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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1147874
審判番号 不服2004-16391  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-05 
確定日 2006-11-30 
事件の表示 特願2003-299196「光学デバイス及びその製造方法、表示装置、並びに電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月30日出願公開、特開2004-133420〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
本願は、平成15年8月22日(優先権主張平成14年9月20日)の出願であって、平成16年6月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月6日付で手続補正がなされた後、平成18年6月28日付で当審において平成16年9月6日付手続補正を却下すると共に拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成18年9月4日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項9に係る発明(以下、「本願第9発明」という。)は、平成18年9月4日付の手続補正によって補正された明細書又は図面の記載からみて、請求項9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項9】
基体上の所定の領域にカラーフィルタ用の色材が配置される光学デバイスであって、
前記カラーフィルタ用の色材が配置される領域を区画するバンクと、
前記バンクによって区画された領域に配置され、前記カラーフィルタ用の色材と積層されるレンズとを備え、前記バンクは前記レンズの材料に対して撥液性を有する材料から形成されてなることを特徴とする光学デバイス。

3.当審の拒絶の理由に引用した引用例
本願の優先日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された特開平11-23830号公報(以下、「引用例1」という。)において、
【0004】段落には、
「【0004】
【課題を解決するための手段】…カラーフィルター内部にレンズ機能を持たせることにより、透過率等の性能低下を伴うことなく、広視野角化を達成できることを見いだし、本発明に到達した。
…また本発明の第3は、基板上に樹脂から成るレンズ部、および該レンズ部とは屈折率の異なるバインダー樹脂による画素が、この順で形成されており、該レンズ部と該画素が、レンズ面を介して接する構造であることを特徴とするカラーフィルターに存する。」
と記載されている。
【0006】段落には、
「【0006】
【発明の実施の形態】…カラーフィルターは…、透明基板上に赤(R)、緑(G)、青(B)の画素が所望のパターンでブラックマトリックスに仕切られて配置されている…。」
と記載されている。
【0027】段落には、
「【0027】
図7および図8に示されるように画素内部にレンズ部を作製する場合には、上記同様のフォトリソ技術を用いてまずレンズ部を作製した後、ブラックマトリックスならびにR、G、Bの各画素を作製する。…。」
と記載されている。
引用例1の図7には、基板上の所定の領域に画素が配置されるカラーフィルタであって、ブラックマトリックスと、前記ブラックマトリックスによって区画された領域に配置されたレンズ部とを備えたカラーフィルタが図示されている。

3.引用例1に記載された発明
上記引用例1の記載及び図面から、引用例1には、
「基板上の所定の領域に画素が配置されるカラーフィルタであって、ブラックマトリックスと、前記ブラックマトリックスによって区画された領域に配置され、前記画素とレンズ面を介して接するレンズ部とを備えたカラーフィルタ」
の発明が記載されている。

4.対比
本願第9発明と引用例1に記載された発明とを比較する。
引用例1に記載された発明の「基板」、「画素」及び「レンズ部」は、それぞれ、本願第9発明の「基体」、「カラーフィルタ用の色材」及び「レンズ」にそれぞれ相当する。
また、引用例1に記載された発明の「画素と、レンズ面を介して接するレンズ部」における「レンズ面を介して接する」は、本願第9発明の「カラーフィルタ用の色材と積層されるレンズ」における「積層される」に相当する。
また、引用例1に記載された発明の「ブラックマトリックス」は、画素を所望のパターンで仕切るものであるから(【0006】段落)、本願第9発明の「バンク」に相当する。
また、引用例1に記載された発明の対象である「カラーフィルタ」は、本願第9発明の対象である「光学デバイス」に相当する。

そうすると、両者は、
「基体上の所定の領域にカラーフィルタ用の色材が配置される光学デバイスであって、
前記カラーフィルタ用の色材が配置される領域を区画するバンクと、
前記バンクによって区画された領域に配置され、前記カラーフィルタ用の色材と積層されるレンズとを備えた光学デバイス。」
において一致し、以下の相違点を有する。

相違点
本願第9発明は、「バンクはレンズの材料に対して撥液性を有する材料から形成されてなる」構成を有するのに対し、引用例1に記載された発明は、上記構成を有するとは規定されていない点。

5.判断
相違点について検討する。
引用例1に記載された発明において、カラーフイルタの構成要素としてのブラックマトリックス(バンク)の材料をレンズ部(レンズ)の材料に対してどのような性質のものとするかは、当業者が適宜選択できる事項である。

また、引用例1に記載されたものにおいて、ブラックマトリックスがレンズ部のレンズ面に付着していると、レンズの光学特性の観点から好ましくないことは明らかであり、また、引用例1には、「レンズ部を作製した後、ブラックマトリックスを作製する製造法」(【0027】段落)なる記載がなされていることを考慮すると、ブラックマトリックスがレンズ部に対して付着しないようにするために、ブラックマトリックスがレンズの材料に対して撥液性を有する材料から形成することは、当業者が容易に想到できたことである。
したがって、本願第9発明において、「バンク(ブラックマトリックス)はレンズ(レンズ部)の材料に対して撥液性を有する材料から形成されてなる」と限定することは当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願第9発明の作用効果も、引用例1に記載された発明の作用効果から当業者が予測できる範囲のものである。

請求人は、平成18年9月4日付意見書において、「本願発明は、このように撥液性を有する(撥液化された)バンクを具備していることで、明細書段落0026に記載されているように、製造時にバンク内でのレンズ材料の濡れ広がりが抑制され、これにより凸状の曲面を有する形状のレンズを容易に形成することができるようになっています。すなわち、液相法を用いた簡便な工程により製造可能なものとなっています。また、バンクが撥液性を備えていることで、かかる撥液性の制御によりレンズの曲面形状(光学特性)を管理できるようになっています。」と主張する。
請求人が主張する効果は、本願明細書【0022】ないし【0026】段落のレンズ材料配置工程の説明を参照すると、カラーフィルタの製造時に、バンク11で区画された基体10の領域に液体のレンズ材料を配置することが前提としたうえでの効果であることは明らかである。
しかしながら、本願第9発明には、前記前提となる構成が記載されていないので、請求人の主張は、本願第9発明の記載に基づくものではなく、採用することができない。

6.むすび
そうすると、本願第9発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-28 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-16 
出願番号 特願2003-299196(P2003-299196)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 辻 徹二
井口 猶二
発明の名称 光学デバイス及びその製造方法、表示装置、並びに電子機器  
代理人 西 和哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 青山 正和  

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