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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1147672
審判番号 不服2004-5087  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-11 
確定日 2006-11-24 
事件の表示 平成7年特許願第332号「ガス比例弁」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年7月16日出願公開、特開平8-184386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年1月5日の出願であって、平成16年2月2日付けで拒絶査定がなされ(発送2月10日)、これに対し、同年3月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月6日に手続補正がなされたものである。

第2.平成16年4月6日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成16年4月6日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成16年4月6日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】 流体入口室と、流体出口室と、該流体入口室と流体出口室との間に設けられた弁座とを有する弁本体と、前記流体入口室の流体入口とは別の開口部に設けられたダイアフラムと、該ダイアフラムに連接された弁体と、前記弁本体の外部に設けられて前記弁体を磁力の作用により開閉させる電磁コイルとを備えたガス比例弁において、
前記流体出口室内に気泡状密閉空間を有するエアーキャップ又は気泡状密閉空間を有する発泡シートよりなる圧力緩衝部材を設け、前記流体出口室内の圧力変動を吸収可能としたことを特徴とするガス比例弁。」

本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「発泡シート」に関して「気泡状密閉空間を有する」との限定を付加するもので、本件補正に係る事項は、新規事項を含むものでなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由において引用された本件特許出願前に頒布された刊行物である実願昭59-127061号(実開昭61-43653号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」)という。)には「比例制御弁」に関し図面とともに、以下の事項が記載されている。
(あ)「この考案は、ガス燃焼器具等に流入するガス流量を比例的に制御する比例制御弁に関する」(明細書第1頁第19行?第20行)
(い)「1は比例制御弁本体の弁箱、2はガス入口、3はガス出口で、接続パイプ4が連結されており、その先端にノズル5が取り付けられバーナ(図示しない)等へ噴出するようになつている。6は弁座、7は弁体で、これらで弁箱1に二次圧室8を形成している。また、弁体7にはダイヤフラム9と永久磁石10が連接して設けられている。」(明細書第2頁第4行?第11行)
(う)「第2図(a),(b)はこの考案の一実施例を示す比例制御弁の平面図および断面図であり、これらの図において、13は前記二次圧室8の側壁に設けられる吸音室で、内部は例えばゴム等で作られた弾性膜14で仕切られており、仕切られた一方はくびれ部15を介して二次圧室8と連通しており、他方は小孔16を通して大気に連通している。」(明細書第4頁第2行?第8行)
(え)「ガス入口2側の圧力が高くなるとともに電磁石11に印加される電流が小さくなり、弁体7と弁座6との当接により振動がひき起こされて、二次圧室8の圧力に変動が生じても、弾性膜14が圧力変動を吸収(ダンパー作用)するため、連続的な振動の低下ないしは消去をすることができる。」(明細書第4頁第10行?第16行)
(お)第2図(b)にはガス入口2と弁座6間に流体入口室が形成されていることが図示されている。

以上を総合すると、引用文献には、「流体入口室と、二次圧室8と、該流体入口室と二次圧室との間に設けられた弁座6とを有する弁箱1と、前記流体入口室のガス入口2とは別の開口部に設けられたダイヤフラム9と、該ダイヤフラム9に連接された弁体7と、前記弁箱1の外部に設けられて前記弁体7を磁力の作用により開閉させる電磁石11とを備えた比例制御弁において、
前記二次圧室8の側壁に内部を弾性膜14で仕切った吸音室13を設け、前記二次圧室8内の圧力変動を吸収可能とした比例制御弁」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比するに、引用発明の「二次圧室8」、「弁箱1」、「ガス入口2」、「ダイヤフラム9」、「電磁石11」、「比例制御弁」は、本願補正発明の、「流体出口室」、「弁本体」、「流体入口」、「ダイアフラム」、「電磁コイル」、「ガス比例弁」に相当する。
また、引用発明の「内部を弾性膜14で仕切った吸音室13」は、「流体出口室内の圧力変動を吸収可能とする圧力緩衝部材」である点において本願補正発明の「気泡状密閉空間を有するエアーキャップ又は気泡状密閉空間を有する発泡シート」と共通する。
したがって、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおり認定できる。

[一致点]
流体入口室と、流体出口室と、該流体入口室と流体出口室との間に設けられた弁座とを有する弁本体と、前記流体入口室の流体入口とは別の開口部に設けられたダイアフラムと、該ダイアフラムに連接された弁体と、前記弁本体の外部に設けられて前記弁体を磁力の作用により開閉させる電磁コイルとを備えたガス比例弁において、
圧力緩衝部材を設け、前記流体出口室内の圧力変動を吸収可能としたガス比例弁。

[相違点]
流体出口室内の圧力変動を吸収可能とする圧力緩衝部材が、本願補正発明では、流体出口室内に設けられた気泡状密閉空間を有するエアーキャップ又は気泡状密閉空間を有する発泡シートであるのに対し、引用発明では、流体出口室(二次圧室8)の側壁に設けられた内部を弾性膜14で仕切った吸音室13である点。

4.当審の判断
以下、前記相違点につき検討する。
流体機器の技術分野において、流路内に置かれ圧力変動を吸収する手段として、原査定の拒絶理由で提示したスポンジ、連続気孔を持つ多孔質体等が知られているが、これらと同様に気泡状密閉空間を有する発泡体(独立気泡を有する多孔質体)を用いることは、従来より広く採用されている周知の技術手段である(例えば、特開平2-89895号公報(実施例1参照)、特開平6-11091号公報(【0021参照】))、また、その設置に際し気泡状密閉空間を有する発泡体(独立気泡を有する多孔質体)をどのような形状とするかは、設置場所等を考慮して当業者が適宜決定すべきものであり、シート状とした点は、当業者が適宜選択すべき設計的事項である。
してみれば、引用発明における吸音室13に換えて前記周知の技術手段を適用し、本願補正発明の構成を得ることは、当業者であれば、容易に想到し得た事項であり、この点に技術的進歩性は認められない。
そして、本願補正発明により得られる効果も、引用発明及び前記周知の技術手段から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成16年4月6日付け手続補正は上記のとおり却下されたので 、本願の請求項1?3に係る発明は、平成15年10月3日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 流体入口室と、流体出口室と、該流体入口室と流体出口室との間に設けられた弁座とを有する弁本体と、前記流体入口室の流体入口とは別の開口部に設けられたダイアフラムと、該ダイアフラムに連接された弁体と、前記弁本体の外部に設けられて前記弁体を磁力の作用により開閉させる電磁コイルとを備えたガス比例弁において、
前記流体出口室内に気泡状密閉空間を有するエアーキャップ又は発泡シートよりなる圧力緩衝部材を設け、前記流体出口室内の圧力変動を吸収可能としたことを特徴とするガス比例弁。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献とその記載事項は、前記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「発砲シート」に関して「気泡状密閉空間を有する」の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-25 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-11 
出願番号 特願平7-332
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
P 1 8・ 575- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川本 真裕渡邉 洋  
特許庁審判長 前田 仁
特許庁審判官 平瀬 知明
鈴木 久雄
発明の名称 ガス比例弁  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  

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