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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1147027
審判番号 不服2005-4667  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-17 
確定日 2006-11-06 
事件の表示 平成 6年特許願第323342号「搭乗シミュレータ及び作動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月 8日出願公開、特開平 7-319377〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成6年12月26日(パリ条約による優先権主張1993年12月27日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成16年12月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成17年3月17日に審判請求がなされたものであり、請求項(1)?(18)に係る発明のうち、その請求項(17)に係る発明は、平成16年11月24日付手続補正によって補正された明細書および図面の記載からみて、請求項(17)に記載された次のとおりのものである。
「搭乗シミュレータ(10)であって、前記シミュレータは、
ベース(11)と、
ベースに対して移動するように載置されたプラットホーム(13)と、
プラットホームとベース間に作動的に配置された起動機構(14)であって、プラットホームおよびベース間で作用して選択的に相対運動を生じる複数の電気機械サーボアクチュエータを含む起動機構と、
起動機構の状態を連続的に監視するフェイルセーフ手段(34)であって、起動機構が(a)指示された位置と実際の位置の間が予め設定された差を越え、または(b)予め設定された運行の範囲を超えることにより起動機構が危険な且つ制御不可能な状況となった時にはプラットホームをベースに対して所定の位置へ自動的に移動させるフェイルセーフ手段と、
を含む搭乗シミュレータ。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物およびその記載内容
これに対して原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-367687号公報(以下、「引用例1」という。)には、「疑似体験遊戯装置の故障処理装置」に関して、図面の【図1】?【図8】とともに、次の記載がある。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】観客席を取付けた動揺台と、この動揺台を駆動する油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータの作動を制御する手段とを備えた疑似体験遊戯装置において、前記油圧アクチュエータの故障を判断する手段と、故障判断時に油圧アクチュエータの駆動を停止する手段と、駆動停止後に故障の程度を判定する手段と、判定結果から油圧アクチュエータを駆動しうる故障時には揺動台を初期位置に復帰させた後に油圧アクチュエータに油圧ロックをかける手段と、同じく油圧アクチュエータを駆動しえない故障時にはそのまま油圧アクチュエータに油圧ロックをかける手段とを備えたことを特徴とする疑似体験遊戯装置の故障処理装置。」
(ロ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は疑似体験遊戯装置における故障発生時の処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】映像や音などに合わせて観客席を動揺させることにより、観客にリアルな疑似体験を与えるようにした疑似体験遊戯装置が、特願平2-71217号を始めとして、本出願人により多く提案されている。
【0003】これは観客席を取付けた動揺台を、三次元方向の運動(上下、ピッチング、ローリング等)と回転ができるように、油圧シリンダ等により映像や音に合わせて駆動するものである。」
(ハ)「【0009】
【課題を解決するための手段】そこでこの発明は、図1に示すように、観客席を取付けた動揺台51と、この動揺台51を駆動する油圧アクチュエータ52と、油圧アクチュエータ52の作動を制御する手段53とを備えた疑似体験遊戯装置において、前記油圧アクチュエータ52の故障を判断する手段54と、故障判断時に油圧アクチュエータ52の駆動を停止する手段55と、駆動停止後に故障の程度を判定する手段56と、判定結果から油圧アクチュエータ52を駆動しうる故障時には揺動台51を初期位置に復帰させた後に油圧アクチュエータ52に油圧ロックをかける手段57と、同じく油圧アクチュエータ52を駆動しえない故障時にはそのまま油圧アクチュエータ52に油圧ロックをかける手段58とを備えた。
【0010】
【作用】したがって、油圧アクチュエータの故障発生時には、まずその位置で動揺台を停止し、故障の程度を判定する。
【0011】判定の結果、油圧アクチュエータを駆動しても危険のないときは、動揺台を初期位置(水平位置)戻してから、油圧ロックをかけて完全に静止状態に保持し、乗客を退避させる。いったん水平に戻してから油圧ロックをかけるので、いきなり油圧ロックをかけて急停止するのに比べてショックは少なく、乗客に不安感を与えることはない。」
(ニ)「【0017】ベース1の上面には、図示しない観客席を取付けた円形の動揺台5が、互いに等間隔で3カ所に配設される。動揺台5は図3にも示すように、ターンテーブル9の上に回転自由に指示され、このターンテーブル9の下面中心部にユニバーサルジョイント10を介して伸縮自在なセンターポスト11が結合する。センターポスト11は左右の昇降シリンダ12によって伸縮し、ターンテーブル9を動揺台5と一体に昇降させる。
【0018】また、ターンテーブル9の下面には2本の揺動シリンダ13と、1本の振れ止めリンク14が異なる方向から結合し、これら揺動シリンダ13が互いに同期して一体に、あるいは個別に伸縮することにより、センターポスト11を支点にして動揺台5を前後、左右に動揺させる。なお、振れ止めリンク14はベース1に対するターンテーブル9の相対回転を阻止する。」
(ホ)「【0022】そして、油圧モータ7,15あるいは、昇降シリンダ12、動揺シリンダ13の作動は、図7に示すコントローラ30によって各サーボバルブ31,32,33を制御することにより制御され、図示しない映像、音響装置等と同期して動揺台5を駆動する。
【0023】例えば、昇降シリンダ12を停止させたまま動揺シリンダ13を同期的に伸縮させると、ターンテーブル9が動揺台5と共にユニバーサルジョイント10を支点として前後に揺れ(ピッチング)動き、また動揺シリンダ13を交互に伸縮させると左右に揺れ(ローリング)動く。さらに、動揺シリンダ13を昇降シリンダ12と同期して伸縮させると、動揺台5を上下させることができる。」
(ヘ)「【0025】図7において、コントローラ30にはオペレータが操作する操作パネル35からの信号が入力すると、予め設定されたプログラムに従って、各油圧アクチュエータの作動が制御されるが、このコントローラ30には油圧アクチュエータの故障等の異常を検出するために、各油圧シリンダの作動ストロークを検出するストロークセンサ36、油圧モータの回転量を検出する回転センサ37、あるいは油圧駆動回路の油圧を検出する圧力センサ38等のからの信号が入力し、これらに基づいて油圧アクチュエータの故障や、その故障の程度を判定し、故障発生時には後述するようにして装置を安全に停止させるようになっている。
【0026】図8に故障発生時の停止処理操作についてのフローチャートを示す。
【0027】ステップ1で各種油圧アクチュエータの動き等を検出するセンサからの情報を読み込み、ステップ2において、これら検出信号と、油圧アクチュエータの作動指令信号とを比較して、油圧アクチュエータの動作に異常が発生したかどうかを判定する。この判定動作は、例えば、油圧アクチュエータの作動目標値と実際の検出値との偏差を見て、これが予め設定された許容値を越えたときなどに異常が発生したものと見做される。
【0028】異常が発生すると、操作を中断して直ちに各サーボバルブを介して全ての油圧アクチュエータの作動を停止させる(ステップ3)。ただし、この時点では油圧駆動回路の油圧ロックがかかることはなく、油圧アクチュエータ停止時のショックは少ない。
【0029】この状態で故障のレベル(程度)を判定する(ステップ4)。故障の程度はそのまま油圧アクチュエータを動かして動揺台5を初期(水平)位置まで安全に戻せる軽微な故障の場合と、油圧アクチュエータを作動させるのが危険な重大な故障の場合とに分けられる。
軽微な故障とは、例えば油圧アクチュエータの作動量の目標値に対する偏差の単位時間当たりの変化量(変化速度)が設定値よりも小さいときなど、そのまま油圧アクチュエータを駆動することができる場合であり、また重大な故障とは、同じく変化速度が大きく、油圧アクチュエータの制御が安定して実行できないときや、油圧回路の油圧が設定値よりも大幅に低下し、油圧アクチュエータの作動が確保できないときなどを含む。
【0030】軽微な故障の場合は、ステップ5,6において、動揺台5を水平な初期位置へと復帰させ、復帰後に油圧ロックをかけて完全に静止させる(ステップ7)。そして、この後に乗客を退避させ、故障部位の点検、修理を実施する(ステップ8,9)。」
上記(イ)?(ヘ)の記載を総合すると引用例1には、
「観客席を取付けた動揺台を映像や音などに合わせて動揺させることにより、観客にリアルな疑似体験を与えるようにした疑似体験遊戯装置であって、疑似体験遊戯装置は、
ベース(1)と、
ベースに対して移動するように載置された動揺台(51,5)と、
動揺台とベース間に作動的に配置された油圧アクチュエータ(52)であって、動揺台およびベース間で作用して選択的に相対運動を生じる複数の油圧アクチュエータと、
油圧アクチュエータの故障等の異常を検出するために、各油圧シリンダの作動ストロークを検出するストロークセンサ(36)、油圧モータの回転量を検出する回転センサ(37)、あるいは油圧駆動回路の油圧を検出する圧力センサ(38)等のからの信号が入力し、これらに基づいて油圧アクチュエータの故障や、その故障の程度を判定し、軽微な故障の場合は、動揺台を水平な初期位置へと復帰させ、復帰後に油圧ロックをかけて完全に静止させるコントローラ(30)
を含む疑似体験遊戯装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「ベース(1)」、「動揺台(51,5)」は、それぞれ本願発明の「ベース(11)」、「プラットフォーム(13)」に相当する。また、引用発明の「疑似体験遊戯装置」は、「観客席を取付けた動揺台」を「映像や音などに合わせて動揺させることにより、観客にリアルな疑似体験を与えるようにした」ものであるから、「搭乗シミュレータ」であるといえる。そして、引用発明の「複数の油圧アクチュエータ」が「起動機構」を構成しているとともに、引用発明の「コントローラ30」は、「油圧アクチュエータの故障等の異常を検出するために、各油圧シリンダの作動ストロークを検出するストロークセンサ36、油圧モータの回転量を検出する回転センサ37、あるいは油圧駆動回路の油圧を検出する圧力センサ38等のからの信号が入力し、これらに基づいて油圧アクチュエータの故障や、その故障の程度を判定し、軽微な故障の場合は、動揺台を水平な初期位置へと復帰させ、復帰後に油圧ロックをかけて完全に静止させる」ことから、「フェイルセーフ手段」を構成しているといえる。
そうすると、両者は、
「搭乗シミュレータであって、前記シミュレータは、
ベースと、
ベースに対して移動するように載置されたプラットホームと、
プラットホームとベース間に作動的に配置された起動機構であって、プラットホームおよびベース間で作用し選択的に相対運動を生じる複数のアクチュエータを含む起動機構と、
起動機構の状態を連続的に監視するフェイルセーフ手段であって、起動機構が指示された位置と実際の位置の間が予め設定された差を越えることにより危険な状況となった時にはプラットホームをベースに対して所定の位置へ自動的に移動させるフェイルセーフ手段と、
を含む搭乗シミュレータ。」
である点で一致し以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明においては、アクチュエータとして電気機械サーボアクチュエータを用いているのに対して、引用発明では油圧アクチュエータを用いている点。

[相違点2]
本願発明のフェイルセーフ手段が、起動機構が(a)指示された位置と実際の位置の間が予め設定された差を越え、または(b)予め設定された運行の範囲を超えることにより起動機構が危険な且つ制御不可能な状況となった時にはプラットホームをベースに対して所定の位置へ自動的に移動させるのに対して、引用発明のコントローラ(30)は、アクチュエータの作動目標値と実際の検出値との偏差を見て、これが予め設定された許容値を越えたときに異常が発生したものと見做して、アクチュエータを動かして動揺台を初期(水平)位置まで戻すようにしている点。

4.判断
[相違点1について]
シュミレータや揺動遊戯機において、揺動部分を揺動させる起動機構として、回転方向、回転量および回転速度が制御されたモータ、および摺動板などの機械的な可動部材よりなる電気機械サーボアクチュエータを用いることは、従来より周知技術であり(例えば、実願平2-16136号(実開平3-107993号)のマイクロフィルム、実願昭62-77311号(実開昭63-188676号)のマイクロフィルム参照)、このような周知技術を、シュミレータの起動機構に用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点2について]
ところで、本願発明の相違点2に係る構成の内「起動機構が(a)指示された位置と実際の位置の間が予め設定された差を越え」としている部分は、引用発明の「アクチュエータの作動目標値と実際の検出値との偏差を見て、これが予め設定された許容値を越え」としている部分に相当しているといえるから、両者の実質的な相違点は、本願発明のフェイルセーフ手段が、「起動機構が(b)予め設定された運行の範囲を超える」時にもプラットホームをベースに対して所定の位置へ自動的に移動させている点にあるといえる。
そして、シュミレータや揺動遊戯機において、アクチュエータを構成する可動部材の可動範囲の限界点近傍にリミットスイッチを配置して、リミットスイッチがオンした際には、アクチュエータの揺動を停止する(アクチュエータを構成しているモータを停止する)などの安全措置を施すことは慣用手段である(例えば上記実願平2-16136号(実開平3-107993号)のマイクロフィルム参照)。してみると、こうしたリミットスイッチを適用し、これがオンするような状況(すなわち、駆動機構が予め設定された運行の範囲を超えることにより起動機構が危険な且つ制御不可能な状況)となった時にも、プラットホームをベースに対して所定の位置へ自動的に移動させるといった安全措置を施すようにすることは、当業者が適宜なし得る事項である。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および上記周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-09 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-06-26 
出願番号 特願平6-323342
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
木原 裕
発明の名称 搭乗シミュレータ及び作動方法  
代理人 林 鉐三  
代理人 清水 邦明  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  

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