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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27M
管理番号 1147602
審判番号 不服2003-25339  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-15 
確定日 2006-11-22 
事件の表示 平成11年特許願第139057号「鋼補剛木橋」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月17日出願公開、特開2000-289008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年4月9日の出願であって、平成15年12月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同15年12月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年7月13日差出しの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

(本願発明)
「木質主桁1の下フランジ部に、リブ鋼板2のついた下鋼板3を接着剤により埋め込み、U形鋼またはT形鋼または板鋼の横リブ4のついた鋼床板5を、連結用鋼板6を用いて、木質主桁1の上フランジ部に接着剤により連結する木橋。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、登録実用新案第3043084号公報(発行日:平成9年11月11日)(以下、「引用例1」という。)には、「鋼板で補剛した木桁・木柱・木ラーメン」に関して、第1?6図とともに、下記の記載がある。
(イ)「【0001】【産業上の利用分野】本考案は、・・・木造橋梁などの木構造物に関する。」
(ロ)「【0005】・・・・図1は本考案の鋼板補剛木桁で,図1(a)は横断面図,図1(b)は側断面図である。図1(a)に示すように,集成木材またはLVL(1)で作られる矩形断面の木桁の桁高hは桁幅aよりも大きい。そして,その木桁の上フランジ部と下フランジ部に,板幅a,板厚tの鋼種SM520程度の強さの補剛鋼板(2)を工場接着(3)する。・・・・」
(ハ)「【0012】図6に鋼板補剛木ラーメン橋の実施例を示す。図6(a)は全体の一般図であり,鋼板補剛木桁の中央支間は約70mでその間に柱はない。鋼板補剛木桁同士の現場連結,においては,集成木材またはLVL(1)同士は接着剤による現場接着(4),補剛鋼板(2)同士は現場溶接(5)により連結されている。図6(b)は試算による補剛木桁の断面を示す。」
(ニ)「【0015】集成木材やLVL(1)の木柱を補剛鋼板(2)で補剛することにより,その柱の剛性を非常に強くすることができ,補剛鋼板(2)ではさまれた木材(1)はつねに弾性的でクリープなどの心配がない。」

これらの記載事項および図面を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。

(引用例1記載の発明)
「木桁の下フランジ部に、補剛鋼板2を接着させた木橋」

同、特開平11-10611号公報(以下、「引用例2」という。)には、「強化長尺木質材」に関して、図面とともに下記の記載がある。
(イ)「【0007】・・・図1ないし図2の添付図面に従って説明する。第1実施形態は、図1に示すように、長尺木質材11の一側面に全長に渡って2本の溝12を平行に形成した後、この溝12に接着剤を介して補強材13を嵌合、固定した強化長尺木質材10である。」
(ロ)「【0010】前記補強材13には、曲げ強度、引張強度の大きい各種の金属板、・・・を用いることができる。
【0011】接着剤は、長尺木質材11および補強材13の両方になじみのよいものを選択すればよく、既存のものから任意に選択できる。」
(ハ)「【0013】さらに、溝、補強材は必ずしも断面長方形である必要はなく、例えば図2(c)に示すように、断面略T字形状の補強材13を溝12使用してもよい。この実施形態によれば、最大引張力が作用する最外側面に補強材が巾広く存在するので、きわめて曲げ強度の大きい強化長尺木質材10が得られる。・・・・・」
(ニ)「【0016】(比較例)鋼板を組み込まない点を除き、他は前述の実施例と同一の集成材に、同1条件で荷重を負荷して測定した。測定結果を下記に示す。
【0017】・・・・・」

3.対比・判断
上記本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「木桁」及び「補強鋼板2」は、それぞれ、本願発明の「木質主桁」及び「下鋼板」に相当する。

してみると、両者は、
「木質主桁の下フランジ部に、下鋼板を接着させた木橋」
の点で一致し、下記の点で相違している。

相違点1:下鋼板が、本願発明では、リブ鋼板がついており、接着剤により下フランジ部に埋め込まれているのに対し、引用例1記載の発明では、リブ鋼板がついておらず、下フランジ部に埋め込まれていない点。
相違点2:本願発明では、U形鋼またはT形鋼または板鋼の横リブのついた鋼床板を、連結用鋼板を用いて、木質主桁の上フランジ部に接着剤により連結しているのに対して、引用例1記載の発明では、前者のような構成の有無について明示されていない点。

そこで、上記相違点につき、以下検討する。
相違点1について。
引用例2には、断面T字状の補強材(本願発明のリブ鋼板のついた鋼板に相当)を、長尺木質材(本願発明の木桁に相当)に接着剤を用いて埋め込んだものが記載されている。
そして、引用例1記載の発明の下鋼板を、引用例2に記載されたリブ鋼板のついた鋼板とし、木桁に接着剤を用いて埋め込んで、相違点1に係る本願発明のようにすることは、引用例1記載の発明及び引用例2記載の事項が共に、補強された木質材という同一の技術分野に属するものであるから、何ら困難性はなく、当業者が容易に想到するものである。
相違点2について。
U形鋼の横リブのついた鋼床板を、連結用鋼板を用いて、木質主桁の上フランジ部に接着剤により連結することは、例えば、登録実用新案第3036490号公報に記載されているように従来周知の技術である。なお、横リブはないものの、鋼床板を木質主桁の上フランジ部に接着剤により連結したものは、実願昭63-104608号(実開平2-26611号)のマイクロフィルムにも開示されており、また鋼床板にリブを設けることは特開平8-209628号公報などにみられるように周知の技術である。
そして、引用例1記載の発明に、上記周知の技術を適用して、相違点2に係る本願発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明の奏する効果も、引用例1記載の発明、引用例2記載の事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものということができない。

ところで、審判請求人は審判請求書の中で、「4.本願特許が登録されるべき理由」として、「本願特許の「証拠第3号証」は、・・・・「証拠第1号証」に同一の技術ではない。」旨主張している(ここでは、本願特許の「証拠第3号証」を、証拠第3号証の請求項1に係る発明と解し、また「証拠第1号証」の技術を、引用例1記載の発明と解する)。
しかしながら、拒絶の理由は、「証拠第3号証」の請求項1に係る発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明及び周知技術から容易に発明をすることができた(特許法第29条第2項)、というものであるから、請求人の主張の内容は、拒絶の理由に対する主張とはいえない。
よって、審判請求人の主張は、採用することができない。

また、同審判請求書の中で、「「証拠第1号証」と本願特許の「証拠第3号証」の出願人は同一であり、本願特許は、他人の技術を改良模倣したものではない。」旨主張している。
ところで、特許法第29条第1項3号には、「特許出願前に日本国内・・・において、頒布された刊行物に記載された発明・・・」と規定され、また同第2項には、「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。」と規定されているだけであって、特許出願前に日本国内において、頒布された刊行物であれば、その刊行物に記載されている出願人が、本願の出願人と同一である場合でも、その「刊行物」を特許性を否定する引用例とすることができるものである。なお、当該規定では、出願人が刊行物に記載の発明を模倣したか否については、着目していない。
したがって、証拠第1号証は、記載されている出願人が本願の出願人と同一であるが、上記規定の「特許出願前に日本国内・・・において頒布された刊行物」に該当するので、引用例とすることができるものであり、また審判請求人が他人の技術を改良模倣したものではないとしても、判断の結果に変わりはない。
よって、審判請求人の主張を採用することができない。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の事項及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-13 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-10-02 
出願番号 特願平11-139057
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 昭次  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 西田 秀彦
柴田 和雄
発明の名称 鋼補剛木橋  

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