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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K
管理番号 1147085
審判番号 不服2003-24427  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-18 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 平成10年特許願第266847号「リリーフバルブ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月 4日出願公開、特開2000- 97369〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成10年9月21日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年5月29日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のものと認める。

「【請求項1】流体圧力が作用する入口ポートと、出口ポートを有するハウジング;
一端部に上記入口ポートと出口ポートの間の流路を開閉する弁体を有し、上記ハウジングに移動可能に支持された弁軸;
この弁軸の他端部に形成されたフランジ;
同軸に位置させた複数枚の環状金属板の内周縁部と外周縁部を順次溶接して形成され、その一端部の環状金属板がこの弁軸のフランジに固定され、他端部の環状金属板がハウジングに固定されて圧力室を画成する金属ダイアフラム;
上記弁軸に設けた、上記入口ポートと圧力室を連通させる連通路;及び
この連通路に形成されたオリフィス;
を有し、
上記金属ダイアフラムは、自由状態では上記弁軸を閉弁方向に付勢し、該金属ダイアフラムによって構成されている上記圧力室に、上記連通路及びオリフィスを介して所定圧力以上の圧力が及ぼされたとき上記弁軸を開弁方向に移動させることを特徴とするリリーフバルブ。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物の記載事項

これに対して、当審における、平成18年3月23日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭57-122851号(実開昭59-27134号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、「ターボ過給機付エンジンの吸気装置」に関し、第1図ないし第3図とともに次の事項が記載されている。

(イ)「(1)スロツトル弁の上流側吸気通路にターボ過給機を設けたエンジンにおいて、上記スロツトル弁とターボ過給機との間の吸気通路に設けられた過給エアリリーフ口と、該吸気通路の過給圧を受ける圧力室を有し該過給圧により上記過給エアリリーフ口を開閉する弁装置と、上記吸気通路と圧力室とを連通する連通路と、該連通路に設けられた絞りとを備えたことを特徴とするターボ過給機付エンジンの吸気装置。」(2.実用新案登録請求の範囲)

(ロ)「そして上記吸気通路1のスロツトル弁2とターボ過給機3との間には、弁取付部5と弁装置であるダイヤフラム装置6とからなるリリーフ弁4が螺合固着されている。・・・また上記弁取付部5の前端部に凹設された凹部5cの底面にはリリーフ口5dが穿設され、さらに上記弁取付部5の後端部には上記リリーフ口5dに続いてこれより大径の保持口5eが形成されている。
また上記保持口5eには、上記ダイヤフラム装置6の前部ケース7が嵌合固着されている。該前部ケース7は大略円筒状のもので、その前部には上記保持口5eに嵌挿固着される被保持部7eが形成され、該被保持部7eのさらに前方の前端面には円環状のガイド部7aが一体形成されている。また上記前端面のガイド部7a外方には3個の略楕円状のリリーフエア導入孔7bが穿設され、上記前部ケース7の側面後部には複数のリリーフエア排出孔7cが穿設されており、さらに上記前部ケース7の後端部には取付フランジ部7dが外方に向けて一体形成されている。・・・そして上記前部ケース7のガイド部7aには、弁棒10が前後(第1図左右)方向に摺動自在に挿入されており、その前端部には円板状の弁板11が嵌装固着され、該弁板11の後面には環状のシール部材11aが固着されており、これは上記リリーフ口5dの前端面周縁部と当接し得るようになつている。
また上記弁棒10の後端部には、ワツシヤ12,スプリング係止部材13,ダイヤフラム14,ダイヤフラム押え部材15及びワツシヤ16が順次嵌装され、固定ナツト17で締付固定されている。そして上記スプリング係止部材13及びダイヤフラム押え部材15はいずれもその中心に嵌挿孔を有する皿状のものであり、また上記ダイヤフラム14はゴム等の柔軟性を有する部材を用いて大略円板状に形成されたもので、その中心部には嵌挿孔を有し、その外周縁部は上記前,後部ケース7,9の取付フランジ部7d,9b間に嵌挿固着されており、このダイヤフラム14と後部ケース9とで囲まれた空間が圧力室19になつている。また上記スプリング係止部材13と前部ケース7の前端面との間にはコイルスプリング18が介設され、上記弁棒10は該コイルスプリング18により後方に付勢されており、これにより上記弁板11のシール部材11aは、上記リリーフ口5dの前端面周縁部と押圧当接している。
また上記弁棒10には、その中心軸に沿つて連通路10aが貫通穿設されており、該連通路10aは上記吸気通路1と圧力室19とを連通している。そして該連通路10aの後端部には、絞り部材20が螺合固着されており、該絞り部材20は底面を有する円筒状のもので、該底面にはオリフイス、即ち絞り20aが穿設されており、この絞り20aは上記吸気通路1側の過給エアを圧力室19にゆつくりと導くためのものである。」(明細書第4頁第14行?第7頁第20行)

したがって、上記(イ)、(ロ)の記載及び第1図、第2図からみて、刊行物1には、

「流体圧力が作用する吸気通路1及び凹部5cと、リリーフエア排出孔7cを有する弁取付部5、前部ケース7及び後部ケース9からなる筐体;
一端部に上記吸気通路1及び凹部5cとリリーフエア排出孔7cの間の流路を開閉する弁板11を有し、上記弁取付部5、前部ケース7及び後部ケース9からなる筐体に移動可能に支持された弁棒10;
この弁棒10の他端部に形成されたスプリング係止部材13及びダイヤフラム押え部材15;
円板状に形成され、その一端部がこの弁棒10のスプリング係止部材13及びダイヤフラム押え部材15に固定され、他端部が弁取付部5、前部ケース7及び後部ケース9からなる筐体に固定されて圧力室19を画成するダイヤフラム14;
上記弁棒10に設けた、上記吸気通路1及び凹部5cと圧力室19を連通させる連通路10a;及び
この連通路10aに形成された絞り20a;
を有し、
上記ダイヤフラム14は、コイルスプリング18により上記弁棒10を閉弁方向に付勢し、該ダイヤフラム14によって構成されている上記圧力室19に、上記連通路10a及び絞り20aを介して所定圧力以上の圧力が及ぼされたとき上記弁棒10を開弁方向に移動させるリリーフ弁4」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭47-40307号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「噴霧装置の改良」に関し、第2図とともに次の事項が記載されている。

(ハ)「次にインゼクターを利用する場合を第2図について説明する。器筐Cに被噴霧液体の供給筐を連結する液体供給路6と空気の供給管を連結する空気供給路5を設け、供給路6、5の隔壁12に弁座8aを設け、該弁座8aに接合する弁8bをベローズ7に結合する。弁座8aに液体の放出嘴9を連通し、空気供給路5に放出嘴9を囲むように空気の放出嘴10を連通し、空気供給路5とベローズ7内とを器筐Cに設けた通路11で連通する。
依つて空気の供給管に設けた閉止弁(図示しない)を開いて圧搾空気を供給路5に供給すれば、該供給路5の空気の圧力が通路11を経てベローズ7内に作用し、ベローズ7をそれのバネ力に抗して延伸し、弁8bが弁座8aより離れ放出嘴9に液体が供給され圧搾空気が放出嘴10より噴出することによつてインゼクター作用が行はれ液体を噴霧する。噴霧を中止するため空気の供給管に設けた閉止弁を閉ぢると、供給路5従つてベローズ7内の圧力が低下し、ベローズ7はそれのバネ力によつて延伸された状態から自由長に復帰しようとし、弁8bを弁座8aに圧接し、放出嘴9への流出口を閉ぢる。」(第2頁左上欄第3行?右上欄第4行)

3.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「吸気通路1及び凹部5c」は、本願発明の「入口ポート」に相当し、同じく引用発明の「リリーフエア排出孔7c」、「弁取付部5、前部ケース7及び後部ケース9からなる筐体」、「弁板11」、「弁棒10」、「スプリング係止部材13及びダイヤフラム押え部材15」、「ダイヤフラム14」、「絞り20a」は、それぞれ本願発明の「出口ポート」、「ハウジング」、「弁体」、「弁軸」、「フランジ」、「ダイアフラム」、「オリフィス」に相当する。また、引用発明の「リリーフ弁4」は、本願発明の「リリーフバルブ」に相当するといえるから、本願発明と引用発明とは、

「流体圧力が作用する入口ポートと、出口ポートを有するハウジング;
一端部に上記入口ポートと出口ポートの間の流路を開閉する弁体を有し、上記ハウジングに移動可能に支持された弁軸;
この弁軸の他端部に形成されたフランジ;
その一端部がこの弁軸のフランジに固定され、他端部がハウジングに固定されて圧力室を画成するダイアフラム;
上記弁軸に設けた、上記入口ポートと圧力室を連通させる連通路;及び
この連通路に形成されたオリフィス;
を有し、
上記ダイアフラムは、該ダイアフラムによって構成されている上記圧力室に、上記連通路及びオリフィスを介して所定圧力以上の圧力が及ぼされたとき上記弁軸を開弁方向に移動させるリリーフバルブ」

である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

[相違点]
本願発明では、ダイアフラムは、金属製であって、同軸に位置させた複数枚の環状金属板の内周縁部と外周縁部を順次溶接して形成され、一端部の環状金属板が弁軸のフランジに、他端部の環状金属板がハウジングにそれぞれ固定されるものであって、自由状態では上記弁軸を閉弁方向に付勢しているのに対して、
引用発明では、ダイヤフラム14(ダイアフラム)は、金属製ではなく、円板状に形成され、一端部が弁棒10(弁軸)のスプリング係止部材13及びダイヤフラム押え部材15(フランジ)に、他端部が弁取付部5、前部ケース7及び後部ケース9からなる筐体(ハウジング)にそれぞれ固定されるものであって、弁棒10(弁軸)を閉弁方向に移動付勢する手段としてダイヤフラム14とは別にコイルスプリング18が設けられている点。

4.当審の判断

次に、上記相違点について検討すると、刊行物2には、伸縮変形するベローズ(本願発明の「ダイアフラム」に相当する。)自体に弾性を持たせ、別途コイルスプリング等の付勢手段を用いなくても、それ自体で閉弁方向に移動付勢する構成が記載されており(上記記載事項(ハ)を参照。)、引用発明も刊行物2に記載のものも弾性部材であるベローズないしはダイヤフラムにより画成された圧力室内の流体圧により弁を作動させるものである点で共通するものであるから、刊行物2に記載の、伸縮変形するベローズ自体に弾性を持たせ、別途コイルスプリング等の付勢手段を用いなくても、それ自体で閉弁方向に移動付勢する構成を引用発明のダイヤフラムとして採用することは、当業者が容易になし得た程度のことと認められる。

そして、ダイヤフラムないしはベローズの材質として金属製のものを用いることは慣用されており、金属製ベローズの態様として、「同軸に位置させた複数枚の環状金属板の内周縁部と外周縁部を順次溶接して形成され」たものである、いわゆる溶接ベローズも慣用されているものであるから、刊行物2に記載の上記構成を引用発明のダイヤフラムとして採用するに当たり、いわゆる溶接ベローズを選択することは、当業者が適宜なし得たことである。してみれば、上記相違点に係る本願発明の構成に格別の困難性は認められない。

そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明及び刊行物2に記載のものから予測可能なものであり、格別なものとはいえない。

なお、審判請求人は、平成18年5月29日付け意見書において、本願発明は、金属ダイヤフラムとして、いわゆる溶接ベローズの構成を採用したことによって、正確なリリーフ特性が得られるという格別の効果を奏する旨主張するが、いわゆる溶接ベローズを採用したことと上記効果を奏することとの因果関係については出願当初明細書には記載も示唆もされていないから、審判請求人の上記主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載のものに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

5.むすび

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載のものに基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-06 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願平10-266847
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 細川 健人  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 平瀬 知明
ぬで島 慎二
発明の名称 リリーフバルブ  
代理人 三浦 邦夫  

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