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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
管理番号 1147909
審判番号 不服2006-5096  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-17 
確定日 2006-12-01 
事件の表示 特願2005-112129「無水洗い出し方法及びそれに使用する固結剤」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯、本願発明
本願は平成17年4月8日に特許出願され、平成18年2月6日付けで出願拒絶され、平成18年3月17日に本件審判請求がなされたものであり、その後、平成18年6月22日付けで当審による拒絶理由が通知され、審判請求人より平成18年8月28日に手続補正がなされたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1?7には以下のことが記載されている。
【請求項1】アルミナセメントにセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結剤に化粧材を加えて混練りして化粧面に打設し、内部が凝結したところで表面を擦り取って化粧材をコンクリート表面に露出させる無水洗い出し方法。
【請求項2】アルミナセメントにセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結剤を混練りして化粧面に打設し、打設表面に化粧材を押し込み、内部が凝結したところで表面を擦り取って化粧材をコンクリート表面に露出させる無水洗い出し方法。
【請求項3】請求項1または2において、硬化促進剤が石膏、無水石膏、半水石膏、若しくは消石灰、炭酸ナトリウム、ポルトランドセメントのいずれか、または、それらを組合わせたものである無水洗い出し方法。
【請求項4】アルミナセメント、セメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤、及び硬化促進剤を含む無水洗い出し用固結剤。
【請求項5】請求項4において、硬化促進剤が石膏、無水石膏、半水石膏、若しくは消石灰、炭酸ナトリウム、ポルトランドセメントのいずれか、または、それらを組合わせたものである無水洗い出し用固結剤。
【請求項6】アルミナセメント100重量部、無水石膏20?70重量部、セメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤0.1重量部を含む無水洗い出し用固結剤。
【請求項7】請求項4?6のいずれかにおいて、更にベントナイト、フライアッシュ、炭酸カルシウム、高炉スラグ、珪砂、タルクまたは粘土鉱物のいずれか、または、それらを組合わせた混合物が添加してある無水洗い出し用固結剤。

II.当審における平成18年6月22日付け拒絶理由の概要
II-1.理由A-1
本願請求項1?7に記載される発明は、本願明細書において凝結遅延剤及び硬化促進剤(ないしは無水石膏)につき裏付けを欠くことが明らかであり、それら特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。したがって、本願特許出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
II-2.理由A-2
本願明細書においては、凝結遅延剤及び硬化促進剤につきその概念を誤って認識しており、その凝結遅延剤及び硬化促進剤をもって特定される本願請求項1?7に記載される発明は甚だしく不明確であるという外はない。したがって、本願特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
II-3.理由A-3
凝結遅延剤と硬化促進剤とを併用する意味が見いだせず、これら凝結遅延剤と硬化促進剤とを添加又は含むという本件請求項1?7に記載の発明が不明瞭という外はない。したがって、本願特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
II-4.理由B
本願請求項1?7に記載される発明は、本願出願前に頒布された刊行物である下記の引用例1?10に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:特公平7-17465号公報
引用例2:特開2003-49402号公報
引用例3:特開平5-38711号公報
引用例4:特開昭58-158206号公報
引用例5:特開2004-300017号公報
引用例6:特開平10-36154号公報
引用例7:特開2000-185312号公報
引用例8:特開平10-231165号公報
引用例9:特開平4-77339号公報
引用例10:特開2002-68811号公報

III.当審の判断
III-1.理由A-1について
本願請求項1及び4では、その固結剤には凝結遅延剤と硬化促進剤が添加される(ないしは、含まれる)ものであって、本願明細書では、当該凝結遅延剤としては「凝結遅延剤は、スターチエーテル、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール(ポバール)、更には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸、ホウ酸、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、砂糖、糖類誘導体等を用いることができる。また、ケイフッ化物やオキシカルボン酸塩等を主成分とするものも同様に用いることができる。」(段落0006の抜粋)と記載され、当該硬化促進剤としては「硬化促進剤は、石膏、無水石膏、半水石膏、消石灰、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、塩化カルシウムや硝酸カルシウム等を単独または組合せて用いてもよい。」(段落0007の抜粋)と記載され、このように、本願請求項1及び4に記載の発明では、材質及び物性の異なる多種多様な凝結遅延剤及び硬化促進剤を選択できるものである。
ところが、本願明細書の実施例においては、その凝結遅延剤として特定量のポリビニルアルコールと、硬化促進剤として特定量の消石灰、同炭酸ナトリウム、同無水石膏及び同半水石膏とを組み合わせてなる僅かの例(図1)が試験され、その凝結性及び強度性について検討されているものの、本願明細書及び図面では、それ以外の凝結遅延剤と硬化促進剤とを組み合わせた場合の効果については具体的には記載されるものはなく、また、そのような凝結遅延剤と硬化促進剤とを組み合わせた場合の作用につき説明するものは何もない。
そして、上記したとおり本願請求項1及び4に記載の発明では材質及び物性の異なる多種多様な凝結遅延剤及び硬化促進剤を選択できるものであって、それら剤の材質及び物性が異なれば、当然のこととして、その作用が異なり、また、その遅延性能又は硬化性能の程度も異なるものである。
そうであれば、本願請求項1及び4に記載される発明においては、上記実施例(図1)で示される凝結遅延剤と硬化促進剤を用いた場合以外の、凝結遅延剤と硬化促進剤とを組合せた態様につき、その奏するところの効果が不明であり、かつ、発明の目的又は意図する効果を実現するための具体的構成が不明という外はなく、更には、上記実施例(図1)で示される特定量の凝結遅延剤と特定量の硬化促進剤を用いた場合以外の態様につき、その奏するところの効果が不明であり、かつ、発明の目的又は意図する効果を実現するための具体的構成が不明という外はない。
してみれば、本願請求項1及び4に記載される発明は凝結遅延剤及び硬化促進剤に関し、全体として、その裏付けを欠くことが明らかであり、それら特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
したがって、本願特許出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

III-2.理由A-2について
上記III-1.で記載したとおり、本願請求項1及び4では、その固結剤には凝結遅延剤と硬化促進剤が添加される(ないしは、含まれる)ものであって、本願明細書では、当該凝結遅延剤としては「凝結遅延剤は、スターチエーテル、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール(ポバール)、更には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸、ホウ酸、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、砂糖、糖類誘導体等を用いることができる。また、ケイフッ化物やオキシカルボン酸塩等を主成分とするものも同様に用いることができる。」(段落0006の抜粋)と記載される。
しかし、これらの例示したものには、アルミナセメントは基よりポルトランドセメントの分野においても凝結遅延剤といえないものが含まれるものである。
例えば、本願明細書の実施例においても用いられているポリビニルアルコールについては、引用例6(段落0042及び0070)、引用例3(段落0018)及び引用例5(段落0032)においては凝結遅延剤及び硬化促進剤の何れの概念にも入り得ない「粘着剤、粘着付与剤又は増粘剤」と記載されるものである。
このように、本願明細書においては、凝結遅延剤につきその概念を誤って認識しており、したがって、その凝結遅延剤をもって特定される本願請求項1及び4に記載される発明は甚だしく不明瞭である。
したがって、本願請求項1及び4に記載される発明は明確であるとはいえず、本願特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

III-3.理由A-3について
本件請求項1及び4に記載の発明では、その固結剤においては凝結遅延剤と硬化促進剤とを併用するものである。
そして、凝結遅延剤とはセメント組成物の凝結を抑制するものであり、また、硬化促進剤はセメント組成物の凝結を促進するものであり、このことは明白なことである(必要ならば、社団法人日本セラミック協会編、「セラミック辞典」、丸善株式会社、昭和63年7月30日、第95頁右欄第1?16行に記載の材料と本願明細書の段落0007に記載される材料とが重複する点を参照)。
そうすると、一般的に云えば、凝結遅延剤と硬化促進剤との双方を含む上記発明は、その固結剤又は固結剤組成物においては、それらの剤に基づく凝結促進作用と凝結抑制作用とが相殺され、その結果、凝結に関しては、それらの剤を用いないものと何ら変わりはないことになり、ないしは、二種の剤相互の過不足、又は、剤の効力の強弱により、その凝結が遅延され又は促進されるものである。
このように、これら発明において、凝結遅延剤と硬化促進剤とを併用する意味が見いだせず、これら凝結遅延剤と硬化促進剤とを添加ないしは含むとする本件請求項1及び4に記載の発明が不明瞭という外はない。
してみれば、本願請求項1及び4に記載される発明は明確であるとはいえず、本願特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

III-4.理由Bについて
本願請求項4に係る発明(以下、必要に応じて、「本願発明4」という)は、上記I.で示される本件請求項4に記載されたものであるとして検討する。
III-4-1.引用例の記載
III-4-1-A.引用例1(特公平7-17465号公報)の記載
(A-1)「【請求項1】アルミナセメント及び骨材を含む原料を用いて人造石を製造するに際し、骨材成分として珪石及び珪石以外の骨材を用いる製造方法であって、前記原料を水と共に混練し、型枠を用いて成形し、次いで脱型した直後に高圧水を噴き付けるか、又は酸溶液を接触させることにより、表面層のうち主として骨材成分以外の部分を除去して表面に骨材成分を露出させ、その後乾燥し焼成することを特徴とする人造石の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
(A-2)「原料の混合は、まず珪石及び珪石以外の骨材を混合し、更に必要に応じて顔料を混合した後、アルミナセメントを添加混合する。なお、原料中には、レジストバインダー等の成形助剤、その他の添加剤を配合添加しても良い。」(第3欄第41?44行)
III-4-1-B.引用例2(特開2003-49402号公報)の記載
(B-1)「【請求項1】硬化した透水性コンクリートの表面をブラッシングすることにより、透水性コンクリート表面の骨材を覆うペースト又はモルタルを除去して骨材を表面に露出させることを特徴とする透水性コンクリートの表面処理方法。」(特許請求の範囲第1項)
(B-2)「上記洗い出し仕上げは、一般に透水性コンクリートの成形直後に成形体表面に硬化遅延剤を散布し、透水性コンクリートの表面以外の部分がある程度の強度を発現し、かつ表面部分が硬化する前に、高圧水を用いて表面部分のペースト又はモルタルを除去し骨材を洗い出すものであり、手間がかかっていた。また、上記洗い出し仕上げでは、洗い出し仕上げにより生じた排水の処理も必要であった。そのため、容易で、排水処理をしなくても透水性コンクリート表面の骨材を覆うペースト又はモルタルを除去して骨材を表面に露出させることができる透水性コンクリートの表面処理方法が望まれていた。」(段落0003)
III-4-1-C.引用例3(特開平5-38711号公報)の記載
(C-1)「【産業上の利用分野】本発明はセメント製品の表面仕上げ方法に関し、特に養生、脱型して得られたセメント製品の表面を、良好な作業効率で洗い出し仕上げするセメント製品の表面仕上げ方法に関する。」(段落0001)
(C-2)「養生後は脱型し、適当な時期に高圧水又はブラシなどを用い、常法に従って洗い出しを行う。この洗い出しは脱型後直ちに行う必要はなく、促進養生を行った場合でも脱型後、数日経過した後に行うことができる。この洗い出し条件、即ち高圧水の圧力や洗い出し時期等によっても、洗い出し深さを調節することができる。」(段落0026)
III-4-1-D.引用例5(特開2004-300017号公報)の記載
(D-1)「本発明の高強度水硬性組成物において、凝結速度調整剤は、水硬性組成物に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、凝結促進剤及び凝結遅延剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、流動性、可使時間を調整することができる。」(段落0027の抜粋)
III-4-1-E.引用例8(特開平10-231165号公報)の記載
(E-1)「石膏は本質的に急硬性であり、硬化後の寸法安定性を保持するのに必要な成分であるが、その添加量は、アルミナセメント100重量部当たり、25?120重量部、好ましくは40?100重量部とするのが良い。・・・。また、石膏は、無水、半水等の各石膏がその種類を問わず、一種または二種以上の混合物として使用できる。」(段落0009)
(E-2)「上述のように、本発明においては、水硬性成分に凝結促進材としてのリチウム塩と、凝結遅延材としての硫酸アルミニウムを同時に添加することにより、可使時間の調整を行ない、セルフレベリング材としての使用を容易にする。従って、凝結促進剤と凝結遅延剤の比、すなわち、硫酸アルミニウムと炭酸リチウムの比は、本発明のセルフレベリング材の特性を左右する大きな因子である。」(段落0015の抜粋)

III-4-2.対比・判断
引用例1には、その前記(A-1)によれば、「アルミナセメント及び骨材成分を含む原料を混練し、型枠を用いて成形し、次いで脱型した直後に高圧水を吹き付けるか、又は酸溶液を接触させることにより、表面層のうち主として骨材成分以外の部分を除去して表面に骨材成分を露出させ、その後乾燥し焼成する、人造石の製造方法」が記載されており、このことから、引用例1には、
「アルミナセメント及び骨材成分を含む原料を混練し、当該原料を型枠を用いて成形し、次いで脱型した直後に、成形物に高圧水を吹き付けるか、又は酸溶液を接触させることにより、当該成形物の表面層のうち主として骨材成分以外の部分を除去して表面に骨材成分を露出させるところの用途に供する、上記アルミナセメントからなる材料」(以下、必要に応じて、「引用発明」という)が記載されているということができる。
そこで、本願発明4と引用発明とを対比する。
引用発明のアルミナセメントからなる材料は、その成形物に高圧水を吹き付けることにより当該成形物の表面層のうち主として骨材成分以外の部分を除去して表面に骨材成分を露出させるという用途に用いられるのであるから、本願発明4と同じように「洗い出し用」の用途を具備するということができる。
また、引用発明のアルミナセメントは、水と混合することによって固化する、ないしは固化させるものであり、その「アルミナセメントからなる材料」は、本願発明4の「固化剤」に相当する。
よって、両者は、「アルミナセメントを含む洗い出し用固結剤」である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】固結剤が、本願発明4では、「セメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤、及び硬化促進剤を含む」とするのに対して、引用発明では、アルミナセメントのみを含み、当該凝結遅延剤及び硬化促進剤を含有せず、したがって、当該特定事項を具備しない点
【相違点2】固結剤が、本願発明4では、「無水」であるとするのに対して、引用発明の用途においては、高圧水又は酸溶液を用いるものであって、当該特定事項を具備しない点
以下、上記相違点に関する特定事項が容易に想到できるか否かにつき検討する。
【相違点1について】
引用発明は、その材料としてアルミナセメントを用いるものであり、そのアルミナセメントにおいては基より、その他のセメント組成物において、そのセメント組成物の凝結性等を制御するために、凝結遅延剤と硬化促進剤とを組み合わせて添加することは、周知・慣用の事項〔例えば、引用例5の前記(D-1)、引用例8の前記(E-2)、特開平11-35929号公報の特許請求の範囲第1及び3項、特開2001-97758号公報の特許請求の範囲第1?4項、特公昭50-28090号公報の特許請求の範囲、特開昭57-27953号公報の特許請求の範囲第1項、等を参照〕となっている。
この場合、凝結遅延剤が「一般にそれ自身や反応物がセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせると考えられる」ことは、本願明細書の段落0006の記載からみても自明なことである〔更に、必要ならば、社団法人日本セラミック協会編、「セラミック辞典」、丸善株式会社、昭和63年7月30日、第95頁右欄第17?27行、等、を参照〕。また、上記周知・慣用技術で表示される「凝結促進剤」は「硬化促進剤」に相当する。
そして、引用発明では、アルミナセメントからなる材料につき、それを含む原料を混練、成形、脱型、上記露出の各処理を実施するものであるが、当該原料が速く凝結すれば、それだけ速く、脱型、露出処理を実施することが可能となる等の利点が生じ、また、当該原料の凝結が遅延すれば、それだけ成形処理の操作がより容易になる等の利点が生ずることは当業者にとっては自明のことである。
してみれば、引用発明において、アルミナセメントからなる材料(ないしはそれを含む原料)の凝結性を調整するために、その材料に、「セメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤、及び硬化促進剤」を添加して、本願発明4の特定事項のようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。
【相違点2について】
引用発明では、その用途の洗い出しにおいて、高圧水等の水を用いて成形物の表面を露出処理するものであるが、この種の露出手段として、ブラシによる無水処理が、水による処理と並んで用いられることは、例えば、引用例2の(B-1)、(B-2)、引用例2の(C-2)等で示されるとおり、当該分野において周知・慣用の事項となっている。
そうであれば、引用発明において、その水による処理に替えて、ブラシを用いる無水処理となして、本願発明4の特定事項のようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。
また、引用発明において上記相違点1及び2に関する特定事項を具備することにより格別顕著な効果を奏したといえるものでもない。
そうであれば、本願請求項4に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1?10に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

IV.むすび
本願請求項1及び4につき本願特許出願は特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願請求項4に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-14 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-10 
出願番号 特願2005-112129(P2005-112129)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C04B)
P 1 8・ 121- WZ (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 末松 佳記  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 板橋 一隆
廣野 知子
発明の名称 無水洗い出し方法及びそれに使用する固結剤  
代理人 石井 良和  

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