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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60J
管理番号 1148075
審判番号 不服2006-11798  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-08 
確定日 2006-11-30 
事件の表示 特願2000-290368「開閉装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月 2日出願公開、特開2002- 96637〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成12年9月25日の出願であって、平成18年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月8日付けで審判請求及び手続補正がなされるとともに、さらに、同年7月10日付けで手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項1?3に係る発明は、平成18年7月10日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 開口部と、前記開口部を開閉する開閉部と、前記開閉部を駆動する駆動手段と、前記開口部と前記開閉部の少なくともいずれかに配設された感圧手段と、前記開閉部をシールするシール部材と、前記感圧手段の出力信号に基づき前記開口部と前記開閉部との間への物体の挟み込みを判定する挟み込み判定手段と、前記挟み込み判定手段により物体の挟み込みが判定されると前記物体を開放するよう前記駆動手段を制御する制御手段と、挟み込みによる荷重を吸収する荷重吸収手段とを備え、前記感圧手段と前記荷重吸収手段とは弾性体からなる支持手段と一体化されて前記開口部と前記開閉部の少なくともいずれかに前記シール部材とは別に設けた開閉装置。」

2.引用刊行物の記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平1-322081号公報(以下、「引用例」という。)には、「自動車の自動的に動く窓ガラスのための安全装置」に関し、第1?2図とともに次の事項が記載されている。

(ア)「第1図には、両方向矢印2の方向に操作可能な窓ガラス3(以下“ガラス3”と称する)を備えた自動車ドア1が示してある。ガラスはドアフレーム4の中で案内されている。ドアフレーム4の上側範囲には、トリガ5がガラス3の全長にわたって設けられている。このトリガは、機械的な負荷を受けると、圧電式センサを操作し、それによってセンサは電圧パルスを発生する。トリガ5はドアフレーム4の最も下方へ突出する個所に取付けられている。トリガは第2図に示すように、例えばドアフレーム4内に設けられたシール7のシール唇部6内に配置されている。
好ましい実施形では、トリガ5は圧電ケーブルとして形成されている。この圧電ケーブルは電圧パルスを直接発生する。この場合、装置は例えば次のように作動する。
ドアフレーム4とガラス3の間にある物8は、上昇するガラス3によって、シール唇部6内にある圧電ケーブルに押しつけられる。ガラスはドア1内に配置されている第1図に略示した電動機9によって駆動されて上昇する。圧電ケーブルは例えばシール唇部6内に弛んだ状態で設けられている。圧電ケーブルは電子的な増幅回路を介して電動機9に接続されている。物8によって押しつけられることにより、圧電ケーブルは電圧パルスを発生する。この電圧パルスによって電動機9の回転方向がただちに逆転するので、ガラス3は下方へ移動する。すなわち、物8は締付けられない。
圧電ケーブルはぴんと張った状態でドアフレーム4内に取付けてもよい。この場合、圧電ケーブルの両端が二つの固定個所の間で固定されている。その際、例えば中空空間10によって、シール7内に、逃げのための充分な場所が存在すると、圧電ケーブルは押圧される物8によって引張られる。従って、電動機9を操作するための電圧パルスが発生する。」(第3ページ左上欄第11行?同左下欄第8行)

(イ)「圧電ケーブルによって発生した電圧パルスのすべてが電動機9を操作しないようにするために、圧電ケーブルと電動機9の間に評価電子装置を組み込むことが望ましい。この評価電子装置は、圧電ケーブルの電圧パルスを増幅する少なくとも一つのインピーダンス変換器と、閾値発信器を含んでいる。この閾値発信器によって、圧電ケーブルに作用する力の作用時間と大きさが検出される。圧電ケーブルに小さな負荷が作用しても、すなわち圧電ケーブルに誤って接触しても、電動機9は操作されない。」(第2ページ右下欄第5?15行)

引用例記載のものにおいて、評価電子装置は、トリガ5(圧電ケーブル)に誤って接触しても電動機9を操作しないようにすること(上記記載事項(イ))からみて、物8を挟み込んでいるか、あるいは、圧電ケーブルに誤って接触しているかを判定するものであると認められる。また、トリガ5(圧電ケーブル)の電圧パルスによって電動機9の回転方向が直ちに逆転すること(上記記載事項(ア))からみて、引用例には、評価電子装置により物8の挟み込みが判定されると物8を開放するよう電動機9を制御する制御手段が開示されていると認められる。さらに、ドアフレーム4の開口部は電動機9で駆動される窓ガラス3によって開閉されることから、引用例には「開閉装置」が開示されていることも明らかである。

したがって、上記記載事項(ア)(イ)及び第1?2図の記載からみて、引用例には、

「ドアフレーム4の開口部と、前記開口部を開閉する窓ガラス3と、前記窓ガラス3を駆動する電動機9と、前記開口部に配設されたトリガ5と、前記窓ガラス3をシールするシール7と、前記トリガ5の電圧パルスに基づき前記開口部と前記窓ガラス3との間への物8の挟み込みを判定する評価電子装置と、前記評価電子装置により物8の挟み込みが判定されると前記物8を開放するよう前記電動機9を制御する制御手段とを備え、前記トリガ5はシール7と一体化されて前記開口部に設けた開閉装置。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ドアフレーム4の開口部」、「窓ガラス3」、「電動機9」、「トリガ5」、「電圧パルス」、「物8」、「評価電子装置」は、それぞれ本願発明の「開口部」、「開閉部」、「駆動手段」、「感圧手段」、「出力信号」、「物体」、「挟み込み判定手段」に相当する。また、引用発明の「シール7」は、本願発明の「シール部材」に相当するとともに、その内部にトリガ5を配置し、ドアフレーム4に設けられることから、本願発明の「(感圧手段の)弾性体からなる支持手段」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、

「開口部と、前記開口部を開閉する開閉部と、前記開閉部を駆動する駆動手段と、前記開口部に配設された感圧手段と、前記開閉部をシールするシール部材と、前記感圧手段の出力信号に基づき前記開口部と前記開閉部との間への物体の挟み込みを判定する挟み込み判定手段と、前記挟み込み判定手段により物体の挟み込みが判定されると前記物体を開放するよう前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記感圧手段は弾性体からなる支持手段と一体化されて前記開口部に設けた開閉装置。」

である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

[相違点]
本願発明は、「挟み込みによる荷重を吸収する荷重吸収手段」を備えたものであって、「感圧手段と前記荷重吸収手段とは弾性体からなる支持手段と一体化されてシール部材とは別に設けた」ものであるのに対して、引用発明は、「挟み込みによる荷重を吸収する荷重吸収手段」を備え、「荷重吸収手段」をトリガ5とともに「弾性体からなる支持手段」と一体化したものであるとの限定はなく、シール7がかかる「支持手段」を兼ねている点。

4.当審の判断

次に、上記相違点について検討する。まず、上記相違点に係る本願発明の構成のうち、「挟み込みによる荷重を吸収する荷重吸収手段」については、引用例に、シール7内に、トリガ5(圧電ケーブル)の逃げのための充分な場所となる中空空間10が設けられる点が記載(上記記載事項(ア)、第2図参照)されている。そして、シール7は技術常識に照らせば弾性体であると認められるとともに、中空空間10がトリガ5の「逃げ」のための場所として機能するためには、シール7における中空空間10の周囲部分(側壁)が変形して、かかる変形に相当する距離だけ、トリガ5が中空空間10の方向へ移動することが予定されているというべきである。してみれば、物8がドアフレーム4と窓ガラス3との間に挟み込まれた際の荷重によって、シール7における中空空間10の周囲部分(側壁)が弾性変形することからみて、シール7は、「荷重吸収手段」を備え、それをトリガ5とともに一体化した「弾性体からなる支持手段」であると認められる。

なお、この点、審判請求人は、引用発明のシール7(中空空間10)は、引用例の第2図に図示された、その側壁の厚み、及びトリガ5と中空空間10との間のくびれ部分の存在を理由として、荷重を吸収する機能を持ったものではない旨主張するが、第2図には正確な寸法でシール7が記載されているとは認められないから、そのような図に示された寸法や形状を理由として、シール7(中空空間10)の上記機能を否定することは、失当である。

仮に、審判請求人の主張のとおり、引用発明のシール7が「荷重吸収手段」を備えたものではないとしても、一般的に、開閉装置の技術分野において、感圧手段と「荷重吸収手段」とを「弾性体からなる支持手段」と一体化して開口部ないし開閉部に設けるようにした構成は、従来周知の事項である(例えば、実願昭58-180872号(実開昭60-87987号)のマイクロフィルム、特開平8-21771号公報参照、又は特開平10-264652号公報の段落【0018】【0019】,図3,4参照)。

さらに、感圧手段を「弾性体からなる支持手段」と一体化したものを、シール部材とは別に設ける構成についても、同様に、開閉装置の技術分野において従来周知の事項である(例えば、特開平10-338029号公報、又は、上記の特開平10-264652号公報参照)。

してみれば、引用発明において、トリガ5と「荷重吸収手段」とを一体化した「支持手段」を、上記周知技術に照らしてシール7とは別に設けるよう構成することは、当業者ならば容易に想到し得たことであり、又は、引用発明において、トリガ5と一体化した「支持手段」に代えて、従来周知の「感圧手段と荷重吸収手段とを一体化した支持手段」を採用するにあたり、かかる「支持手段」を上記周知技術に照らしてシール7とは別に設けるように構成することは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成に格別の困難性は認められない。

そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明及び上記周知技術から予測可能なものであり、格別なものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

5.むすび

したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-27 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-17 
出願番号 特願2000-290368(P2000-290368)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 健一  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 平瀬 知明
永安 真
発明の名称 開閉装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  

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