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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1147129
審判番号 不服2004-15265  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-22 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 特願2001-192494「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月10日出願公開、特開2003- 8733〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年6月26日の出願であって、平成16年6月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年8月23日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「携帯電話機能部と、スリープモード制御部とを備える携帯電話機であって、
スリープモード設定信号を受信して発信機能を停止させるスリープモードに設定する機能と、スリープモード解除信号を受信してスリープモードを解除する機能と、電源をOFFとした後ONにするとスリープモードを解除する機能とを有することを特徴する携帯電話機。」(アンダーラインは補正箇所を示す。)という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「スリープモードに設定する」との構成に関して、「スリープモード設定信号を受信し」た場合に限定すると共に、「スリープモードを解除する」との構成に関して、「スリープモード解除信号を受信し」た場合に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(3-1)補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(3-2)引用発明及び周知技術
A.原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-275588号公報(以下、「引用例」という。)には、「移動通信システムの通話規制方式」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている(下線加筆)。
イ.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、送信及び受信機能を含む各種の機能を有する複数の移動端末と基地局との間で無線通信するようにした移動通信システムにおいて、基地局が管轄するサービスエリア内の特定の限られたエリア(規制エリア)内での該移動端末と基地局との通信を規制する技術に関する。
【0002】近年、携帯電話、簡易携帯電話(PHS)、無線呼出(ポケットベル)等の移動通信システムが広く実用化されている。これらの移動通信システムにおいては、いかなる場所からも任意な状態で通信できることが必要であり、そのための技術が開発されているが、一方で通信に伴い周辺機器に悪影響(電磁波障害)を及ぼしたり、あるいは周囲の他人に不快感を与える場合があるため、特定のエリア内では移動端末の機能の一部を停止することが要望されている。」(第2頁2欄)、
ロ.「【0010】よって、本発明の目的は、必要に応じて任意の場所について任意の時間だけ、移動端末の使用を規制できるようにすることである。」(第3頁3欄)
ハ.「【0020】この実施の形態における規制設定装置3は、図3に示されているように、規制データ記憶部11、発信部12、変調部13、及びC’ch送信部14を備えている。規制データ記憶部11には、移動端末2の送信機能の停止を示す第1規制データ、受信機能の停止を示す第2規制データ、送信機能及び受信機能の双方の停止を示す第3規制データ、並びに機能停止の解除を示す解除データの四種類のデータが予め格納されている。
【0021】移動端末2の機能の一部を停止する場合には、・・・(中略)・・・規制データ記憶部11の第1乃至第3規制データのいずれか(予め選択されている)で変調され、C’ch送信部14により、規制用電磁波としてアンテナを介して送信される。
【0022】移動端末2の機能の停止を解除する場合には、発信部12による周波数f0 の搬送波が、変調部13により規制データ記憶部11の解除データで変調され、C’ch送信部14により、規制用電磁波としてアンテナを介して送信される。」(第3頁4欄?第4頁5欄)
ニ.「【0023】この実施の形態における移動端末2は、図4に示されているように、C’ch受信部15、復調部16、規制データ再生部17、規制指令処理部18、送信機能部19及び受信機能部20を備えている。
【0024】図5に示されているように、C’ch受信部15により規制用電磁波が受信されると(ST1、2)、復調部16及び規制データ再生部17により規制データが復調・再生され、規制データが正常か否かが判断される(ST3)。ST3で異常の場合にはST1に戻り、正常な場合には、規制データの種別(内容)が判別される(ST4)。
【0025】規制指令処理部18は、規制データの種別(内容)を判断し(ST4)、規制データが第1規制データである場合には送信機能部19に機能の停止を指令し(ST5)、第2規制データである場合には受信機能部20に機能の停止を指令し(ST5)、第3規制データである場合には送信機能部19及び受信機能部20に送受信機能の停止を指令する(ST5)。
【0026】規制指令処理部18は、規制データが解除データである場合には送信機能部19及び/又は受信機能部20に機能の停止の解除を指令する(ST6)。本実施の形態によると、移動端末2は規制設定装置3からの規制用電磁波の受信により、送信機能及び/又は受信機能を停止するようにしているから、移動端末2の使用を制限する必要がある会議室や劇場等に規制設定装置3を設置し、移動端末2の使用を制限する必要がある時間に規制用電磁波を発信することにより、必要に応じて任意の時間だけ、移動端末2の使用を制限することができるようになる。」(第4頁5欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「携帯電話機能部と、規制指令処理部とを備える携帯電話機であって、
送信機能の停止を示す第1規制データを受信して送信機能を停止させる機能と、解除データを受信して送信機能の停止を解除する機能とを有する携帯電話機。」

B.また、例えば特開平10-243462号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の「イ.」の事項が記載され、また、特開平10-304443号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の「ロ.」の事項が記載されている(下線加筆)。
イ.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は送信規制方法とその装置に関し、特に携帯電話機等の無線通信端末が無線通信禁止エリア内にいるときその通常強度(ハイパワー)の電波の送信機能を停止する送信規制方法とその装置に関する。
【0002】【従来の技術】従来のこの種の送信規制システムでは、送信禁止エリアに設置され無線通信端末に送信規制命令を送る送信規制機を備え、この送信規制機から送信規制命令を受信したとき無線通信端末は送信停止モードとなり、電源のオン/オフを行うことによって送信規制モードの解除を行っていた。」(周知例1、第2頁2欄)、
ロ.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は携帯電話システムにおける送信規制方式に関し、特に携帯電話端末が無線通信禁止エリア内にいる間はその電源を外部からオフ制御することによってその発信機能を自動的に停止させる携帯電話システムにおける送信規制方式に関する。
【0002】【従来の技術】従来のこの種の送信規制システムでは、送信禁止エリア内の携帯電話端末等の無線通信端末に対して送信規制命令を送る送信規制機を送信禁止エリア内に設置し、この送信規制機から送信規制命令を受信したとき無線通信端末は送信停止モードとなるのでユーザは電源を手動でオフしていた。また、送信規制モードの解除を行うときはユーザは電源を手動でオンしていた。」(周知例2、第2頁1?2欄)。

上記「イ.」、「ロ.」の項の記載によれば、周知例1、2の「送信停止モード」や「送信規制モード」は、送信機能や発信機能を停止させるものであるが、補正後の発明の構成によれば、スリープモードは「発信機能を停止させる」ものであるから、周知例1、2の「送信停止モード」や「送信規制モード」は実質的にスリープモードであるということができる。
すると、上記周知例1、2によれば、「携帯電話機において、電源をOFFした後ONすることによりスリープモードを解除すること」は周知と認められる。

(3-3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「規制指令処理部」は送信機能の停止を指令し、処理するものであるから、実質的に「スリープモード制御部」に相当する。
b.引用発明の「送信機能の停止を示す第1規制データ」、「解除データ」は、それぞれ補正後の発明の「スリープモード設定信号」、「スリープモード解除信号」に相当する。
c.引用発明の「送信機能を停止させる機能」は、解除データを受信するまで、その状態を維持することが明らかであるから、補正後の発明の「発信機能を停止させるスリープモードに設定する機能」との間には、実質的な差異は見あたらない。
d.引用発明の「送信機能の停止を解除する機能」と、補正後の発明の「スリープモードを解除する機能」との間に、実質的な差異はない。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「携帯電話機能部と、スリープモード制御部とを備える携帯電話機であって、
スリープモード設定信号を受信して発信機能を停止させるスリープモードに設定する機能と、スリープモード解除信号を受信してスリープモードを解除する機能とを有することを特徴とする携帯電話機。」

(相違点)
補正後の発明は「電源をOFFとした後ONにするとスリープモードを解除する機能」を有するのに対し、引用発明はそのような機能を有するかどうか不明な点。

そこで、検討すると、上記「(3-2)引用発明及び周知技術」の「B.」の項に記載したように、「携帯電話機において、電源をOFFした後ONすることによりスリープモードを解除すること」は周知であるところ、当該周知技術を引用発明の「携帯電話装置」に適用することに特段の阻害要因は見あたらないから、引用発明に上記周知技術を適用して、補正後の発明のように「電源をOFFとした後ONにするとスリープモードを解除する機能」を有するよう構成することは、当業者であれば容易になし得ることである。
以上のとおり、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成16年8月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年2月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「携帯電話機能部と、スリープモード制御部とを備える携帯電話機であって、
発信機能を停止させるスリープモードに設定する機能と、スリープモードを解除する機能と、電源をOFFとした後ONにするとスリープモードを解除する機能とを有することを特徴する携帯電話機。」

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の「3.独立特許要件について」の「(3-2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は上記補正後の発明から、「スリープモードに設定する」についての限定事項である「スリープモード設定信号を受信して」との限定を省き、「スリープモードを解除する」の限定事項である「スリープモード解除信号を受信して」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の「3.独立特許要件について」で述べたとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-04 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-26 
出願番号 特願2001-192494(P2001-192494)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 宮下 誠
廣岡 浩平
発明の名称 携帯電話機  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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