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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1148065
審判番号 不服2005-6531  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-13 
確定日 2006-11-30 
事件の表示 平成 9年特許願第141275号「露光装置波長管理装置および波長管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月18日出願公開、特開平10-335213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成9年5月30日の出願であって、平成17年3月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年4月13日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年4月13日付の手続補正(以下、「本件補正という。」)を却下する。
[理由]
・理由1
(1) 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、出願当初の請求項1「光源からの出射光を所定のフィルタを通過させ、レチクルを介して基板上に露光光を照射する露光装置において、
前記露光光の照射対象となる基板を保持するステージ上に配置される受光手段と、
前記受光手段で受けた露光光に基づき波長に対する光強度分布を検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出した光強度分布と、予め検出した基準となる光強度分布とを比較する比較手段とを備えていることを特徴とする露光装置の波長管理装置。」を、「光源からの出射光を所定のフィルタを通過させ、レチクルを介して基板上に露光光を照射する露光装置において、前記露光光の照射対象となる基板を保持するステージ上に配置される受光手段と、前記受光手段で受けた露光光に基づき波長に対する光強度分布を検出する検出手段と、前記検出手段にて検出した光強度分布と、予め検出した基準となる光強度分布とを比較する比較手段とを備え、前記比較結果に応じてメインテナンス時期を判断することを特徴とする露光装置。」と補正された。

(2)補正の目的違反について
本件補正の請求項1に係る補正は、「露光装置の波長管理装置。」を「露光装置。」とする補正を含むものであるが、当該補正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも当たらない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記補正は、上記理由により、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

・理由2
(1)独立特許要件について
以上のとおり本件補正については、却下の結論が得られた以上、本来、これ以上の検討が不要なものである。しかしながら、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められるとして、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)原審の拒絶の理由において引用した引用例
引用例1;特開平8-8155号公報

(2).1 引用例1の記載内容
記載1
引用例1の【0009】、【0010】段落には、
「【0009】本発明の目的は、上記の従来例における、干渉フィルタの劣化による単波長の露光照明光における波長シフトの発生に起因する、フォトレジスト・パターンの寸法の幅における「ばらつき」を防止する…ウェーハ露光装置を実現することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のウェーハ露光装置は、X線、i線およびg線等の露光照明光の発光源を備え、所定のステージ上に配置される半導体装置のウェーハに対する露光処理により、当該半導体装置のフォトレジスト・パターンを形成するウェーハ露光装置において、前記発光源により生成される露光照明光の光路上に設けられて、前記露光照明光より所定の単波長の露光照明光を引き出す干渉フィルタと、前記ウェーハに対して照射される単波長の露光照明光の波長シフト量を計測し、当該波長シフト量を参照して前記フォトレジストに対する露光時間を補正制御する露光時間補正手段と、を少なくとも備えることを特徴としている。」
と記載されている。

記載2
引用例1の【0015】段落には、
「【0015】上述のウェーハ13に対する露光処理に対処して、事前に露光照射光の波長を測定する際には、センサー15が装着されているステージ14が移動され、当該センサー15に入射され受光された露光照射光は、光ファイバー15を経由して分光強度計16に入力されて、当該露光照明光の波長が計測される。分光強度計16において計測された波長データは、制御機構17に送られて露光照射光における波長のシフト量が検出され、この波長シフト量に対応する等価的な所要露光時間が補正量として換算される。…」
と記載されている。

記載3
第1図には、水銀ランプ、サブ干渉フィルタ、メイン干渉フィルタ、レチクル、縮小投影レンズ、ステージ上のウェーハが図示され、レチクルを介してウェーハ上に水銀ランプからの露光照明光が照射されることが図示されている。

(2).2 引用例1に記載された発明
上記引用例1の記載1から、引用例1には、「発光源により生成される露光照明光の光路上に設けられて、前記露光照明光より所定の露光照明光を引き出す干渉フィルタと、ウェーハに対して照射される露光照明光の波長シフト量を計測し、当該波長シフト量を参照してフォトレジストに対する露光時間を補正制御する露光時間補正手段と、を少なくとも備えるウェーハ露光装置。」が記載されている。
また、引用例1の記載3を参照すると、上記ウェーハ露光装置において、レチクルを介してステージ上のウェーハに発光源としての水銀ランプからの露光照明光が照射されるものである。
また、引用例1の記載2を参照すると、事前に露光照射光の波長を測定しその際、センサー15に入射され受光された露光照射光は、光ファイバー15を経由して分光強度計16に入力されて、当該露光照明光の波長が計測され、分光強度計16において計測された波長データは、制御機構17に送られて露光照射光における波長のシフト量が検出されるものである。

そうすると、引用例1には、
「発光源により生成される露光照明光の光路上に設けられて、前記露光照明光より所定の単波長の露光照明光を引き出す干渉フィルタと、レチクルを介してステージ上のウェーハに露光照明光が照射されるものであって、
事前に露光照明光の波長を測定しその際、センサー15に入射され受光された露光照明光は、光ファイバー15を経由して分光強度計16に入力されて、当該露光照明光の波長が計測され、分光強度計16において計測された波長データは、制御機構17に送られて露光照明光における波長のシフト量が検出されるものであって、当該波長シフト量を参照してフォトレジストに対する露光時間を補正制御する露光時間補正手段と、を少なくとも備えるウェーハ露光装置。」
の発明が記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1に記載された発明とを比較する。
引用例1に記載された発明の、「発光源」、「干渉フィルタ」、「ウェーハ」、「露光照明光」、「ウェーハ露光装置」、「センサー」、「分光強度計」及び「制御機構」は、それぞれ、本願補正発明の、「光源」、「フィルタ」、「基板」、「露光光」、「露光装置」、「受光手段」、「検出手段」及び「比較手段」に相当する。
本願補正発明の「検出手段にて検出した光強度分布と、予め検出した基準となる光強度分布とを比較する」ことは、本願明細書の【0024】段落を参照すると、「基準光強度分布における中心波長と対象光強度分布の中心波長との差を演算する」ことを含むから、引用例1に記載された発明の「露光照明光の波長が計測され」ることは、本願補正発明の「検出手段にて検出した光強度分布」を計測することに相当し、また、引用例1に記載された発明の「露光照明光における波長のシフト量」については、シフト量の基準となる「波長」について明示的に記載されていないが、引用例1の【0009】段落(記載1)を参照すると、干渉フィルタの劣化による波長シフトのない「波長」であることは明らかであるから、引用例1に記載された発明においても、「予め検出した基準となる光強度分布とを比較する比較手段とを備え」ることは明らかである。

そうすると両者は、
「光源からの出射光を所定のフィルタを通過させ、レチクルを介して基板上に露光光を照射する露光装置において、前記露光光の照射対象となる基板を保持するステージ上に配置される受光手段と、前記受光手段で受けた露光光に基づき波長に対する光強度分布を検出する検出手段と、前記検出手段にて検出した光強度分布と、予め検出した基準となる光強度分布とを比較する比較手段とを備える露光装置。」
において一致し、以下の点で相違する。

相違点
本願補正発明が、「比較結果に応じてメインテナンス時期を判断する」のに対し、引用例1に記載された発明は、比較結果に応じてフォトレジストに対する露光時間を補正制御する点。

(4)判断
相違点について検討する。
本願補正発明と引用例1に記載された発明は共に、波長に対する光強度分布が基準となる光強度分布と比較して比較結果に応じて露光光が適切か否かを判断する点では同じであって、露光光が不適切な時には、本願補正発明では、メインテナンス時期と判断するのに対し、引用例1に記載された発明では、比較結果に応じてフォトレジストに対する露光時間を補正制御するものである。
露光光が不適切な時には、何らかの対策を講じなければならないことは自明の技術常識にすぎず、そのため、メインテナンス時期と判断することは当業者が容易に想到できたことである。
したがって、相違点に係る構成については、引用例1に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年4月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
請求項1
「光源からの出射光を所定のフィルタを通過させ、レチクルを介して基板上に露光光を照射する露光装置において、
前記露光光の照射対象となる基板を保持するステージ上に配置される受光手段と、
前記受光手段で受けた露光光に基づき波長に対する光強度分布を検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出した光強度分布と、予め検出した基準となる光強度分布とを比較する比較手段とを備えていることを特徴とする露光装置の波長管理装置。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項は、前記「・理由2.(2).1」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の、「比較結果に応じてメインテナンス時期を判断する」との構成を省き、「露光装置」に「露光装置の波長管理装置」との限定を付したものである。
そこで、本願発明と、引用例1に記載された発明を対比する。
本願発明の「波長管理装置」は、本願明細書を参照すると、「露光光の照射対象となる基板を保持するステージ上に配置される受光手段と、受光手段で受けた露光光に基づき波長に対する光強度分布を検出する検出手段と、検出手段にて検出した光強度分布と予め検出した基準となる光強度分布とを比較する比較手段とを備えている。」(【0008】段落)ものであり、上記2.理由2の(2).2引用例1に記載された発明を参照すると、引用例1に記載された発明において文言上は異なるものの、実質的に本願発明の「波長管理装置」を有している。
したがって、「波長管理装置」については、引用例1に記載された発明においても有し、本願発明と引用例1に記載された発明の実質的な相違点ではないことから、本願発明と引用例1に記載された発明を対比判断するにあたり、本願発明の「波長管理装置」を相違点として考慮することを要しない。
そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明を対比判断するに、本願発明の構成要件を「波長管理装置」なる文言を除いて全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比判断すれば十分であり、本願補正発明は、前記「2.理由2の(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、本願補正発明と同様に、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-28 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-18 
出願番号 特願平9-141275
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 佐藤 昭喜
辻 徹二
発明の名称 露光装置波長管理装置および波長管理方法  
代理人 鈴木 弘一  
代理人 鈴木 弘一  

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