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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1147697
審判番号 不服2004-19588  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-22 
確定日 2006-11-24 
事件の表示 平成11年特許願第 64312号「有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月22日出願公開、特開2000-258925〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成11年3月11日の出願であって、平成16年8月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月19日付で手続補正がなされたものである。

II.平成16年10月19日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年10月19日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成16年10月19日付の手続補正には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項が含まれている。
「【請求項1】 レジスト膜を除去する処理に使用する有機系レジスト剥離液の水分濃度を管理する有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置であって、
被洗浄物からレジスト膜を除去する処理に使用するヒドロキシルアミン(NH2OH)を含む有機系レジスト剥離液を充填し、加温された前記有機系レジスト剥離液中に前記被洗浄物が投入される洗浄槽と、
前記洗浄槽の所定の位置において両端部をそれぞれ開口し前記有機系レジスト剥離液を循環させる循環パイプと、
前記循環パイプ内を循環する前記有機系レジスト剥離液に対して、少なくとも波長1600nm?2000nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収と、少なくとも波長2000nm?2500nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収とに基づいて、水分濃度を測定して該測定の結果たる水分濃度を示す赤外線センサー信号を出力する赤外線センサーと、
前記赤外線センサーから出力された赤外線センサー信号を入力し、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の不足を示すときには水分供給システム動作信号を出力する処理を行い、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の過多を示すときには新液供給システム動作信号を出力する処理を行う濃度計と、
前記濃度計から出力される前記水分供給システム動作信号を入力して、該水分供給システム動作信号に応じて水分を前記洗浄槽へ供給する水分供給システムと、
前記濃度計から出力される前記新液供給システム動作信号を入力して、該新液供給システム動作信号に応じて未使用の有機系レジスト剥離液である新液を前記洗浄槽へ供給する新液供給システムと
を有する有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置。」

上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である洗浄槽の中に充填されている「有機系レジスト剥離液」について、「加温された」ものであるとの限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて以下に検討する。

2.刊行物に記載された事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-22261号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 レジスト剥離原液と純水とを供給して一定液面レベルに保つ液面調節・補給手段と、このレジスト剥離処理槽内のレジスト剥離液の水分濃度を吸光光度計により検出してレジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を補給する補給手段とを備えたことを特徴とするレジスト剥離液管理装置。」
(1b)「【請求項2】補給手段において、レジスト剥離原液と純水とを補給する代わりに、レジスト剥離原液と純水とを予め調合したレジスト剥離新液を補給するようにしたことを特徴とする請求項1記載のレジスト剥離液管理装置。」
(1c)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造工程や液晶基板製造工程においてレジストの剥離に用いられるレジスト剥離液の管理装置、詳しくは、レジスト剥離液の循環使用における連続自動補給機構、水分濃度調整機構、及びレジスト剥離で溶出したレジストの濃縮化に伴うレジスト剥離性能の劣化抑制のためのレジスト剥離液自動排出機構を併せて有する装置に関する。」
(1d)「【0004】液晶基板のレジスト剥離工程においては、上記のように、レジスト剥離液として有機アルカリや有機溶剤を組み合わせた溶液が主として使用されているが、更に適量の水を添加した溶液が優れた効果を有することが明らかとなった。即ち、適量の水を含有するレジスト剥離液を用いると、基板の処理温度を水を含有しないレジスト剥離液の約80℃から約40℃に低下させることができ基板や半導体回路を形成する下地メタルへのダメージを減少させることができること、不燃物としての取り扱いができ安全性が高いこと、蒸発ロスが主として安価な水であること、剥離速度が大きいことなどの効果を有する。例えば、…アルカノールアミンとグライコールエーテルと純水との溶液などがスプレー方式あるいはディップ方式などで使用されている。」
(1e)「【0010】【課題を解決するための手段】本発明は、レジスト剥離処理槽のレジスト剥離液中に溶解したレジスト濃度は、図8に示すように、その吸光度と密接な関係(高度な直線関係)にあることを実験により確認したことから、溶解レジスト濃度を吸光度測定することにより調整、制御し、さらにレジスト剥離液中の水分濃度が、図5に示すように、その吸光度との間に密接な関係(高度な直線関係)にあることを実験によって確認したことから、水分濃度を吸光度測定により調整、制御するようにしたものであり、水分濃度とレジスト濃度の両方を同時に管理するようにしたものである。」
(1f)「【0012】すなわち、上記の目的を達成するために、本発明のレジスト剥離液管理装置は、レジスト剥離液の溶解レジスト濃度を吸光光度計により検出してレジスト剥離液を排出するレジスト剥離液排出手段と、レジスト剥離液の液面レベルを液面レベル計により検出してレジスト剥離原液と純水とを補給する第一補給手段と、レジスト剥離液の水分濃度を吸光光度計により検出して、レジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を補給する第二補給手段とを備えたことを特徴としている(図1参照)。また、本発明のレジスト剥離液管理装置は、第一補給手段において、レジスト剥離原液と純水とを補給する代わりに、レジスト剥離原液と純水とを予め調合したレジスト剥離新液をもって補給するようにしたことを特徴としている(図2参照)。」
(1g)「【0013】…レジスト剥離原液としては、例えば…アルカノールアミンとグライコールエーテル系溶剤との混合原液などが用いられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン…などを挙げることができる。」
(1h)【0014】?【0018】及び【図1】には、以下の点が記載されている。
図1は、本発明の第1の実施の形態によるレジスト剥離液管理装置を示す系統図であり、図中の機器は、レジスト剥離液を貯留するレジスト剥離処理槽1、液面レベル計3、基板を配置してレジスト剥離しつつ移動するローラーコンベア5、基板6、レジスト剥離液スプレー7、レジスト剥離液スプレーへの送液ポンプ8、レジスト剥離液スプレー用の管路10、レジスト剥離液の清浄化と撹拌のための循環ポンプ11、管路12、吸光光度計15、吸光光度計16、液排出ポンプ18、及びレジスト剥離原液供給缶19、レジスト剥離原液供給用の流量調節弁21、純水供給用の流量調節弁22、液面レベル制御器24、吸光度制御器25、吸光度制御器26、純水等の配管類である。


(1i)「【0022】次に図1に示す第1実施形態による装置の制御系統について説明する。液面レベル計3とレジスト剥離処理槽1の液面レベル、吸光光度計15とレジスト剥離液の水分濃度、吸光光度計16とレジスト剥離液の溶解レジスト濃度の3者は、本質的にはそれぞれ独立機能として作用するが、本発明においては、これらを相互の補完的な関連において機能させることを特徴としている。また、はじめに製品基板の品質管理上で必要なレジスト剥離液の水分濃度の目標値、溶解レジスト濃度の濃縮限界値などは、操業実績又は計算に基づき予め各制御器に設定しておかねばならない。」
(1j)「【0023】以下、レジスト剥離液としてMEAとBDGと純水を混合した溶液を使用した実施形態について説明する。通常、約40℃の一定液温に保持されたレジスト剥離液の水分濃度は、主としてパージN2 ガスに同伴して水分が蒸発することにより、基板処理枚数の増加とともに減少するので、レジスト剥離液のレジスト剥離性能が劣化してくる。このため、水分濃度は所定の目標値、例えば29.0±1.0%に管理する必要がある。」
(1k)「【0024】本発明者は、レジスト剥離液の水分濃度と吸光度との関係を実験により検討し、吸光度の測定波長は、近赤外線領域の950nmから1010nmの範囲が適切であり、976nm付近が感度が大きく特に良好であった。なお、測定波長は、近赤外線領域から選択され、剥離液とレジストの種類や濃度に応じて使い分けられる。図5に示す如く、測定波長λ=976nmにおける吸光度とレジスト剥離液の水分濃度とは高度な直線関係にあり、吸光度を検出することにより水分濃度が正確に測定できることを確認した。管路10にオンラインで設置された吸光光度計15は、測定誤差を最小限とするための諸補償機能と吸光度制御器25を備えている。管路10から導入した試料液の吸光度測定値を、吸光度制御器25に入力して、その値が目標値になるように、出力信号によりレジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を、流量調節弁21、22によりそれぞれ自動制御して、水分濃度を目標値に調整するまで補給する。」
(1l)「【0027】ここで、図1に示す第1実施形態による装置が意図した制御系統の機能的関連について述べる。レジスト剥離処理槽1が空の建浴時においては、液面レベル計3が空であることを検出して、液面レベル制御器24の出力信号により、レジスト剥離原液及び純水が適正な流量比において、流量調節弁21、22により弁開度を調節して送液される。ついで、吸光光度計15が建浴レジスト剥離液の吸光度を連続測定して、吸光度制御器25の出力信号により、レジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方が適正な微少流量において、流量調節弁21及び22の少なくとも一方により弁開度を調節して送液され、目標値の水分濃度になるよう自動制御される。」
(1m)「【0028】次にレジスト剥離処理が開始されると、水分濃度の下降、基板の持ち出しによる液の減量及び溶解レジスト濃縮が進行する。水分濃度下降の場合は、吸光光度計15がレジスト剥離液の吸光度を連続測定して、吸光度制御器25の出力信号により、純水が適正な微少流量において流量調節弁22により弁開度を調節して送液され、目標値の水分濃度になるよう自動制御される。基板の持ち出しによる液の減量の場合は、液面レベル計3が下降した液面レベルを検出して、液面レベル制御器24の出力信号により、レジスト剥離原液及び純水が適正な流量比において、流量調節弁21、22により弁開度を調節して送液される。」
(1n)「【0029】溶解レジスト濃度が濃縮されて劣化限界値に達した場合は、吸光光度計16がレジスト剥離液の溶解レジスト濃度を連続測定して劣化限界値を超えたことを検出し、吸光度制御器26の出力信号により排出ポンプ18が作動し、劣化したレジスト剥離液をレジスト剥離処理槽1から抜き出してドレン管に廃棄するか、又は直接系外に廃棄する。その結果、液面レベルが低下するので、液面レベル計3が下降した液面レベルを検出して、液面レベル制御器24の出力信号により、レジスト剥離原液及び純水が適正な流量比において流量調節弁21、22により弁開度を調節して送液される。レジスト剥離処理槽1には、新鮮なレジスト剥離液が補給されるので、溶解レジスト濃度は劣化限界値に希釈されることでレジスト剥離性能が回復し、排出ポンプ18は停止する。液面レベル計3より上部に、オーバーフロー用の堰が、通常ではオーバーフローしない位置に設けられているが、若干オーバーフローすることがあってもよい。」
(1o)「【0035】…本発明は、レジスト剥離液としてMEAとBDGと純水の溶液を使用した場合に限らず、レジスト剥離液として有機アルカリと純水との溶液、有機溶剤と純水との溶液、有機アルカリと有機溶剤と純水との溶液、有機アルカリと有機溶剤と純水と添加剤との溶液などを使用した場合にも適用できる。上記の実施形態はスプレー方式の場合について説明したが、ディップ方式やスピン方式とすることも可能である。また、レジスト剥離処理槽を複数台設け、リザーバータンク及び上記の管理手段とを組み合わせることも可能である。」
(1p)「【0036】【発明の効果】本発明は、上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) 本発明を、半導体や液晶基板のレジスト剥離工程に適用することにより、レジスト剥離液の水分濃度及び溶解レジスト濃度を、リアルタイムで連続的に監視することができ、所定濃度に一定に精度よく制御することができる。そのため、基板のレジスト剥離性能も安定化して製品の歩留りが大幅に向上する。また、水分濃度が所定の値に制御されるので、レジスト剥離液が引火点を有しないという安全性を確保しながら、安定した液面レベルにおいて長時間の連続操業を可能にする。
(2) 安価なレジスト剥離液を使用してその品質を一定に制御すること及び連続操業が可能になることにより、液交換のダウンタイムと無駄な廃棄が無くなり、液使用量と剥離液コストの大幅削減、稼動率の向上による生産性の大幅な向上、無人化による労務コストの低減など総合的効果も達成できる。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-96911号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】 (a)ヒドロキシルアミン類2?30重量%、(b)水2?35重量%、(c)25℃の水溶液における酸解離定数(pKa)が7.5?13のアミン類2?20重量%、(d)水溶性有機溶媒35?80重量%、および(e)防食剤2?20重量%からなる、レジスト用剥離液組成物。
【請求項2】 (a)成分がヒドロキシルアミンである、請求項1記載のレジスト用剥離液組成物。」
(3b)【0003】?【0005】「レジスト層を除去する剥離液組成物として、近年、アルカノールアミン類を用いたレジスト用剥離液組成物が用いられてきた…しかしながら、最近になって、より剥離性の優れたレジスト用剥離液組成物として、ヒドロキシルアミン類を含むレジスト用剥離液組成物が提案された。…ヒドロキシルアミン類を含む剥離液組成物は、上記アルカノールアミン類を用いた剥離液に比して…変質膜の剥離性が向上するものの、AlまたはAl-Si、Al-Si-Cu等のAl合金が蒸着された基板や、Tiが蒸着された基板に対して腐食が現れるという問題がある。」
(3c)「【0017】上記ヒドロキシルアミン類として、…ヒドロキシルアミンが好適に用いられる。」
(3d)「【0027】上記(a)?(e)成分の配合割合は、(a)成分が2?30重量%、好ましくは5?20重量%、(b)成分が2?35重量%、好ましくは5?25重量%、(c)成分が2?20重量%、好ましくは5?15重量%、(d)成分が35?80重量%、好ましくは40?70重量%、(e)成分が2?20重量%、好ましくは3?10重量%である。本発明においては、上記(a)?(e)成分の配合割合が特に重要であり、各成分が上記範囲を逸脱すると、AlまたはAl合金、Tiが形成された両基板に対する十分な防食効果が得られず、また変質膜剥離能力が低下するので好ましくない。」

(4)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭58-7547号公報(以下、「刊行物4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(4a)「水分の吸収波長帯に測定波長帯を設け、この波長帯における被測定対象からの透過光ないし反射光を第1の信号とし、水分の吸収波長帯の両側に2つの比較波長帯を設け、この比較波長帯における被測定対象からの透過光ないし反射光を第2の信号および第3の信号とし、第2,第3の信号の和と第1の信号との比率信号を求め、この比率信号を、第2,第3の信号の比で補正して被測定対象の水分率を測定することを特徴とする赤外線水分計」(特許請求の範囲第1項)
(4b)「従来、赤外線を利用して被測定対象の水分率を測定するには、水分の吸収波長帯における被測定対象からの反射光ないし透過光の測定信号Sと、水分の非吸収波長帯における反射光ないし透過光の比較信号Rとの比率信号S/Rから被測定対象の水分率を求める2色赤外線水分計が知られている。…水分の吸収波長帯における吸収波長λ2の被測定対象からの透過光ないし反射光の第1の信号(測定信号)Sと、水分の吸収波長帯の両側の比較波長帯における2つの波長λ1,λ3の被測定対象からの透過光ないし反射光の第2,第3の信号(比較信号)R1,R2との和R1+R2の比率信号2S/(R1+R2)を演算して、被測定対象の水分率を求める3色方式が知られている。」(第1頁左下欄第17行?同頁右下欄第16行)
(4c)「被測定対象物が紙とか木材チップとかの一定の物であると、品種が変化しても、出力の波長依存性の湾曲の傾向は、使用波長が狭い範囲内において、ほぼ同一と考えられる。そして、比較波長帯における第2,第3の信号の比は、品種の特性を表わす代表値の1つである。従って、第2,第3の信号の比率を用いて、出力信号の補正をすることによって、品種が変化しても正しい水分値を得ることができる。」(第2頁左上欄第10?18行)
(4d)「次に補正の一例として、紙の場合について述べる。実験によれば、水分を吸収する測定波長λ2=1.95μm、比較波長λ1=1.8μm、λ3=2.1μmとし、」(第2頁右上欄第14?16行)

3.対比・判断
上記摘記事項(1g)より、刊行物1における「レジスト剥離液」は、「有機系レジスト剥離液」を含むものである。
次に、上記摘記事項(1d)、(1j)には、基板の処理温度が約40℃である点、レジスト剥離液が約40℃の一定液温に保持されている点が記載されていることから、レジスト剥離処理槽1中のレジスト剥離液は、加温されていると言える。
次に上記摘記事項(1k)には、吸光光度計15は、測定波長λ=976nmにおけるレジスト剥離液の吸光度を測定するものであり、当該吸光度を検出することにより水分濃度が正確に測定できる点、測定波長λ=976nmは、近赤外線領域の950nmから1010nmの範囲のものである点が記載されている。そして、近赤外線とは、およそ760?1000000nmの波長範囲である赤外線に含まれるものである。
そうすると、刊行物1には、下記の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「半導体製造工程や液晶基板製造工程においてレジストの剥離に用いられる有機系レジスト剥離液の水分濃度調整機構であって、
加温された有機系レジスト剥離液を貯留するレジスト剥離処理槽1と、
前記レジスト剥離処理槽1中の有機系レジスト剥離液を、ローラーコンベア5上に配置された基板6に散布するレジスト剥離液スプレー7と、前記スプレー7に前記処理槽1中の有機系レジスト剥離液を供給するレジスト剥離液スプレー用の管路10と、
前記管路10にオンラインで設置され、測定誤差を最小限とするための諸補償機能と吸光度制御器25を備えており、管路10から導入した試料液、すなわち前記有機系レジスト剥離液の、測定波長λ=976nmの赤外線における吸光度を測定する吸光光度計15と、
前記吸光度測定値を吸光度制御器25に入力して、その値が目標値になるように、出力信号によりレジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を、流量調節弁21、22によりそれぞれ自動制御して、水分濃度を目標値に調整するまで補給する機能と
を有する有機系レジスト剥離液の水分濃度調整機構。」

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、後者における「半導体製造工程や液晶基板製造工程においてレジストの剥離に用いられる有機系レジスト剥離液の水分濃度調整機構」は、前者における「レジスト膜を除去する処理に使用する有機系レジスト剥離液の水分濃度を管理する有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置」に相当する。
また、上記レジスト剥離処理を「洗浄」と表現することは、単なる用語の言い換えに過ぎないから、後者における「加温された有機系レジスト剥離液を貯留するレジスト剥離処理槽1」は、前者における「被洗浄物からレジスト膜を除去する処理に使用する、加温された有機系レジスト剥離液を充填する洗浄槽」に相当する。
後者における「有機系レジスト剥離液の、測定波長λ=976nmの赤外線における吸光度を測定する吸光光度計15」は、有機系レジスト剥離液に対して、波長λ=976nmの赤外線を照射した際の吸光度を測定するものであり、その吸光度を検出することにより水分濃度が正確に測定できるのであるから((1k)参照)、前者における「有機系レジスト剥離液に対して、赤外線を照射した際の吸収に基づいて、水分濃度を測定して該測定の結果たる水分濃度を示す赤外線センサー信号を出力する赤外線センサー」に相当する。
また、刊行物1には、レジスト剥離処理槽内のレジスト剥離液の水分濃度を吸光光度計により検出してレジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を補給する補給手段が記載されており((1a)参照)、水分濃度を吸光光度計15、吸光度制御器25より出力し、その値が目標値になるように、レジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を、流量調節弁21、22によりそれぞれ自動制御して、水分濃度を目標値に調整するまで補給する点が記載されている((1k)参照)。
更に、刊行物1には、水分濃度下降の場合は、吸光光度計15がレジスト剥離液の吸光度を連続測定して、吸光度制御器25の出力信号により、純水が適正な微少流量において流量調節弁22により弁開度を調節して送液され、目標値の水分濃度になるよう自動制御される点が記載されている((1m)参照)。
ここで、刊行物1には、測定した水分濃度が、目標値に対してどのような状態であった場合に、レジスト剥離原液を補給するのか明記されていないが、水分以外の成分を補給すると、レジスト剥離液中の水分濃度が低下するのは自明である。
そして、レジスト剥離液の水分濃度を目標値に調整するために、有機系レジスト剥離液を構成する成分のうち、水分以外の成分、つまりレジスト剥離原液を補給するということは、レジスト剥離液の水分濃度が目標値より過多であったことを示しており、刊行物1においては、測定した水分濃度が水分量の過多を示すときには、水分濃度を目標値に調整するために、少なくともレジスト剥離原液を補給しているものと認められる。
よって、後者における「吸光度制御器25」と、前者における「濃度計」とは、「赤外線センサーから出力された赤外線センサー信号を入力し、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の不足を示すときには水分供給システム動作信号を出力する処理を行い、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の過多を示すときには、所定の液の供給システム動作信号を出力する処理を行う」点で共通するものである。
更に、後者における「前記吸光度測定値を吸光度制御器25に入力して、その値が目標値になるように、出力信号によりレジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を、流量調節弁21、22によりそれぞれ自動制御して、水分濃度を目標値に調整するまで補給する機能」と、前者における「水分供給システム及び新液供給システム」とは、「前記濃度計から出力される前記水分供給システム動作信号を入力して、該水分供給システム動作信号に応じて水分を前記洗浄槽へ供給する」点と、「前記濃度計から出力される前記所定の液の供給システム動作信号を入力して、該所定の液の供給システム動作信号に応じて、所定の液を前記洗浄槽へ供給する」点で共通するものである。
してみると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「レジスト膜を除去する処理に使用する有機系レジスト剥離液の水分濃度を管理する有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置であって、
被洗浄物からレジスト膜を除去する処理に使用する、加温された有機系レジスト剥離液を充填する洗浄槽と、
有機系レジスト剥離液に対して、赤外線を照射した際の吸収に基づいて、水分濃度を測定して該測定の結果たる水分濃度を示す赤外線センサー信号を出力する赤外線センサーと、
前記赤外線センサーから出力された赤外線センサー信号を入力し、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の不足を示すときには水分供給システム動作信号を出力する処理を行い、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の過多を示すときには、所定の液の供給システム動作信号を出力する処理を行う濃度計と、
前記濃度計から出力される前記水分供給システム動作信号を入力して、該水分供給システム動作信号に応じて水分を前記洗浄槽へ供給する水分供給システムと、
前記濃度計から出力される前記所定の液の供給システム動作信号を入力して、該所定の液の供給システム動作信号に応じて、所定の液を前記洗浄槽へ供給する所定の液の供給システムと
を有する有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明が、「ヒドロキシルアミン(NH2OH)を含む有機系レジスト剥離液」と特定しているのに対して、刊行物1発明では、有機系レジスト剥離液の成分が特定されておらず、刊行物1には、例示としてアルカノールアミンが挙げられているが、ヒドロキシルアミン(NH2OH)は記載されていない点。

[相違点2]
本願補正発明が、有機系レジスト剥離液中に被洗浄物を投入して、レジスト剥離処理を行っているのに対して、刊行物1発明では、有機系レジスト剥離液を被洗浄物にスプレーして、レジスト剥離処理を行っている点。

[相違点3]
本願補正発明が、洗浄槽の所定の位置において両端部をそれぞれ開口し有機系レジスト剥離液を循環させる循環パイプを備え、この循環パイプ内を循環する前記有機系レジスト剥離液に対して、赤外線を照射した際の吸収とに基づいて、水分濃度を測定しているのに対して、刊行物1発明は、レジスト剥離液スプレー用の管路10を流れる有機系レジスト剥離液に対して、赤外線を照射した際の吸収に基づいて、水分濃度を測定している点。

[相違点4]
本願補正発明が、有機系レジスト剥離液に対して、少なくとも波長1600nm?2000nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収と、少なくとも波長2000nm?2500nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収とに基づいて、水分濃度を測定しているのに対して、刊行物1発明は、有機系レジスト剥離液に対して、976nmの波長の赤外線を照射した際の吸収に基づいて、水分濃度を測定している点。

[相違点5]
本願補正発明では、所定の液が「未使用の有機系レジスト剥離液である新液」であるのに対して、刊行物1発明では、有機系レジスト剥離原液、または有機系レジスト剥離原液及び純水である点。

そこでまず、相違点1について検討する。
アルカノールアミンを含むレジスト剥離液を、より剥離性の優れたヒドロキシルアミンを含むレジスト剥離液に換えることは、刊行物3に記載されたとおり、本願出願前に周知の事項であり((3b)、(3c)参照)、ヒドロキシルアミンを含むレジスト剥離液は、ヒドロキシルアミンや水などの成分の配合割合が、所望の範囲を逸脱すると、基板に対する十分な防食効果が得られず、また変質膜剥離能力が低下するので好ましくない点は、刊行物3に記載されたとおり、本願出願前に知られた課題である((3d)参照)。
よって、ヒドロキシルアミンを含むレジスト剥離液の複数の成分のうちの水の配合割合を所望の範囲から逸脱しないようにするために、刊行物1発明の有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置を、ヒドロキシルアミンを含むレジスト剥離液の水分濃度管理に用いてみることは、当業者が容易になし得ることである。

次に相違点2、3についてまとめて検討する。
刊行物1には、レジスト剥離処理を、スプレー方式ではなくディップ方式で行っても良い点が記載されている((1d)、(1o)参照)。
よって、刊行物1発明において、スプレー方式をディップ方式とし、上記「加温された有機系レジスト剥離液を貯留するレジスト剥離処理槽1」の中に基板などの被処理物を投入してレジスト剥離処理を行う処理槽とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、ディップ方式の処理槽において、処理槽内の処理液の清浄化と攪拌を目的として、刊行物1に記載された循環ポンプ11,管路12の如き、洗浄槽の所定の位置において両端部をそれぞれ開口し処理液を循環させる循環パイプを設けることは、本願出願前周知の事項であるから、刊行物1発明において、レジスト剥離の処理をディップ方式で行う場合、不要となるレジスト剥離液スプレー用の管路10を除去し、洗浄槽の所定の位置において両端部をそれぞれ開口し処理液を循環させる循環パイプを設け、レジスト剥離液スプレー用の管路10に設置されていた赤外線センサーを、当該循環パイプに設置してみることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計事項である。

次に相違点4について検討する。
刊行物1には、レジスト剥離液の水分濃度の測定波長は、近赤外線領域から選択され、剥離液とレジストの種類や濃度に応じて使い分けられる点が記載されており((1k)参照)、近赤外線とは、およそ760?1000000nmの波長の赤外線のうち、2500nm以下の短波長のものを指す。
そして、被測定対象が、固体であっても液体であっても、その水分濃度を測定する際に、測定波長として、水の吸収波長(例えば、1940nm付近)を採用すること、より正確な水分濃度測定のために、水の吸収波長に加えて、水の1以上の非吸収波長を共に採用することは、刊行物4に記載されている如く、本願出願前に周知の事項である((4a)?(4d)参照、更に、特開平5-45280号公報には、液体である洗浄剤の水分濃度測定について記載されており、その段落【0014】には、「近赤外線を照射して水分濃度を測定する場合を例に取れば、近赤外線領域における水の吸収波長は1.43μm、1.94μmおよび3μm等にあり、これらの光を水を含んだ物質にあてると、…物質の水分濃度を知ることができる。しかしながら、実際には…測定値に誤差を生じるため、比較波長を用いることにより適宜に該誤差を補正するのがよい。…比較波長としては吸収波長の両側に水に吸収されない波長を2つ選ぶのが好ましいが、どちらか片側の波長のみを使用しても測定は可能である。」点が記載されており、特開平9-304273号公報には、食品、製紙などの固体中の水分濃度測定について記載されており、その段落【0002】には、「赤外線水分計の測定原理は、…赤外域における水の吸収帯から選ばれた基準波長(例えば1.9ミクロン付近)と水に吸収されない比較波長とを測定対象に放射し、対象物の含水率によって基準波長と測定波長に吸収される割合が異なることを利用して水分量を検出するものである。ただし基準波長と比較波長の2波長の計測比較だけでは…安定した実用の測定は困難となる。そのために更に第2の比較波長を用い3波長方式で測定することが一般的である。」と記載されている。)。
よって、刊行物1発明において、レジスト剥離液の水分濃度測定を、水の吸収波長(1940nm付近)と水の非吸収波長で測定することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、これらの波長範囲を、「少なくとも波長1600nm?2000nmの間で1波長以上の赤外線」と、「少なくとも波長2000nm?2500nmの間で1波長以上の赤外線」とに限定することは、当業者が適宜選択し得る設計事項であって、補正後の本願明細書の記載を検討しても、上記範囲に限定したことにより、格別の効果が生じたとも認められない。

最後に相違点5について検討する。
刊行物1には、液面レベルを調整するためではあるが、レジスト剥離原液と純水とを補給する代わりに、レジスト剥離原液と純水とを予め調合したレジスト剥離新液を補給しても良い点が記載されており((1b)、(1f)参照)、当該レジスト剥離新液は、「未使用のレジスト剥離液である新液」と言える。
よって、水分量過多の状態を解消するために、未使用のレジスト剥離液である新液を補給することは、刊行物1の記載に基づいて、当業者が適宜なし得る程度のことである。
そして、補正後の本願明細書の記載を検討しても、供給する液を未使用のレジスト剥離液である新液としたことにより、格別顕著な効果が奏されたものとも認められない。

また、審判請求人は審判請求書の請求の理由(平成16年10月19日付けの手続補正書)において、「引用文献1(刊行物1)に記載の発明において不可欠な構成である一定液面レベルに保つ液面調節は、本願の請求項1ならびに請求項2に係る発明の構成と何ら共通するものではなく、引用文献1(刊行物1)に記載の発明と本願発明とはその技術思想を全く異にするものである。」と主張する。
刊行物1には、「液面レベル計3とレジスト剥離処理槽1の液面レベル、吸光光度計15とレジスト剥離液の水分濃度、吸光光度計16とレジスト剥離液の溶解レジスト濃度の3者は、本質的にはそれぞれ独立機能として作用するが、本発明においては、これらを相互の補完的な関連において機能させることを特徴としている。」((1i)参照)、「レジスト剥離処理が開始されると、水分濃度の下降、基板の持ち出しによる液の減量及び溶解レジスト濃縮が進行する。水分濃度下降の場合は、…純水が…送液され、目標値の水分濃度になるよう自動制御される。基板の持ち出しによる液の減量の場合は、液面レベル計3が下降した液面レベルを検出して、…レジスト剥離原液及び純水が…送液される。」((1m)参照)、「溶解レジスト濃度が濃縮されて劣化限界値に達した場合は、…劣化したレジスト剥離液をレジスト剥離処理槽1から抜き出してドレン管に廃棄するか、又は直接系外に廃棄する。その結果、液面レベルが低下するので、液面レベル計3が下降した液面レベルを検出して、…レジスト剥離原液及び純水が…送液される。」((1n)参照)と記載されている。
これらの記載より、刊行物1においては、「液面レベル計3とレジスト剥離処理槽1の液面レベル」、「吸光光度計16とレジスト剥離液の溶解レジスト濃度」の2者は、補完的な関連において機能して作用することがあるが、「吸光光度計15とレジスト剥離液の水分濃度」は、本質的に独立機能として作用できるものであり、刊行物1には、「吸光光度計15とレジスト剥離液の水分濃度」が、「液面レベル計3とレジスト剥離処理槽1の液面レベル」と関連しないと機能して作用できないことを具体的に示す記載もない。
よって、上記主張は採用できない。
更に、審判請求人は、「前記循環パイプ内を循環する前記有機系レジスト剥離液に対して、少なくとも波長1600nm?2000nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収と、少なくとも波長2000nm?2500nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収とに基づいて、水分濃度を測定して該測定の結果たる水分濃度を示す赤外線センサー信号を出力する赤外線センサー」を備える点は、「本願発明者が各種の実験を繰り返し行い試行錯誤の末に獲得したものであり、単に、ヒドロキシルアミン(NH2OH)を含む有機系レジスト剥離液中の水分濃度を常に適正な値に管理することができるという効果に留まらず、当該効果をさらに確かなものとならしめる『ヒドロキシルアミン(NH2OH)を含む有機系レジスト剥離液の水分濃度を正確に測定する』という格別な効果を奏するものである。」と主張する。
しかし、上記相違点4の検討で述べた通り、請求項1の測定波長範囲に格別の技術的意義は見出せないし、そもそも被測定対象の水分濃度を正確に測定するためには、被測定対象固有の特定の波長が存在することを見出す必要があるところ、本願の明細書には、上記広範囲の波長域が記載されているのみで、具体的にどのくらいの波長で測定したかは記載されていない。
よって、請求人が、ヒドロキシルアミン(NH2OH)を含む有機系レジスト剥離液の水分濃度を正確に測定するための特定の波長が存在することを見出したとは認められず、上記主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1,3,4に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
1.本願の請求項に係る発明
平成16年10月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成16年7月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 レジスト膜を除去する処理に使用する有機系レジスト剥離液の水分濃度を管理する有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置であって、
被洗浄物からレジスト膜を除去する処理に使用するヒドロキシルアミン(NH2OH)を含む有機系レジスト剥離液を充填し、前記被洗浄物が投入される洗浄槽と、
前記洗浄槽の所定の位置において両端部をそれぞれ開口し前記有機系レジスト剥離液を循環させる循環パイプと、
前記循環パイプ内を循環する前記有機系レジスト剥離液に対して、少なくとも波長1600nm?2000nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収と、少なくとも波長2000nm?2500nmの間で1波長以上の赤外線を照射した際の吸収とに基づいて、水分濃度を測定して該測定の結果たる水分濃度を示す赤外線センサー信号を出力する赤外線センサーと、
前記赤外線センサーから出力された赤外線センサー信号を入力し、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の不足を示すときには水分供給システム動作信号を出力する処理を行い、該赤外線センサー信号の示す水分濃度が水分量の過多を示すときには新液供給システム動作信号を出力する処理を行う濃度計と、
前記濃度計から出力される前記水分供給システム動作信号を入力して、該水分供給システム動作信号に応じて水分を前記洗浄槽へ供給する水分供給システムと、
前記濃度計から出力される前記新液供給システム動作信号を入力して、該新液供給システム動作信号に応じて未使用の有機系レジスト剥離液である新液を前記洗浄槽へ供給する新液供給システムと
を有する有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置。」

2.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-22261号公報(以下、「刊行物1」という。)、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-96911号公報(以下、「刊行物3」という。)および原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭58-7547号公報(以下、「刊行物4」という。)には、前記「II.2」に記載したとおりの事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明1は、前記II.3で検討した本願補正発明から、洗浄槽の中に充填されている「有機系レジスト剥離液」の限定事項である「加温された」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「II.3」に記載したとおり、刊行物1,3,4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1,3,4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV.むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1,3,4に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-11 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-10-03 
出願番号 特願平11-64312
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 裕美倉持 俊輔  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 前田 佳与子
福田 由紀
発明の名称 有機系レジスト剥離液の水分濃度管理装置  
代理人 上島 淳一  

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