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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1147059
審判番号 不服2002-24665  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-24 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 平成10年特許願第122808号「樹脂ラミネート用アルミニウム箔」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月 2日出願公開、特開平11-300885〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年4月16日の出願であって、平成14年1月18日付け及び平成14年7月5日付け手続補正書により手続補正され、その後、平成14年11月18日付けで上記平成14年7月5日付け手続補正書による手続補正は却下され、同日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成14年12月24日に拒絶査定に対する審判請求がされ、平成15年1月21日付け手続補正書により明細書について手続補正がされたものである。

2.上記平成15年1月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年1月21日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正事項
平成15年1月21日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成14年1月18日付け手続補正書により補正された明細書(上記1.手続の経緯のとおり、上記平成14年7月5日付け手続補正書による手続補正は却下されたので本件補正前の願書に添付した明細書は、上記明細書となる。)の特許請求の範囲請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)の「片面または両面をカップリング剤処理してなる高分子接着剤を用いないポリエチレンまたはポリプロピレンとのラミネート用アルミニウム箔。」を、「食品、食品のたれ、スープ、シャンプー、リンス、整髪料、浴用化粧料又は電池の包装用であって、両面をカップリング剤処理してなる高分子接着剤を用いないポリエチレンまたはポリプロピレンとの両面ラミネート用アルミニウム箔。」(以下、「補正後の請求項1」という。)と補正する補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。

(2)特許法第17条の2第3項の規定について
補正事項1によると、本願請求項1に係る発明は、「電池の包装用」との発明特定事項を含むことになる。
「電池」又は「包装」に関する記載として、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)
「【従来の技術】
アルミニウム箔と各種のプラスチックフィルムとの複合材は装飾性、バリヤ性に優れており、食品、薬品、化粧品その他各種製品の包装材料として大量に使用されている。」(段落【0002】)
(b)
「本発明の複合材は各種成分の樹脂層を通しての移行による剥離がほとんど生じないので、包装材料その他の材料として使用するのに好適である。例えば各種の食品、食品のたれやスープ、シャンプー、リンス、整髪料、浴用化粧料等の化粧品の包装材料、電池等の工業材料等に使用される。」(段落【0015】)
(c)
「この複合材を用いてポリエチレン層が内側に、ポリエステル層が外側に来るようにして平袋を製造し、その中に内容物を入れて65℃、95%RHの条件で保存し、ポリエチレン層(PE2)とアルミニウム箔間の剥離強度の変化を測定した。内容物としては一般入浴剤液と電池用電解液のモデル液とした。それらの成分は表1のとおりである。」(段落【0018】)
(d)
表1及び表2中の「電解液」(段落【0021】)
(e)
「さらに、上記の実施例、比較例から明らかなように本発明の複合材は、入浴剤にも電解液にも耐久性があり、剥離を生じない。
従って、本発明の複合材は各種の包装材料として好適である。」(段落【0023】)
そこで、検討すると、「電池」の記載は、上記(b)にあるが、上記(b)の文脈上、電池は、包装材料とは別の「その他の材料」の例として、「工業材料」の類のものとして位置付けられていると解することが相当である。
また、「電池用電解液」あるいは「電解液」の記載が、上記(c)、(d)及び(e)にあるが、電池用電解液あるいは電解液は、電池そのものではないし、電解液は、通常包装の対象とされるものではない。
上記(a)及び(e)には、「包装材料」との記載があるが、その包装の対象として「電池」を挙げているものではない。
してみると、「電池の包装用」との発明特定事項は、当初明細書又は図面に記載されておらず、当初明細書又は図面から自明の事項ともいえない。
したがって、補正事項1は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
上記のことから、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)特許法第17条の2第4項の規定について
上記補正事項1に係る補正後の請求項1の「食品、食品のたれ、スープ、シャンプー、リンス、整髪料、浴用化粧料又は電池の包装用」という用途は、本願明細書の段落【0015】によれば、アルミニウム箔と各種樹脂層との複合材についての用途と解することが相当である。
一方、補正前の請求項1には、「ラミネート用アルミニウム箔」との記載によりアルミニウム箔について「ラミネート用」との用途限定がなされている。
してみると、上記「食品、食品のたれ、スープ、シャンプー、リンス、整髪料、浴用化粧料又は電池の包装用」という用途と、上記「ラミネート用」との用途では、同じ「用途」といっても、その用途に係るものが、一方は複合材、他方はアルミニウム箔である点で趣旨が異なり、補正後の請求項1の「食品、食品のたれ、スープ、シャンプー、リンス、整髪料、浴用化粧料又は電池の包装用」は、補正前の請求項1の「ラミネート用」の用途を限定したものとはいえないから、請求項1に、「食品、食品のたれ、スープ、シャンプー、リンス、整髪料、浴用化粧料又は電池の包装用」という本来、複合材に係る用途を付加する補正事項1に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
また、該用途を付加する補正は、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないから、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の各号に規定のいずれの事項を目的とするものでない。

(4)むすび
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年7月5日付け及び平成15年1月21日付け手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成14年1月18日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「片面または両面をカップリング剤処理してなる高分子接着剤を用いないポリエチレンまたはポリプロピレンとのラミネート用アルミニウム箔。」

(2)引用刊行物
これに対して、原審における拒絶査定の理由となった平成14年5月8日付け拒絶理由通知書で引用文献3として引用された特開平6-31854号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

(2-1)
「また図2に示す蓋材は、図1の蓋材の構成とほぼ同様であるが、内容物によるアルミニウム箔(1)の腐食を防止するためにアルミニウム箔(1)の片面に例えばポリエチレンフィルムよりなる中間樹脂層(5)が設けられ、この中間樹脂層(5)に高級脂肪酸アミドを含む感熱接着剤層(2)が、グラビアコートなどにより接着剤層を介さずに塗布されて設けられ、またアルミニウム箔(1)の他面に防食コート層(4)が設けられている。」(段落【0044】)
(2-2)
「片面に防食コート層(4)を有する厚さ35μmのアルミニウム箔(1)の他面に、チタン・カップリング剤のアンカーコート層を設けた後、ポリエチレンよりなる中間樹脂層(5)を押出しコートにより20μmの厚さに積層した。さらにその上に感熱接着性樹脂に各種配合量のロジン類と高級脂肪酸アミドを混合した感熱接着剤層(2)を、グラビアコートにより固形分4g/m2の厚さに塗布し、3種類の熱封緘蓋材をつくった。」(段落【0046】)
(2-3)
図1には、熱封緘蓋材の具体例を示す部分拡大断面図として、防食コート層4、アルミニウム箔1、接着剤層3、感熱接着剤層2が順に積層されてなるものが示されている。
(2-4)
図2には、熱封緘蓋材の他の具体例を示す部分拡大断面図として、防食コート層4、アルミニウム箔1、中間樹脂層5、感熱接着剤層2が順に積層されてなるものが示されている。

(3)対比
刊行物には、上記(2-1)ないし(2-2)及び(2-4)に記載の事項を総合すると、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。
「片面に防食コート層(4)を有し、他面にチタン・カップリング剤のアンカーコート層を設けたアルミニウム箔(1)であって、上記他面にポリエチレンよりなる中間樹脂層(5)を押出しコートにより積層し、さらにその上に感熱接着剤層(2)を塗布して熱封緘蓋材をつくるアルミニウム箔(1)。」

そこで、本願発明と刊行物発明とを対比する。
(a)後者の「他面」は、防食コート層(4)を有する「片面」に対する他の(片)面を意味することは明らかであるから、前者の「片面」に相当する。
(b)後者の「アンカーコート層を設け」ることは、アルミニウム箔に対する表面処理であるから、後者の「チタン・カップリング剤のアンカーコート層を設けた」ことは、前者の「カップリング剤処理してなる」に相当する。
(c)前者の「ポリエチレン」も、本件明細書の段落【0012】に、「樹脂としては例えばポリエチレン、・・・(中略)・・・等の樹脂フィルムが用いられる。」と記載されているように、具体的には「ポリエチレン」の「樹脂」をいうものであるから、後者の「ポリエチレンよりなる中間樹脂層」は、前者の「ポリエチレン」に相当する。
(d)後者のアルミニウム箔(1)も、他面(片面)にポリエチレンよりなる中間樹脂層を押出しコートにより積層するものであり、本願明細書の段落【0011】に、「ポリエチレン等と押出ラミネートした場合、高分子接着剤を使用しなくてもラミネート可能であり、」と記載されているように、前者の「ラミネート」も、具体的には押出しラミネートを含むものであるから、後者の「アルミニウム箔(1)」は、「ポリエチレン」と「ラミネート」することができるものといえる。
したがって、両者は、
「片面をカップリング剤処理してなるポリエチレンとラミネートするアルミニウム箔。」である点で一致し、次の点で一応相違している。

【相違点1】:
ポリエチレンとのラミネートに関して、本願発明では「高分子接着剤を用いない」のに対して、刊行物発明では、「高分子接着剤を用いない」か否か明らかでない点。
【相違点2】:
アルミニウム箔に関して、本願発明では、ポリエチレンとのラミネート用のものであるのに対して、刊行物発明は、その他面(片面)にポリエチレンよりなる中間樹脂層を押出しコートにより積層し、さらにその上に感熱接着剤層を塗布して熱封緘蓋材をつくるものである点。
【相違点3】:
刊行物発明では、アルミニウム箔の片面に防食コート層を有してなるのに対して、本願発明では、そのような層を有するような限定がされていない点。

(4)当審の判断
上記一応の相違点について検討する。
(a)相違点1について
刊行物には、アルミニウム箔(1)とポリエチレンとの間に高分子接着剤が存在する旨の記載も、そのことを示唆する記載もみあたらない。
上記(2-4)に示された刊行物発明に関する拡大断面図(図2)によれば、刊行物発明に関しては、アルミニウム箔1は中間樹脂層5に直接積層され、両者の間に介在するものはない。
これに対し、刊行物に記載された熱封緘蓋材の別の具体例を示す上記(2-3)では、アルミニウム箔1は感熱接着剤層とは接着剤層を介して積層されている。
上記(2-3)の記載からみて、刊行物においては、接着剤層があるのであれば、明示されていると考えることが自然であるから、刊行物発明では、上記(2-4)に示されているようにアルミニウム箔(1)は、接着剤層を介さないで積層されている、すなわち、ポリエチレンとのラミネートは、「高分子接着剤を用いない」でラミネートされてなるものといえ、相違点1は実質的な相違点といえない。
(b)相違点2について
刊行物発明のアルミニウム箔(1)は、その他面(片面)にポリエチレンよりなる中間樹脂層を押出しコートにより積層するものであって、ポリエチレンとのラミネートに使用するものであるから、ポリエチレンとのラミネート用アルミニウム箔ということができる。
一方、本願発明の「アルミニウム箔」に関しても、本願明細書の段落【0013】に、「アルミニウム箔1層または2層以上と1種または複数種の樹脂の複数層との複合材も含む。」と記載されている。
したがって、刊行物発明の「アルミニウム箔(1)」は、本願発明の「アルミニウム箔」と実質的に差異はない。

(c)相違点3について
本願発明の「アルミニウム箔」の面に関しては、「片面または両面をカップリング剤処理した」との規定があるだけであり、カップリング剤処理されていない片面が存在することを含むことはもちろんのこと、その片面についてどのような規定もされていないものであるから、刊行物発明の「アルミニウム箔(1)」と本願発明の「アルミニウム箔」に差異はない。

上記のことから、本願発明は、刊行物発明といえる。

(5)むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-06 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願平10-122808
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B32B)
P 1 8・ 572- Z (B32B)
P 1 8・ 113- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小石 真弓細井 龍史  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 野村 康秀
川端 康之
発明の名称 樹脂ラミネート用アルミニウム箔  
代理人 佐々 紘造  

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