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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
管理番号 1147585
審判番号 不服2004-15197  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-22 
確定日 2006-11-02 
事件の表示 平成8年特許願第512469号「冷凍機油組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成8年4月18日国際公開、WO96/11246〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は1995年(平成7年)9月14日(優先権主張 1994年10月5日 日本(JP))を国際出願日とする出願であって、平成16年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年7月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、平成18年3月27日付けで当審による拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成18年6月5日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成18年6月16日付けで審尋が通知され、その指定期間内である平成18年8月21日に回答書が提出されたものである。

2.平成18年6月5日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年6月5日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1、
「【請求項1】含酸素有機化合物から選ばれる少なくとも一種からなる基油に、無機リン酸の金属塩,無機リン酸のアミン塩,有機リン酸の金属塩,有機リン酸のアミン塩,有機ホスホン酸の金属塩,有機ホスホン酸のアミン塩,有機亜リン酸の金属塩及び有機亜リン酸のアミン塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を配合してなる冷凍機油組成物であって、該有機リン酸のアミン塩における有機リン酸が、
一般式(XXVI)

(式中、R65は炭素数1?40のアルケニル基を示し、nは1又は2を示す。)
一般式(XXVII),

(式中、R66及びR67は、それぞれ水素原子或いは脂肪族,脂環式,芳香族又は芳香脂肪族炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよいが、その中の少なくとも一つは炭化水素基であり、mは1?4の整数を示す。)、及び
一般式(XXVIII)

(式中、R68は脂肪族,脂環式,芳香族又は芳香脂肪族炭化水素基、R69は炭素数2?4のアルキレン基、pは1?10の数を示し、nは1又は2を示す。)
で表される有機リン酸から選ばれる少なくとも一種である冷凍機油組成物。」
を、

「【請求項1】含酸素有機化合物から選ばれる少なくとも一種からなる基油に、無機リン酸の金属塩,無機リン酸のアミン塩,有機リン酸の金属塩,有機ホスホン酸の金属塩,有機ホスホン酸のアミン塩,有機亜リン酸の金属塩及び有機亜リン酸のアミン塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を配合してなる冷凍機油組成物。」
と補正することを含むものである。

(2)補正の適否
本件補正後の請求項1についての補正は、実質的に、補正前の請求項1に記載された発明から「有機リン酸のアミン塩」に関する発明を削除するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平6-184575号公報(以下、「刊行物Z」という。)には、「エステル油、ポリアルキレングリコール油から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする冷凍機油。」であって(請求項1の欄)、「摩耗防止剤として…アミンジブチルホスホネート」を(段落0056)、「エステル油に対して0.01?5重量%」使用するもの(段落0057)が記載されており、刊行物Zの「エステル油」及び「アミンジブチルホスホネート」は、それぞれ「含酸素有機化合物からなる基油」及び「有機ホスホン酸のアミン塩」に相当するから、刊行物Zには、「含酸素有機化合物からなる基油に、有機ホスホン酸のアミン塩を配合してなる冷凍機油組成物。」が記載されているものと認められる。

したがって、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明は、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である刊行物Zに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

なお、審判請求人は、平成18年8月21日付けの回答書において、「本願補正後の請求項1について「有機ホスホン酸のアミン塩」を削除する補正を認めていただければ、拒絶理由は解消するものと思料いたします。…以上の状況ですので、今回ご指摘の内容について、新たな拒絶理由を通知していただき、上記の補正をすることができる機会を与えてくださるようお願い致します。」と釈明しているが、特許法は、第121条第1項の拒絶査定不服審判において、補正がされた補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないときは、その補正を却下しなければならない旨を、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項で規定し、また、その補正の却下の決定をするときは、審判請求人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与える必要はない旨を、同法第159条第2項で読み替えて準用する同法第50条ただし書で規定しているので、新たに拒絶理由を通知することはできない(必要ならば、平成15年(行ケ)第475号判決及び平成15年(行ケ)第177号判決を参照されたい。)。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、その余のことを検討するまでもなく、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年6月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?18に係る発明は、平成16年5月6日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献及び記載事項
これに対し、当審において平成18年3月27日付けで通知した拒絶理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平5-230487号公報(以下、「刊行物A」という。)に記載された事項は次のとおりである。

記載事項A-1:特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】 含酸素化合物を主成分とする基油に、組成物全量基準で[I]一般式…を以て表される正りん酸エステルを、必須成分として、0.5?5.0重量%、ならびに、[II](a)一般式…を以て表されるハロゲン化りん酸エステルを0.1?5.0重量%および/または、(b)一般式、
【化3】

(R7 およびR8 は、水素、炭素数が1?18の炭化水素基または酸素含有炭化水素基であって、同時に水素ではない。)で示される酸性りん酸エステル、またはそのアミン塩、もしくはそれらの両方を0.01?2.0重量%、
を必須成分として含有させてなる、フッ化アルカン冷媒用冷凍機油組成物。」

記載事項A-2:段落0019?0028
「【0019】 この発明における冷凍機油組成物における基油は、含酸素化合物を主成分とするものである。…具体的には、…エステルあるいはポリグリコールが好ましく用いられる。
【0020】 エステルとしては、…ポリオールエステル…などが例示される。…
【0027】 これらの各種基油は、1種のみの使用も可能であり、2種以上の混合使用も可能である。…
【0028】 …基油の好ましい動粘度の範囲は、100℃において2.0?100cStである。」

記載事項A-3:段落0034?0038
「【0034】 …また、本発明でいう酸素含有炭化水素基とは、炭化水素基の1以上の炭素原子が酸素原子で置換された基を意味し、好ましいものとしては、一般式 -(AO)n -R9 (Aは炭素数2?4のアルキレン基、R9 は炭素数1?18の炭化水素基(好ましくはアルキル基)、nは1?20の整数をそれぞれ示す。)で表される基が挙げられる。…
【0037】 [II](b)の酸性りん酸エステルの式丸3中の、R7 およびR8 は、水素、または炭素数が1?18、好ましくは3?9の炭化水素基、あるいは酸素含有炭化水素基のいずれかであって、同時に水素ではない。…また、酸素含有炭化水素基としては、[I]正りん酸エステルの式丸1で定義したものと同様の基を示す。…
【0038】 [II](b)の酸性りん酸エステルのアミン塩におけるアミンとしては、アルキルアミンあるいはアルケニルアミンが好ましく用いられる。」

記載事項A-4:段落0061
「【0061】 【発明の効果】 本発明は上記のように構成したので、含酸素化合物を基油とする冷凍機油の潤滑性を著しく向上させ得、これをフッ化アルカン冷媒を用いる冷凍機の冷凍機油として用いると、優れた耐摩耗性を発揮する。」

(3)対比・判断
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と刊行物Aに記載される発明とを比較する。

刊行物Aには、ポリオールエステル等の含酸素化合物を主成分とする基油に(記載事項A-2)、[II](b)一般式

の酸性りん酸エステルのアミン塩を0.01?2.0重量%を含有させてなるフッ化アルカン冷媒用冷凍機油組成物であって、式中のR7 及びR8 は、水素又は酸素含有炭化水素基のいずれかであって、同時に水素ではなく(記載事項A-1)、当該酸素含有炭化水素基は、一般式 -(AO)n -R9 (Aは炭素数2?4のアルキレン基、R9 は炭素数1?18の炭化水素基(好ましくはアルキル基)、nは1?20の整数をそれぞれ示す。)で表される基であるものが記載されている(記載事項A-3)。

そして、本願発明は、本願明細書の第37頁第6?12行に「本発明の冷凍機油組成物には、…例えばリン酸エステルや亜リン酸エステルなどの極圧剤…などを適宜配合することができる」と記載されるように、刊行物Aにおける[I]の正リン酸エステルに相当するものを含み得るものであり、刊行物Aにおける「含酸素化合物を主成分とする基油」は、本願発明の「含酸素有機化合物からなる基油」に相当し、刊行物Aにおける「フッ化アルカン冷媒用冷凍機油組成物」は、本願発明の「冷凍機油組成物」に相当し、刊行物Aにおける一般式丸3の「酸性りん酸エステル」は、R8が水素である場合も含むものであるから、
[R9-(OA)n-O]-(P=O)-(OH)2
[R9-(OA)n-O]2-(P=O)-(OH)
(式中、R9は、炭素数1?18のアルキル基、Aは炭素数2?4のアルキレン基、nは1?20の整数をそれぞれ示す。)というものであって、
本願発明の「有機リン酸アミン塩における有機リン酸」の一般式(XXVIII)に照らして、
[R68O(R69O)p]n-(P=O)-(OH)3-n
(式中、R68は炭素数1?18の脂肪族炭化水素基、R69は炭素数2?4のアルキレン基、pは1?20の数を示し、nは1又は2を示す。)というものに相当する。

よって、本願発明と刊行物Aに記載される発明とは、「含酸素有機化合物からなる基油に、有機リン酸のアミン塩を配合してなる冷凍機油組成物であって、該有機リン酸のアミン塩における有機リン酸が、
一般式(XXVIII)

(式中、R68は炭素数1?18の脂肪族炭化水素基、R69は炭素数2?4のアルキレン基、pは1?10の数を示し、nは1又は2を示す。)で表される有機リン酸から選ばれる少なくとも一種である冷凍機油組成物。」である点で一致し、両者に相違する点はない。

したがって、本願発明は、刊行物Aに記載された発明である。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である刊行物Aに記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-31 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-19 
出願番号 特願平8-512469
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (C10M)
P 1 8・ 113- WZ (C10M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神野 将志  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 木村 敏康
原田 隆興
発明の名称 冷凍機油組成物  
代理人 大谷 保  

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