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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1147231
審判番号 不服2004-3988  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-27 
確定日 2006-11-10 
事件の表示 平成10年特許願第326315号「ケーブルコネクタ及びその結線方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月30日出願公開、特開2000-150030号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年11月17日の出願であって、平成16年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月23日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の芯線を有するケーブルと、複数の金属製のサポートコンタクトを有するカバーインシュレータと、複数のベースコンタクトを有するベースインシュレータとから構成され、前記各サポートコンタクトは前記各芯線に対応して配設され、前記各芯線が前記各サポートコンタクトに密着して電気的に接続し、かつ、前記各ベースコンタクトが前記各芯線及び前記各サポートコンタクトを挟み込むことを特徴とするケーブルコネクタ。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「各芯線」と「各サポートコンタクト」との関連構成について「電気的に接続し」との限定を付加するものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明と補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-255921号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「このコネクタ1は、複数本の極細ケーブル2?6の各端末2a?6aを所定ピッチで水平な列状に配置する絶縁体のケーブル列状配置部材7からなり、この各端末2a?6aから延設された各ケーブル導体2b?6bの各端末は、この各端末を所定のピッチで列状に配置する絶縁体で構成されたラミネート8により結合されている。
一方、上述した極細ケーブル2?6の各ケーブル導体2b?6bを所定のピッチで列状に配置するケーブルホルダ10は絶縁体により形成され、その上面には前記ケーブル列状配置部材7を位置決め収容する凹部11が形成されている。
また、このケーブルホルダ10には前記凹部11に隣接し、ケーブルホルダ10の先端10a側へ向け、前記ケーブル列状配置部材7から延設された各ケーブル導体2b?6bを互い接触させることなく進行方向に沿って略U字形に折り曲げる所定ピッチで形成された略U字形の複数のケーブル案内溝12?16が形成されている。」(段落【0013】?【0015】)
(b)「各ケーブル導体2b?6bをケーブル案内溝12?16に沿って略U字形状に折り曲げて配置したケーブルホルダ10を図4の矢印Bで示すように正面に開口17aを有するホルダカバー17内に装着すると、ケーブル列状配置部材7及びラミネート8(図3)が各凹部11、10bから脱落することが防止されるとともに、図5で示すように、ホルダカバー17の正面に形成された開口17aからケーブル案内溝12、13、14、15、16に沿って略U字形状に折り曲げられた各ケーブル導体2b?6bが露出することとなる。
このように、ケーブル案内溝12?16に沿って略U字形状に折り曲げられた各ケーブル導体2b?6bをホルダカバー17の開口17aから露出させると、この露出した各ケーブル導体2b?6bそのものがコネクタ1を構成する雄コンタクトとして使用可能となる。」(段落【0018】?【0019】)
(c)「このケーブル案内溝12?16に沿って露出した各ケーブル導体2b?6bを、対応する各ケーブル導体2b?6b毎に配設された複数の雌コンタクト20?24を有するソケット25内に装着すると、ケーブル案内溝12に沿って配設されたケーブル導体2bと、このケーブル導体2bに対応する雌コンタクト20を代表して説明する図5の要部断面図で示す図6のように、ケーブル案内溝12が雌コンタクト20のチューニングフォーク型先端20a内に嵌挿し、同時にこのチューニングフォーク型先端20aがケーブル案内溝12内に配設されたケーブル導体2bをその上下面から把持するので、ケーブル導体2bと対応する雌コンタクト20とが接触し、両者間の電気的接続が図られることとなる。
なお、他の各ケーブル導体3b?6bも対応する各雌コンタクト21?24と接触し、両者間の電気的接続を同時に図ることは言うまでもない。」(段落【0020】?【0021】)
(d)図1には、それぞれケーブル導体2b?6bを有する5本の極細ケーブル2?6がケーブル列状配置部材7及びラミネート8によって結合されて1つの「ケーブル部材」を構成している点が図示されている。また、図5には、一対の側面壁と該側面壁間に形成された底面壁とからなるケーブル案内溝12?16が図示され、各ケーブル導体2b?6bが各ケーブル案内溝12?16の底面壁に対応して配設され、各ケーブル導体2b?6bが各ケーブル案内溝12?16の底面壁に折り返し状に巻き付けられて密着して支持されている態様が図示されている。さらに、図6には、雌コンタクト20のチューニングフォーク型先端20aがケーブル導体2b及びケーブル案内溝12における断面U字形状の底面壁を挟み込む態様が図示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、
「複数本のケーブル導線2b?6bを有するケーブル部材と、複数のケーブル案内溝12?16を有する絶縁体により形成されたケーブルホルダ10と、ケーブルホルダ10が装着されたホルダカバー17と、複数の雌コンタクト20?24を有するソケット25とから構成され、前記各ケーブル案内溝12?16の底面壁は前記各ケーブル導線2b?6bに対応して配設され、前記各ケーブル導線2b?6bが前記各ケーブル案内溝12?16の底面壁に密着し、かつ、前記各雌コンタクト20?24が前記各ケーブル導線2b?6b及び前記各ケーブル案内溝12?16の底面壁を挟み込むコネクタ。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-203624号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(e)「電気コネクタ10は、FPC60が挿入されるハウジング20と、ハウジング20の対向する位置に2列に配列された多数のコンタクト22と、ハウジング20に挿入されたFPC60を押さえ付けて固定するスライダ40を備えている。・・・(中略)・・・また、ハウジング20に配列された多数のコンタクト22は、それぞれ、FPC60に形成された信号用配線62の導電パッド64に接続される。」(段落【0008】)
(f)「スライダ40は、例えば燐青銅のような銅合金からなる一枚の金属板を打ち抜き折り曲げて一体成形されたものであり、両端部に上記した接地部42が形成されている。このスライダ40の成形に当たっては、打ち抜いた金属板を中央部40aで折り曲げ、端部を外側に開き、さらに接地部42を形成するために、接地部42に相当する部分を下方に折り曲げる。」(段落【0010】)
(g)「FPC60をスライダ40によってハウジング20に固定するには、先ず、図8(a)に示すように、スライダ40をFPC60の中央部65から離れた位置に配置しておく。次に、図7及び図8(b)に示すように、FPC60の中央部65をハウジング20に挿入する。FPC60の中央部65をハウジング20に挿入した後、図8(c)に示すように、FPC60の突起60aを乗り越えさせてスライダ40をハウジング20に挿入し、ハウジング20に挿入されたFPC60の中央部65をスライダ40で押し付ける。これにより、FPC60の裏面70b,72bに形成された接地用配線とスライダ40とが確実に接触すると共に、上述したように、スライダ40の接地部42と接地用導電部材24の突起部24bとが接触する。」(段落【0011】)
(h)「スライダ40の挿入に当たっては、スライダ40が金属製であるため、スライダ40が撓んだり折れたりするおそれがほとんど無い。このため、樹脂性のスライダを使うときに比べそれほど注意深く挿入しなくても導電パッド64(図2参照)をコンタクト22に確実に接触させることができ、優れた信頼性と操作性が得られる。」(段落【0012】)
(i)また、従来の電気コネクタに関して、「スライダは樹脂製であるためその長さを長くすると折れたり撓んだりするおそれがある。長尺のスライダをハウジングに挿入する際にこのスライダが撓むと、FPCの導電パッドとハウジングに配列されたコンタクトとが確実に接触されず接触不良をおこすおそれがあり、電気コネクタの信頼性が低下する。」(段落【0003】)と記載されている。
(j)また、図8(c)には、スライダ40をハウジング20に挿入した状態が図示されており、この状態において、各コンタクト22が各信号用配線62及びスライダ40の平板状挿入部を挟み込んでいる点が図示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、
「複数の信号用配線62を有するFPC60と、金属製の平板状挿入部を有するスライダ40と、複数のコンタクト22を有するハウジング20とから構成され、前記各コンタクト22が前記各信号用配線62及び前記スライダ40の平板状挿入部を挟み込む電気コネクタ。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、後者における「ケーブル導線2b?6b」は、その構造又は機能からみて、前者における「芯線」に相当し、以下同様に、「ケーブル部材」が「ケーブル」に、「ケーブルホルダ10」及び「ホルダカバー17」が「カバーインシュレータ」に、「雌コンタクト20?24」が「ベースコンタクト」に、「ソケット25」が「ベースインシュレータ」に、「コネクタ」が「ケーブルコネクタ」に、それぞれ相当する。また、後者における「ケーブル案内溝12?16の底面壁」と前者における「サポートコンタクト」とは、どちらもそれぞれが各芯線を折り返し状に巻き付けて支持するための「支持手段」である点において一致している。

してみると、本願補正発明と引用発明1とは、
「複数の芯線を有するケーブルと、複数の支持手段を有するカバーインシュレータと、複数のベースコンタクトを有するベースインシュレータとから構成され、前記各支持手段は前記各芯線に対応して配設され、前記各芯線が前記各支持手段に密着し、かつ、前記各ベースコンタクトが前記各芯線及び前記各支持手段を挟み込むケーブルコネクタ。 」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本願補正発明においては、支持手段が「金属製のサポートコンタクト」であり、「各サポートコンタクトは前記各芯線に対応して配設され」「各芯線が前記各サポートコンタクトに密着して電気的に接続し、かつ、前記各ベースコンタクトが前記各芯線及び前記各サポートコンタクトを挟み込む」のに対して、引用発明1においては、支持手段が「絶縁体により形成されたケーブル案内溝12?16の底面壁」であり、「各ケーブル案内溝12?16の底面壁は前記各ケーブル導線2b?6bに対応して配設され、」「各ケーブル導線2b?6bが前記各ケーブル案内溝12?16の底面壁に密着し、かつ、前記各雌コンタクト20?24が前記各ケーブル導線2b?6b及び前記各ケーブル案内溝12?16の底面壁を挟み込む」点。

(4)判断
上記相違点について検討すると、上記相違点は、要するに、各芯線を折り返し状に巻き付けて支持するための各支持手段が「金属製のサポートコンタクト」であるか、「絶縁体により形成されたケーブル案内溝12?16の底面壁」であるかの違いにすぎないということができる。
ところで、引用発明2における「スライダ40の平板状挿入部」と本願補正発明における「サポートコンタクト」とは、どちらも芯線を折り返し状に巻き付けて支持するための支持手段である点において一致しており、また、引用発明2における「信号用配線62」は、その構造又は機能からみて、本願補正発明の「芯線」に相当し、以下同様に、「FPC60」が「ケーブル」に、「スライダ40」が「カバーインシュレータ」に、「コンタクト22」が「ベースコンタクト」に、「ハウジング20」が「ベースインシュレータ」に、「電気コネクタ」が「ケーブルコネクタ」にそれぞれ相当するから、引用発明2は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、「複数の芯線を有するケーブルと、金属製のサポートコンタクトを有するカバーインシュレータと、複数のベースコンタクトを有するベースインシュレータとから構成され、前記各ベースコンタクトが前記各芯線及び前記サポートコンタクトを挟み込むケーブルコネクタ。」の発明であると言い換えることができる。そして、引用例2には、前記(2)(h)及び(i)に摘記したように、スライダ40を樹脂製とした場合に信号用配線62の導電パッド64とコンタクト22との接触が必ずしも確実とはいえないところ、スライダ40を金属製とすることにより、信号用配線62の導電パッド64とコンタクト22との接触を確実にすることができるという技術思想、即ち、サポートコンタクトを金属製とすることにより、芯線とベースコンタクトとの接触を確実にするという技術思想が開示されている。
一方、引用発明1においては、各芯線を折り返し状に巻き付けて支持するための各支持手段であるケーブル案内溝12?16の底面壁は、絶縁体により形成されたものであるから、技術常識からみて合成樹脂製であると推認することができる。そして、ケーブル案内溝12?16の底面壁が合成樹脂製であるがゆえに、各雌コンタクト20?24が各ケーブル導線2b?6b及び各ケーブル案内溝12?16の底面壁を挟み込んだとき、各雌コンタクト20?24と各ケーブル導線2b?6bとの接触が確実であるとは必ずしもいえないことは明らかである。
また、コネクタにおいては、コンタクトと芯線との電気的な接続を確実なものにすることは当業者が当然考慮することである。
そうすると、引用発明1において、コンタクトと芯線との電気的な接続をより確実なものにするために、引用発明2を適用して、各支持手段を金属製のサポートコンタクトとするようなことは、当業者が容易に想到できたことであるということができる。
したがって、相違点に係る本願補正発明の構成は、当業者が容易に想到できたものである。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年2月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の芯線を有するケーブルと、複数の金属製のサポートコンタクトを有するカバーインシュレータと、複数のベースコンタクトを有するベースインシュレータとから構成され、前記各サポートコンタクトは前記各芯線に対応して配設され、前記各芯線が前記各サポートコンタクトに密着し、かつ、前記各ベースコンタクトが前記各芯線及び前記各サポートコンタクトを挟み込むことを特徴とするケーブルコネクタ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「各芯線」と「各サポートコンタクト」との関連構成についての限定事項である「電気的に接続し」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-08 
結審通知日 2006-09-13 
審決日 2006-09-27 
出願番号 特願平10-326315
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武井 健浩金丸 治之  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 一色 貞好
川本 真裕
発明の名称 ケーブルコネクタ及びその結線方法  
代理人 池田 憲保  
代理人 池田 憲保  

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