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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1147914 |
審判番号 | 不服2003-18761 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-02-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-09-25 |
確定日 | 2006-11-29 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第134912号「グラフィックアクセラレータの浮動小数点プロセッサ及びその浮動小数点機能を実行する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月21日出願公開,特開平 7- 49961〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成6年5月26日(パリ条約による優先権主張1993年6月4日,米国)の出願であって,平成15年6月25日付けで拒絶の査定がされ,これに対し,同年9月25日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに,同日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成15年9月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 1 補正却下の決定の結論 平成15年9月25日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1)補正後の本願発明 本補正により,特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,次のとおり補正された。 「【請求項1】 複数のバンク構成を有した多重バッファ入力レジスタファイルを有し,浮動小数点コマンドバスを介して再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットを受け,且つこの再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットを緩衝する入力回路と, 多重バッファ出力レジスタファイルを有し,線引きパケットを緩衝し且つその線引きパケットを線引きコマンドバスを介して転送する出力回路と, 前記再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットの頂点値を保持する複数のレジスタグループを含む汎用レジスタファイルを有するレジスタファイル回路と, 浮動小数点比較マイクロ命令と,スワップマイクロ命令とから構成された複数の特殊化グラフィックスマイクロ命令を制御記憶装置から読取り且つ1組の機能単位を使用して特殊化グラフィックスマイクロ命令を実行することにより,線引きパケットを前記出力回路の出力レジスタファイルへと組立てる制御シーケンサとを具備したグラフィックスアクセラレータの浮動小数点プロセッサであって, 前記1組の機能単位は, (1)前記入力回路,レジスタファイル回路からの値を受けて所定の浮動小数点演算を行う浮動小数点演算ユニットと, (2)この浮動小数点演算ユニットの出力と,前記入力回路,レジスタファイル回路の少なくとも1つの値を用いてそれぞれ所定の演算出力を発する複数の演算ユニットと, (3)前記複数の演算ユニットの出力の内所定の出力を選択して,前記レジスタファイルに演算結果を,前記出力回路に線引きパケットを出力するマルチプレクサと, を有し, 前記特殊化グラフィックスマイクロ命令は前記マルチプレクサの選択動作を示すDSフィールドとその選択された出力の宛先を示す宛先フィールドを備えて,このマイクロ命令が実行されたときに当該命令にしたがった前記機能単位による実行結果を得られるよう構成し,さらに, 前記特殊化グラフィックスマイクロ命令のスワップマイクロ命令は,前記複数のレジスタグループに記憶されている1組の頂点値が定義済順序で分類されるように,前記浮動小数点比較マイクロ命令に対応する一連の結果フラグに従って前記複数のレジスタグループに関わるレジスタマップを配列替えするものであり, 前記複数のバンク構成を有した多重バッファ入力レジスタのいずれかのバンクが前記特殊化グラフィックスマイクロ命令によりアクセスされているとき,残りのバンクが次の再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットのために使用されるよう構成されたグラフィックスアクセラレータの浮動小数点プロセッサ。」(下線部分は補正箇所,以下請求項1に記載された発明を「本願補正発明」という。) 上記補正は,請求項1に係る発明の構成要件である「1組の機能単位」を具体的に限定したものであるから,特許法17条の2第4項の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本補正後の前記本願補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるか,すなわち,本補正が特許法17条の2第4項において準用する同法126条3項の規定を満たすものであるかについて以下に検討する。 (2) 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平3-129578号公報(以下「引用例」といい,該引用例に記載された発明を「引用発明」という。)には次の事項が記載されている。 ア 「産業上の利用分野 本発明は,図形プロセッサに関し,そしてより詳細には独立して複雑な数理計算を行うことのできる浮動小数点,図形補助プロセッサを有する図形プロセッサに関する。」(1頁右下欄2?6行) イ 「発明の要約 主プロセッサから単一の命令文を受け,独自のマイクロコードを使用して必要な計算の全てを実行するために行わなければならない段階を決定し,主プロセッサに結果の回答だけを戻す図形補助プロセッサが設計されている。この補助プロセッサは,新たなデータ位置に到達するのに使用された中間結果をホスト・プロセッサに対して必ずしも戻さない。これらの計算は,例えばビデオ図形ディスプレー上のピクセル点を表すベクトルであり,又,実行される演算はマトリックス四則演算であることができよう。このように,補助プロセッサを使用すると,主プロセッサが必要な種々の数値演算を周期ごとに開始する必要がなく,主プロセッサは補助プロセッサに対して初期データ及び何を得るべきであるかの命令を与え,補助プロセッサは独自のマイクロコード及び必要ならば独自の記憶装置への通信を利用して結果を生成する段階へと進行する。 種々の形式の変換を実行可能であるように特別のレジスタが補助プロセッサに加えられた。これらのレジスタは必要な場合に主プロセッサが独自のクロック速度で生成されたデータを使用できるように利用可能である。 補助プロセッサは,出力データの精度を補償するため浮動小数点演算を処理するように設計されている。補助プロセッサは自立的に,又,主プロセッサと協同で動作するように設計されている。 解決すべき問題は,補助プロセッサと主プロセッサの間のデータの流れを制御することである。補助プロセッサは極めて迅速に実行可能であり,従って情報を往復して送らなければならない場合はデータの制約がある。この問題を解決するため,主プロセッサと補助プロセッサとの間で転送されるべきデータ量を最小限にし,しかもデータ・チェックの量を最小限に保つために一連の命令が確立された。それによって主プロセッサは種々の命令記号列を補助プロセッサの外部で生成できるので極めてフレキシブルになることができる。各々の命令は実行されると母線又は内部レジスタからその入力データ値を取り出し,それに基づいて特定の集合の演算を実行する。多くの場合,データが後続の図形命令によりいつでも実行される状態で,出力データ値は補助プロセッサのレジスタに残される。 例えば,チェック頂点(FXCKVTX)命令の場合は,多角形の全ての頂点は多角形が完全にクリッピング容積内にあるのか,クリッピング容積の外にあるのか,又は容積の境界を横切っているかが検査される。この命令が完了すると,数値はレジスタ内に残され,いつでもクリッピング命令(FXCLIPF)によって利用されて問題の2つの頂点(多角形の最初の頂点と最後の頂点)の間のライン・セグメントがクリッピング容積を交差しているかどうかの判定がなされる。」(2頁右下欄1行?3頁右上欄15行) ウ 「第1図は本発明の原理に基づいて構成された図形コンピュータ・システムの構成図である。図形コンピュータ・システム100はホスト処理システム110と,図形プロセッサ120と,記憶装置130と,シフト・レジスタ140と,ビデオ・パレット150と,ディジタル-ビデオ変換器160と,ビデオ・ディスプレー170とを備えている。」(4頁左上欄17行?右上欄4行) エ 「第2図は図形プロセッサ120を更に詳細に図示している。図形プロセッサ120は中央処理装置200と,特別図形ハードウェア210と,レジスタ・ファイル220と,命令キャッシュ230と,ホスト・インタフェース240と,記憶インタフェース250と,入力/出力レジスタ260とビデオ・ディスプレー制御装置270とを備えている。 図形プロセッサ120の核心は中央処理装置200である。中央処理装置200は汎用中央処理装置に通常含まれる多くの四則及び論理演算を含む汎用データ処理を行う能力を備えている。更に,中央処理装置200は単独,又は特別図形ハードウェア210との連携で多くの特別図形命令を制御する。 図形プロセッサ120は中央処理装置200を含む図形プロセッサ120のほとんどの部分と接続された主要母線205を備えている。中央処理装置200は双方向レジスタ母線202を経て,多くのデータ・レジスタを含むレジスタ・ファイルの集合に双方向で連結されている。レジスタ・ファイル202は中央処理装置200が利用する即時アクセス可能なデータの保存場所として機能する。以下に更に詳細に説明するように,レジスタ・ファイル220は中央処理装置200が利用できる汎用レジスタの他に図形命令用の含意オペランドを記憶するために利用される多くのデータ・レジスタを備えている。」(6頁左上欄3行?右上欄10行) オ 「x-yアドレスと直線アドレスを変換するのに有用なデータを記憶するためレジスタ920と930が使用される。レジスタ920に記憶されたCONVSPデータはx-yアドレス指定からスクリーン・ピッチ用の直線アドレス指定への変換を可能にするために利用される予め計算された因数である。 この因数は: 16+log2 (スクリーン・ピッチ)である。 同様にして,レジスタ930に記憶されたCONVLPデータはx-yアドレス指定からスクリーン・ピッチ用の直線アドレス指定への変換を可能にするために利用される。このデータは:16+log2(直線ピッチ)に対応する。 このようにしてこのデータをレジスタ920と930に記憶することによって,中央処理装置200はx-yアドレス指定から直線アドレス指定への迅速な変換を実現するためにこのデータを容易にアクセスすることができる。」(12頁左下欄2?末行) カ 「第11図はピクセルを記憶するためのVRAMのバンクを示す,より様式化された第1図の再現である。 さて第12図に進むと,種プロセッサはLAD母線を利用して補助プロセッサ1200に指令を送る。LAD母線上で転送される32の指令ビット(0-32)は補助プロセッサの特別に制御さた動作を可能にする命令欄へと分解される。情報はLAD母線に入り,命令レジスタ1201内に配置され,この命令レジスタ1201は命令を復号し,情報を順序制御装置1202へと送り,この順序制御装置は命令のいずれかを実行するのに必要な種々の動作を順序付けする。これは加算,減算,除算及び乗算命令,又はバックフェース検査又は多角形のクリッピング又はマトリックス又はベクトル演算の何れかのような図形命令に関して同一の動作である。」(13頁右下欄18行?14頁左上欄14行) キ 「演算からのデータもLAD母線を経て入り,レジスタAバンク内のレジスタ(1203)又はレジスタBバンク内のレジスタ1204へと送られる。データはFPCを経て補助プロセッサ局部記憶装置へと転送することもできる。受領された命令は補助プロセッサに対して何を行うべきかを指示し,補助プロセッサは演算を行い,次ぎにその結果を局部記憶装置のレジスタ・バンクA又はレジスタ・バンクB内に残す。ホスト・プロセッサは次ぎに補助プロセッサをポールすることができる。すなわち,補助プロセッサが特定の演算を終了し,かつデータを読出し可能であることを判定する状態を読み出すことができる。補助プロセッサはCOINTピンを経てホスト・プロセッサへと割り込みを送ることができる。 命令は浮動小数点演算論理装置ALU及び浮動小数点乗算器から成るFPUコア内で実際に実行される。この2つの装置は同時に動作可能なので,補助プロセッサ内で浮動小数点加算ADD及び浮動小数点乗算MULTIPLYを同時に実施することができる。」(14頁左上欄15行?右上欄15行) ク 「順序付けマルチプレクサ1217はMA15ないし0ラインにどのアドレス源(プログラム・カウンタ割り込み復帰,割り込みベクトル,命令レジスタからのスタック又はアドレス)が配置されるかを決定する。ROM1218もアドレスを復号するために利用され,かつ更にMA15ないし0ラインから出力されるデータ・パターンを作成するために利用される。内部-外部マルチプレクサ1219はデータが内部位置の1つ,又は外部MSDラインのどちらから読み出されているかを判定する。MSD1220インタフェースによってデータがFPUコア・レジスタ・バンク1203又は1204に向かい,MSD母線又はLAD母線のいずれかから来ることが可能になる。」(14頁右下欄10行?15頁左上欄3行) ケ 「三次元陰影の図形表現の主要な問題点の1つは光線が所定の表面のどこに当たり,又,光線がどのように拡散するかを判定することである。結果を迅速に出すためには,迅速なベクトル演算が可能であることが必要である。一連のベクトル・プリミティブが開発され,それには2つのベクトルを加算するベクトル加算と,2つのベクトルのスカラ・ドット乗算を行うベクトル・ドット・プロダクトと,クロス・プロダクトを生成するベクトル・クロス・プロダクトと,所定のベクトルの絶対値を決定するベクトル絶対値と,その後ベクトルをユニット絶対値に正規化するがその方向は保存する命令が含まれる。更にベクトルの反射を生成する命令もある。この命令はベクトル反射命令と呼ばれる。これらの命令は三次元画像で表現される図形画像の種々の陰影と光彩を出すために必要なデータを生成するために利用される。 ベクトル命令はホスト・プロセッサと補助プロセッサ間の最小限のデータの流れでベクトル演算を有効に実行可能にする補助プロセッサ1200での命令のサブセットから成っている。これらの命令は基本加算及び減算及びベクトル量での演算へと汎用化される。ベクトル命令を行う際,第12図と関連して前述したように,ベクトル・データはLADインタフェース1221上に入り,最初のベクトルがレジスタ・バンクAl203に配される。その後,後続の,すなわち第2のベクトルがレジスタ・バンクB1204に配される。 次ぎにこれらの2つのベクトルで特別な演算を実行するための命令がLADインタフェース1221を経て転送され,命令レジスタ1201に命令を送り,この命令レジスタはそこで順序制御1202でレジスタ・バンクからデータを取り出し,FPUコア1206でこれらのベクトルの要素の加算又は減算を行う順序付けを行う。」(15頁左上欄5行?右上欄19行) コ 「次ぎにベクトル加算及びベクトル減算演算の場合は結果ベクトルがAレジスタ・バンクに戻されるので,そこで結果ベクトルはその特定のベクトルに送られる後続の任意の命令により演算可能状態になる。 ベクトル・ドット・プロダクトの場合も,2つのベクトルはレジスタ・バンクA及びBに記憶される。スカラ・ドット・プロダクトを行う演算は順序付け装置1202の制御のもとでFPU1206内で行われる。その結果はCレジスタ1205に配される。クロス・プロダクトはレジスタ・バンクA及びB内の2つのベクトルを取り出して結果のクロス・プロダクト・ベクトルを生成し,これも順序付け装置を利用して,必要な実際の乗算及び減算を行うためにFPUコア1206内で制御の順序付けを行う。次ぎに結果がレジスタ・バンクAl203に配される。ベクトル絶対値命令用に,Aレジスタ・ファイルに記憶されたベクトルの絶対値はCレジスタ1205に配される。 ベクトル正規化を行う際,レジスタ・バンクAに配されたベクトルはFPUコア1206を利用し,平方根を出し,次ぎにベクトルの相対長さで割ることによって正規化される。その結果の正規化された記憶されたベクトルは次ぎにAバンク内のレジスタに戻る。」(15頁右上欄20行?右下欄4行) サ 「多角形の全ての頂点がこの命令を実行された後,多角形の全体が現在の視野容積の中にあるか,全体が外にあるか,又は視野容積を横切っているかの判定を下すことができるように想定されている。 多角形の全ての頂点のチェック結果に基づいて,多角形は観察ウィンドウの完全な外側にあることを判定でき(ボックス1309),除外される。そうではない場合は,それが完全に観察ウィンドウ内にあるかどうかが判定される(第14図,ボックス1401)。その場合は多角形は図形点を現在の視点の座標スケールへと変換する命令FXSCALEを利用して,第14図,ボックス1411に示すように基準化され,変換されなければならない。」(16頁左下欄10行?右下欄3行) (3) 対比・判断 (ア) 引用発明は,「浮動小数点,図形補助プロセッサを有する図形プロセッサに関する」(前掲ア)ものであるから,本願補正発明の「グラフィックスアクセラレータの浮動小数点プロセッサ」と同じ技術分野に属する。 (イ) 第1図,第2図,第11図,及び第12図を参照すると,「図形プロセッサ120は中央処理装置200と,特別図形ハードウェア210と,レジスタ・ファイル220と,命令キャッシュ230と,ホスト・インタフェース240と,記憶インタフェース250と,入力/出力レジスタ260とビデオ・ディスプレー制御装置270とを備え」(前掲ウ第2図の説明)ており,第11図に示された「ピクセルを記憶するためのVRAMのバンク」は,多重バッファ入力レジスタを有していることが認められ,第12図の浮動小数点プロセッサは,「三次元陰影の図形表現」(前掲キ)について説明がされており,そして「多角形の全ての頂点がこの命令を実行された後,多角形の全体が現在の視野容積の中にあるか,全体が外にあるか,又は視野容積を横切っているかの判定を下すことができるように想定されている。 多角形の全ての頂点のチェック結果に基づいて,多角形は観察ウィンドウの完全な外側にあることを判定でき(ボックス1309),除外される。 そうではない場合は,それが完全に観察ウィンドウ内にあるかどうかが判定される(第14図,ボックス1401)。その場合は多角形は図形点を現在の視点の座標スケールへと変換する命令FXSCALEを利用して,第14図,ボックス1411に示すように基準化され,変換されなければならない。」(前掲ケ)ことから,ジオメトリ処理を行っていることが理解できる。 また,前掲コによると,「スカラ・ドット・プロダクトを行う演算は順序付け装置1202の制御のもとでFPU1206内で行われる」ことから,順序付け装置はグラフィックスマイクロ命令を実行していることが認められる。 そして,処理後のデータは,シフトレジスタ140及びパレット150を介してビデオディスプレイに170に出力していることは,第1図及び第12図から明らかである。 (ウ) 一致点,相違点 以上を踏まえ当業者の技術常識を参酌し対比すると,本願補正発明と引用例記載の発明は次の一致点及び相違点が認められる。 【一致点】 複数のバンク構成を有した多重バッファ入力レジスタファイルを有し,浮動小数点コマンドバスを介して再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットを受け,且つこの再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットを緩衝する入力回路と, 多重バッファ出力レジスタファイルを有し,線引きパケットを緩衝し且つその線引きパケットを線引きコマンドバスを介して転送する出力回路と, 前記再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットの頂点値を保持する複数のレジスタグループを含む汎用レジスタファイルを有するレジスタファイル回路と, 浮動小数点比較マイクロ命令と,スワップマイクロ命令とから構成された複数の特殊化グラフィックスマイクロ命令を制御記憶装置から読取り且つ1組の機能単位を使用して特殊化グラフィックスマイクロ命令を実行することにより,線引きパケットを前記出力回路の出力レジスタファイルへと組立てる制御シーケンサとを具備したグラフィックスアクセラレータの浮動小数点プロセッサであって, 前記1組の機能単位は, (1)前記入力回路,レジスタファイル回路からの値を受けて所定の浮動小数点演算を行う浮動小数点演算ユニットと, (2)この浮動小数点演算ユニットの出力と,前記入力回路,レジスタファイル回路の少なくとも1つの値を用いてそれぞれ所定の演算出力を発する複数の演算ユニットと, (3)前記複数の演算ユニットの出力の内所定の出力を選択して,前記レジスタファイルに演算結果を,前記出力回路に線引きパケットを出力するマルチプレクサと, を有し, マイクロ命令が実行されたときに当該命令にしたがった前記機能単位による実行結果を得られるよう構成し,さらに, 前記特殊化グラフィックスマイクロ命令のスワップマイクロ命令は,前記複数のレジスタグループに記憶されている1組の頂点値が定義済順序で分類されるように,前記浮動小数点比較マイクロ命令に対応する一連の結果フラグに従って前記複数のレジスタグループに関わるレジスタマップを配列替えするように されたグラフィックスアクセラレータの浮動小数点プロセッサ。 【相違点1】本願補正発明が,特殊化グラフィックスマイクロ命令はマルチプレクサの選択動作を示すDSフィールドとその選択された出力の宛先を示す宛先フィールドを備えているのに対し,引用発明では係る構成を備えているか明らかでない点。 【相違点2】本願補正発明が,複数のバンク構成を有した多重バッファ入力レジスタのいずれかのバンクが特殊化グラフィックスマイクロ命令によりアクセスされているとき,残りのバンクが次の再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットのために使用されるよう構成されているのに対し,引用発明では該構成を備えていない点。 (エ) 相違点の判断 相違点1について マルチプレクサは,デジタル回路設計において,複数の入力ストリームとひとつの出力ストリームを持つデバイスであり,ひとつ以上の選択制御入力の信号を元に複数の入力ストリームのうちのひとつだけを出力ストリームに進める機能を備えていることは,当業者の常識に属する事項であり,引用例においても,図12の説明として前掲クに,「順序付けマルチプレクサ1217はMA15ないし0ラインにどのアドレス源(プログラム・カウンタ割り込み復帰,割り込みベクトル,命令レジスタからのスタック又はアドレス)が配置されるかを決定する。ROM1218もアドレスを復号するために利用され,かつ更にMA15ないし0ラインから出力されるデータ・パターンを作成するために利用される。内部-外部マルチプレクサ1219はデータが内部位置の1つ,又は外部MSDラインのどちらから読み出されているかを判定する。MSD1220インタフェースによってデータがFPUコア・レジスタ・バンク1203又は1204に向かい,MSD母線又はLAD母線のいずれかから来ることが可能になる。」ことが示されており,当該相違点は,マルチプレクサの通常の使用形態と比して格別進歩性を有するものではない。 よって,当該相違点に当業者が格別推考力を要したとは認められない。 相違点2について 当該相違点は,原審においても指摘されているように当業者に周知な技術を単に採用したにすぎない。 すなわち,実願平2-121438号(実開平4-78843号)のマイクロフィルムの「従来の技術」の欄には,情報の読み出し回路に設けられる緩衝用の装置において,複数のバンク構成を有しており,いずれかのバンクがアクセスされている時には,残りのバンクが次のジオメトリ頂点パケットのために使用される構成に相当する読出しと同時に書込みを行うことを可能にした複数のバンクメモリを備えるようにすることが示されており,引用例に記載された記憶インタフェース250(前掲イ)に上記技術を採用することは,単なる設計事項にすぎない。 よって,相違点2は,当業者が適宜採用し得る手段でありこの点になんら進歩性は認められない。 したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。そして,本願補正発明の奏する効果も引用例に記載された発明及び当業者の通常の知識に従えば当然に予測可能な範囲内である。 (4) むすび 以上のとおり,本補正は,平成6年改正前特許法17条の2第4項において準用する同法126条3項の規定に違反するので,同法159条1項で準用する53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成15年9月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成15年2月20日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 複数のバンク構成を有した多重バッファ入力レジスタファイルを有し,浮動小数点コマンドバスを介して再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットを受け,且つこの再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットを緩衝する入力回路と, 多重バッファ出力レジスタファイルを有し,線引きパケットを緩衝し且つその線引きパケットを線引きコマンドバスを介して転送する出力回路と, 前記再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットの頂点値を保持する複数のレジスタグループを含む汎用レジスタファイルを有するレジスタファイル回路と, 浮動小数点比較マイクロ命令と,スワップマイクロ命令とから構成された複数の特殊化グラフィックスマイクロ命令を制御記憶装置から読取り且つ1組の機能単位を使用して特殊化グラフィックスマイクロ命令を実行することにより,線引きパケットを前記出力回路の出力レジスタファイルへと組立てる制御シーケンサとを具備したグラフィックスアクセラレータの浮動小数点プロセッサであって, 前記特殊化グラフィックスマイクロ命令のスワップマイクロ命令は,前記複数のレジスタグループに記憶されている1組の頂点値が定義済順序で分類されるように,前記浮動小数点比較マイクロ命令に対応する一連の結果フラグに従って前記複数のレジスタグループに関わるレジスタマップを配列替えするものであり, 前記複数のバンク構成を有した多重バッファ入力レジスタのいずれかのバンクが前記特殊化グラフィックスマイクロ命令によりアクセスされているとき,残りのバンクが次の再フォーマットされたジオメトリ頂点パケットのために使用されるよう構成されたグラフィックスアクセラレータの浮動小数点プロセッサ。」 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記第2で検討した本願補正発明の1組の機能単位を具体的に限定した部分を省いたものである。 そうすると,本願発明を特定する要素をすべて含み,さらに他の要素を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2(3)」に記載したとおり,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-30 |
結審通知日 | 2006-07-04 |
審決日 | 2006-07-20 |
出願番号 | 特願平6-134912 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松尾 俊介、岡本 俊威 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
田中幸雄 佐藤敬介 |
発明の名称 | グラフィックアクセラレータの浮動小数点プロセッサ及びその浮動小数点機能を実行する方法 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 山川 政樹 |
代理人 | 紺野 正幸 |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 黒川 弘朗 |