ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1147366 |
審判番号 | 不服2004-5047 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-11 |
確定日 | 2006-11-16 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第219367号「ソフトウェア使用量管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月27日出願公開、特開平 8- 54951〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年8月10日の出願であって、平成16年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年3月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年4月12日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年4月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年4月12日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「ソフトウエアを使用して外部に対する出力を行う装置に備えられ、このソフトウエアの使用量を管理するソフトウエア使用量管理装置において、 前記ソフトウエアの使用量を検出するソフトウエア使用量検出手段と、 このソフトウエア使用量検出手段によって検出された前記ソフトウエアの使用量が予めソフトウエア使用者からソフトウエア権利者に支払われた金額に応じて設定された使用可能量に達したことを判定する判定手段と、 この判定手段によって前記ソフトウエアの使用量が予め定められた使用量に達したと判定された時に、互いに同期して出力されるように関連づけられた複数種類の外部に対して出力を行うことにより、前記複数種類の出力のうちの一部の出力を禁止することにより前記外部に対する出力を阻害する出力阻害手段とを備えたことを特徴とするソフトウエア使用量管理装置。」と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「外部に対して不完全な出力を行うことにより前記外部に対する出力を阻害する出力阻害手段」を「互いに同期して出力されるように関連づけられた複数種類の外部に対して出力を行うことにより、前記複数種類の出力のうちの一部の出力を禁止することにより前記外部に対する出力を阻害する出力阻害手段」に補正するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)特許法第36条第5項の要件の適合性 本願補正発明の「互いに同期して出力されるように関連づけられた複数種類の外部に対して出力を行うことにより、前記複数種類の出力のうちの一部の出力を禁止することにより前記外部に対する出力を阻害する出力阻害手段」という事項は、その意味するところが不明瞭であり、本願の発明の詳細な説明の記載とも対応していないものと認められる。 すなわち、「複数種類の外部」という記載は意味不明であり、さらに、「複数種類の外部に対して出力を行うことにより」は、「前記複数種類の出力のうちの一部の出力を禁止する」に係るのか、「前記外部に対する出力を阻害する」に係るのか不明であり、そのどちらの場合に解しても、技術的にみて意味不明であり、本願の発明の詳細な説明の記載とも対応していない。 したがって、本願補正発明は、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年4月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年3月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ソフトウエアを使用して外部に対する出力を行う装置に備えられ、このソフトウエアの使用量を管理するソフトウエア使用量管理装置において、 前記ソフトウエアの使用量を検出するソフトウエア使用量検出手段と、 このソフトウエア使用量検出手段によって検出された前記ソフトウエアの使用量が予めソフトウエア使用者からソフトウエア権利者に支払われた金額に応じて設定された使用可能量に達したことを判定する判定手段と、 この判定手段によって前記ソフトウエアの使用量が予め定められた使用量に達したと判定された時に、外部に対して不完全な出力を行うことにより前記外部に対する出力を阻害する出力阻害手段とを備えたことを特徴とするソフトウエア使用量管理装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-91509号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (イ)「【請求項1】 視聴料金情報とあらかじめスクランブルされている有料放送の放送信号を受信する受信手段と、 この受信手段で受信したスクランブルされている放送信号をデスクランブルする変換手段と、 この変換手段によりデスクランブルされた放送信号に対応した放映を行う放映手段と、 金銭的価値が記憶されているICカードを受入れ、ICカードに記憶されている金銭的価値を読取ったり、書換えたりするICカード処理手段と、 上記放映手段により有料放送が放映された際に、上記ICカード処理手段を用いて、上記ICカードに記憶されている金銭的価値を上記有料放送の視聴料金で減算した金銭的価値に変更する変更手段と、 を具備したことを特徴とする有料放送の視聴料金徴収システム。」 (第2頁左欄第2行-第16行) (ロ)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記したように、番組単位、または時間単位で視聴料金を徴収するものが要望されている。この発明によれば、有料放送の視聴料金を番組単位、または時間単位で徴収することができる有料放送の視聴料金徴収システムを提供することにある。」 (第2頁右欄第27行-第32行) (ハ)「【0008】 【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1は、この発明に係わる衛星放送システムの概略構成を示す図である。 【0009】すなわち、種々の放送会社の放送局(A、B、C、D)1a、1b、1c、1dは、それぞれ種々の番組を作成しているものである。各放送局1a、…からの放送番組ごとの放送信号が衛星放送管理会社2に供給されている。また、他の放送局の放送信号も衛星放送管理会社2に供給されている。 【0010】衛星放送管理会社2は、各放送局1a、…から供給される放送番組ごとの放送信号をチャンネルごとに区別してしかもスクランブルをかけて衛星放送の送信用アンテナ3により放送衛星4に向けて送信するものである。 【0011】上記放送番組ごとの放送信号は、映像信号、音声信号、番組情報から構成されている。番組情報には、番組コードと所定時間当りの徴収料金情報(番組料金)から構成されている。映像信号と音声信号とには、スクランブルがかけられており、番組情報にはスクランブルがかけられていない。映像信号と音声信号とは別の帯域となっているため区別できるようになっている。番組情報は所定のフォーマットになっているため識別できるようになっている。番組料金は所定時間単位の料金であっても良い(たとえば3分幾ら)が、その番組の全体の料金であっても(たとえば30分番組の料金)良い。 【0012】放送衛星4は、衛星放送の送信用アンテナ3から伝送されてきた放送信号を各家庭5、…等に設けられている衛星放送の受信用アンテナ6、…に再伝送するものである。 【0013】家庭5内には、上記受信用アンテナ6で受信した放送信号を衛星放送の放送局ごとの電気信号に変換する衛星放送チューナ7、衛星放送チューナ7からの放送信号をデスクランブル(復号化)する衛星放送デコーダ8、この衛星放送デコーダ8で復号化された放送信号に対応する映像と音声とを出力するTV受像機9が設けられている。 【0014】上記衛星放送チューナ7には、図示しない操作部が設けられており、この操作部により衛星放送の放送局(番組)の選択が行われている。この操作部の操作はリモコンにより指示されるようにしても良い。 【0015】上記衛星放送デコーダ8には、ICカードCを受入れ、この受入れたICカードCの金銭的価値としての残高から衛星放送の視聴料金を減額する機能を有している。上記ICカードCには、コンビニエンスストア等に設置されているICカード更新機10によってその残高が新たな残高に更新されるようになっている。 【0016】上記ICカードCは、図2に示すように、ICカードCの全体を制御する制御部11、番組コードと視聴金額と視聴日時からなる視聴情報を記憶する視聴管理部12、制御プログラムが記憶されているとともに、各放送局ごとの残高等が記憶されている記憶部13、外部装置と接続される入出力インターフェース14、復号化信号を作成する復号化処理部15、および番組料金と視聴時間により視聴金額を算出する課金管理部16から構成されている。視聴情報の番組コードは視聴チャンネルでも良い、視聴金額は何時何分から何時何分までの視聴時間でも良い。 【0017】上記記憶部13は、図3に示すように、キー情報(復号化を行うための暗号化キー)が記憶される記憶エリア13a、番組コードと視聴金額とからなる視聴情報が記憶される記憶エリア13b、最大限度額等の契約情報(更新情報)が記憶される記憶エリア13c、放送局A?D以外の放送局に対する利用料金の残高としての共通残高と更新日が記憶される記憶エリア13d、放送局Aに対する利用料金の残高としてのA社個別残高と更新日が記憶される記憶エリア13e、放送局Bに対する利用料金の残高としてのB社個別残高と更新日が記憶される記憶エリア13f、放送局Cに対する利用料金の残高としてのC社個別残高と更新日が記憶される記憶エリア13g、放送局Dに対する利用料金の残高としてのD社個別残高と更新日が記憶される記憶エリア13h、基準となる報知金額が記憶される記憶エリア13iによって構成されている。上記更新情報としては、最高低限度額の他に、最低限度額、指定額、有効期限(開始日、終了日)も記憶されている。上記各記憶エリア13a、…の記憶内容は発行時にあらかじめ登録されるようになっている。なお、放送局が増えた場合でもその放送局に対する視聴料金の徴収を、上記記憶エリア13dに記憶される共通残高により行うことができる。また、個別残高がなくなった場合には、課金管理部16の管理の下にその放送局に対する視聴料金の徴収を共通残高により行うことができる。 【0018】また、個別残高に、共通残高を用いる場合に対して割引きやプレミヤムを設けることにより、共通残高を用いた際の分配に関わるコストの低減を図ることが可能となる。 【0019】上記衛星放送デコーダ8は、図4に示すように、衛星放送デコーダ8の全体を制御する主制御部21、制御プログラムが記憶されている記憶部22、デスクランブルを行う際に用いる乱数を発生する乱数発生部23、映像信号を復号化する(スクランブル状態の信号を元に戻す)映像信号復号部24、音声信号を復号化する(スクランブル状態の信号を元に戻す)音声信号復号部25、ICカードCからデータを読取ったり、ICカードCにデータを書込んだりするICカードリーダライタ26、TV受像機9と接続されるTVインターフェース27、および衛星放送チューナ7と接続されるインターフェース28から構成されている。 【0020】ICカード更新機10は、図5に示すように、ICカード更新機9の全体を制御する主制御部31、制御プログラムが記憶されている記憶部32、操作パネル33、磁気ディスクMDからデータを読取ったり、磁気ディスクMDにデータを書込んだりする磁気ディスクリーダライタ34、およびICカードCからデータを読取ったり、ICカードCにデータを書込んだりするICカードリーダライタ35から構成されている。 【0021】磁気ディスクMDには、ICカードCから読取った番組コードと視聴金額とからなる視聴情報が登録されるようになっている。磁気ディスクMDは衛星放送管理会社2に持ち込まれることにより、衛星放送管理会社2はその磁気ディスクMDに記憶されている視聴情報を読取り集計する。これらの種々の磁気ディスクMDにより集計された内容に応じて、衛星放送管理会社2は各放送会社に対する視聴料金を決定し、分配するようになっている。次に、ICカード更新機10によるICカードCの残高の更新処理について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。 【0022】すなわち、ICカードCの持ち主(視聴者)は、そのICカードCの残高が少なくなった際、ICカードCをICカード更新機10が設置されているコンビニエンスストアに出向き、更新する金額の現金とICカードCとをコンビニエンスストアの店員に渡す。店員は受取ったICカードCをICカード更新機10のICカード挿入口(図示しない)に挿入し、更新する放送局、更新金額を操作パネル33より入力する。 【0023】ICカード挿入口に挿入されたICカードCの記憶部13の記憶内容がICカードリーダライタ35により読取られ主制御部31へ出力される。主制御部31はICカードCの記憶部13の記憶内容、つまり契約情報記憶エリア13cに記憶されている有効期限により期限切れか否かを確認し、期限切れの場合、操作パネル33で期限切れの旨を案内する。 【0024】期限切れではない場合、主制御部31は今回の更新金額とICカードCの対応する放送局の残高の合計金額が限度額より大きいか否かを確認し、合計金額が限度額より大きい場合、操作パネル33で更新限度額がオーバする旨を案内する。合計金額が限度額より小さい場合、主制御部31は上記合計金額でICカードCの対応する放送局の残高および更新日を更新する。 【0025】たとえば、放送局Aに対する更新が行われた場合、ICカードCの記憶エリア13eの残高および更新日が更新され、放送局Bに対する更新が行われた場合、ICカードCの記憶エリア13fの残高および更新日が更新され、放送局Cに対する更新が行われた場合、ICカードCの記憶エリア13gの残高および更新日が更新され、放送局Dに対する更新が行われた場合、ICカードCの記憶エリア13hの残高および更新日が更新され、放送局A?D以外の放送局に対する更新が行われた場合、ICカードCの記憶エリア13dの残高および更新日が更新される。 【0026】また、主制御部31はICカードリーダライタ35を用いて、ICカードCの視聴管理部12に記憶されている視聴情報としての番組コードと視聴金額とを読出し、磁気ディスクリーダライタ34を用いて、磁気ディスクMDに記憶する。上記処理が終了した後、ICカード挿入口からICカードCが排出されることにより、店員はICカードCを持ち主に返却する。次に、衛星放送デコーダ8による視聴処理について、図7、図8に示すフローチャートを参照しつつ説明する。 【0027】すなわち、ICカードCの持ち主(視聴者)は、そのICカードCを衛星放送デコーダ8のICカード挿入口(図示しない)に挿入し、視聴する放送局(番組)を衛星放送チューナ7により選択する。この選択により、放送局Aの番組が選択された場合、衛星放送チューナ7は放送局Aの放送信号を衛星放送デコーダ8に出力する。 【0028】衛星放送デコーダ8の主制御部21は、衛星放送デコーダ8から供給される放送局Aの放送信号に含まれている番組情報としての番組コードと番組料金とを抽出し、この抽出した内容をICカードリーダライタ26を用いてICカード挿入口に挿入されたICカードCの制御部11に出力する。 【0029】ICカードCの制御部11は、供給された番組コード(A社)に対応する記憶部13の記憶エリア13eに記憶されているA社の個別残高と上記番組料金とを比較し、A社の個別残高の方が少ない場合、残高不足信号を衛星放送デコーダ8の主制御部21へ出力する。A社の個別残高の方が多い場合、制御部11は、A社の個別残高から番組料金を差引いた金額が記憶部13の記憶エリア13iに記憶されている報知金額よりも少なくなっているか否かを判断し、報知金額よりも少なくなっている場合、報知信号を衛星放送デコーダ8の主制御部21へ出力する。報知金額よりも多い場合、制御部11は、記憶部13の記憶エリア13aから読取った暗号化キーを用いて復号化処理部15で復号化処理に必要な復号化信号を生成し、衛星放送デコーダ8の主制御部21へ出力する。 【0030】そして、別の番組情報あるいは終了情報が供給された際、制御部11は過金管理部16を用いて図示しないタイマにより計測された経過時間と番組料金とから視聴金額を算出し、記憶部13の記憶エリア13eに記憶されているA社の個別残高から上記視聴金額を差引いた金額で記憶エリア13eの個別残高を更新するとともに、このときの図示しないタイマにより計時されている日付を更新日として記憶する。制御部11は、番組コードと視聴金額とを視聴管理部12に記憶する。 【0031】また、放送局B、放送局C、あるいは放送局Dの番組が選択された場合も、放送局Aの番組が選択された場合と同様に動作し、その視聴金額がICカードCの記憶部13に記憶されている個別残高(対応する放送局の)が更新される。 【0032】また、放送局A?D以外の放送局の番組が選択された場合も、放送局Aの番組が選択された場合と同様に動作し、その視聴金額がICカードCの記憶部13の記憶エリア13dに記憶されている共通残高が更新される。 【0033】また、衛星放送デコーダ8の主制御部21は、ICカードCから残高不足信号が供給された場合、残高不足により視聴できない旨を操作パネル33より報知し、ICカードCから報知信号が供給された場合、ICカードCの残高が残り少ないことを操作パネル33より報知する。これにより、ICカードCの残高が少なくなり、視聴不能になる前に視聴者に注意を喚起することができ、利便性の向上が図れる。」 (第3頁左欄第49行-第5頁右欄第14行) (ニ)「【0038】なお、前記実施例では、映像信号と音声信号との両方にスクランブルをかけた場合について説明したが、これに限らず、映像信号にのみスクランブルをかけ、音声信号にはスクランブルをかけないようにしても良い。」 (第5頁右欄第49行-第6頁左欄第3行) (2)対比 本願発明と引用例に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると次のことが認められる。 本願明細書の0028段落には、「この各種ソフトウェアとは、音声データ,画像データ,文字データ,コンピュータプログラム等のデジタルデータの形態を有している。そして、この各種ソフトウェアの内容には、従来フロッピーディスクで提供されていたコンピュータプログラム及びそのデータを初めとして、従来アナログテレビジョンシステムにより放送されていたテレビジョンプログラム,従来ビデオテープやビデオディスクによって提供されていた映画プログラム,従来ラジオ放送やコンパクトディスクによって提供されていた音楽データ,写真等の静止画データ等が含まれる。」と記載されており、本願明細書の「ソフトウェア」は、テレビジョンプログラムを包含するものである。 引用例発明の「有料放送」はテレビジョンプログラムの一種であるから、本願発明の「ソフトウェア」に相当するものであり、引用例発明の「視聴者」及び「放送局」は、本願発明の「ソフトウェア使用者」及び「ソフトウェア権利者」に相当する。 引用例の0013段落の記載からすると、衛星放送チューナは有料放送の放送信号を受信するものであり、衛星放送デコーダは衛星放送チューナからの信号をデスクランブルしてTV受像機に出力するものである。 したがって、引用例の衛星放送チューナと衛星放送デコーダとを組み合わせた装置は、「ソフトウェアを使用して外部に対する出力を行う装置」であると言える。 次に引用例の0003段落、0027段落、0029段落及び図8の記載からすると、引用例発明は、有料放送の視聴料金を、放送局毎に番組単位で徴収するものであるから、放送局毎に番組単位の視聴を管理しているものであると言える。 また、放送局毎に番組が選択されたことを検出していることからして有料放送の番組単位の視聴を検出する手段を有するものであると言える。 したがって、引用例発明は「ソフトウェアの使用量を検出するソフトウェア使用量検出手段」を有するものであり、引用例発明の「有料放送の視聴料金徴収システム」は、本願発明の「ソフトウェア使用量管理装置」に相当するものである。 また、引用例のICカードに記憶された放送局毎の残高は、視聴する前では、視聴者が予め放送局に支払った金額を表すものであるから、「予めソフトウェア使用者からソフトウェア権利者に支払われた金額」であると言える。 引用例の0029段落及び図8の記載からすると、有料放送を視聴する場合には、番組料金を放送局毎の残高と比較して、番組料金よりも放送局毎の残高が少ない場合に残高不足信号を出力するものであるから 本願発明と引用例発明とは「ソフトウエアの使用量が所定の条件に達したことを判定する判定手段」を有するものである点で共通している。 また、引用例の0033段落には「残高不足信号が供給された場合、残高不足により視聴できない旨を操作パネル33より報知」することが記載されていることからして、引用例発明は「この判定手段によって前記ソフトウエアの使用量が所定の条件に達したと判定された時に、前記外部に対する出力を阻害する出力阻害手段」を有するものであると言える。 したがって、両者は、 「ソフトウエアを使用して外部に対する出力を行う装置に備えられ、このソフトウエアの使用量を管理するソフトウエア使用量管理装置において、 前記ソフトウエアの使用量を検出するソフトウエア使用量検出手段と、 このソフトウエア使用量検出手段によって検出された前記ソフトウエアの使用量が所定の条件に達したことを判定する判定手段と、 この判定手段によって前記ソフトウエアの使用量が所定の条件に達したと判定された時に、前記外部に対する出力を阻害する出力阻害手段とを備えたことを特徴とするソフトウエア使用量管理装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 判定手段の判定する所定の条件が、本願発明では「ソフトウェアの使用量が予めソフトウエア使用者からソフトウエア権利者に支払われた金額に応じて設定された使用可能量に達したこと」であるのに対して、引用例発明ではソフトウェアの料金よりも、ソフトウェア権利者に支払われた金額の残高が少ないかどうかである点。 [相違点2] 外部に対する出力を阻害する出力阻害手段が、本願発明では外部に対して不完全な出力を行うものであるのに対して、引用例発明ではどのような出力が行われるか明示されていない点。 (3)判断 [相違点1]について 引用例発明は、使用しようとするソフトウェアの料金よりも、ソフトウェア権利者に支払われた金額の残高が少ないかどうかを判定し、ソフトウェアの使用後にソフトウェアの料金を徴収するものである。一方、本願発明は「ソフトウェアの使用量が予めソフトウエア使用者からソフトウエア権利者に支払われた金額に応じて設定された使用可能量に達したこと」を判定するものであるが、両者の相違は、料金の徴収をソフトウェア単位とするか、より細分化したものを単位とするかということに基づくものであり、どのような単位に基づいて料金の徴収を行うかは当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎないから、上記相違点1に係る構成とすることに格別の困難性は認められない。 [相違点2]について スクランブルすることにより視聴を制限した有料放送において、契約していない視聴者や料金不足の視聴者には、スクランブルの解除を禁止することは周知である(必要ならば特開平5-207464号公報参照)。 スクランブルの解除が禁止された状態では、スクランブル状態の画像や音声がTV受像機に出力されることになり、これは「外部に対して不完全な出力を行う」ものであると言うことができる。 したがって、引用例発明の出力阻害手段としてスクランブルの解除を禁止することにより、外部に対して不完全な出力を行うものとすることに格別の困難性は認められない。 そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-13 |
結審通知日 | 2006-09-19 |
審決日 | 2006-10-03 |
出願番号 | 特願平6-219367 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古川 哲也 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
竹井 文雄 工藤 一光 |
発明の名称 | ソフトウェア使用量管理装置 |
代理人 | 高田 大輔 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 平川 明 |