90-1菌、90-2菌、90-3菌、90-4菌、90-7菌、90-8菌、90-10菌、もしくは90-11菌である、請求項6記載の醗酵産物の製造方法。
【請求項12】前記糸状菌が90-F-1菌である請求項6に記載の醗酵産物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、腐敗性廃棄物の醗酵産物とその製法に関し、一層詳しくは、腐敗性廃棄物の自然腐敗を一旦停止させた後、耐久性状態にある特定微生物によって所望の時期にアルカリ醗酵させて得られる醗酵産物と、その製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】家畜糞尿、上下水余剰汚泥その他の腐敗性廃棄物(焼酎カス、動物血液等を含む)は、従来、その腐敗性廃棄物中に生存する、腸内細菌群、例えば大腸菌、エンテロバクターなどの微生物により、あるいは光合成細菌や麹カビ等といった特定の添加微生物資材によって有機物を分解させることにより、堆肥または土壌改良材として資材化される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これら従来の醗酵による資材化は、往々にして醗酵という言葉を使用するものの、実際には上記した微生物による有機物の単なる分解、即ち自然腐敗に頼るものであるため、悪臭が長期にわたって発生したり、あるいは腐敗性廃棄物中に溶解している可溶性成分が流出し、また、堆肥化に長期間を要するばかりでなく人的制御が難しく、更に二次腐敗による資材劣化を生じるなどの点で問題を有する。
【0004】また、このようにして醗酵させて得られた資材のうち堆肥は、土に混入したときに微生物によって窒素が吸収される窒素飢餓や、逆に土壌富化の現象を起こすことがある。土壌改良材と称するものも、保水性や透水性あるいは肥効性成分を十分に確保することのできないものが多く、病害抑制に対してはほとんど実効性がない。
【0005】本発明の目的は、上記した腐敗醗酵産物の抱える種々の問題点を解消することにある。即ち、本発明の目的は、腐敗性廃棄物を高熱と高アルカリ環境で殺菌することにより腐敗進行を一旦停止させ、この環境下で耐久性状態にあり、かつ高アルカリ状態で生育可能な微生物を順次増殖させることにより得られるアルカリ醗酵産物とその製法を提供することにある。また、本発明の目的は、短時間でしかも人的制御が容易で、二次醗酵のおそれのない醗酵産物とその製法を提供することにある。また、本発明は、透水性や保水性に富み、肥効性成分が緩効性で、しかもそのまま単独で培土としての利用が可能な醗酵産物とその製法を提供することにある。更に、本発明は、病害抑制に効果的な醗酵産物とその製法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る醗酵産物は、固液混合の腐敗性廃棄物と高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材との反応生成物から成り、pH値が12以上の高アルカリ環境下で生存する微生物を含有し、この微生物が、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成され、これら微生物が増殖してpHが8前後に維持されている、点に特徴がある。
【0007】また、本発明に係る醗酵産物の製造法は、腐敗性廃棄物に高活性な生石灰を主成分とする添加剤を添加することにより急激な水和反応を生じさせ、この水和反応の反応熱と高いアルカリ環境によるアルカリ殺菌によって反応生成物の腐敗を停止させると共に、反応生成物中に、pH11から12未満の間で増殖を開始する第1のグループのバクテリアと、pH11から9の間で良好に生育する第2のグループのバクテリアと、pH9以下で良好に生育する第3のグループのバクテリアとから成るバクテリア群と、糸状菌と、90-A-1菌とから構成される、検出可能で耐久性状態にあり、かつ高アルカリ状態で生育可能な微生物を残し、適宜の時期に水分と空気とを供給することにより、上記バクテリア群を用いてpH値を継承的に下げ、pH値の下降に伴い、反応生成物中に生存する耐久性状態にあった糸状菌と90-A-1菌を増殖させ、これらの微生物の増殖によって反応生成物をアルカリ醗酵させるようにした、点に特徴がある。
【0008】本発明の原材料として用いられる腐敗性廃棄物には、豚し尿(糞を含む)、鶏糞その他の家畜糞尿、動物血液、上下水余剰汚泥、焼酎カス等の食品製造工場から排出される腐敗性残渣などがある。例えば豚し尿の場合には通常86.5%?94.5%、乾燥鶏糞の場合には通常15?30%、上下水余剰汚泥の場合には通常75?97%、食品工場の腐敗性残渣の場合には通常75?95%の水分をそれぞれ含んでいるが、本発明の原材料として用いるには水分を75?97%の状態に調整することが望ましい。
【0009】上記原材料には、高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加剤が添加されて混合撹拌される。具体的には、上記した腐敗性の産業廃棄物100重量部に対して所定の添加剤を5?25重量部加え、両者を反応させる。
【0010】高活性な添加剤は、次の条件を具備するものが望ましい。▲1▼酸化カルシウムの含有率が高く(望ましくは95%以上)、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及びその他の物質の含有率が低いこと。尚、組成成分として酸化マグネシウムが少量(例えば5%以下)含まれていても良い。▲2▼多孔性を有し、表面積及び比表面積が広大で、細孔組織が高度に発達していること。▲3▼水に少量を接触させたときに、優れた分散性、例えば全方向に広く速やかに分散する性質を有すること。▲4▼水に中量を添加したときに、激しくかつ速やかに反応して水蒸気を発生させること。▲5▼水に一定量を添加したときに充分に反応し、理論値に近似した温度上昇が認められること。更に必要によっては、▲6▼水と接触後の消石灰を主成分とするスラリーにおいて、沈降速度が小で、沈降現象が認められないこと。
【0011】本発明に使用される添加材が水に添加されたときの昇温速度を、市販の生石灰と比較した結果を図1に示す。また、4物質について反応時の理論値に対する実測反応温度の割合を図2に示す。市販の生石灰は、空気接触していない開封直後のもの(1)と、開封後、湿度90%の環境下に1時間放置したもの(2)と、開封後、同様の環境下に4時間放置したもの(3)の3種類を用意した。両図は、初期水温20度Cの水100mlに本添加材と上記3種類の市販生石灰(1)?(3)をそれぞれ20g添加したときの昇温速度(度C/秒)の違いと実測温度の理論値に対する割合とをグラフで示してある。
【0012】これらの図から明らかなように、本添加材は他の市販品(1)から(3)に比べて昇温速度が著しく大、即ち、極めて短時間(1秒前後)で高い温度まで急上昇していることが解る。このことは、水和反応によって添加材中の酸化カルシウムからカルシウムのほとんどが瞬間的にイオン化して解離されることと、腐敗性廃棄物中に含まれている有機物を熱分解するに必要な局部的高熱状態が創りだされることを意味している。
【0013】従って、本添加材を腐敗性廃棄物中に添加すると、同廃棄物中のセルローズ、リグニン、高分子量蛋白質、リン脂質などがアルカリ性の下で励起され、酸化カルシウムと水との反応による局部的高熱によって低分子化合物に分解される。そして、急速に解離されたカルシウムイオンが、上記分解された低分子化合物の端末基あるいは上記リン脂質、高級脂肪酸のみならず、蟻酸や酢酸といった低級脂肪酸とも結合して、反応生成物中に難溶性の安定したカルシウム塩を生じさせる。この化学反応、特に低級脂肪酸との錯塩反応によって生成されたカルシウム化合物は、例えば消石灰や前記市販の生石灰を添加した場合の凝集作用によって生成される物理的にのみ安定な物質とは全く異質のものとなる。これらの場合には、カルシウムイオンの解離度も低くあるいは解離する速度も緩やかで、また腐敗性廃棄物中の有機物の分解も不十分なために、カルシウム塩を生成し得ない。
【0014】表1から表4は、家畜糞尿に本添加材をそれぞれ5%(F5)、10%(F10)、20%(F20)添加したときの炭素量、窒素量、脂質及び主要な有機酸量、並びに無機成分量のそれぞれ変化を見た表である。なお、これらの表において、対照物は添加剤を添加する前の豚の生糞尿である。また、換算値は添加剤を添加した処理物の各成分実測値×(対照物の有機物量÷添加剤添加処理物の有機物量)であり、減少率は1-(添加剤添加処理物の各成分換算値÷対照物の各成分実測値)×100(%)に基づいて計算した。
【0015】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0016】図3は、腐敗性廃棄物中に含まれる可溶性有機酸類が、本発明における上記反応生成物中に難溶性のカルシウム塩として固定されていることを示すための実験結果のグラフである。乾燥糞尿と堆肥化物では、水洗浄した後の塩酸洗浄では溶出割合が10%をきっているのに対して、反応生成物の場合には、水洗浄後の塩酸洗浄でも40%程度の有機酸が溶出されている。これは、本発明に係る反応生成物の場合、有機酸が水に難溶性で酸に可溶性のカルシウム化合物として固定されていることを示している。しかも、その内訳として蟻酸が固定されている点に著しい特徴を有する。
【0017】蟻酸は、本来、比較的に不安定であって揮散し易い物質である。しかしながら、本発明方法では上記した反応によって瞬間的に多量に解離されたカルシウムイオンが、蟻酸とすばやく結合してこれを蟻酸カルシウムとして固定化する。蟻酸等の低級脂肪酸は、腐敗性廃棄物中に元々含まれているだけでなく、前記した反応熱によって腐敗性廃棄物中の蛋白質やアミノ酸が熱分解されることによっても生成される。新たに生成されたこの蟻酸等を含む低級の脂肪酸も、前記カルシウムイオンによってカルシウム塩として固定化される。ちなみに水酸化カルシウムを添加材として使用した場合には、蟻酸の固定化、即ちカルシウム塩の形成は極めて困難で、蟻酸は空中に揮散するか、雨水などにより流出することになる。
【0018】上記の化学反応によって、腐敗性廃棄物中に含まれる高級の脂肪酸も同様にカルシウム塩として形成される。また腐敗性廃棄物中に含まれる他の有機物、例えば水溶性リン酸は、その約98%が有効態のリン酸カルシウムとして固定される。有効態のリン酸カルシウムは、腐敗性廃棄物中に含まれるリン酸及びリン脂質中に含まれるリン酸と添加材との反応によって生成されるので、反応生成物中からは、原材料たる腐敗性廃棄物中に含まれていた水溶性リン酸及び脂質が著しく減少する。
【0019】グリセライドを比較的に多量に含有する腐敗性廃棄物の場合には、このグリセライドも活性力の強い酸化カルシウムによって安定した難溶性のカルシウム塩となる。このため、上記反応生成物自体は嫌気性醗酵やガスあるいは害虫の発生等を生じることがない。
【0020】カルシウム塩の生成に寄与しないカルシウムイオンの残部は、消和反応によって水酸化カルシウムに、また炭酸ガスと接触して炭酸カルシウムにそれぞれ変換されて反応生成物中に混在する。カルシウム塩を含めたこれらのカルシウム化合物の割合の一例を示すと、添加した酸化カルシウムの量を100とした場合、水酸化カルシウムが約18%、炭酸カルシウムが約48%、カルシウム塩が約34%である。
【0021】酸化カルシウムを添加することによって、カルシウム化合物が生成されるだけでなく、腐敗性廃棄物中に含有されているアンモニアやアミン類などの塩基性成分がガス状となって除去される。すなわち、水和反応時に脱窒現象が行われる。この結果、反応生成物中の窒素含有量を適量に調整することが可能となる。従って、本生成物をその生成物中に生存する後述の微生物により発酵させて製造した培土では、窒素過多現象や後醗酵による製品の品質劣化や嫌気性環境の形成が防止される。
【0022】添加材による反応時間は、長すぎると練り現象(ペースト化、微細化)を呈し、生成される培土が団粒構造になりにくく、また乾燥しにくくなることから、一般的には15分以内が望ましい。但し、原材料中に、例えばリン脂質、液状油分、塩基性物質、難分解性の高分子化合物などの反応しにくい物質が含まれている場合には反応時間は適宜延長される。添加材は、一回で上記量を添加せずに、多回に分割して添加するようにしても良い。
【0023】このようにして反応生成物は、上記したカルシウム化合物と、未反応の有機物及び無機物とが混在し、特にカルシウム化合物が酸化カルシウムの前記した活性により物理的に全方向(立体的全方位)に均一に分散した物質となる。
【0024】次に、製造された反応生成物の性状特性を様々な角度から観察したものを表とともに説明する。先ず、表5から表7は、反応生成物中の窒素、燐酸、及び加里の肥効形態を調べたもので、窒素に関しては(表5参照)、対照資材よりも無機化量が低く、分解が緩やかで、肥効形態が緩やかであることを示している。燐酸に関しては(表6参照)、そのほぼ全量がク溶性で、同様に肥効形態が緩行的であることを示している。また、加里に関しては(表7参照)、その8割以上が水溶性であり、肥効形態は速効的であることを示している。
【0025】
【表5】

【表6】

【表7】

【0026】表8は、本発明に係る反応生成物中のカルシウムの化合形態の分配割合を示したものである。これから明らかなように反応生成物中には34%のカルシウム塩化合物が存在している。また、この反応生成物を土壌施用したときの土壌pH緩衝能曲線を図4に示す。上記表8のカルシウム割合からしてこの反応生成物がアルカリ資材で、pH値を上げる資材であることが分かる。
【0027】
【表8】

【0028】表9は本反応生成物の土壌物理的性質を調べたもので、図5の水分曲線にも見られるように本反応生成物は保水率の良いことが分かる。同図中、▲1▼は易効性有効水分領域を、▲2▼は正常生育有効水分領域を、また▲3▼は非正常生育有効水分領域をそれぞれ示している。また、表9から、三相分布では、対照区に比べ、固相率が減少し、液・気相率が増加しているのが解る。また透水係数は、対照区の約3倍高い値を示した。pFは、試験区では、易・難両水分域において容水量が約40%増加した。これを更に裏付けるものとして土壌施用における水分挙動を示した図6を参照されたい。対照区では雨の降らない時期にはpF値が0に低下し、降雨時には極端に曲線が上昇するのに対し、本反応生成物の施用区ではpF値が平均して2.5程度に保たれており、その保水性が向上しているのが解る。
【0029】
【表9】

【0030】こうした物理的、化学的特性を有する反応生成物は、その生成過程で水和反応熱と高アルカリ性とによる殺菌によって好アルカリ性微生物などの特定の微生物のみが生息する環境が形成され、また、生成後は、微生物の炭素源となる有機酸が酸化カルシウムとの反応による難溶性のカルシウム塩を形成しており、pHが12以上ある高アルカリ環境下にある。
【0031】反応過程での反応熱は図1に示した通り、瞬間的に急激に上昇しており、また結果物としての反応生成物は上記したように強アルカリ状態にある。従って、反応生成物が生成される過程で腐敗性廃棄物中に含まれていた大部分の微生物は滅菌され、この環境変化に生き残った微生物のみが生息する。
【0032】これらの微生物は、豚糞尿を原材料とする反応生成物の場合、以下に述べる表10から表13に示す細菌群と糸状菌と90-A-1菌(放線菌と思われる)とを含んでいる。表10は醗酵に伴う細菌群の推移とその数量を示しており、表11は醗酵に伴う微生物群の推移とその数量を示しており、また表12は醗酵に伴い増殖した細菌群の環境及び栄養に対する特徴を表し、さらに表13は単離細菌の生育環境を示している。
【0033】
【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0034】細菌は、例えば104/gレベルで検出可能な優先種となっており、放線菌と糸状菌とは102/gレベルでも検出されない。ここで検出された細菌は、全てが耐熱胞子を形成し、好気的に生育するものであり、バチルス(Bacillus)属に所属するものが多い。これら微生物は、いずれも反応生成物中では休眠状態にある。
【0035】表13は、上記休眠状態にある細菌群の生育環境を示している。これらの細菌群には多数の新菌が含まれており、それらを新菌とする根拠は次の通りである。
GM-4菌(なお、表10乃至表13中では代表菌株NO.0-7に対応する。微工研寄託NO.FERM P-13578)菌で、楕円から長楕円の胞子を形成すること及び寒天平板上でのコロニーが乱糸状を示すこと、生育pH域が7?11の範囲にあること、並びに生理的性状で、カタラーゼ陽性、VP陰性、MR陰性、デンプンの分解陰性等の諸性質からBacillus badiusの近縁種と考えられるが、本菌が硝酸還元能を有すること及びクエン酸利用能を有する点でB.badiusとは異なるので、新種と判断した。
【0036】
GM-5菌(表10乃至表13中では代表菌株NO.30-2に対応する。微工研寄託NO.FERM P-13579)
好気性のグラム陽性桿菌で、胞子形成能を有すること及びカタラーゼ陽性、VP陰性、MR陰性、澱粉の分解陰性等から、B.brevis,B.sphaericus,あるいはB.pasteuriiに近い菌と考えられるが、ウレアーゼ陽性、ゼラチン及びカゼイン分解能陰性、7%NaClで生育すること、Xyloseから酸を生成する点でB.brevisとは異なる。また、B.sphaericusとは、本菌の胞子が楕円形であること、硝酸還元能を有すること、及びXylose,D-Mannitolから酸を生成する点で異なる。更に、B.pasteuriiとは、胞子の形が楕円形であること、嫌気的条件で生育しないこと及びゼラチンを分解しない点で異なるので、新種と判断した。
【0037】
GM-8菌(表10乃至表13中では代表菌株NO.30-1に対応する。微工研寄託NO.FERM P-13581)
好気性のグラム陽性桿菌で、胞子形成能を有すること及びカタラーゼ陽性、VP陰性、MR陰性、澱粉の分解陽性等から、B.firmusの近縁種と考えられるが、本菌は55°Cで生育できること及びクエン酸の利用能が陽性であること、マニトールから酸を生成しない点で、B.firmusとは異なるので、新種と判断した。
【0038】
GM-9菌(表10乃至表13中では代表菌株NO.60-7に対応する。微工研寄託NO.FERM P-13582)
胞子の形が一部球状であること、硝酸還元能が陰性であること、アラビノース、キシロース、D-マニトールから酸を生成しないこと、生育因子を要求する点でB.subtilisとは異なるため、新種と判断した。
【0039】
90-4菌(微工研寄託NO.FERM P-14218)
本菌は胞子の形が球状であること、50°Cで生育できる点で、B.lentusとは異なるので、新種と判断した。
【0040】
90-7菌(微工研寄託NO.FERM P-14219)
本菌はウレアーゼ陽性、カゼイン分解能陰性及び7%NaClで生育できる点でB.brevisとは異なる。又、胞子の形が短楕円形であること、硝酸還元能が陽性である点でB.sphaericusとは異なる。更に、本菌株の胞子の形が短楕円形であること、嫌気条件で生育しないことの2点でB.pasteuriiとは異なる。よって、新種と判断した。
【0041】
90-11菌(微工研寄託NO.FERM P-14213)
本菌は、胞子嚢の膨らみがなく、ウレアーゼ陽性、カゼイン分解能陰性、7%NaClで生育可能な点でB.brevisとは異なる。また、胞子の形が楕円形であること、胞子嚢に膨らみがないこと、硝酸塩還元能陽性という点で、B.sphaericusとは異なる。更に、胞子の形が楕円形であること、胞子嚢に膨らみがないこと、嫌気条件下で生育できないことからB.pasteuriiとは異なる。よって新種と判断した。
【0042】
90-1菌(微工研寄託NO.FERM P-14215)
本菌株は、55°Cで生育すること、胞子嚢に膨らみがあること、嫌気条件下で生育できること、クエン酸を利用できること、マニトールから酸を生成しないことでB.firmusとは異なる。よって新種と判断した。
【0043】
90-8菌(微工研寄託NO.FERM P-14220)
本菌株は、カゼインの加水分解能陰性、グルコース及びD-マニトールからの酸の生成陰性及び55°Cで生育可能な点でB.firmusとは異なる。よって新種と判断した。
【0044】
90-2菌(微工研寄託NO.FERM P-14216)
本菌株はCoryneformグループに属する菌と考えられるが、細胞壁ジアミノ酸としてオルニチンを有していること及びキノン分子種がMK-8(H4)を有する点でCoryneform bacteriaとは異なる。なお、細胞壁ジアミノ酸がオルニチン、キノン分子種がMK-8(H4)である菌はBergey’s Manualには記載がないので、新属と判断した。
【0045】
90-3菌(微工研寄託NO.FERM P-14217)
セルロースを分解しない点でCellulomonas属細菌とは異なるので、新属の可能性がある。
【0046】
90-10菌(微工研寄託NO.FERM P-14221)
セルロースを分解しない点でCellulomonas属細菌とは異なるので、新属の可能性がある。なお、90-3と90-10とでは、カゼイン分解能、7%NaCl生育能、プロピオン酸利用能、デンプンの加水分解能において相違点が認められるが、両者は非常に近縁なグループの菌と考えられる。
【0047】また、前記微生物中の糸状菌は、大型の球状の分生子が特徴であり、分生子形成はフィアロ型と思われるが、いわゆる典型的なPenicillium型とは異なり、不明の部分が多い。よって新種の菌と判断し、90-F-1菌(微工研寄託NO.FERM P-14214)と命名した。
【0048】更に、前記放線菌と思われる菌(90-A-1菌、微工研寄託NO.FERMP-14222)は、菌糸は分断せず、気中菌糸の形成は認められない。菌体加水分解中のジアミノピメリン酸はmeso-DAPである。イースト・麦芽寒天培地で良好に生育し、コーラル赤のバター状のコロニーを形成する。
【0049】前記したように反応生成物中の微生物は休眠状態にあり、したがって反応生成物においては、微生物による有機物分解が行われず、腐敗が停止された状態にある。このため、反応生成物は有機物の発する臭気(糞便臭)が若干感じられるものの腐敗は進行しない。なお、腐敗性廃棄物に消石灰を混合した場合には、高い反応熱が得られないため、蟻酸をはじめとする低級脂肪酸のカルシウム塩化率は低く、アンモニア等の脱窒も起こらない。また、分解されない固形物が消石灰の周りに凝集されるだけなので、資材のpHも均一にならず、可溶性成分も多く、一般微生物もかなり大量に生存しているので、pHが生成直後に12以上あっても、腸内細菌等酸を生成する微生物の増殖により反応生成物のpHが低下すると、それまで抑制されていた他の微生物の増殖が一気に起こり、悪臭の発生を伴う異常発酵が起こる。これに対し、本発明方法に係る反応生成物では、上記した理由から有害ガスの発生や有害微生物の増殖といった未分解有機物による弊害を生じない。
【0050】そして、所望の時期にこの反応生成物に水分と空気とを供給すると、空気中の二酸化炭素によって中和され、pH値が12以下に下がり、上記アルカリ環境下で生息する細菌群が増殖をはじめる(図7参照)。特にGM-4菌が高アルカリ環境下(pH11からpH12未満)で増殖可能であることから(表13参照)、この菌が優先的に増殖を開始する。この醗酵に伴ってpH値が低下する。このpHの低下に伴い、これまで増殖できなかった他の菌群の増殖が可能となる。GM-5菌はpH10の環境下で増殖可能であるので、GM-4菌の増殖がある程度進むとGM-5菌もこれに呼応して増殖を開始する。
【0051】これら両GM菌の増殖に伴い、反応熱が発生し、反応生成物の温度が上昇する。これにより、休眠状態にあったGM-8菌(微工研寄託NO.FERM P-13581)及びGM-9菌(微工研寄託NO.FERM P-13582)の増殖が始まる。GM-9菌は、後述すように、熱を発生する菌として周知のB.subtilisに似た菌であるため、更に反応生成物の温度を上昇させる。
【0052】そして、これら菌群の増殖が活発になるにつれてますます反応生成物のpHが低下する。このpHの低下が放線菌と糸状菌の増殖可能な域に達すると、当初は検出不可能な菌数にすぎなかったこれら両菌が増殖を開始する。両菌は、前記した高熱及び高アルカリ環境下で生残した菌であるから、耐久性胞子を有する菌である。
【0053】また、pHが10から9の間では90-4菌も増殖を行う。そして、pHが9になると、90-7菌、90-11菌、90-1菌、90-8菌、90-2菌、90-3菌、及び90-10菌が良好な増殖を行い、pH値を更に8のやや上付近まで低下させる(表10乃至図7参照)。なお、細菌群は表13にみられるとおり、ほとんどのものが食塩耐性を有し、この中には好塩性菌と思われるものも存在するので、土壌に還元したときに土壌中の塩分を吸収し、土壌に塩障害をなくす作用があると考えられる。これら細菌が定常期に達すると、細菌の増殖がほぼ停止し、品温が低下する(図8参照)。これにより、放線菌と糸状菌の増殖がますます活発に行われるため、反応生成物中の可溶性有機物は微生物により資化され、同時にこれら菌群の代謝産物が反応生成物中に蓄積される。また、反応生成物中の水酸化カルシウムは、微生物群による一連の醗酵作用によって炭酸カルシウムになる。この結果、反応生成物は、上記微生物群によって植物にとって有益な物理的及び化学的特性を有する醗酵産物となる。
【0054】
【実施例】以下、本発明の実施例を示す。原材料として豚糞尿100Kgに対して高活性な酸化カルシウムを10Kg添加し、これを反応機中で15分間混合撹拌し、スラリー状の反応生成物110Kgを得た。これを温度30度Cの乾燥室にて乾燥し、約20%の水分を除去した後、保管し、60日後に醗酵槽に投入した。醗酵槽からほぼ72時間後に取り出したところ、約40Kgの醗酵産物を得ることができた。この醗酵産物は、カルシウム化合物が15Kg(乾物重量)で、醗酵した有機物及び他の無機物が12Kg(乾物重量)であった。
【0055】上記醗酵物のpH値等及び組成成分中のカルシウムとマグネシウムとカリウムの重量%を、反応生成物と比較する。先ず、反応生成物は、pHが12.6、ECが6.9、全カルシウム量が28.2%、全マグネシウム量が1.54%、全カリウム量が1.48%であったのに対して、醗酵物は、pHが7.78、ECが2.62、全カルシウム量が25.8%、全マグネシウム量が0.88%、全カリウム量が0.66%であった。
【0056】図8は、前記のようにして得られた反応生成物に適度の水分を与えて醗酵させたときの温度、pH及びECの経時変化を示したものである。本図から明らかなように、温度は最初の7日間で急激に上昇し、続く14日では緩やかに上昇した。しかし、その後は急激に低下し、21日後には最初の品温にまで戻った。pHは、温度上昇が観察された14日間はpH12?13?8.6付近までほぼ直線的に下降したが、品温の低下が開始された14日以降では下降直線の勾配は緩やかになり、ほぼ横ばいの傾向を示した。一方、EC値は、最初の7日は12から8まで急激に低下したが、それ以降の14日間はEC8からEC5とやゝ緩やかな勾配でほぼ直線的に低下した。
【0057】図7は、醗酵過程における微生物の消長を示したものである。最初に増殖する微生物は細菌であり、放線菌及び糸状菌は検出されなかった。細菌の増殖は醗酵開始数日後から急上昇した。即ち、約14日間が対数増殖期前期及び中期であり、その後約7日間が対数増殖期後期の増殖曲線を示した。醗酵開始から14日後にpHが9以下に低下すると放線菌及び糸状菌が検出されるようになった。この時期、特に放線菌が顕著な増殖を示すことが分かった。
【0058】以上述べたように、本反応生成物は腸内細菌や一般細菌が極めて増殖困難な環境における醗酵資材であるため、本環境に適応できる特異な微生物によって醗酵されていくことが強く示唆された。また、これら微生物は、本醗酵の期間全体に関与するものではなく、経時的に変化する環境に応じて種々異なる微生物が優先種となり、醗酵を促進していくものと解釈される。
【0059】醗酵生成物は以下の特徴をもっていた。
色:褐色?薄黒褐色。
臭気:堆肥臭もしくは殆ど無臭。
形状:原物の形状を全く認めない。小粒状。
水分:強く握っても掌に殆ど付かない。水分30%位。
熟度判定基準(原田;1984)においては最高品質のグレードと判定できる。
【0060】この醗酵物は、完熟の条件を満たす堆肥あるいは植物用培地としてそのまま用いることができた。特に、メロン、小松菜、ほうれん草、茄子、トマト、キュウリなどの各種作物の育成用培土として一般に使用することができた。これらの培土として使用した場合には、カルシウム塩中に含まれている種々の有機酸が栽培植物の根に吸収され易い形態となっており、それぞれの植物特性を高めるように作用する。例えば、糖度の向上、含水率の低下、耐病性の向上、澱粉含量の増大、葉厚の向上を図る。また、開花時期を早め、根張りも良好となるなどの実施例が報告されている。
【0061】更に、各種植物病害に対する効果を調べたところ、フザリウム、モンパ病菌、リゾクトニアによる病害の顕著な抑制効果が認められた。
【0062】平成3年9月より12月にかけ、静岡県立磐田農業高校において、腐植に富む壌質水田土を対照区とし、本発明方法の結果物である醗酵物を試験区としてメロンの栽培試験を行った。施肥はメロン専用有機配合N成分で10g/株を4回に分け、行った。試験区では、水酸化カルシウム及びカリウムの追肥は行わなかった。果実の糖度では、対照区が13.6%であったのに対して、試験区では14.5%と約1%上昇した。
【0063】また、本醗酵産物は、これを水田及び畑地の穀類、根もの、蔬菜類の栽培に施用することにより、これらの生育に対して良好な結果を及ぼすことが判明している。水田に対しては、平成3年から平成4年にかけ、表14に示す条件で稲の栽培試験を行ったところ、その収量に関しては表15、品質及び食味に関しては表16に示す結果が得られた。なお、試験区規模及び配置図を図9に示す。収量に関しては対照区とそれほどかわらないものの、食味において優れたものを生産できたことが解る。また、表17は上記水田施用跡地土壌の成分値を比較したもので、カルシウム資材であるにも拘らずカルシウムが蓄積されず土壌pH値も上昇していないのが解る。
【0064】
【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【0065】本醗酵産物資材による大麦の栽培試験を、平成3年から平成4年にかけて表18に示す栽培条件で図10に示す規模と配置で行ったところ、表19及び表20に示す結果が得られた。なお、E区は1年目は本資材無施用の対照区であったが、2年目ではD区に合区された。したがって2年目は対照区はなくなり、代わってD区の栽培面積は14aとなった。表20から、1年目、2年目のいずれにおいても収量が著しく増大しているのが解る。
【0066】
【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【0067】本醗酵産物資材による甘藷の栽培試験を、平成3年において表21に示す栽培条件で行ったところ、表22に示す結果が得られた。表22から、実収量および1個平均重量が3割増し、澱粉含量および炭水化物含量も増えているのが解る。
【0068】
【表22】

【0069】本醗酵産物資材による長いもの栽培試験を、平成2年から平成3年にかけて表23から表28に示す栽培条件で行ったところ(表23は展示園構成を、表24は試験区の内容を、表25は種概要を、表26は施肥量を、表27は薬剤使用回数を、表28は気象条件を示す。)、表29及び表30に示す結果が得られた。表29は品質規格を比較したもので、3年目においても品質規格にばらつきのないものが得られたことが解る。また、表30は澱粉含量等の品質を比較したもので、1年目と3年目において試験区のものが優れているのが解る。
【0070】
【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【0071】本醗酵産物資材による大豆の栽培試験を、平成元年において表31に示す栽培条件で行ったところ、表32に示す結果が得られた。表32は3粒、2粒莢収量を比較したもので、合計では平均した収量が得られ、堆肥区と遜色の無い、あるいはそれ以上の収量になっているのが解る。
【0072】
【表31】

【表32】

【0073】本醗酵産物資材によるほうれん草連作の栽培試験を、昭和63年において表33に示す栽培条件で行ったところ、生育、収量に関し、表34に示す結果が得られた。表34によれば、生育及び収量共に顕著な効果が見られた。
【0074】
【表33】

【表34】

【0075】大豆の根粒形成に及ぼす本醗酵資材連用の影響を表35に示す栽培条件でおこなったところ、表36に示す結果が得られた。対照区に比較して根粒重量が平均で約40%増加しているのが解る。
【0076】
【表35】

【表36】

【0077】長いもの根腐れ病に対する本醗酵資材連用の影響を見たところ、表37に示す結果が得られた。なお、0は発病なしを、1?4は発病した株のうち、病気の重さを示しており、数字が高くなるほど重い。対照区の2年目は本醗酵資材を施用してあり、この年は本資材単年度施用の試験区として見る。表37に見られる通り、本醗酵資材を施用したところでは、発病度が著しく低いことが解る。
【0078】
【表37】

【0079】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば次の効果を奏する。本発明方法は、腐敗性廃棄物を、アルカリ殺菌環境下で耐久性状態にあった微生物を利用して醗酵させるようにしたものであるから、簡単かつ低コストで、しかも短期間のうちに完熟堆肥と同等な資材に変換できる。
【0080】また、本発明は、上記微生物の増殖開始を人為的に調整できるので、醗酵を人的に制御でき、しかも二次醗酵のおそれのない醗酵産物を得ることができる。また、本発明は、その反応生成物の特異な物理的構造により、透水性や保水性に富み、肥効性成分が緩効性で、しかもそのまま単独で培土としても利用できるものである。
【0081】更に、本発明は、上記微生物と特異な物理的構造をもつ微生物生息環境により、種々の病害抑制能を有する資材を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される酸化カルシウムの水和反応速度を市販の生石灰と比較して示したグラフ
【図2】本発明に使用される酸化カルシウムと市販の生石灰の水和反応の違いを理論値に対する実測反応温度の割合によって示したグラフ
【図3】本発明の水和反応直後の反応生成物と対照資材とを水洗浄したときの溶出有機物の割合比較を示す図
【図4】上記反応生成物を土壌施用したときの土壌pH緩衝能曲線を示すグラフ
【図5】上記反応生成物のpF-水分曲線を示すグラフ
【図6】上記反応生成物を土壌施用したときの水分挙動の実例を示すグラフ
【図7】醗酵過程における微生物の消長を示すグラフ
【図8】醗酵に伴う上記反応生成物の物性変化を示すグラフ
【図9】本醗酵産物を水田施用した実施例における試験区の配置図
【図10】本醗酵産物を畑に施用し、大麦の収量を試験した実施例における試験区の配置図
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-09-11 
結審通知日 2006-09-11 
審決日 2006-09-19 
出願番号 特願平6-66551
審決分類 P 1 113・ 121- YA (C05F)
P 1 113・ 4- YA (C05F)
P 1 113・ 55- YA (C05F)
P 1 113・ 531- YA (C05F)
P 1 113・ 534- YA (C05F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 脇村 善一
鈴木 紀子
登録日 2001-11-22 
登録番号 特許第3252246号(P3252246)
発明の名称 醗酵産物とその製法  
代理人 植田 茂樹  
代理人 植田 茂樹  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 田中 有子  
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