• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1147084
審判番号 不服2003-24137  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-11 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 平成 5年特許願第266762号「光ディスクのデータ検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 5月12日出願公開、特開平 7-122000〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成5年10月26日の特許出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成15年7月7日付け手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、そのうち請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
光ディスクにおける再生信号からデータを検出する検出方法であって、最小反転間隔が2チャネルビット以上になるような変換を施されたデータが記録された光ディスクからの再生信号を、PR(1,2,1)特性に等化し、該PR(1,2,1)特性に等化された信号を、PR(1,2,1)特性および上記変換の特性を利用して最尤復号することを特徴とする光ディスクのデータ検出方法。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
(1)引用例1
一方、原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-30306号公報(以下、「引用例1」という。)は、記録装置用のビタビ等化器に関し、図面とともに次の技術事項が記載されている。
i)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、磁気ディスク装置などの記録装置におけるデータ再生系で生じる符号間干渉を除去するビタビ等化器及びこのビタビ等化器を用いた記録装置に関する。 近年、磁気ディスク装置の小型化、大容量化を図るために記録密度の向上が進められている。一方、ディスク盤の記録密度を上げると、第7図に示されるように、ディスク盤に書き込まれる記録ピットの間隔が狭くなり、このため目標とする記録ピットに隣接する記録ピットから漏れる磁界が増大し、それにより読出し信号に符号間干渉が生じて読み誤りが多くなる。このため、磁気ディスク装置の記録再生系の符号間干渉を取り除く等化技術がますます重要になっている。 現在、このような符号間干渉を取り除く強力な等化技術の一つとして、ビタビ復号方式を用いたビタビ等化器が実用化されつつある。このビタビ等化器は磁気ディスク装置の記録再生系を畳込み符号器に見立ててビタビ復号器で復号し、符号間干渉を取り除くものである。」(第2頁右上欄第16行?同頁左下欄第17行)
ii)「〔課題を解決するための手段〕
第1図は本発明に係る原理説明図である。
第1図に示されるように、本発明に係るビタビ等化器を用いた記録装置は、記録データをRLL記録符号データに記録符号化する記録符号器101と、記録符号器101からのRLL記録符号データを記録・再生する記録再生系102と、記録再生系102から読み出したRLL記録符号データを等化する本発明に係るビタビ等化器103と、ビタビ等化器103で等化後のRLL記録符号データを復号して再生データを出力する記録符号器104とを具備してなる。 また本発明に係るビタビ等化器は、記録装置の記録再生系で生じる符号間干渉を除去する記録装置用のビタビ等化器において、記録符号としてRLL記録符号が用いられ、ビタビ復号アルゴリズムの状態遷移により定まる最尤パス判定回路のうち、RLL記録符号の規則のため取りえない状態遷移に関する回路が除かれて構成されたものである。」(第3頁右下欄第17行?第4頁左上欄第17行)
iii)「上述のビタビ等化器において、最尤パス判定回路は、各ノードのブランチメトリックを計算する分配器と、分配器からのブランチメトリックに基づいてパスメトリックを計算し比較して生残りパスを選択しそのパス選択信号を出力する演算部と、演算部からのパス選択信号によって最尤パスのパス履歴を生成するパスメモリとを含み構成することができる。
また上述のビタビ等化器において、拘束長を3とし、RLL記録符号として(1,7)符号を用い、内部状態が(0,1)と(1,0)のノードに対する演算部をパスメトリックの加算・比較・選択を行うACSユニットに代えて、パスメトリックの加算を行う加算器で構成し、内部状態が(0,1)と(1,0)のノードに対するパスメトリックを選択回路を含まないラッチの多段配置回路で構成することができる。
さらに上述のビタビ等化器において、拘束長を4とし、RLL記録符号として(2,7)符号を用い、内部応対が(0,1,0)と(1,0,1)のノードの演算部をなくし、(0,0,1)と(0,1,1)と(1,0,0)と(1,1,0)のノードの演算部を、パスメトリックの加算・比較・選択を行うACSユニットに代えて、パスメトリックの加算を行う加算器で構成し、内部状態が(0,1,0)と(1,0,1)のノードに対応するパスメモリをなくし、(0,0,1)と(0,1,1)と(1,1,0)のノードに対するパスメモリを選択回路を含まないラッチの多段配置回路で構成することができる。」(第4頁左上欄第18行?同頁左下欄第8行)
iv)「本発明に係るビタビ等化方法は、記録装置の記録再生系で生じる符号間干渉を除去する記録符号としてRLL記録符号が用いられ、ビタビ復号アルゴリズムの状態遷移により定まる最尤パス判定処理のうち、RLL記録符号の規則により取り得ない状態遷移に関する最尤パス判定処理が除かれたことを特徴とするものである。」(第4頁左下欄第9?16行)
v)「〔作用〕
本発明に係る記録装置においては、記録データは記録符号器101によりRLL記録符号に符号化された後に、記録再生系102に記録され、この記録再生系102で再生されたRLL気記録符号データは本発明に係るビタビ等化器103で等化されて符号間干渉が取り除かれる。等化後のRLL記録符号データは記録復号器104によって復号されて再生データが得られる。 また、上述の記録装置に用いられている本発明に係るビタビ等化器103は、ビタビ復号アルゴリズムの状態遷移により決まる最尤パス判定回路のうち、RLL記録符号の規則のため取りえない状態遷移に関する回路が除かれているため、最尤パス判定回路のハードウェア規模の削減、あるいは処理ステップ数の削減を図ることができる。」(第4頁左下欄第17行?同頁右下欄第13行)
vi)「本発明は磁気ディスク装置に限られるものではなく、光ディスク装置等他の干渉のある記録装置にも適用できる。」(第6頁右下欄第18?20行)

上記記載事項及び図面の記載を参酌すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認める。

「(2,7)RLL記録符号データが記録された光ディスクからの再生信号を、ビタビ復号アルゴリズムの状態遷移により定まる最尤パス判定処理のうち、(2,7)RLL記録符号の規則により取りえない状態遷移に関する最尤パス判定処理を除いて最尤復号する光ディスクの再生信号処理方法。」

(2)引用例2
同じく引用された本願出願前に頒布された刊行物である「日経エレクトロニクス」1993年7月5日(no.585)p.100-110 日経BP社(以下、「引用例2」という。)には、次の技術事項が記載乃至開示されている。
i) 光ディスクからの再生信号をパーシャル・レスポンスとビタビ復号法を組み合わせたPRML(partial response maximum likelihood)で復調すれば、記録密度をCDの1.5倍にできること(第100頁左欄)。
ii)「光ディスクの再生信号処理ではパーシャル・レスポンス(PR:partial response)とビタビ(Viterbi)復号法を組み合わせたPRML(partial response maximum likelihood)の検討が進んでいる。現在AV機器メーカが検討しているPRは、隣り合った記録ピットから3値を読み出せるようにしたため記録密度を高くできる。さらにビタビ復号法を組み合わせればデータ誤りを小さくできる。このPRMLを使うと記録密度は1.5倍になる。」(第101頁左欄?同頁中欄)
iii)「読み取った信号のS/N比が悪くてもデータを判定できるようにする信号処理も考えられている。現在、多くのAV機器メーカが検討しているのがパーシャル・レスポンスとビタビ復号法を組み合わせた方法である(表2)。この方法をPRMLと呼ぶ。再生信号を読み出すときにS/N比が低くなっても十分なデータ誤り率を確保するための信号処理技術である。「この信号処理を使えば記録密度を薬1.5倍にできる」と言う。」(第107頁左下欄)
iv) 表2(第106頁)には、パーシャル・レスポンスを使った信号処理技術の発表例として、その一つであるPR(1,1)とPR(1,2,1)それぞれにビタビ復号法を組み合わせた場合の復号誤り率を2種シミュレートし、最短ビット長が約0.5μm以下ではPR(1,2,1)が適しているという結果を得たこと(1993年3月発表)が示されている。

(3)引用例3
同じく引用された本願出願前に頒布された刊行物である、藤原、山口、小林、寺島、石川「光磁気記録再生系におけるPRML検出の一検討」『1993年電子情報通信学会春季大会講演論文集、分冊5 エレクトロニクス』 社団法人電子情報通信学会、1993年3月 pp.5-104 (以下、「引用例3」という。)には、次の技術事項が図とともに記載乃至開示されている。
i) 光磁気ディスクに対して高密度記録を行った場合の再生信号処理として、パーシャルレスポンス(PR(1,1)及びPR(1,2,1))方式に最尤復号(ビタビ復号)を組み合わせたPRML検出(PR(1,1)ML及びPR(1,2,1)ML)の復号誤り率について計算した結果、PR(1,2,1)MLの方がPR(1,1)MLに比べ、高密度記録における信号処理として適していること。

3.対 比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。

引用例1に記載された発明における「光ディスクの再生信号処理方法」とは、光ディスクにおける再生信号から記録されたデータを検出する方法のことであるから、本願発明における「光ディスクのデータ検出方法」に相当する。
引用例1に記載された発明における「(2,7)RLL記録符号データ」は、(2,7)RLL変換が施されたデータのことであるから、本願発明における「変換を施されたデータ」に相当する。
引用例1に記載された発明における「ビタビ復号」は、本願発明における「最尤復号」に相当する。
引用例1に記載された発明は、光ディスクからの再生信号を、ビタビ復号アルゴリズムの状態遷移により定まる最尤パス判定処理のうち、(2,7)RLL記録符号の規則により取りえない状態遷移に関する最尤パス判定処理を除いて最尤復号、言い換えると、(2,7)RLL記録符号((2,7)RLL変換が施されたデータ)の特性を利用して最尤復号するものであることは明らかである。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
光ディスクにおける再生信号からデータを検出する検出方法であって、変換を施されたデータが記録された光ディスクからの再生信号を、等化し、該等化された信号を、上記変換の特性を利用して最尤復号する光ディスクのデータ検出方法。

そして、次の各点で相違する。
(a) 光ディスクに記録されたデータに関し、本願発明においては、最小反転間隔が2チャンネルビット以上になるような変換を施されたデータであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、(2,7)RLL変換を施されたデータである点(以下、「相違点a」という。)。
(b) 光ディスクからの再生信号の等化に関し、本願発明においては、PR(1,2,1)特性に等化するものであるのに対し、ビタビ等化器で等化することが示されている点(以下、「相違点b」という。)。
(c) 最尤復号に関し、本願発明においては、PR(1,2,1)特性を利用して最尤復号するものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、このことが特に示されていない点(以下、「相違点c」という。)。

4.当審の判断
そこで、上記各相違点について検討する。

(相違点aについて)
2-7RLLコード((2,7)RLL符号)のNRZI記録方式(「最小反転間隔が2チャンネルビット以上となる変換」であることは明らかである。)を使用して記録データを光磁気ディスクに記録し再生することは、例えば、特開平4-372701号公報、特開平5-40976号公報、及び、特開平5-266485号公報にもみられるように、本願出願前にごく周知の技術にすぎない。
してみると、引用例1に記載された発明においても、光ディスクに、2-7RLL変換を施されたデータを記録することに替えて、単に2-7RLL・NRZIのような最小反転間隔が2チャンネルビット以上となるような変換を施されたデータを記録するように構成することは当業者が必要に応じて適宜容易に想到できたものというべきである。

(相違点b、cについて)
光ディスク(光磁気ディスク)からの再生信号を、パーシャルレスポンス方式のPR(1,2,1)特性に等化し、該PR(1,2,1)特性に等化された信号をビタビ復号(最尤復号)する技術は、引用例2及び引用例3に記載されているように本願出願前に周知の事項ということができる。
してみると、引用例1に記載された発明においても、光ディスクからの再生信号をPR(1,2,1)特性に等化し、該等化された信号をビタビ復号(最尤復号)することは当業者が容易に想到できたものというべきである。
その場合、再生信号の等化特性に応じて復号することはむしろ当然のことといえるから、PR(1,2,1)特性を利用してビタビ復号(最尤復号)することは当業者が適宜なし得た事項である。

そして、上記各相違点の判断を総合しても、本願発明の奏する作用効果は引用例1及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明並びに引用例2、引用例3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-12 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-09-26 
出願番号 特願平5-266762
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 慎松平 英  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 中野 浩昌
山田 洋一
発明の名称 光ディスクのデータ検出方法  
代理人 木島 隆一  
代理人 金子 一郎  
代理人 原 謙三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ