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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1148751
審判番号 不服2004-16753  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-11 
確定日 2006-12-04 
事件の表示 特願2002-340975「苗移植機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年5月27日出願公開、特開2003-153615〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成5年7月23日に出願した特願平5-182881号の一部を分割して平成14年11月25日に新たな特許出願としたものであって、平成16年6月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年9月10日に手続補正がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。

「乗用車体2の後側に苗植付け部7を装着し、乗用車体2の前部の左右に支柱23を介して上下複数段に予備苗載せ台19を設けると共に、乗用車体2の操縦座席14の上方にバイザー25を設けた苗移植機において、
前記バイザー25を前下がりに傾斜した構成とすると共に、
該バイザー25をその前側で支持する支持フレーム26bを前記支柱23とは別に左右の予備苗載せ台19の間で後側上方へ延設し、
前記支持フレーム26bを機体側面視で下部より上部が水平に近い傾斜姿勢となるように曲線状に後側へ曲げた形状として上下複数段の全ての予備苗載せ台19に重なるように該予備苗載せ台19の前端と後端との間に配置すると共に、
前記支持フレーム26bの下部を機体平面視でバイザー25の前方に配置する構成としたことを特徴とする苗移植機。」
(以下「本願発明」という)

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である、実願昭61-3835号(実開昭62-116620号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には「乗用田植機におけるサンバイザーの取付構造」に関して、次の記載がある。
(イ)「第2図は乗用田植機全体の側面図を示し、走行車(A)は,・・・機体前部の・・・両側下方となる両フロントステップ(3a)(3b)の外側には門形の両予備苗台フレーム(5a)(5b)をそれぞれ立設し、両予備苗台フレーム(5a)(5b)の外側方にはそれぞれ3個の予備苗台(4)を架着し、・・・該走行車(A)の後方には多条植式植付部(B)を・・・連設して・・・構成する。
(6a)(6b)は長い支柱で、両支柱(6a)(6b)の下端前面には連絡板(15a)(15b)をそれぞれ溶接により固着し、支柱(6a)(6b)が起立する状態で連結板(15a)(15b)を前記予備苗台フレーム(5a)(5b)の後方上部に止具(17)(17)を介して固定できるように装設し、・・・内方下面にシート(20)を接合したサンバイザー(C)を支持フレーム(7)上に接合して止着するが、サンバイザー(C)は前記ハンドル(1)側から座席(9)の後方にかけての上方に高く位置して水平状態となるように取付け構成する。・・・
第1図および第2図に示すようにサンバイザー(C)を取付けた状態では、作業時に、植付部(B)を上昇させて運転席のオペレーターが苗の補給作業を行なっても支柱(6a)(6b)やサンバイザー(C)が邪魔になることがなく、・・・」(4頁1行?5頁17行)
(ロ)第2図をみると、支柱6a(6b)は、機体側面視で、後方へ傾斜姿勢の直線状となっており、予備苗台4の前端と後端との間に配置され、下部を機体平面視でサンバイザー(C)の下方に配置されていることが明らかである。

これらの記載および図面を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。かっこ内は対応する引用例における構成・用語である。

「乗用車体(走行車A)の後側に苗植付け部(多条植式植付部B)を装着し、乗用車体の前部の左右に支柱(予備苗台フレーム5a、5b)を介して上下複数段に予備苗載せ台(予備苗台4)を設けると共に、乗用車体の操縦座席(座席9)の上方にバイザー(サンバイザーC)を設けた苗移植機 (乗用田植機)において、
前記バイザーを水平状態とすると共に、
前記バイザーをその前側で支持する支持フレーム(支柱6a、6b)を前記支柱とは別に左右の予備苗載せ台の間で後側上方へ延設し、
前記支持フレームを機体側面視で傾斜姿勢となる直線形状として予備苗載せ台の前端と後端との間に配置すると共に、
前記支持フレームの下部を機体平面視でバイザーの下方に配置した苗移植機。」
(以下、「引用発明」という。)

3.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を比較すると、両者は、
「乗用車体の後側に苗植付け部を装着し、乗用車体の前部の左右に支柱を介して上下複数段に予備苗載せ台を設けると共に、乗用車体の操縦座席の上方にバイザーを設けた苗移植機において、
前記バイザーをその前側で支持する支持フレームを前記支柱とは別に左右の予備苗載せ台の間で後側上方へ延設し、
前記支持フレームを機体側面視で予備苗載せ台の前端と後端との間に配置した苗移植機。」
の点で一致し、次の各点で相違している。

相違点1:本願発明では、バイザーを前下がりに傾斜した構成とするのに対し、引用発明では、そのようになっていない点。
相違点2:本願発明では、支持フレームを機体側面視で下部より上部が水平に近い傾斜姿勢となるように曲線状に後側へ曲げた形状として上下複数段の全ての予備苗載せ台に重なるように配置したのに対し、引用発明では、そのようになっていない点。
相違点3:本願発明では、支持フレームの下部を機体平面視でバイザーの前方に配置する構成としたのに対し、引用発明では、そのようになっていない点。

(2)判断
相違点1について検討するに、この種の作業機において、バイザー(日除け、雨除け)を前下がりに傾斜した構成とすることは、周知技術(例えば、査定時に提示した、実願昭58-16026号(実開昭59-122020号)のマイクロフィルム、実願昭53-71747号(実開昭54-173415号)のマイクロフィルム)、実願昭53-80534号(実開昭54-181412号)のマイクロフィルム等参照。)にすぎない。

相違点2について検討するに、請求人は審判請求書において、該構成としたことにより、「バイザー25上に降った雨の大半は前方から落下し、その前方へ流れようとする雨水の流れが曲線状の支持フレ-ム26bをつたって円滑に下方へ変向されながら案内されて左右の予備苗載せ台19の間に落下しやすくなるため、苗補給作業において作業者に雨水がかかりにくくなり、作業性の向上が図れる。」と、主張しているが、かような作用効果は出願当初の明細書に記載されていないし、本願の図3を参照しても、直線形状のものと比べて作用効果の程は不明である。要するに、支持フレームを曲線形状とすることは設計的事項にすぎない。
また、支持フレームを機体側面視で上下複数段の全ての予備苗載せ台に重なるように配置することは、支持フレームを最下段の予備苗載せ台より下位から上方へ延設させることであり、これも容易になし得る設計的事項にすぎない。

相違点3について検討するに、乗用型の田植機において、予備苗載せ台の支柱とは別に左右の予備苗載せ台の間に配置した、日除け・屋根の支柱の下部を機体平面視で日除け・屋根の前方に配置する構成は、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭56-193873号(実開昭58-99121号)のマイクロフィルム、実願昭57-130181号(実開昭59-34519号)のマイクロフィルム)等参照。)にすぎない。

4.むすび
以上、本願発明は、引用発明および各周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-21 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-26 
出願番号 特願2002-340975(P2002-340975)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 忠悦  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 森次 顕
西田 秀彦
発明の名称 苗移植機  

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